正規行列の対角化可能性 の履歴(No.3)
更新正規行列†
正規行列とは を満たす行列
ユニタリ行列により対角化可能であることと、正規行列であることとは同値である。
すなわち、
- ユニタリ行列により対角化可能であれば正規行列
- 正規行列であればユニタリ行列により対角化可能
の両方が証明可能。
復習†
随伴行列 は のことで、 転置行列の複素共役。これは転置行列の複素数版。
同様に、ユニタリ行列 は直交行列 の複素数版。
ユニタリ行列により対角化可能であれば正規行列†
をユニタリ行列 ( )、 を対角行列として( は の大文字)、
&math( U^\dagger A U=\Lambda= \begin{pmatrix} \lambda_1\\ &\lambda_2\\ &&\ddots\\ &&&\lambda_n \end{pmatrix});
が成り立つとき、
より、
&math( A^\dagger=(U\Lambda U^\dagger)^\dagger=U\Lambda^\dagger U^\dagger=U\overline{\Lambda}U^\dagger );
したがって、
ここで、
&math( \Lambda \overline{\Lambda}=\overline{\Lambda}\Lambda= \begin{pmatrix} |\lambda_1|^2\\ &|\lambda_2|^2\\ &&\ddots\\ &&&|\lambda_n|^2 \end{pmatrix} );
であるから、 が証明された。
正規行列であればユニタリ行列により対角化可能†
を 次元行列として、 に対する数学的帰納法を用いる。
(1) のとき
は始めから対角行列なので、 と取れば は対角行列である。
(2) 次元で成り立つとすれば 次元でも成り立つことを証明する。
を満たす を、 任意の に対して最低限1組は見つけられる。
この に対して、 が正規直交系となるように を定めれば、
[Math Conversion Error]
はユニタリ行列となる。
(ユニタリ行列の列ベクトルは正規直交系であった)
&math( U^\dagger AU&=U^\dagger \Bigg( A\bm x_1\ A\bm x_2\ \dots\ A\bm x_n \Bigg)\\ &= \begin{pmatrix} \bm x_1^\dagger\\\bm x_2^\dagger\\\vdots\\\ \ \bm x_n^\dagger\ \ \end{pmatrix} \Bigg( \lambda\bm x_1\ A\bm x_2\ \dots\ A\bm x_n \Bigg)=\begin{pmatrix} \ \lambda & \bm b^\dagger \\ \ \bm 0 & \ \rule{20pt}{0pt}\rule[-25pt]{0pt}{50pt}A'\rule[-25pt]{0pt}{50pt}\rule{20pt}{0pt} \end{pmatrix} );
ここで、
- は 次元の横ベクトル
- は 次元の正方ベクトル
で、中身は や によって決まる。
ここまでは任意の行列
に対して成り立つ話。
ここで
が正規行列であるという条件を使う。
&math( (U^\dagger AU)^\dagger=U^\dagger A^\dagger U = \begin{pmatrix} \ \overline \lambda & {}^T\bm 0 \\ \ \bm b & \ \rule{20pt}{0pt}\rule[-25pt]{0pt}{50pt}{A'}^\dagger\rule[-25pt]{0pt}{50pt}\rule{20pt}{0pt} \end{pmatrix} );
であるから、
&math( (U^\dagger A U)(U^\dagger A^\dagger U)=U^\dagger AA^\dagger U=\begin{pmatrix} \ \lambda & \bm b^\dagger \\ \ \bm 0 & \ \rule{20pt}{0pt}\rule[-25pt]{0pt}{50pt}{A'}\rule[-25pt]{0pt}{50pt}\rule{20pt}{0pt} \end{pmatrix}\begin{pmatrix} \ \overline \lambda & {}^T\bm 0 \\ \ \bm b & \ \rule{20pt}{0pt}\rule[-25pt]{0pt}{50pt}{A'}^\dagger\rule[-25pt]{0pt}{50pt}\rule{20pt}{0pt} \end{pmatrix} );
&math( U^\dagger AA^\dagger U=\begin{pmatrix} \ |\lambda|^2+\|\bm b\|^2 & \bm b^\dagger {A'}^\dagger \\ \ A'\bm b & \ \rule{20pt}{0pt}\rule[-25pt]{0pt}{50pt}{A'}{A'}^\dagger\rule[-25pt]{0pt}{50pt}\rule{20pt}{0pt} \end{pmatrix} );
同様に、
&math( U^\dagger A^\dagger A U=\begin{pmatrix} \ |\lambda|^2 & \lambda\bm b^\dagger \\ \ \lambda\bm b & \ \rule{20pt}{0pt}\rule[-25pt]{0pt}{50pt}{A'}^\dagger{A'}\rule[-25pt]{0pt}{50pt}\rule{20pt}{0pt} \end{pmatrix} );
これらが等しくなるから、
すなわち、
&math( U^\dagger AU=\begin{pmatrix} \ \lambda & {}^T\bm 0 \\ \ \bm 0 & \rule{20pt}{0pt}\rule[-25pt]{0pt}{50pt}A'\rule[-25pt]{0pt}{50pt}\rule{20pt}{0pt} \end{pmatrix} );
ここで、 は 次元の正規行列であるから、 ある 次元ユニタリ行列 を用いて、
のように対角化可能である。
この を用いて、 次元正方行列
&math(U''=\begin{pmatrix} 1&{}^T\bm 0\\ \bm 0&\rule{10pt}{0pt}\rule[-15pt]{0pt}{30pt}U'\rule[-15pt]{0pt}{30pt}\rule{10pt}{0pt} \end{pmatrix} );
を作るとこれはユニタリ行列で、
&math( {U}^\dagger (U^\dagger AU)U=\begin{pmatrix} \ \lambda & {}^T\bm 0 \\ \ \bm 0 & \rule{20pt}{0pt}\rule[-25pt]{0pt}{50pt}{U'}^\dagger A'U'\rule[-25pt]{0pt}{50pt}\rule{20pt}{0pt} \end{pmatrix} =\begin{pmatrix} \ \lambda & {}^T\bm 0 \\ \ \bm 0 & \rule{20pt}{0pt}\rule[-25pt]{0pt}{50pt}\Lambda'\rule[-25pt]{0pt}{50pt}\rule{20pt}{0pt} \end{pmatrix} );
右辺は対角行列になっており、 左辺は と置けば と書け、 ユニタリ行列は積について閉じていることから、 もユニタリ行列である。
すなわち、 次元正規行列 をユニタリ行列 を用いて対角化できることが証明された。