線形写像・像・核・階数 のバックアップ(No.12)

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写像

f が集合 U から集合 U' への写像であることを、

f: U \to U'

と書く。

このような f は、 U の元それぞれに対して1つずつ、 U' の元を対応させる規則のことである

\forall x\in U, f(x)\in U'

「1つずつ」が重要

  1. 対応する元が U' の外に出てしまうようなら U\to U' の写像とは呼ばない
    f(x)=1/x, f(0)\not\in \mathbb R
  2. 対応する元が2つ以上あれば写像とは呼ばない
    f(x)=|x|^{1/2}=\pm\sqrt x, f(1)=\set{1,-1}\not\in \mathbb R
    (複素関数論では多価関数を扱う)
  3. 異なる元 x_1,x_2\in U に対して、同じ x'\in U' が対応するのは問題ない
    f(x)=|x|, f(1)=f(-1)=1\in \mathbb R
  4. 対応する U の元がない U' の元が存在するのも問題ない
    f(x)=|x|, \set{x|f(x)=-1}=\set{}

線形写像

V,V' を線形空間として、 f:V\to V' が次の条件を満たすとき、 f は「線形である」と言うのであった。

  • f(a\bm x+b\bm y)=af(\bm x)+bf(\bm y)

すなわち、写像がベクトル和やスカラー倍に対して透過的であるということ。

左辺の和やスカラー倍が V で定義された演算であるのに対して、
右辺の和やスカラー倍は V' で定義された演算であることに注意せよ。
(すなわち V V' は同じスカラーの上に定義されている必要がある)

線形の条件は、 T:V\to V' として、

  • T(\bm x+\bm y)=T\bm x+T\bm y
  • T(c\bm x)=cT\bm x

と書いても同じ意味になる。

(このように、引数が1つの時に括弧を省略して書くこともよく行われる。 特に線形写像を大文字のアルファベットで表わすとき)

例:
V=\{xの3次以下の多項式\} V'=\{xの2次以下の多項式\} として、 T:V\to V'

T\bm v\equiv\frac{d}{dx} \bm v ただし \bm v\in V

と定義すれば、これは線形写像になる。

&math( \because T(a\bm x+b\bm y)=\frac{d}{dx}(a\bm x+b\bm y)=a\frac{d}{dx}\bm x+b\frac{d}{dx}\bm y=aT\bm x+bT\bm y );

微分や積分は 典型的な線形写像 として以後頻出する

Tx という書き方は \frac{d}{dx} \bm x などという書き方と対応する。

こういう場合、 T を 線形「演算子」などとも呼ぶ。

例:
先に見た、

  • ax^2+bx+c\in V\to (a,b,c)\in \mathbb R^3
  • (a,b,c)\in \mathbb R^3 \to ax^2+bx+c\in V

も線形写像になっている。

以下は一般的な写像について成り立つ話も多いが、 簡単のため線形写像に限った説明とする。

練習

問: T が線形写像であれば、 T(\bm 0)=\bm 0 となることを示せ。

答: T(\bm 0)=T(0\bm 0)=0T(\bm 0)=\bm 0

(最後の部分で、任意の \bm x について 0\bm x=\bm 0 となることを使った)

像 $\Image T$

ある線形写像 T:V\to V' の「像」は、

\Image T\equiv\set{\bm x'\in V'|\exists \bm x\in V, \bm x'=T\bm x}

として定義され、 \Image T=T(V) とも書かれる。当然、 \Image T\subset V' である。

上記の集合の記号は 「 \Image T は、 ある \bm x\in V に対して \bm x'=T\bm x が成り立つような V の元 \bm x' からなる集合である」 と読む。

関数では定義域、値域と言ったが、その値域にあたる。

image.png

線形写像の像は線形空間となる

線形空間の部分集合が部分空間となることを示すには、 その集合が演算に対して閉じていることを確かめればよかった。

\forall\bm x',\forall\bm y'\in \Image T に対して、 \bm x'=T\bm x, \bm y'=T\bm y となるような \bm x,\bm y\in V が存在するから、

&math( a\bm x'+b\bm y'&=aT\bm x+bT\bm y\\ &=T(a\bm x+b\bm y)\in \Image T );

すなわち \forall\bm x',\forall\bm y'\in \Image T\to a\bm x'+b\bm y'\in \Image T であり、 \Image T\subset V' はベクトル和とスカラー倍について閉じている。

したがって、 \Image T は部分空間を為す。

階数

ある線形写像 T:V\to V' の「階数」は、

\rank T\equiv\dim (\Image T)

として定義される。

行列の階数との関係は後述する。

練習:

T: V\to V' のとき、

\dim (\Image T)\le \dim V

\dim (\Image T)\le \dim V'

を示せ。

解答:

前者は、 \dim V の任意の基底 \bm b_1,\bm b_2,\dots,\bm b_n に対して T\bm b_1,T\bm b_2,\dots,T\bm b_n \Image T を張ることと、 (次元)=(基底の数)<(生成元の数) であることから証明される。

後者は \Image T V' の部分空間であることから自明。

上への写像(全射)

T:V\to V' \Image T=V' を満たすとき、上への写像あるいは全射であるという。 (教科書の「全写」は間違い)

これは、任意の \bm x'\in V' に対して、 そこに移ってくる \bm x\in V, T\bm x=\bm x' を見つけられること、 と同義である。

上への写像.png

例えば、 T(ax^2+bx+c)=(a,b,c) V\rightarrow\mathbb R^3 への全射であるが、
T(ax^2+bx+c)=(0,a,b,c) V\rightarrow\mathbb R^4 への全射ではない。

1対1写像(単射)

一般の線形写像では異なるベクトルが同じ値に移される場合がある。

例: T(ax^2+bx+c)=(a,b,0) の時、 T(ax^2+bx+c)=T(ax^2+bx+c')=(a,b,0) である

\bm x\ne \bm y であれば必ず T(\bm x)\ne T(\bm y) であるとき、 T は1対1写像である、あるいは、単射である、という。

写像.png

1対1という言葉の意味

  • 1対nはそもそも写像にならない
  • n対1になっていないことを示す
  • V \Image T との間に1対1対応を生む

上への1対1写像(全単射)

単射かつ全射であることをいう。

V' の元の1つ1つに V の元が1つ1つ対応することになる。

このときに限り、「逆写像 T^{-1}:V'\to V 」が定義できる。

  • 逆写像は T^{-1}[T(\bm x)]=\bm x となるような T と逆向きの写像
  • 1対1でないと、ある v'\in V' に複数の v\in V が対応してしまう
  • 上への写像でないと、ある v'\in V' に対応する v\in V が存在しない場合がある

練習

問:
線形写像の逆写像 T^{-1} は線形写像であることを示せ

答:
\bm x'=T(\bm x), \bm y'=T(\bm y) とすると、 \bm x=T^{-1}(\bm x'),\bm y=T^{-1}(\bm y')

一方、

T(a\bm x+b\bm y)=aT(\bm x)+bT(\bm y)=a\bm x'+b\bm y'

の両辺に T^{-1} を作用させると

a\bm x+b\bm y=T^{-1}(a\bm x'+b\bm y')

この左辺は aT^{-1}(\bm x')+bT^{-1}(\bm y') と等しいことから、 T^{-1} が線形であることが示される。

同型

V V' との間に上への1対1写像 T が存在する時、 V V' は同型であるといい、
V\simeq V' と書く。

またこのとき、 T を同型写像と呼ぶ。

これは上で述べた2つの空間が「似ている」ことを数学的に表わした物。
同型写像によって、2つの空間に含まれる元同士がすべて1対1に対応することになる。

例:
T(ax^2+bx+c)=(a,c,b) T(ax^2+bx+c)=(a+b,a-b,c)

注)同型である2つの線形空間の間には無数の異なる同型写像を定義可能であるが、 1つでも同型写像を定義できれば同型と呼ぶ。

同型の線形空間は構造が似ているため、一方を調べればもう一方のことが分かる。

特に、すべての K 上の n 次元ベクトル空間は K^n に同型であるため、1年生でやった数ベクトル空間が、 任意の(有限次元の)線形空間を理解するための基礎となる。

V の元から数ベクトル表現への写像が同型写像となる。

同値関係

線形空間の「同型」は同値関係の公理を満たす。すなわち、

  1. V\simeq V    : 反射律 (恒等写像による同型)
  2. V\simeq V'\to V'\simeq V  : 対称律 (逆写像による同型)
  3. V\simeq V' \wedge V'\simeq V''\to V\simeq V'' : 推移律 (合成写像による同型)

一方を調べればもう一方が分かる例

V\to V' の同型写像を T(\bm x) とする。

\bm a, \bm b, \bm c\in V が線形独立であれば、
T(\bm a), T(\bm b), T(\bm c)\in V' も線形独立である。

対偶を証明する。

もし T(\bm a), T(\bm b), T(\bm c)\in V' が線形独立でなければ、 すべてがゼロではない3つのスカラー \alpha,\beta,\gamma に対して

\alpha T(\bm a)+\beta T(\bm b)+\gamma T(\bm c)=\bm 0

が成立する。 T は線形なので、

(左辺)=T(\alpha \bm a+\beta \bm b+\gamma \bm c)=\bm 0

ここで両辺に T^{-1} を掛けると、 T^{-1}(\bm 0)=\bm 0 より、

\alpha \bm a+\beta \bm b+\gamma \bm c=\bm 0

\alpha,\beta,\gamma はすべてがゼロではないから、 \bm a, \bm b, \bm c は線形独立ではない。

核 $\Kernel T$

線形写像 T:V\to V' の核 (Kernel) :

\Kernel T\equiv\set{\bm x\in V|T\bm x=\bm 0}

核はゼロを含む

\because T\bm 0=\bm 0'

核は線形空間となる

\forall\bm x,\forall\bm y\in \Kernel T に対して、

&math( T(a\bm x+b\bm y)=aT\bm x+bT\bm y=a\bm 0+b\bm 0=\bm 0+\bm 0=\bm 0 );

より、 a\bm x+b\bm y\in \Kernel T となる。

すなわち、 \Kernel T\in V はベクトル和とスカラー倍に対して閉じており、 部分空間となる。

1対1写像の条件

\Kernel T=\set{\bm 0} T が1対1写像であるための必要十分条件となる。

なぜなら、

\Kernel T\supsetneq \set{\bm 0} なら複数の元が \bm 0 に移る。

逆に、 \bm x\ne \bm y かつ T\bm x=T\bm y ならば T(\bm x-\bm y)=\bm 0 より \bm x-\bm y\in \Kernel T かつ \bm x-\bm y\ne \bm 0 より \Kernel T\ne\set{\bm 0}

次元定理

上記をまとめると下図のようになる。

次元定理.png

  • \Kernel T に含まれる元は \bm 0 に移る
  • V-\Kernel T に含まれる元は \Image T-{\bm 0} に移る
  • \Kernel T V の、 \Image T V' の、部分空間である

線形写像の次元定理とは、次の関係のことである。

\dim V=\dim(\Image T) + \dim(\Kernel T)

略証明:

V に取った基底を \bm a_1,\bm a_2,\dots,\bm a_{\dim V} とし、 このうち \bm a_1,\bm a_2,\dots,\bm a_n \Kernel T に含まれるとすると、これらは \Kernel T の基底となる。

すなわち、 n=\dim(\Kernel T)

\bm a_1,\bm a_2,\dots,\bm a_n T によってすべて \bm 0 に移る一方、 \bm a_{n+1},\bm a_{n+2},\dots,\bm a_{\dim V} \Image T に移り、 T(\bm a_{n+1}),T(\bm a_{n+2}),\dots,T(\bm a_{\dim V}) \Image T の基底を為す。

すなわち、

\dim(\Image T)=\dim V-n=\dim V-\dim(\Kernel T)

より上記の定理を得る。

退化次数

もともと \dim V の次元を持つ線形空間が、 T で移されることにより \dim(\Image T)=\dim V-\dim(\Kernel T) の次元に縮まることから、 \dim (\Kernel T) を退化次数と呼ぶこともある。

練習

T:\mathbb R^3\to\mathbb R^4

&math( \bm x'=\begin{pmatrix}x'\\y'\\z'\\w'\end{pmatrix}=T\bm x=\begin{pmatrix}3&0&0\\0&1&0\\0&0&0\\0&1&0\end{pmatrix} \begin{pmatrix}x\\y\\z\end{pmatrix} );

&math(\mathbb R^3= \Bigg[\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix},\begin{pmatrix}0\\1\\0\end{pmatrix},\begin{pmatrix}0\\0\\1\end{pmatrix}\Bigg]= \Bigg[\begin{pmatrix}1\\1\\0\end{pmatrix},\begin{pmatrix}1\\1\\1\end{pmatrix},\begin{pmatrix}1\\-1\\0\end{pmatrix}\Bigg]= \Bigg[\begin{pmatrix}1\\1\\0\end{pmatrix},\begin{pmatrix}1\\1\\1\end{pmatrix},\begin{pmatrix}1\\-1\\0\end{pmatrix},\begin{pmatrix}3\\2\\1\end{pmatrix}\Bigg] );

\dim \mathbb R^3=3

\dim \mathbb R^4=4

&math(\Image T =\Bigg[ \begin{pmatrix}3\\0\\0\\0\end{pmatrix}, \begin{pmatrix}0\\1\\0\\1\end{pmatrix}, \begin{pmatrix}0\\0\\0\\0\end{pmatrix} \Bigg] =\Bigg[ \begin{pmatrix}3\\0\\0\\0\end{pmatrix}, \begin{pmatrix}0\\1\\0\\1\end{pmatrix} \Bigg]);

\dim(\Image T)=2

&math(\Kernel T =\Bigg[ \begin{pmatrix}0\\0\\1\end{pmatrix} \Bigg]);

\dim(\Kernel T)=1

\dim \mathbb R^3=\dim(\Image T)+\dim(\Kernel T)

行列による線形写像の階数

T:\mathbb R^m\to\mathbb R^n

T(\bm x)=A\bm x ただし A n\times m 行列

すなわち、

A=\begin{pmatrix}\bm a_1\Bigg.&\bm a_2&\dots&\bm a_m\end{pmatrix} ただし \bm a_1,\bm a_2,\dots,\bm a_m n 次縦ベクトル

の時、

\Image T=\left[ \bm a_1,\bm a_2,\bigg.\dots,\bm a_m \right]

であるから、 \dim (\Image T) A の列ベクトルのうち、 一次独立に取れる最大のベクトル数を表わすことになる。

後に見るように、これは行列の階数と等しくなる。

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