フォック方程式の導出 の履歴(No.6)
更新フォック方程式の導出†
ハートレー・フォック法の基本方程式となるフォック方程式を導出する。
変分法を使うので、まだ学んでいなければ次のことだけ理解しておくこと。
- 変分原理
- 近似パラメータを含む波動方程式を作ったとする
- 近似パラメータを調節して真の波動方程式に最も近づけたい
- それには波動方程式に対するエネルギー期待値を最小化するようにパラメータを調節すれば良い
目次†
時間に依らないシュレーディンガー方程式†
複数の原子核と電子からなる系の運動について、 原子核を固定して、その周りにおける電子の運動のみを考えることにする → ボルン–オッペンハイマー近似
&math( \hat H\Phi =\varepsilon \Phi );
厳密に言えば電子の質量は換算質量になるが、原子核系が十分重い場合にはほぼ電子の質量と等しい。
このときのハミルトニアン を運動エネルギー 、一電子ポテンシャル 、二電子ポテンシャル の和として表す。
&math( H&=T+V_1+V_2\\ &=\sum_i T_i + \sum_i V_i + \sum_i \sum_{j>i} V_{ij}\\ );*1 となっているのは、同じ2つの電子に対してポテンシャルを重複して計算することのないようにするため
&math( T_i&=-\frac{\hbar^2}{2m}\nabla_{i}^2\\ V_i&=-\frac{e^2}{4\pi\epsilon_0}\sum_A\frac{Z_A}{|\bm{r}_i-\bm{R}_A|}\\ V_{ij}&=-\frac{e^2}{4\pi\epsilon_0}\frac{1}{|\bm{r}_i-\bm{r}_j|}\\ );
原子単位系 を用いると係数が大幅に単純化される。
&math( T_i&=-\frac{1}{2}\nabla_{i}^2\\ V_i&=-\sum_A\frac{Z_A}{|\bm{r}_i-\bm{R}_A|}\\ V_{ij}&=-\frac{1}{|\bm{r}_i-\bm{r}_j|}\\ );
ハートレー・フォック波動方程式†
正規直交系をなす1電子関数系 を用いて (以下、 や という指標は位置座標 とスピン座標 とを合わせた座標とする)
&math( \int dx\,\phi_i(x)\phi_j(x)=\delta_{ij} );
多電子波動関数を から作られる単一のスレーター行列式で表すものとする。
&math( \Phi &=\frac{1}{\sqrt{n!}}\mathrm{det} (\phi_1, \phi_2, \cdots, \phi_n)\\ &=\frac{1}{\sqrt{n!}}\sum_{(p_1\ p_2\ \cdots\ p_n)}\sigma(p_1\ p_2\ \cdots\ p_n)\phi_{p_1}(x_1) \phi_{p_2}(x_2) \cdots\phi_{p_n}(x_n)\\ );
以下で見るとおり、この形に置くこと自体が平均場近似(電子相関の無視)を仮定していることになっている。
エネルギーの期待値†
変分法でスレーター行列式を最適化するため、まずはエネルギーの表式を求めておく。 (変分原理によればエネルギーを最小化する関数が最良の関数である)
&math( E=\langle H\rangle=\int d^nx\ \Phi^* H \Phi );
以下、各項毎に見ていく。
運動エネルギー†
式変形に対するコメントが脚注にある(Web ブラウザで読んでいる場合には *2 などにマウスカーソルをかざすと脚注が表示される)ので参考にせよ。
&math( \langle T_i\rangle &=\int d^nx\ \Phi^* K_i \Phi\\ );
&math( \phantom{\langle T_i\rangle} &=-\frac{1}{2n!}\sum_p\sum_q\sigma_p\sigma_q \int d^nx\, \phi_{q_1}^*(x_1) \phi_{q_2}^*(x_2) \cdots\phi_{q_n}^*(x_n) \nabla_i^2 \phi_{p_1}(x_1) \phi_{p_2}(x_2) \cdots\phi_{p_n}(x_n)\\ ); *2 は2つの異なる(同じ場合も含む) の置換を表す。 はそれらの符号。
&math( \phantom{\langle T_i\rangle} &=-\frac{1}{2n!}\sum_p\sum_q\sigma_p\sigma_q \Big(\prod_{j\ne i}\delta_{p_j,q_j}\Big) \int dx_i\ \phi_{q_i}^*(x_i) \nabla_i^2 \phi_{p_i}(x_i)\\ ); *3 が作用するのは のみなので、 では が現れる
&math( \phantom{\langle T_i\rangle} &=-\frac{1}{2n!}\sum_p \sigma_p^2 \int dx\ \phi_{p_i}^*(x) \nabla^2 \phi_{p_i}(x)\\ ); *4 に対して である項以外は消える。このとき も成り立つので、ゼロにならずに残った項では置換 は に等しい。積分に使う変数を に書き直した。
&math( \phantom{\langle T_i\rangle} &=-\frac{1}{2n}\sum_j \int dx\ \phi_j^*(x) \nabla^2 \phi_j(x)\\ ); ((置換 の取り方は 通りあるが、そのうち となる 通りのものごとにまとめた。符号は二乗されたため消えた。))
スレーター行列式は粒子の区別の付かない波動関数であるのだから 当然と言えば当然ではあるが、結果は に依存しない形になった。
したがって、
&math( \langle T\rangle&=\sum_i \langle T_i\rangle\\ &=n \langle T_i\rangle\\ &=-\frac{1}{2}\sum_j \int dx\ \phi_j^*(x) \nabla^2 \phi_j(x)\\ );
この形は電子が に詰まっている、という描像を端的に表している。
1電子エネルギー†
計算は上とほぼ同様の変形により、
&math( \langle V_i\rangle &=\int d^nx\ \Phi^* V_i \Phi\\ &=-\frac{1}{n!}\sum_p\sum_q\sigma_p\sigma_q \int d^nx\, \phi_{q_1}^*(x_1) \phi_{q_2}^*(x_2) \cdots\phi_{q_n}^*(x_n) \sum_A\frac{Z_A}{|\bm{r}_i-\bm{R}_A|} \phi_{p_1}(x_1) \phi_{p_2}(x_2) \cdots\phi_{p_n}(x_n)\\ &=-\frac{1}{2n!}\sum_p\sum_q\sigma_p\sigma_q \Big(\prod_{j\ne i}\delta_{p_j,q_j}\Big) \int dx_i\ \phi_{q_i}^*(x_i) \sum_A\frac{Z_A}{|\bm{r}_i-\bm{R}_A|} \phi_{p_i}(x_i)\\ &=-\frac{1}{2n!}\sum_p \sigma_p^2 \int dx_i\ \phi_{p_i}^*(x_i) \sum_A\frac{Z_A}{|\bm{r}_i-\bm{R}_A|} \phi_{p_i}(x_i)\\ &=-\frac{1}{2n}\sum_j \int dx\ \phi_j^*(x) \sum_A\frac{Z_A}{|\bm{r}-\bm{R}_A|} \phi_j(x)\\ );
これも に依存しない形になった。
&math( \langle V_1\rangle&=\sum_i \langle V_i\rangle\\ &=n \langle V_i\rangle\\ &=-\frac{1}{2}\sum_j \int dx\ \phi_j^*(x) \sum_A\frac{Z_A}{|\bm{r}-\bm{R}_A|} \phi_j(x)\\ &=-\frac{1}{2}\sum_j \int dx\ \sum_A\frac{Z_A}{|\bm{r}-\bm{R}_A|} |\phi_j(x)|^2\\ );
この形は電子が に詰まっている、という描像を端的に表している。
2電子エネルギー†
式変形に対するコメントが脚注にある(Web ブラウザで読んでいる場合には *2 などにマウスカーソルをかざすと脚注が表示される)ので参考にせよ。
&math( \langle V_{ij}\rangle &=\int d^nx\ \Phi^* V_{ij} \Phi\\ &=-\frac{1}{n!}\sum_p\sum_q\sigma_p\sigma_q \int d^nx\, \phi_{q_1}^*(x_1) \phi_{q_2}^*(x_2) \cdots\phi_{q_n}^*(x_n) \frac{1}{|\bm{r}_i-\bm{r}_j|} \phi_{p_1}(x_1) \phi_{p_2}(x_2) \cdots\phi_{p_n}(x_n)\\ );
&math( \phantom{\langle V_{ij}\rangle} &=-\frac{1}{n!}\sum_p\sum_q\sigma_p\sigma_q \Big(\prod_{k\ne i,j}\delta_{p_k,q_k}\Big) \iint dx_idx_j\ \phi_{q_i}^*(x_i)\phi_{q_j}^*(x_j) \frac{1}{|\bm{r}_i-\bm{r}_j|} \phi_{p_i}(x_i)\phi_{p_j}(x_j)\\ ); *5今度は が条件になる
&math( \phantom{\langle V_{ij}\rangle} &=-\frac{1}{n!}\sum_p\sigma_p \iint dx_idx_j\ \big\{\sigma_p\phi_{p_i}^*(x_i)\phi_{p_j}^*(x_j)-\sigma_p\phi_{p_j}^*(x_i)\phi_{p_i}^*(x_j)\big\} \frac{1}{|\bm{r}_i-\bm{r}_j|} \phi_{p_i}(x_i)\phi_{p_j}(x_j)\\ ); *6 は と等しいか、 の と を交換したものかのどちらかである。後者に対しては が成り立つ
&math( \phantom{\langle V_{ij}\rangle} &=-\frac{1}{n(n-1)}\sum_k\sum_{l\ne k} \iint dxdx'\ \big\{\phi_k^*(x)\phi_l^*(x')-\phi_l^*(x)\phi_k^*(x')\big\} \frac{1}{|\bm{r}-\bm{r}'|} \phi_k(x)\phi_l(x')\\ ); (( となる 個の置換ごとにまとめた。))
&math( \phantom{\langle V_{ij}\rangle} &=-\frac{1}{n(n-1)}\sum_k\sum_{l} \iint dxdx'\ \big\{\phi_k^*(x)\phi_l^*(x')-\phi_l^*(x)\phi_k^*(x')\big\} \frac{1}{|\bm{r}-\bm{r}'|} \phi_k(x)\phi_l(x')\\ );*7 の項は の部分がゼロになるので、式の上では入れる形に書いておいて構わない
これも に依存しない形になった。
&math( \langle V_2\rangle &=\sum_i\sum_{j>i} \langle V_{ij}\rangle\\ &=\sum_i (n-i) \langle V_{ij}\rangle\\ &= \Big\{n^2-\frac{n(n+1)}{2}\Big\} \langle V_{ij}\rangle\\ &= \frac{n(n-1)}{2} \langle V_{ij}\rangle\\ &=-\frac{1}{2}\sum_k\sum_{l} \iint dxdx'\ \big\{\phi_k^*(x)\phi_l^*(x')-\phi_l^*(x)\phi_k^*(x')\big\} \frac{1}{|\bm{r}-\bm{r}'|} \phi_k(x)\phi_l(x')\\ &=\langle V_{2a}\rangle+\langle V_{2b}\rangle\\ );
ここで、クーロン積分 は古典的に予想される次の形、
&math( \langle V_{2a}\rangle &=-\frac{1}{2}\sum_k\sum_{l} \iint dxdx'\ \phi_k^*(x)\phi_l^*(x') \frac{1}{|\bm{r}-\bm{r}'|} \phi_k(x)\phi_l(x')\\ &=-\frac{1}{2}\sum_k\sum_{l} \iint dxdx'\ \frac{1}{|\bm{r}-\bm{r}'|} |\phi_k(x)|^2|\phi_l(x')|^2\\ );
交換積分 は古典的には理解しにくい形。
&math( \langle V_{2b}\rangle &=-\frac{1}{2}\sum_k\sum_{l} \iint dxdx'\ \phi_l^*(x)\phi_k^*(x') \frac{1}{|\bm{r}-\bm{r}'|} \phi_k(x)\phi_l(x')\\ );
エネルギーを最小化する波動関数を求める†
エネルギーの期待値は次のようになった。
&math( E=&-\frac{1}{2}\sum_i \int dx\ \phi_i^*(x) \nabla^2 \phi_i(x)\\ &-\frac{1}{2}\sum_i \int dx\ \phi_i^*(x) \sum_A\frac{Z_A}{|\bm{r}-\bm{R}_A|} \phi_i(x)\\ &-\frac{1}{2}\sum_i\sum_j \iint dxdx'\ \big\{\phi_i^*(x)\phi_j^*(x')-\phi_j^*(x)\phi_i^*(x')\big\} \frac{1}{|\bm{r}-\bm{r}'|} \phi_i(x)\phi_j(x') );
このエネルギーを最小化するような を求めることにより、 1つのスレーター行列式で表現可能な波動関数の最良解を探そう。
ただし、 が規格直交化されていることを前提としているので、
&math( \int dx\,\phi_i^*(x)\phi_j(x)=\delta_{ij} );
の条件の下で、 を変化させて を最小化することになる。
そこで ラグランジュの未定係数法 を使う。
条件式が 個あるので、 個の未定係数を として、
&math( L=E-\sum_i\sum_j2\varepsilon_{ij} \Big[\int dx\,\phi_i^*(x)\phi_j(x)-\delta_{ij}\Big] );
として、この を で微分しゼロと置く。
で微分した結果をゼロと置けば正規直交条件が出てくるので、これは として正規直交系を用いることのみで成立する。
一方、 を変化させ、 とした時の変化を として、 となる条件を探そう。
ある演算子 がエルミートであるとき、
&math( \langle x|H|y\rangle=\langle x|Hy\rangle=\langle Hy|x\rangle^*=\langle y|H^\dagger|x\rangle^*=\langle y|H|x\rangle^* );
すなわち、
&math( \int dx f^*(x)Hg(x)+\int dx g^*(x)Hf(x)=\int dx f^*(x)Hg(x)+\Big(\int dx f^*(x)Hg(x)\Big)^*=2\,\mathrm{Real}\int dx f^*(x)Hg(x) );
のようにまとめられる。
そこで各演算子がエルミートであることを使うと、
&math( \delta L= &-\frac{1}{2}\sum_i \int dx\ \big\{\delta\phi_i^*(x) \nabla^2 \phi_i(x)+\phi_i^*(x) \nabla^2 \delta\phi_i(x)\big\}\\ &-\frac{1}{2}\sum_i \int dx\ \big\{\delta\phi_i^*(x) \phi_i(x)+\phi_i^*(x) \delta\phi_i(x)\big\}\sum_A\frac{Z_A}{|\bm{r}-\bm{R}_A|}\\ &-\frac{1}{2}\sum_i\sum_j \iint dxdx'\ \big\{\delta\phi_i^*(x)\phi_j^*(x')-\phi_j^*(x)\delta\phi_i^*(x')\big\} \frac{1}{|\bm{r}-\bm{r}'|} \phi_i(x)\phi_j(x')\\ &-\frac{1}{2}\sum_i\sum_j \iint dxdx'\ \big\{\phi_i^*(x)\phi_j^*(x')-\phi_j^*(x)\phi_i^*(x')\big\} \frac{1}{|\bm{r}-\bm{r}'|} \delta\phi_i(x)\phi_j(x')\\ &-\sum_i\sum_j2\varepsilon_{ij}\int dx\delta\phi_i^*(x)\phi_j(x)\\ );
&math(
\phantom{\delta L}
=&-\mathrm{Real}\sum_i \int dx\ \delta\phi_i^*(x) \nabla^2 \phi_i(x)\\
&-\mathrm{Real}\sum_i \int dx\ \delta\phi_i^*(x) \sum_A\frac{Z_A}{|\bm{r}-\bm{R}_A|}\phi_i(x)\\
&-\mathrm{Real}\sum_i\sum_j \iint dxdx'\ \delta\phi_i^*(x)\phi_j^*(x') \frac{1}{|\bm{r}-\bm{r}'|} \phi_i(x)\phi_j(x')\\
);
&math(
\phantom{\delta L=}
&-\frac{1}{2}\sum_i\sum_j \iint dx'dx\ \big\{-\phi_j^*(x')\delta\phi_i^*(x)\big\} \frac{1}{|\bm{r}'-\bm{r}|} \phi_i(x')\phi_j(x)\\
); *8
と
は単なる名前なので、変数名を入れ替えた
&math(
\phantom{\delta L=}
&-\frac{1}{2}\sum_i\sum_j \iint dxdx'\ \big\{-\phi_j^*(x)\phi_i^*(x')\big\} \frac{1}{|\bm{r}-\bm{r}'|} \delta\phi_i(x)\phi_j(x')\\
);
&math(
\phantom{\delta L=}
&-\sum_i\sum_j2\varepsilon_{ij}\int dx\delta\phi_i^*(x)\phi_j(x)\\
);
&math( \phantom{\delta L} =&\,\mathrm{Real}\sum_i \int dx\ \delta\phi_i^*(x)\Big[ -\nabla^2 \phi_i(x)-\sum_A\frac{Z_A}{|\bm{r}-\bm{R}_A|}\phi_i(x)\\ &\hspace{11em}+\sum_j\int dx'\ \frac{1}{|\bm{r}-\bm{r}'|} \big\{-\phi_j^*(x') \phi_i(x)\phi_j(x')+\phi_j^*(x') \phi_i(x')\phi_j(x)\big\}\\ );
&math( \phantom{\delta L=} &\hspace{11em}-\sum_j2\varepsilon_{ij}\phi_j(x)\ \Big]\\ );*9最後の項は実数とは限らないので本当は の中に入れてはいけない???
これが任意の に対してゼロとなるには の部分がゼロでなければならない。
&math(
- \frac{1}{2}\nabla^2 \phi_i(x)-\frac{1}{2}\sum_A\frac{Z_A}{|\bm{r}-\bm{R}_A|}\phi_i(x)+ \frac{1}{2}\sum_j\int dx'\ \frac{1}{|\bm{r}-\bm{r}'|} \big\{-\phi_j^*(x') \phi_i(x)\phi_j(x')+\phi_j^*(x') \phi_i(x')\phi_j(x)\big\}=\sum_j \varepsilon_{ij}\phi_j(x) );
対角化†
右辺がややこしいので簡単にする。
行列 を対角化するユニタリ行列を とする。すなわち、 が対角行列である。 に対して
&math( \phi_i'=\sum_j u_{ij} \phi_j );
として を定義すれば、 である一方、上の条件式から の非対角項が消えて、
&math(
- \frac{1}{2}\nabla^2 \phi'_i(x)-\frac{1}{2}\sum_A\frac{Z_A}{|\bm{r}-\bm{R}_A|}\phi'_i(x)+ \frac{1}{2}\sum_j\int dx'\ \frac{1}{|\bm{r}-\bm{r}'|} \big\{-{\phi'_j}^*(x') \phi'_i(x)\phi'_j(x')+{\phi'_j}^*(x') \phi'_i(x')\phi'_j(x)\big\}=\varepsilon_{ii}\phi'_j(x) );
となる。
フォック方程式†
上式は によらないため、 を と書きなおし、 を としたのがフォック方程式。
&math(
- \frac{1}{2}\nabla^2 \phi(x)-\frac{1}{2}\sum_A\frac{Z_A}{|\bm{r}-\bm{R}_A|}\phi(x)
- \frac{1}{2}\sum_j\int dx'\ \frac{|\phi_j(x')|^2}{|\bm{r}-\bm{r}'|} \phi(x)
- \frac{1}{2}\sum_j\int dx'\ \frac{\phi_j^*(x') \phi(x')}{|\bm{r}-\bm{r}'|} \phi_j(x)=\varepsilon\phi(x) );
左辺に が出てきてしまっているのでそのままでは解けないが、仮に を決めてやると左辺は にエルミートな線形演算子がかかった形になるので、方程式全体を固有方程式と見なせ、固有値 に対応する固有関数 が無数に見つかる。 の小さい方から 個取ると元の より良い近似が得られることが多く、これを繰り返すことでハートリーフォック近似の下での最良解へ近づいていく。
コメント・質問†
*1 となっているのは、同じ2つの電子に対してポテンシャルを重複して計算することのないようにするため
*2 は2つの異なる(同じ場合も含む) の置換を表す。 はそれらの符号。
*3 が作用するのは のみなので、 では が現れる
*4 に対して である項以外は消える。このとき も成り立つので、ゼロにならずに残った項では置換 は に等しい。積分に使う変数を に書き直した。
*5 今度は が条件になる
*6 は と等しいか、 の と を交換したものかのどちらかである。後者に対しては が成り立つ
*7 の項は の部分がゼロになるので、式の上では入れる形に書いておいて構わない
*8 と は単なる名前なので、変数名を入れ替えた
*9 最後の項は実数とは限らないので本当は の中に入れてはいけない???