線形独立、基底及び次元 の履歴(No.11)
更新線形結合・一次独立・従属†
線形代数I で学んだ 線形結合・一次独立・従属の概念を一般の線形空間でも定義できる
の線形結合とは、
が「一次独立である」とは、
から を導けること
以外でも成り立つなら「一次従属である」という
問:
実数を係数とする2次以下の
の多項式からなる線形空間を考える
は線形独立か?
答:
とすると、
ここに現れた等号は、「左辺の多項式と右辺の多項式が等しい」という意味であるから、 左辺と右辺とで、対応する次数にかかる係数がすべて等しくなければならない。
すなわち、 となり、 これを満たす は しか存在しない。
したがって、与えられた3つのベクトルは線形独立である
張る空間・生成元・部分空間†
の「張る空間」は次のように定義され、
と書く。(< > で括る流儀もある)
これは 「 の一次結合で表せるベクトルの集合」 と同義である。
このような は和、スカラー倍に対して閉じており、それ自身も線形空間となる。
、 のとき、
、
を の「生成元」という。
一般に、 の部分集合 が線形空間となるとき、 は の「部分空間」という。
多くの場合、
- 1つのベクトルにより張られる空間
は直線的である
←→ 直線の方程式 - 2つのベクトルにより張られる空間
は平面的である
←→ 平面の方程式 - 3つのベクトルにより張られる空間
は空間的である
←→ 空間の方程式
ただし が一次従属だと、その限りではない!
4-2 基底・次元†
が
を張り、なおかつ一次独立であるとき、
は
の「基底」である、という。
基底を構成するベクトルの数を線形空間の「次元」と呼ぶ。
ある空間 について、基底の取り方には任意性があるが、 「次元」は一意に決まる。
このことは、
- 個のベクトルにより張られる空間から、 個以上のベクトルを取り出せば、 それらは必ず線形従属になる
すなわち、
- 個のベクトルにより張られる空間から、 を越える個数の線形独立なベクトルを取り出せない
ことから導かれる。また同様に、この定理から、
- 次元空間を 個以下のベクトルで張ることはできない
- 次元空間に 個以上の線形独立なベクトルの組を見つけることはできない
ことが分かるが、その証明は省略する。
例:
2次以下の
の多項式の集合を
とするとき、
は
を張り、
また、一次独立であるから、
の基底となる
すなわち、
は3次元である
列ベクトル表示(数ベクトル表現)†
準備†
定理:
を の基底とすれば、 はこれらの一次結合として一意に表される。
証明:
基底は を張るから、 を基底の一次結合として表せる。
だから、その表し方が「一意に決まること」が重要。
もし、
であれば、これを変形して、
基底の線形独立性から、
として一意性が示される。
数ベクトル空間との1対1対応†
上記の線形結合を、行列のかけ算と同様の表示を使って
&math( \bm x=\Big(\bm v_1\ \bm v_2\ \dots\ \bm v_n\Big) \underbrace{\begin{pmatrix} x_1\\ x_2\\\vdots\\x_n \end{pmatrix}}_{\bm x'}=\Big(\bm v_1\ \bm v_2\ \dots\ \bm v_n\Big)\bm x' );
の形に書けば、
に対して、対応する 次元列ベクトル が1つ決まることになる。
逆に、 に対して、 が1つ決まるから、
線形空間 の元1つ1つと の元1つ1つとの間に 1対1の対応が付くことになる。
を、基底
に対する
の「列ベクトル表示」という。
(列ベクトル表示は基底の取り方に依存することに注意せよ)
例:
実数を係数とする2次以下の の多項式 | 3次実数ベクトル |
の基底 に対する数ベクトル表現になっている | |
この対応関係は ベクトル和 や スカラー倍 に対しても保存されることから、 すべての 上の 次元線形空間 は、 同じ次元を持つ数ベクトル空間 と強い類似性を持つことが分かる。
こういう時、 と は「同型である」、と言う。
以下で同型を厳密に定義する。