復習:行列とその演算 の履歴(No.6)
更新内容†
- ベクトルの行と列
- 転置行列
- 行列の和と積
- 2次正方行列の逆行列
- 小行列式を用いた演算
- 線形独立、従属
演習†
(1) は 行列であり、 ただし と表せる。 を通常の行列表示で表せ。
(2) 上記 の転置行列 を答えよ。
(3) 次正方行列 に対して、 、 とする。 を (添え字は任意)で表せ。 また、 を証明せよ。
(4) となるような2次の正方行列 の例を1組挙げよ。
(5) と に対して、 を確かめよ。ただし とする。
(6) 行列の積は次のように小行列へ分割しても計算可能なことを確かめよ。
&math(
\left(\begin{array}{cc|c}
a&b&c\\
d&e&f\\\hline
g&h&i\\
\end{array}\right)
\left(\begin{array}{cc}
j&k\\
l&m\\\hline
n&o\\
\end{array}
\right)
=\begin{pmatrix}
A&B\\
C&D
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
E\\F
\end{pmatrix}
=\begin{pmatrix}
AE+BF\\
CE+DF
\end{pmatrix}
);
ただし、例えば などとする。
(7) 次のベクトル が線形独立であることを確かめよ。
さらに、 が線形独立となり、 が線形従属となるように、 ベクトル を適当に定めよ。
解答例と解説†
(1)
行列は、 行 列 の行列のことであり、 は 行 列成分が であることを表す。常に、「行→列」 の順に記述すると覚えればよい。Matrix を「行列」と訳した人に感謝せよ。
行列は横書き文化圏から来た概念なので、「行」は上から下へ数える。「列」は左から右に数える。
したがって、
&math( A&=\begin{pmatrix} a_{11}&a_{12}&a_{13}\\ a_{21}&a_{22}&a_{23}\\ \end{pmatrix} =\begin{pmatrix} (3\cdot 1-2\cdot 1)&(3\cdot 1-2\cdot 2)&(3\cdot 1-2 \cdot 3)\\ (3\cdot 2-2\cdot 1)&(3\cdot 2-2\cdot 2)&(3\cdot 2-2 \cdot 3)\\ \end{pmatrix}\\ &=\begin{pmatrix} 1&-1&-3\\ 4&2&0 \end{pmatrix}\\ );
(2)
行列の転置行列は 行列で、 に対して であるから、
&math({}^t\!A=\begin{pmatrix} 1&4\\ -1&2\\ -3&0 \end{pmatrix}\\ );
(3)
であれば、 となる。
とすれば、 であるから、
右辺は の 成分に等しい。
すなわち、
(4)
&math(A=\begin{pmatrix} 1&0\\0&0 \end{pmatrix}, B=\begin{pmatrix} 0&1\\0&0 \end{pmatrix}); とすれば、 &math( AB=\begin{pmatrix} 0&1\\0&0 \end{pmatrix} \ne BA=\begin{pmatrix} 0&0\\0&0 \end{pmatrix} );
(5)
&math( AA^{-1}=\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix}\,\frac{1}{ad-bc}\begin{pmatrix}d&-b\\-c&a\end{pmatrix} =\frac{1}{ad-bc}\begin{pmatrix}ad-bc&\cancel{-ab+ab}\\\cancel{cd-cd}&-bc+ad\end{pmatrix} =\begin{pmatrix}1&0\\0&1\end{pmatrix} );
&math( A^{-1}A=\frac{1}{ad-bc}\begin{pmatrix}d&-b\\-c&a\end{pmatrix}\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix} =\frac{1}{ad-bc}\begin{pmatrix}ad-bc&\cancel{bd-bd}\\\cancel{ac-ac}&-bc+ad\end{pmatrix} =\begin{pmatrix}1&0\\0&1\end{pmatrix} );
(6)
&math( \left(\begin{array}{ccc} a&b&c\\ d&e&f\\ g&h&i\\ \end{array}\right) \left(\begin{array}{cc} j&k\\ l&m\\ n&o\\ \end{array} \right)= \left(\begin{array}{cc} aj+bl+cn&ak+bm+co\\ dj+el+fn&dk+em+fo\\ gj+hl+in&gk+hm+io\\ \end{array}\right) );
一方、
&math( \begin{pmatrix} AE+BF\\ CE+DF \end{pmatrix}= \begin{pmatrix} \begin{pmatrix} aj+bl&ak+bm\\ dj+el&dk+em \end{pmatrix}+\begin{pmatrix} cn&co\\ fn&fo \end{pmatrix}\\ \begin{pmatrix} gj+hl&gk+hm \end{pmatrix}+ \begin{pmatrix} in&io \end{pmatrix} \end{pmatrix} =\begin{pmatrix} \begin{pmatrix} aj+bl+cn&ak+bm+co\\ dj+el+fn&dk+em+fo \end{pmatrix}\\ \begin{pmatrix} gj+hl+in&gk+hm+io \end{pmatrix} \end{pmatrix} );
(7)
与えられたベクトルの線形結合がゼロと仮定して、すべての係数がゼロとなることを導けるとき、それらのベクトルは線形独立である。逆に、ゼロでない係数に対して線形結合がゼロとなるなら、それらのベクトルは線形従属である。
とすると、
&math(\begin{cases} s+3t=0\\ 2s-t=0\\ 3s+3t=0 \end{cases});
となり、第1式と第2式を引き算して 、これを第1式に代入して を得る。
すなわち、 から が導かれるから、 は線形独立である。
と置き、 を仮定すれば、
&math(\begin{cases} s+3t=0\\ 2s-t+u=0\\ 3s+3t=0 \end{cases});
が得られ、第1式と第3式を引き算して 、これを第1式に代入して 、 第2式に代入して が得られるから、 は線形独立である。
と置けば、 となるから は線形従属である。