Fusion360歯車スクリプト/クラウンギア の履歴(No.2)

更新


工作/Fusion360歯車スクリプト

クラウンギア(フェースギア)をピニオンギアと組み合わせて動かしてみる

フリーソフトとして公開している自作の 工作/Fusion360歯車スクリプト を使ってクラウンギアを作れるようになりました。

crown.gif

クラウンギアはフェースギアとも呼ばれ、2つの軸が直角に交わる配置で噛み合うギアです。 相手のピニオン歯車には通常のインボリュート歯車が使えます。

クラウンギアは切削で作る場合には簡単な方法がないようですが、3Dプリンタを使って出力する分にはこのスクリプトが出力する形状をそのまま印刷すれば問題なく利用できると思います。

現状では、はすばのピニオン歯車には対応していません。

クラウンギアの生成

Crown タブを開いて OK を押すと、モジュール4で歯数40枚のクラウンギアが生成されます。

※計算にはかなり時間がかかります

クラウンギアの歯形は相手のピニオン歯車の歯数等にも影響を受けるため、ここで生成されるクラウンギアは生成時に指定した歯数 12 のピニオン歯車と組み合わせて使う必要があります。

Outer Extent, Inner Extent はそれぞれ、クラウンギアの基準円の外側及び内側に向けた歯の幅をモジュールを単位として指定します。ここではどちらも 2 が指定されていますので、外と内とにそれぞれ 2 x 4 mm = 8 mm で、合計 16 mm の歯幅になります。

crown4.jpg

ピニオン歯車の生成とかみ合い位置への移動

Cylindrical タブを開き、デフォルトから歯幅 Width のみ 20 mm に変更して OK を押すと、 ピニオン歯車を生成できます。

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クラウンギアとピニオン歯車はどちらも z 軸を回転軸として生成されるため、そのままでは噛み合いません。

噛み合い位置に移動するには以下の手順を踏みます。

  • まず、ピニオン歯車を90度回転させます
  • ピニオン歯車を軸に沿ってクラウンギアの基準円半径分だけ移動します
  • クラウンギアはちょうどピニオン歯車の半径分だけ下方に生成されているため、
  • これでピニオン歯車とクラウンギアの基準円が接するようになります
  • ピニオン歯車をピッチの半分 (360 deg / 12 / 2 = 15 deg) だけ回転させます

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これでぴったり噛み合い位置に置けました。

クラウンギアの Inner Extent と Outer Extent が等しくない場合には、 丁度よい位置に来るようにピニオン歯車を回転軸に沿って移動してください。

モーションリンクの設定

クラウンギアにもピニオンにも回転ジョイントが生成されていますので、 これらの間にモーションリンクを設定することで両者を組み合わせて回せます。

crown8.jpg

ちょうどギア比に合わせて角度を指定する必要があるため、 両者とも 360 deg を歯数で割る形で入力すると間違いがないと思います。

どちらの歯車も、生成されるコンポーネントは2重になっており、 歯車本体は内側のコンポーネントに格納されています。

そしてジョイントは内側と外側のコンポーネント間に生成されていますので、 外側のコンポーネントとルートコンポーネントとの間に剛性グループを作成して 固定してやることで、内側のコンポーネントが回転軸周りの回転のみ許される 状況を実現できます。

crown9.jpg

剛性グループを作成する際には「子コンポーネントを含める」のチェックボックスを解除しておきます。 そうしないとルートコンポーネントを選んだだけですべてのコンポーネントが固定されてしまいます。

このチェックボックスを解除した後、ルートコンポーネント、クラウンギアの外側コンポーネント、 ピニオンギアの外側コンポーネント、の3つのコンポーネントを選んで剛性グループを作成します。

ここまでで歯車は回転のみが可能な形で固定されていますので、 マウスでドラッグすることで歯車の連動する様子を確認できるはずです。

crown10.gif

クラウンギアの歯形

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クラウンギアの歯形は独特な形をしています。 歯形を上から見るとひし形をしていて、内側は短く、外側に長くなっています。

crown2.jpg crown3.jpg

この形状はインボリュート曲線などで表せるようなものではなく、実際にドーナツ状の部材からピニオンギア形状との間で干渉する部分を削り取る演算を行うことで求められています。

実はひし形の最も張り出した部分よりも外側のみがピニオンギアの歯面との間で接触する部分であり、 ここよりも内側はピニオンギアとの干渉を避けるために削られた部分で、ピニオンとは接触することはありませんので、動力の伝達にはまったく寄与しません。

ですので、フェースギアを生成する際には Inner Extent をあまり大きくすることにメリットはありません。

歯当たりを確認する

モジュール 8 の歯数36のクラウンギアと、歯数12のピニオンとを両者ともバックラッシュ -0.03 mm として生成し組み合わせて動作させながら、両者の干渉する部分を可視化しました。

crown1.gif

歯の接触領域はひし形の頂点から直線状に伸びており、歯車の回転とともにひし形の頂点を中心に接触領域が回転するような接し方をすることが分かります。

ひし形の頂点より内側にまったく接触が生じないことも分かります。

計算精度と誤差

クラウンギアのひし形の頂点付近から下方に向かって歯面に折れ曲がりが生じます。

crown3.jpg

このスクリプトでは円周方向に多数の歯溝形状を計算してそれらをロフトで繋ぐことで歯形を得ているのですが、 この折れ曲がり部分を精度よく再現するには多数の点を取る必要があるようです。

crown12.jpg

Fusion360 は多数の点からなる非平面的な閉曲線にパッチを張る演算にかなりの時間を要するため、 現状ではクラウンギアの生成にはかなり長い時間がかかってしまっています。

精度と生成時間とを両立できるもっと良い方法があると良いのですが・・・


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