スピントロニクス理論の基礎/8-4 の履歴(No.6)
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8-4 物理量の経路表示†
統計平均の重み成分を虚数時間経路上の積分に置き換える†
(8.40)
ハミルトニアン が時間に依らないとき (8.7B) より
したがって、形式的に
&math( U(-i\beta\textcolor{red}{/\hbar}+t_0,t_0) =e^{\frac{-i}{\hbar} H\cdot(-i\beta/\hbar)} =e^{-\beta H}\equiv U_{C_\beta});
と書ける。
このとき、 の中には という、 虚数軸に平行な積分経路が表れる。この経路上で が定数となるように、 の定義域を複素平面に拡大して、 は の実数成分にのみ依存し、虚数軸に沿った方向には の値が変化しない物としておく。
このように定義した なる変換はユニタリ演算子ではなくなっていることに注意が必要である。 ユニタリ変換は状態のノルム(大きさ)を変えないが、ここに現れる因数は 熱平衡における確率の重み付け(大きさの調整)であるから、 本質的にユニタリ変換にはなりえない。
(8.41)
逆時間発展演算子†
(8.42)
は
のとき、
は
のときのみ定義される。
以下、 の時、
を利用する。
これらの関係が成り立つことは、 および の物理的意味からも、 また (8.7A), (8.8A) あたりの表現からも、直感的に理解できる。
無限大の時刻まで積分経路を拡張する†
(8.43)
時刻パラメータτの導入†
(8.44), (8.45)
&math( \begin{array}{llll} \tau\in C_\rightarrow & (t_0\le\tau\le t_\infty), & \tau=t & O(\tau) = O(t)_{t=\tau}\\ \tau\in C_\leftarrow & (t_\infty\le\tau\le \textcolor{red}{2t_\infty-t_0}), & \tau=\textcolor{red}{2t_\infty-t} & O(\tau) = O(t)_{t=2t_\infty-\tau} \\ \tau\in C_\beta & (0\le\tau_I\le\beta) & \tau=2t_\infty-t_0-i\tau_I & \end{array} );
(8.46)
(8.47)
&math(&\overline U(t',t)=U^\dagger(t,t')\\ &=\overline Te^{\frac{i}{\hbar}\int_{t'}^t dt_1H(t_1)}\\ &=\overline Te^{-\frac{i}{\hbar}\int_t^{t'} dt_1H(t_1)}\\ &\equiv T_C\,e^{\left.-\frac{i}{\hbar}\int_\tau^{\tau'} d\tau_1H(\tau_1)\right|_{C_\leftarrow}} );
2行目から3行目は積分の方向が逆転したことに伴って符号が反転した。
統計平均を含めたτによる経路積分表示†
(8.48)
&math(&\overline O(t)=(8.43)\\ &=\frac{1}{Z_0}\trace[ T_C\,e^{-\frac{i}{\textcolor{red}{\hbar}}\int_Cd\tau'H(\tau')}O(\tau) ]\\);
括弧の中に統計の重み付けを入れてしまったため、 ではなく になっている。
ここで、 の部分は (8.7A) に見たように異なる時刻のハミルトニアンの指数を取ったものを順に掛け合わせた物であるが、 この式に現れる はそれらハミルトニアンの指数に加えて を含めて 時刻順に並べる操作を表している。
(8.49)〜(8.55) はほぼ定義の羅列なので飛ばす。