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真空STM/AFM

測定環境としての真空

真空のメリットとして、

  1. 試料表面を制御された状態に保つことができる
  2. 電子を用いたさまざまな試料分析装置と組み合わせることができる
  3. 試料温度を自由に変化させることができる
といった点が挙げられます。

試料表面を制御された状態に保つことができる

金属や半導体などの応用上興味を持たれる表面の多くが大気中で安定ではなく、大気分子と反応して状態を変化させてしまうため、これをよく制御された条件に保つための環境として真空が用いられます。

電子を用いたさまざまな試料分析装置と組み合わせることができる

電子線などを用いた測定手法は、気体分子で充満された雰囲気では使うことができません。電子が気体分子に散乱されてしまいますし、それ以前に電子銃のフィラメントが焼けてしまいます。

試料温度を自由に変化させることができる

STM や AFM のように、測定手法自体が真空を必要としない場合にも、真空中であれば、試料の温度を非常に高い自由度で変化させることができます。残留ガスがある状態で試料を低温( 例えば100K以下 )にすると・・・気体分子が液化あるいは固化して、試料表面を覆いつくしてしまいます。真空が無い状態で試料を高温( 例えば500K以上 )にすると・・・試料が酸化したり、そもそも加熱用のフィラメントが焼けてしまったり、ろくなことが起こりません。

超高真空タイプの STM/AFM はこれらの利点を生かした測定を行うことができます

真空STM/AFMの難しさ

しかし、真空は必ずしも良い事ばかりでもありません。

  1. 扱いが煩雑
  2. 振動に弱い
  3. 周波数特性が悪い
などのデメリットもあります。

扱いが煩雑

真空中に手を突っ込むわけに行きませんから、真空チャンバー内での試料の取り扱いは、マニピュレータとか、ウォブルスティックとか、マグネットロッドなどを操作して遠隔操作で行うことになります。すると、真空容器の中で試料を落っことしてしまったり、、、なんて事故もごくごくたま〜に(?)起こってしまいます。

また、容器内部を超高真空にすること自体簡単ではありません。大気圧から超高真空にするのは大体2日がかりになります。

振動に弱い

STM や AFM の針の交換や試料交換、設定の微調節も直接手を触れて行うわけにいかないため、そのための精巧な機構を組み込む必要があります。今日の装置は非常に良くできているのですが、それでも大気中で動作する装置に比べると複雑な分だけ振動などに弱く、高性能な除振機構が必要になります。

性能向上が難しい

真空タイプのSTMでは探針と増幅回路(通常容器の外に置かれる)との間の配線が長くなってしまうため、ノイズが入りやすく、また、周波数特性が悪くなりがちです。

最新の真空用STMは、これらのデメリットを抑えるように綿密に設計されています。

重川研の超高真空STM/AFM

重川研の真空タイプ STM/AFM はすべて超高真空対応で、なおかつ低温観察が可能です。

真空というと、空気がまったく無い状態、と思われるかもしれませんが、実は本当の真空を作るのは非常に難しい、、、というか、不可能なのです。真空の度合いはどのくらい残留気体が残っているかで分類されます。詳しくはこちらをご覧下さい。

我々の装置が実現する超高真空は、実験室で得られる最高レベルの真空度です。この真空を維持するため、STM装置はステンレス製の容器(真空チャンバ)に入っています。チャンバをふさぐ「ふた」や「まど」を取り付けるには、ガスケットと呼ばれる銅製のパッキングを使い、何本ものボルトで固定します。
真空容器の「まど」

低温観察のためには、液体窒素液体ヘリウムを使って試料を冷まします。このため、Omicron VT を除く STM 装置にはこれら冷媒となる液体を貯めて置くための大きなタンクが内蔵されています。どの装置にもひときわ背の高いチャンバーがあって、ここにタンクとSTMとが入っています。

背が高いのが低温STM室
液体窒素を入れているところ
液体ヘリウムを入れているところ
手前にあるのが可動式のタンク

Omicron VT はやはり液体ヘリウムを使って試料を冷ましますが、装置自身にはタンクが付属せず、輸送用の液体ヘリウムタンクから直接ヘリウムを供給して冷却を行います。

JEOL STM

Omicron LT

Omicron VT I

Omicron VT II (STM発光)

Omicron Tesla

Unisoku I (THz-STM)

Unisoku II