線形代数II/内積と計量空間 のバックアップ(No.7)

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内積

K 上の線形空間 V の任意の2つの元 \bm x,\bm y\in V の間に、 次の公理を満たす演算 (\bm x,\bm y)\in K が定義されるとき、この演算を内積と呼ぶ。

  1. (\bm x,\bm y_1+\bm y_2)=(\bm x,\bm y_1)+(\bm x,\bm y_2)
  2. (\bm x,c\bm y)=c(\bm x,\bm y)
  3. (\bm y,\bm x)=\overline{(\bm x,\bm y)}
  4. (\bm x,\bm x)\geqq 0 (\bm x,\bm x)=0\Leftrightarrow \bm x=\bm 0

このとき、以下の定理を証明可能:

  • K=\mathbb R の時は (\bm y,\bm x)=(\bm x,\bm y)
       ∵ x\in \mathbb R に対して x=\overline x
  • (\bm x_1+\bm x_2,\bm y)=(\bm x_1,\bm y)+(\bm x_2,\bm y)
       ∵1. と 3. より
  • (c\bm x,\bm y)=\overline c(\bm x,\bm y)
       ∵2. と 3. より
  • 任意の \bm x\in V に対して (\bm x,\bm 0)=(\bm 0,\bm x)=0
       ∵ (\bm x,\bm 0)=(\bm x,0\bm 0)=0(\bm x,\bm 0)=0 および 3.
  • ノルム \|\bm x\|=\sqrt{(\bm x,\bm x)}\geqq 0 を定義可能
       ∵4. より
  • 三角不等式が成り立つ \|\bm x+\bm y\|\leqq\|\bm x\|+\|\bm y\|
  • シュワルツの不等式が成り立つ
        |(\bm x,\bm y)|\leqq\|\bm x\|\|\bm y\| あるいは -1\leqq\frac{|(\bm x,\bm y)|}{\|\bm x\|\|\bm y\|}\leqq 1
  • 2つのベクトルの間の角度 \theta を定義可能
        (\bm x,\bm y)=\|\bm x\|\|\bm y\|\cos\theta

内積が定義された線形空間を計量線形空間という。
(ベクトルの大きさ(ノルム)および角度が定義された線形空間ということ)

(\bm x, \bm y)=0 のとき、 \bm x\perp\bm y すなわち、 \bm x \bm y は直交するという
  → \bm x=\bm 0 は任意のベクトルと直交する

正規直交系

\bm e_1, \bm e_2, \dots, \bm e_k

  • 正規性: (\bm e_i,\bm e_i)=1 つまり \|\bm e_i\|=1
  • 直交性: (\bm e_i,\bm e_j)=0 つまり \bm e_i\perp\bm e_j ( i\ne j )

を満たすとき、正規直交系を為すという。あるいはまとめて、

  • (\bm e_i,\bm e_j)=\delta_{ij}

とも書ける。

ここで、

&math(\delta_{ij}=\left\{\begin{array}{ll} 1 & (i=j)\\ 0 & (i\ne j) \end{array}\right .);

正規直交系は一次独立である

\sum_{i=1}^nc_i\bm e_i=\bm 0 とすると、左から \bm e_j を掛けることで、

&math( (左辺) &=\Big(\bm e_j,\sum_{i=1}^nc_i\bm e_i\Big)\\ &=\Big(\bm e_j,\sum_{i=1}^nc_i\bm e_i\Big)\\ &=\sum_{i=1}^nc_i\left(\bm e_j,\bm e_i\right)\\ &=\sum_{i=1}^nc_i\delta_{ij}\\ &=c_j );

一方

&math( (右辺)=(\bm e_j,\bm 0)=0 );

したがって、任意の j に対して c_j=0

正規直交基底

ある基底が正規直交系を為すとき、正規直交基底と呼ぶ。

数ベクトルの標準内積

実数ベクトル

基本ベクトル:

   \bm e_1,\bm e_2,\dots,\bm e_n\in\mathbb{R}^n ,  \bm e_k=\begin{pmatrix}0\\\vdots\\1\\\vdots\\0\end{pmatrix}\begin{matrix}\ \\\ \\\leftarrow k\\\ \\\ \end{matrix}

  正規直交基底となる。

標準内積:

  &math(\bm x=\begin{pmatrix}x_1\\\vdots\\x_n\end{pmatrix},

         \bm y=\begin{pmatrix}y_1\\\vdots\\y_n\end{pmatrix}); に対して

  &math((\bm x,\bm y)&=x_1y_1+x_2y_2+\dots+x_ny_n\\

                      &=\sum_{k=1}^nx_ky_k={}^t\!\bm x\bm y);

  ただし、[Math Conversion Error]


\bm x の転置

ノルムの正値性:

   (\bm x,\bm x)&=\sum_{k=1}^nx_k^2\geqq 0

複素数の復習

複素数 z=x+iy\in\mathbb C ただし x,y\in\mathbb R
実部 \mathrm{Re}\, z=\Re z=x
虚部 \mathrm{Im}\, z=\Im z=iy
z_1+z_2=(x_1+x_2)+i(y_1+y_2)
z_1z_2=(x_1x_2-y_1y_2)+i(x_1y_2+y_1x_2)
複素共役 \bar z=x-iy
絶対値&math(\z\=\sqrt{x^2+y^2});
絶対値と複素共役&math(\z\^2=x^2+y^2=\bar zz=z\bar z);

|商|&math(\frac{z_1}{z_2}=\frac{z_1\bar z_2}{z_2\bar z_2}=\,&\frac{1}{\|z_2\|^2}(x_1x_2+y_1y_2)+\\ &\frac{i}{\|z_2\|^2}(-x_1y_2+y_1x_2));|

複素数ベクトル

基本ベクトルはやはり正規直交基底となる。

{}^t\!\bm z\bm z=z_1^2+z_2^2+\dots+z_n^2 は必ずしも正の実数にならない!

そこで標準内積を

   (\bm x,\bm y)={}^t\overline{\bm x}\bm y=\sum_{k=1}^n\bar x_ky_k

とする。

   \bm z=\begin{pmatrix}z_1\\z_2\\\vdots\\z_n\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}x_1+iy_1\\x_2+iy_2\\\vdots\\x_n+iy_n\end{pmatrix} のとき、

   \|\bm z\|^2=(\bm z,\bm z)=\sum_{k=1}^n\bar z_kz_k=\sum_{k=1}^n|z_k|^2=\sum_{k=1}^n x_k^2+y_k^2\geqq 0

に注目!

正規直交基底に対する内積の成分表示

[Math Conversion Error]


を正規直交基底とし、

\bm x=\sum_{i=1}^n x_i\bm e_i \bm y=\sum_{i=1}^n y_i\bm e_i とすると、

&math( (\bm x,\bm y)&=\Big(\sum_{i=0}^n x_i\bm e_i,\bm y\Big)\\ &=\sum_{i=1}^n\overline x_i\Big(\bm e_i, \sum_{j=1}^n y_j\bm e_j\Big)\\ &=\sum_{i=1}^n\sum_{j=1}^n\overline x_iy_j(\bm e_i, \bm e_j)\\ &=\sum_{i=1}^n\sum_{j=1}^n\overline x_iy_j\delta_{ij}\\ &=\sum_{i=1}^n\overline x_iy_i );

を得る。

一方、1年生の時に学んだ n 次元実ベクトル空間 \mathbb R^n における標準内積は

&math( (\bm x,\bm y)=\sum_{i=1}^nx_iy_i );

であった。これに対して、 n 次元複素数ベクトル空間 \mathbb C^n における標準内積は

&math( (\bm x,\bm y)=\sum_{i=1}^n\overline x_iy_i );

と定義される。→ この定義が内積の公理を満たすことを各自確認せよ

すなわち、正規直交基底での内積の成分表示は「標準内積」となる

エルミート共役

m,n 行列 A=\big(\,a_{ij}\,\big) に対して、

  • 転置行列: ^t\!A=\big(\,a_{ji}\,\big)
  • 複素共役: \overline A=\big(\,\overline{a_{ji}}\,\big)
  • エルミート共役: A^\dagger=\overline{^t\!A}=^t\!\overline{A}=\big(\,\overline{a_{ji}}\,\big)

とくに、列ベクトル \bm x=\begin{pmatrix}x_1\\x_2\\\vdots\\x_n\end{pmatrix} に対しては、

  • 転置: ^t\!\bm x=\begin{pmatrix}x_1&x_2&\dots&x_n\end{pmatrix}
  • 複素共役: \overline{\bm x}=\begin{pmatrix}\overline x_1\\\overline x_2\\\vdots\\\overline x_n\end{pmatrix}
  • エルミート共役: \bm x^\dagger=\overline{^t\!\bm x}=^t\!\overline{\bm x}=\begin{pmatrix}\overline x_1&\overline x_2&\dots&\overline x_n\end{pmatrix}

エルミート共役は、次の性質を持つ。

  • \left(A^\dagger\right)^\dagger=A
  • (AB)^\dagger=B^\dagger A^\dagger (転置行列と同じ → {}^t\!(AB)={}^t\!B{}^t\!A
  • (\bm x,\bm y)=\bm x^\dagger \bm y
  • (\bm x,A\bm y)=\bm x^\dagger A\bm y=\bm x^\dagger A^\dagger\bm y=(A^\dagger\bm x,\bm y)

対称行列、直交行列 と エルミート行列、ユニタリ行列

A が実行列のとき A^\dagger=^t\!\!A である。

実行列・ベクトルについて複素行列・ベクトルについて
対称行列 ^t\!S=S エルミート行列 H^\dagger=H
直交行列 ^t\!R=R^{-1} ユニタリ行列 U^\dagger=U^{-1}

性質:

  • 対称行列 S について (\bm x,S\bm y)=(S\bm x,\bm y)  (実内積)
  • エルミート行列 H について (\bm x,H\bm y)=(H\bm x,\bm y)  (複素内積)

性質:

  • 直交行列 R により内積が保存される (R\bm x,R\bm y)=(\bm x,\bm y)
  • ユニタリ行列 U により複素内積が保存される (U\bm x,U\bm y)=(\bm x,\bm y)

正規行列

A^\dagger A=AA^\dagger を満たす行列を正規行列と呼ぶ。

実対称行列、実直交行列、エルミート行列、ユニタリ行列は正規行列であるが、他にもたくさんある。

1年生の時、直交行列により対角化可能な行列と、不可能な行列があることを学んだ。

実は「ユニタリ行列により対角化できること」と「正規行列であること」とは同値であるが、 ここでは証明しない。

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