正規行列の対角化可能性 の履歴(No.2)

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線形代数Ⅱ

正規行列

正規行列とは A^\dagger A=A A^\dagger を満たす行列 A

ユニタリ行列により対角化可能であることと、正規行列であることとは同値である。

すなわち、

  • ユニタリ行列により対角化可能であれば正規行列
  • 正規行列であればユニタリ行列により対角化可能

の両方が証明可能。

ユニタリ行列により対角化可能であれば正規行列

U をユニタリ行列 ( U^\dagger=U^{-1} )、 \Lambda を対角行列として( \Lambda \lambda の大文字)、

&math( U^\dagger A U=\Lambda= \begin{pmatrix} \lambda_1\\ &\lambda_2\\ &&\ddots\\ &&&\lambda_n \end{pmatrix});

が成り立つとき、

A=U\Lambda U^\dagger より、

&math( A^\dagger=(U\Lambda U^\dagger)^\dagger=U\Lambda^\dagger U^\dagger=U\overline{\Lambda}U^\dagger );

したがって、

AA^\dagger=U\Lambda U^\dagger U\overline{\Lambda} U^\dagger=U\Lambda \overline{\Lambda} U^\dagger

A^\dagger A=U\overline{\Lambda} U^\dagger U\Lambda U^\dagger=U\overline{\Lambda} \Lambda U^\dagger

ここで、

&math( \Lambda \overline{\Lambda}=\overline{\Lambda}\Lambda= \begin{pmatrix} |\lambda_1|^2\\ &|\lambda_2|^2\\ &&\ddots\\ &&&|\lambda_n|^2 \end{pmatrix} );

であるから、 AA^\dagger=A^\dagger A が証明された。

正規行列であればユニタリ行列により対角化可能

A n 次元行列として、 n に対する数学的帰納法を用いる。

(1) n=1 のとき

A は始めから対角行列なので、 U=E と取れば U^\dagger A U は対角行列である。

(2) n-1 次元で成り立つとすれば n 次元でも成り立つことを証明する。

A\bm x_1=\lambda\bm x_1 を満たす \lambda,\bm x_1 を、 任意の A に対して最低限1組は見つけられる。

この \bm x_1 に対して、 \bm x_1,\bm x_2,\dots,\bm_n が正規直交系となるように \bm x_2,\dots,\bm x_n を定めれば、

[Math Conversion Error]


はユニタリ行列となる。
(ユニタリ行列の列ベクトルは正規直交系であった)

&math( U^\dagger AU&=U^\dagger \Bigg( A\bm x_1\ A\bm x_2\ \dots\ A\bm x_n \Bigg)\\ &= \begin{pmatrix} \bm x_1^\dagger\\\bm x_2^\dagger\\\vdots\\\ \ \bm x_n^\dagger\ \ \end{pmatrix} \Bigg( \lambda\bm x_1\ A\bm x_2\ \dots\ A\bm x_n \Bigg)=\begin{pmatrix} \ \lambda & \bm b^\dagger \\ \ \bm 0 & \ \rule{20pt}{0pt}\rule[-25pt]{0pt}{50pt}A'\rule[-25pt]{0pt}{50pt}\rule{20pt}{0pt} \end{pmatrix} );

ここで、

  • \bm b^\dagger n-1 次元の横ベクトル
  • A' n-1 次元の正方ベクトル

で、中身は A U によって決まる。

ここまでは任意の行列 A に対して成り立つ話。
ここで A が正規行列であるという条件を使う。

&math( (U^\dagger AU)^\dagger=U^\dagger A^\dagger U = \begin{pmatrix} \ \overline \lambda & {}^T\bm 0 \\ \ \bm b & \ \rule{20pt}{0pt}\rule[-25pt]{0pt}{50pt}{A'}^\dagger\rule[-25pt]{0pt}{50pt}\rule{20pt}{0pt} \end{pmatrix} );

であるから、

&math( (U^\dagger A U)(U^\dagger A^\dagger U)=U^\dagger AA^\dagger U=\begin{pmatrix} \ \lambda & \bm b^\dagger \\ \ \bm 0 & \ \rule{20pt}{0pt}\rule[-25pt]{0pt}{50pt}{A'}\rule[-25pt]{0pt}{50pt}\rule{20pt}{0pt} \end{pmatrix}\begin{pmatrix} \ \overline \lambda & {}^T\bm 0 \\ \ \bm b & \ \rule{20pt}{0pt}\rule[-25pt]{0pt}{50pt}{A'}^\dagger\rule[-25pt]{0pt}{50pt}\rule{20pt}{0pt} \end{pmatrix} );

&math( U^\dagger AA^\dagger U=\begin{pmatrix} \ |\lambda|^2+\|\bm b\|^2 & \bm b^\dagger {A'}^\dagger \\ \ A'\bm b & \ \rule{20pt}{0pt}\rule[-25pt]{0pt}{50pt}{A'}{A'}^\dagger\rule[-25pt]{0pt}{50pt}\rule{20pt}{0pt} \end{pmatrix} );

同様に、

&math( U^\dagger A^\dagger A U=\begin{pmatrix} \ |\lambda|^2 & \lambda\bm b^\dagger \\ \ \lambda\bm b & \ \rule{20pt}{0pt}\rule[-25pt]{0pt}{50pt}{A'}^\dagger{A'}\rule[-25pt]{0pt}{50pt}\rule{20pt}{0pt} \end{pmatrix} );

これらが等しくなるから、

  • \bm b=\bm 0
  • A'{A'}^\dagger={A'}^\dagger A'

すなわち、

&math( U^\dagger AU=\begin{pmatrix} \ \lambda & {}^T\bm 0 \\ \ \bm 0 & \rule{20pt}{0pt}\rule[-25pt]{0pt}{50pt}A'\rule[-25pt]{0pt}{50pt}\rule{20pt}{0pt} \end{pmatrix} );

ここで、 A' n-1 次元の正規行列であるから、 ある n-1 次元ユニタリ行列 U' を用いて、

{U'}^\dagger A'U'=\Lambda'

のように対角化可能である。

この U' を用いて、 n 次元正方行列

&math(U''=\begin{pmatrix} 1&{}^T\bm 0\\ \bm 0&\rule{10pt}{0pt}\rule[-15pt]{0pt}{30pt}U'\rule[-15pt]{0pt}{30pt}\rule{10pt}{0pt} \end{pmatrix} );

を作るとこれはユニタリ行列で、

&math( {U}^\dagger (U^\dagger AU)U=\begin{pmatrix} \ \lambda & {}^T\bm 0 \\ \ \bm 0 & \rule{20pt}{0pt}\rule[-25pt]{0pt}{50pt}{U'}^\dagger A'U'\rule[-25pt]{0pt}{50pt}\rule{20pt}{0pt} \end{pmatrix} =\begin{pmatrix} \ \lambda & {}^T\bm 0 \\ \ \bm 0 & \rule{20pt}{0pt}\rule[-25pt]{0pt}{50pt}\Lambda'\rule[-25pt]{0pt}{50pt}\rule{20pt}{0pt} \end{pmatrix} );

右辺は対角行列になっており、 左辺は UU''=U''' と置けば {U'''}^\dagger AU''' と書け、 ユニタリ行列は積について閉じていることから、 U''' もユニタリ行列である。

すなわち、 n 次元正規行列 A をユニタリ行列 U''' を用いて対角化できることが証明された。

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