線形代数II/復習:線形写像 の履歴(No.3)

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線形代数II

内容

  • 写像の線形性
  • 写像・変換 (以下 $T:V\to W$ とする)
    • 核や像は線形空間となる
      • 核 $\mathrm{Ker}\,T=\{\,\bm x\in V\,|\,T\bm x=\bm 0\,\}$ = $T$ でゼロに移るベクトルの集合
      • 像 $\mathrm{Im}\,T=T(V)=\{\,\bm y\in W|\exists \bm x\in V, T\bm x=\bm y\,\}$ = $V$ 全体を $T$ で移した時に $W$ の中でカバーされる範囲
    • 単射、全射、全単射
      • 単射 $\bm x\ne \bm y\to T(\bm x)\ne T(\bm y)$
      • 全射 $T:V\to T(V)$ あるいは $T:V\to W$ で $W=T(V)$
      • 全単射(全射かつ単射)の時に限り逆写像が定義可能

演習

(1)

$f,g:\mathbb R^2\to\mathbb R^3$ ただし、$f:\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}\mapsto \begin{pmatrix}3x\\x-2y\\3y\end{pmatrix}$ が線形であること、$g:\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}\mapsto \begin{pmatrix}3x\\x-2y\\3\end{pmatrix}$ が線形ではないこと、を示せ。

(2)

二次元ベクトル $\bm x\in\mathbb R$ に対する回転操作 $f_\theta$ と平行移動 $f_{\bm a}$ を次のように定めるとき、一般に $f_\theta\circ f_{\bm a}\ne f_{\bm a}\circ f_\theta$ であることを示せ。

$$f_\theta:\bm x\mapsto \begin{pmatrix}\cos\theta&-\sin\theta\\\sin\theta&\cos\theta\end{pmatrix}\bm x$$

$$f_{\bm a}:\bm x\mapsto \bm x+\bm a$$

(3)

$f:\mathbb R^n\to \mathbb R^n$ が全単射である必要十分条件は $\mathrm{kern} f=\set{}$ であることを証明せよ。

解答例・解説

(1) 写像の線形性

$$ \begin{aligned} &f\Big( a\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}+ b\begin{pmatrix}x'\\y'\end{pmatrix} \Big) =f\Big( \begin{pmatrix}ax+bx'\\ay+by'\end{pmatrix} \Big) =\begin{pmatrix}3(ax+bx')\\(ax+bx')-2(ay+by')\\3(ay+by')\end{pmatrix}\\ =&a\begin{pmatrix}3x\\x-2y\\3y\end{pmatrix}+b\begin{pmatrix}3x'\\x'-2y'\\3y'\end{pmatrix} =af\Big(\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}\Big)+ bf\Big(\begin{pmatrix}x'\\y'\end{pmatrix}\Big) \end{aligned} $$

より $f$ は線形

$$ \begin{aligned} &g\Big(2\begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix}\Big) =\begin{pmatrix}6\\2\\3\end{pmatrix}\\ \ne &2g\Big(\begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix}\Big)+ =2\begin{pmatrix}3\\1\\3\end{pmatrix} =\begin{pmatrix}6\\2\\6\end{pmatrix} \end{aligned} $$

より $g$ は線形ではない

以下解説:

写像 $T$ が $T(\bm x+\bm y)=T(\bm x)+T(\bm y)$ と $T(a\bm x)=aT(\bm x)$ を満たすとき $T$ は線形であるという。

「線形写像」を定義するには $\bm x,\bm y$ の集合に「和」と「スカラ-倍」が定義されている必要があるから「和」と「スカラ-倍」について閉じた「線形空間」を定義したのだった。

写像適用の括弧を省略してみると、線形写像とは「ベクトル和に対する分配法則」と「スカラー倍との交換法則」が成り立つ演算であることが分かる

  • $T(\bm x+\bm y)=T\bm x+T\bm y$ ← ベクトル和に対する分配法則
  • $Ta\bm x=aT\bm x$ ← スカラー倍との交換法則

線形性の条件はまとめて $f(a\bm x+b\bm y)=af(\bm x)+bf(\bm y)$ と書いても良い。

  • ただし2つの線形写像の間に交換法則が成り立つとは限らないことに注意が必要
    • ⇔ $f(g(\bm x)) = g(f(\bm x))$ は一般に成り立たない (つまり $f\circ g \ne g\circ f$)

コメント・質問





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