球座標を用いた変数分離 の履歴(No.14)
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目次†
球座標における微分演算子(まとめ)†
球座標:
&math( \begin{cases} x=r\sin\theta\cos\phi\\ y=r\sin\theta\sin\phi\\ z=r\cos\theta \end{cases} );
ラプラシアン:
&math(\hat\Lambda=\frac{1}{\sin\theta} \frac{\PD}{\PD \theta} \Big(\sin\theta\frac{\PD}{\PD \theta}\Big)+\frac{1}{\sin^2\theta} \frac{\PD^2}{\PD \phi^2});
全角運動量:
&math( \hat{\bm l}^2=-\hbar^2\hat\Lambda );
ラプラシアンの の項の係数は、 全角運動量の演算子と の係数を除いて等しい。
軸まわりの運動量:
&math( \hat l_z=-i\hbar\frac{\PD}{\PD\phi} );
角運動量の上昇・下降演算子(意味は後ほど):
演習:シュレーディンガー方程式の変数分離†
球座標表示におけるラプラシアンは、
&math(\hat\Lambda=\frac{1}{\sin\theta} \frac{\PD}{\PD \theta} \Big(\sin\theta\frac{\PD}{\PD \theta}\Big)+\frac{1}{\sin^2\theta} \frac{\PD^2}{\PD \phi^2});
以下の問いに従って、中心力場 の中での粒子の運動について考えよ。
(1) を示せ。
(2) 与えられたラプラシアンの表式と (1) の結果を用いて、 球座標表示における時間によらないシュレーディンガー方程式を書き下せ。 解答には を用いて良い。
(3) 波動関数を と置き、 (2) の方程式を変数分離することにより、以下の方程式を導け。 ただし共通の定数を と置いた。
&math( &-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\PD^2}{\PD r^2}rR(r)+\left\{V(r)+\frac{\hbar^2l(l+1)}{2mr^2}\right\}rR(r)=\varepsilon\,rR(r) );
&math( \hat\Lambda Y(\theta,\phi)=-l(l+1)Y(\theta,\phi) );
(4) (3) の方程式を解いて得られる および が全角運動量 の固有関数であり、その固有値が となることを確かめよ。
(5) 古典論において、質量
の粒子が原点から
の距離を角速度
で回転するときの角運動量は
であり、遠心力は
で与えられる。
ここから遠心力に対するポテンシャルエネルギーが
と書けることを示し、(3) で得た
の方程式に現れる
の項が遠心力の寄与を表わすことを理解せよ。中心力場内では角運動量が保存量となるため、
遠心力とポテンシャルエネルギーとの関係は
一定の元で
であることに注意せよ。
(6) と置いて (3) の第2式を変数分離すると以下の式が得られることを確かめよ。
&math(\left\{\sin\theta \frac{\PD}{\PD \theta}\Big(\sin\theta\frac{\PD}{\PD \theta}\Big)+ l(l+1)\sin^2\theta-m^2\right\}\Theta(\theta)=0);
ただし、共通の定数を と置いた(質量 と紛らわしいが慣例に従った)。
このうち に関する方程式は、
の場合にのみ解を持つことが知られている。
(7) (6), (3) を解いて得られた および が の固有関数であり、その固有値を と考えることができることを確かめよ。 *1符号をどう取るかに任意性が残るため、少し曖昧な書き方になっている
解説†
上で見たように、中心力場内のシュレーディンガー方程式は、球座標を用いることにより の形に変数分離して解くことが可能である。
についての方程式には が含まれないため、 ポテンシャルの形状によらず解くことができる。
その解は
の2つの整数からなる量子数を用いて
のようにラベル付けされる。
は物理的にはそれぞれ全角運動量の二乗 および 軸周りの角運動量 に関連する量子数であり、
の関係がある。すなわち は と の同時固有関数である。
全角運動量 の大きさは、 であるが、慣例として「角運動量が の時」などという。 全角運動量が のとき 軸周りの角運動量が となるのは当然と思えるはず。 のときも、不確定性により は完全にゼロにはならないため、 ではなく となる。
についての方程式には の他に全角運動量の二乗 を含む項 が現れ、 これは遠心力に対するポテンシャルを表わす(遠心力は全角運動量の二乗に比例する)。
一般に、 についての方程式を解く際にもう1つの量子数 が現れるため、 全体としての解は の3つの量子数により、
のようにラベル付けされる。
原子の軌道を表す場合には、 に関する解を などと書く代わりに のアルファベットを用いて、 などと書くことの方が一般的である。 とアルファベットの対応は以下の通り。原子の軌道を考える限り f 軌道までで十分であり、最も重い原子でも g, h などは現れない。
0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | … | |
文字 | s | p | d | f | g | h | … |
波動関数の正規直交性†
正しく規格化することにより、上記の は正規直交性を示す。
左辺の積分を球座標で書けば、
&math(= \int_0^\infty dr\int_0^{\pi}rd\theta\int_0^{2\pi}r\sin\theta d\phi\ \varphi_{lmn}^*\varphi_{l'm'n'});
&math( =\underbrace{ \int_0^{\pi}\Theta_l{}^m(\theta)^*\Theta_{l'}{}^{m'}(\theta)\,\sin\theta d\theta}_{\delta_{ll'}}\
\underbrace{ \int_0^{2\pi}\Phi_m(\phi)^*\Phi_{m'}(\phi) \,d\phi}_{\delta_{mm'}}\ \underbrace{ \int_0^\infty R_n{}^l(r)^*R_{n'}{}^{l'}(r)\,r^2dr}_{\delta_{nn'}}
);
となって、 に対する正規直交条件は、
となる。
に対する積分に 、 に対する積分に の重みが それぞれかかることに注意せよ。