原子種の組み合わせやその周りを運動する電子によって物質は多種多様な性質を持ちます。
その機能発現を基礎科学的に解明するためは、原子や電子の動きを直接的に捉える必要があります。
この世界では小さいものほど速く動くという性質があり、その時間領域はフェムト秒(1000兆分の1秒)です。
嵐田グループでは物性発現の基礎過程を曖昧さ無く理解するため、実際に超高速に動く原子や電子をイメージング撮影する技術を構築しています。具体的にはレーザーをプローブ顕微鏡や電子顕微鏡に組み合わせる技術を発展させています。
これによって化学反応や相転移現象が起こる"瞬間"を目で見たかのように理解することが目的です。
また、先端的な電子デバイスの電位変化をイメージング撮影する技術の創出も行っています。
走査トンネル顕微鏡法(STM)は原子1個1個の形を観察できる方法として知られています。
このSTMに、1周期の間だけ"光る"中赤外線を照射することで29フェムト秒の非常に短い時間に動く原子画像を撮影することができます。
この光駆動型STMで私達は他のグループより1桁以上速い現象を捉えることができる独自技術を確立してきました。
固体物理学や分子科学で興味を持たれてきた「化学反応の瞬間」をビデオ撮影の様に捉えることを目指しています。
ナノスケールの材料観察に広く普及している走査電子顕微鏡法(SEM)にフェムト秒レーザーを組み合わせることで、43 ピコ秒の短い時間における電子顕微鏡像を得ることができます。材料の形状だけでなく電位を知ることができるのが本手法の特徴です。この技術を使うと、高速動作する高集積半導体トランジスタの半導体-電極界面のポテンシャルを可視化できるなど、次世代電子デバイスの動作をより直接的に理解することができます。
テラヘルツ周波数帯域の電磁波(THz)が持つ強い電場によって駆動される新奇物性が近年注目されています.
私達は位相のTHz波によってSTM環境下に置いた試料を励起することで、強い電場に駆動される原子像の実空間ダイナミクスの解明を試みています。
化学分析法として知られてきたラマン分光法は近年レーザー技術の発達による高度化が著しく, さらに赤外光源の利用により適用可能な物質系が拡大しています.
本研究では広帯域近赤外光を利用したコヒーレント反ストークスラマン(CARS)顕微鏡を用いて特に低波数の振動モードに感度のあるイメージング手法を開拓することで機能性材料の分子トラッキングを行なっています.