スピントロニクス理論の基礎/8-9 の履歴(No.7)
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8-9 不純物による電子散乱†
不純物による電子散乱が次のような性質を持つとする。
- 散乱により運動量が変化する
- 弾性的つまりエネルギーを変化させない
- 空間上の同じ点のみで作用するδ関数型である
これを表すポテンシャルは、
(8.106)
(8.106A)
として、位置 に体積 高さ のポテンシャルピークを作る不純物が存在して、 その場所の電子密度に比例するエネルギーを与えるものとする。
は不純物の数であり、個々の不純物は のラベルで区別する。 (教科書では impurity の頭文字は立体の で、 ラベル付けは斜体の で書かれているのだけれど、 紛らわしいので にした・・・ その結果、波数と紛らわしいという話も。)
ポテンシャルの値からエネルギーの平均値をあらかじめ引いておくことで そのフーリエ成分の の成分をゼロにしておくと、 後に便利である。(この性質は後で多用される)
(8.107)
に注意せよ。
(8.24) あたりで行ったのと同様にして交換子を計算できる。
(8.108)
この に対する Green 関数 は (8.105) より、
(8.109)
&math( &g(\bm r,\tau,\bm r',\tau')=g_0(\bm r,\tau,\bm r',\tau')\\ &+\int_Cd\tau_1\int d^3r_1g_0(\bm r,\tau,\bm r_1,\tau_1)\times \frac{i}{\textcolor{red}{\hbar}}\big\langle T_C\,e^{-\frac{i}{\hbar}\int_Cd\tauH(\tau)} [V_i(\tau_1),c(\bm r_1,\tau_1)]c^\dagger(\bm r',\tau')\big\rangle\\ &=g_0(\bm r,\tau,\bm r',\tau')\\ &+\int_Cd\tau_1\int d^3r_1g_0(\bm r,\tau,\bm r_1,\tau_1)\times v_i(\tau_1) \frac{1}{\textcolor{red}{\hbar}} \left[-i\big\langle T_C\,e^{-\frac{i}{\hbar}\int_Cd\tauH(\tau)} c(\bm r_1,\tau_1)c^\dagger(\bm r',\tau')\big\rangle\right] \\ &=g_0(\bm r,\tau,\bm r',\tau')
- \frac{1}{\textcolor{red}{\hbar}}\int_Cd\tau_1\int d^3r_1g_0(\bm r,\tau,\bm r_1,\tau_1)v_i(\bm r_1)g(\bm r_1,\tau_1,\bm r',\tau') \\ &=g_0(\bm r,\tau,\bm r',\tau')
- \frac{1}{\textcolor{red}{\hbar}}\int_{C_\rightleftarrows} d\tau_1\int d^3r_1g_0(\bm r,\tau,\bm r_1,\tau_1)v_i(\bm r_1)g(\bm r_1,\tau_1,\bm r',\tau') );
最後の行は (8.105) で指摘したとおり、 が 上にある場合を考える必要がないという点を反映している。
次元について:
- Green 関数は元々 すなわち電子数密度なので (1/体積) の次元を持つ。
- したがって、 で無次元
- は (エネルギー) の次元で、 は (エネルギーの逆数) の次元
- したがって、 で無次元
- それらを除くと左辺・右辺共に Green 関数の次元となり、正しい
- すなわち が必要なのは間違いない
(8.66) および (8.105) より、
(8.110)
&math( &g^<(\bm r,t,\bm r',t')=g(\bm r,\tau \in C_\rightarrow,\bm r',\tau'\in C_\leftarrow)\\ &= g_0(\bm r,\tau \in C_\rightarrow,\bm r',\tau'\in C_\leftarrow)\\ &\hspace{4mm}+\frac{1}{\textcolor{red}{\hbar}}\int_{C_\rightarrow}d\tau_1\int d^3r_1 g_0(\bm r,\tau\in C_\rightarrow,\bm r_1,\tau_1\in C_\rightarrow)v_i(\bm r_1) g(\bm r_1,\tau_1\in C_\rightarrow,\bm r',\tau'\in C_\leftarrow)\\ &\hspace{4mm}+\frac{1}{\textcolor{red}{\hbar}}\int_{C_\leftarrow}d\tau_1\int d^3r_1 g_0(\bm r,\tau\in C_\rightarrow,\bm r_1,\tau_1\in C_\leftarrow)v_i(\bm r_1) g(\bm r_1,\tau_1\in C_\leftarrow,\bm r',\tau'\in C_\leftarrow)\\ &= g_0^<(\bm r,t,\bm r',t')\\ &\hspace{4mm}+\frac{1}{\textcolor{red}{\hbar}}\int_{t_0}^{t_\infty} dt_1\int d^3r_1 g_0^t(\bm r,t,\bm r_1,t_1)v_i(\bm r_1)g^<(\bm r_1,t_1,\bm r',t')\\ &\hspace{4mm}+\frac{1}{\textcolor{red}{\hbar}}\int_{t_\infty}^{t_0}dt_1\int d^3r_1 g_0^<(\bm r,t,\bm r_1,t_1)v_i(\bm r_1)g^{\overline t}(\bm r_1,t_1,\bm r',t')\\ &= g_0^<(\bm r,t,\bm r',t')\\ &\hspace{4mm}+\frac{1}{\textcolor{red}{\hbar}}\int dt_1\int d^3r_1\big[ g_0^t(\bm r,t,\bm r_1,t_1)v_i(\bm r_1)g^<(\bm r_1,t_1,\bm r',t')
- g_0^<(\bm r,t,\bm r_1,t_1)v_i(\bm r_1)g^{\overline t}(\bm r_1,t_1,\bm r',t')\big] );
となる。
2行目は に関する積分範囲を、 全体ではなく と考えられることを利用した。 ( を除いてある)
ここで、(8.70)〜(8.73) を用いて、
より、
(8.111)
&math( &g^<(\bm r,t,\bm r',t')=g_0^<(\bm r,t,\bm r',t')\\ &\hspace{4mm}+\frac{1}{\textcolor{red}{\hbar}}\int dt_1\int d^3r_1\big[ g_0^r(\bm r,t,\bm r_1,t_1)v_i(\bm r_1)g^<(\bm r_1,t_1,\bm r',t')
- g_0^<(\bm r,t,\bm r_1,t_1)v_i(\bm r_1)g^a(\bm r_1,t_1,\bm r',t')\big] );
同様にして、
(8.112)
&math( &g^>(\bm r,t,\bm r',t') = g_0^>(\bm r,t,\bm r',t')\\ &\hspace{4mm}+\frac{1}{\textcolor{red}{\hbar}}\int dt_1\int d^3r_1\big[ g_0^r(\bm r,t,\bm r_1,t_1)v_i(\bm r_1)g^>(\bm r_1,t_1,\bm r',t')
- g_0^>(\bm r,t,\bm r_1,t_1)v_i(\bm r_1)g^a(\bm r_1,t_1,\bm r',t')\big] );
(8.113)
&math( &g^r(\bm r,t,\bm r',t') = g_0^r(\bm r,t,\bm r',t')\\ &\hspace{4mm}+\frac{1}{\textcolor{red}{\hbar}}\int dt_1\int d^3r_1\theta(t-t')\big[ g_0^r(\bm r,t,\bm r_1,t_1)v_i(\bm r_1)g^r(\bm r_1,t_1,\bm r',t')
- g_0^a(\bm r,t,\bm r_1,t_1)v_i(\bm r_1)g^a(\bm r_1,t_1,\bm r',t')\big]\\ &= g_0^r(\bm r,t,\bm r',t')
- \frac{1}{\textcolor{red}{\hbar}}\int dt_1\int d^3r_1 g_0^r(\bm r,t,\bm r_1,t_1)v_i(\bm r_1)g^r(\bm r_1,t_1,\bm r',t'));
&math( &g^a(\bm r,t,\bm r',t')\\ &= g_0^a(\bm r,t,\bm r',t')
- \frac{1}{\textcolor{red}{\hbar}}\int dt_1\int d^3r_1 g_0^a(\bm r,t,\bm r_1,t_1)v_i(\bm r_1)g^a(\bm r_1,t_1,\bm r',t') );
ここで (8.38) より および なので、
を用いた。
および がそれぞれ閉じた方程式を満たすことはよく知られた事実。
以上を省略形にまとめると、
G+- のような記法について†
(9/12 追記)
セミナーで のような記法を教わった。
、 と考えると、
(8.56), (8.57), (8.68) は、
と書くのが直感的である。
これを使うと、(8.110) は
となって、積分の部分をうまく評価できれば、
となる。
同様に他の についても式を作ると、(8.115) に相当する式を
なる行列に対する1つの方程式として分かりやすく書けるとのことであった。