線形代数II/代数学的構造 のバックアップ差分(No.14)

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* 目次 [#ld7da76d]

#contents

* 代数学とは [#zb5eb4b1]

この授業は「線形代数」と言う名前だけれど、この言葉の意味を知っているだろうか?

これまでに「線形」の意味は教わった。

>&math(f(\bm x)); が線形とは: &math(f(a \bm x+b \bm y)=a f(\bm x)+b f(\bm y)); が成り立つこと

では「代数学」とは?

これまで様々な「数の集合」を学んできた。

- &math(\mathbb N); 自然数 = 加算・乗算について「閉じている」 → &math(a,b\in \mathbb N); ならば &math(a+b, a\times b\in \mathbb N);
- &math(\mathbb Z); 整数  = 減算についても閉じている &math(a-b);
- &math(\mathbb Q); 有理数 = 除算についても「ほぼ」閉じている &math(a/b);(ゼロでの除算は例外)
- &math(\mathbb R); 実数  = 収束する有理数列の極限演算についても閉じている &math(\lim_{n\rightarrow\infty}a_n);
- &math(\mathbb C); 複素数 = 負数の開根操作についても閉じている &math(\sqrt{-1});

&math(\mathbb N \subset \mathbb Z \subset \mathbb Q \subset \mathbb R \subset \mathbb C);
であり、新しい「演算」の導入により「数の集合」を拡大してきた。

「解析学」はこの最上位の &math(\mathbb R); または &math(\mathbb C); 
(あるいは &math(\mathbb R^n); や &math(\mathbb C^n); )の上で、極限や微積分を扱う学問だった
(&math(\mathbb R^n);、 &math(\mathbb C^n); は &math(n); 次元実数ベクトル、&math(n); 次元複素数ベクトルの集合)

「代数学」は &math(\mathbb N, \mathbb Z, \mathbb Q, \mathbb R, \mathbb C); の系列から外れて、~
例えば、

>加算は定義されないが、乗算だけが定義される数の集合

などというように、「何らかの演算」と、「その演算に対して%%%閉じた%%%数の集合」を定め、
そこに現れる「構造」を研究する。

線形代数学で主役となる「ベクトル」もそのような意味での「数」の一員である。

* 代数学的構造の例: 群 [#i1c86368]

ある集合 &math(U); の2つの元の間に ある演算 &math(*); が定義され、
&math(U); は &math(*); について「閉じている」とする。~

>集合 &math(U); が演算 &math(*); について「閉じている」とは、演算の結果が必ず &math(U); に含まれること。
>
>すなわち &math(\forall x,\forall y \in U); について &math(x*y\in U);
>
>>「&math(\forall x\in U); について」 は、「%%%任意の%%% &math(U); の元 &math(x); について」 という意味
>
>閉じていない例: &math(1,0\in \mathbb R); しかし、&math(1/0 \not\in \mathbb R); なので、
実数は除算について閉じていない。


さらにこの演算が次の公理を満たすものとする。
+ &math(\forall x,\forall y,\forall z\in U); に対して結合法則 &math((x*y)*z=x*(y*z)); が成り立つ
+ 特別な元(単位元) &math(e\in U); が存在し、&math(\forall x \in U); に対して &math(e*x=x*e=x); を満たす
+ &math(\forall x \in U); それぞれに対して、&math(x*y=y*x=e); を満たすような元(逆元)
&math(y\in U); を(最低限1つずつ)見つけられる

このとき、「&math(U); は演算 &math(*); について群となる」 という。

上記の条件は、for all 記号 &math(\forall);、exists 記号 &math(\exists); を使えば次のようになる。

0. &math(\forall x, \forall y\in U, x*y\in U);~
1. &math(\forall x,\forall y,\forall z\in U, (x*y)*z=x*(y*z));~
2. &math(\exists e\in U, \forall x\in U, x*e=e*x=x);~
3. &math(\forall x\in U,\exists y\in U, x*y=y*x=e);~

** 群の例 [#we500591]

一見すると、&math(U); を有理数 &math(\mathbb Q);、&math(*); を通常の乗算 &math(\times); 
と考えれば群の公理を満たしそうに思えるが、&math(0\in \mathbb Q); が逆元を持たないため、
有理数 &math(\mathbb Q); は乗算 &math(\times); について群とはならない。

&math(U); を有理数 &math(\mathbb Q); からゼロを除いた集合 &math(\mathbb Q-\set{0}); とすれば、この集合は乗算 &math(\times); に対して群となる。

&math(U); を整数 &math(\mathbb Z);、&math(*); を通常の加算 &math(+);、単位元を &math(0); と考えると公理を満たすから、&math(\mathbb Z); は加算について群である。(%%%加算の単位元%%%は &math(0); であることに注意)

&math(U); を &math(k); の倍数 &math(\set{nk|n\in \mathbb Z});、&math(*); を通常の加算 &math(+);、単位元を &math(0); と考えると、これも群を為す。

群の要素数が有限である場合もある。

自明な群: 1つしか要素を持たない集合 &math(U=\set{e}); に対して、&math(e*e=e); と定義すれば、&math(U); は群である。

&math(U={a,b,c}); に対して、演算 &math(*); を
| * |~ a |~ b |~ c |
|~ a| a| b| c|
|~ b| b| c| a|
|~ c| c| a| b|
と定義すれば、&math(U); は群である。~
ただしこの表は、&math((左に書かれた数)*(上に書かれた数)); の演算結果を示した物である。~

代数学で扱う「演算」は、このように表を作ることで任意に定義できる。

例えばこの表を、
| &math(\odot); |~ a |~ b |~ c |
|~ a| a| b| c|
|~ b| b| c| b|
|~ c| c| b| a|
とすると別の演算 &math(\odot); を定義できるが、&math((c\odot b)\odot b=b\odot b=c\ne c\odot (b\odot c)=c\odot b=b); となって &math(\odot); は結合法則を満たさず、
&math(U); は &math(\odot); に対して群ではない。

「群」の公理は上のように単純なものであるが、
その数学的構造は非常に奥深く、「群論」だけで数学の1分野となる。~

応用理工の数学カリキュラムでは群論の詳細には立ち入らないが、
結晶学や分子振動における点群や、
ゲージ理論などにおける対称性に関する議論に重要な応用があるため
どこかでまた学ぶことになるかもしれない。

* その他の代数的構造 [#udbe5ccb]

- 群 = 上記
- 可換群 = 群の公理に交換法則 &math(a*b=b*a); を加える
- 体 = 2つの演算 &math(+,*); を持ち、&math(+); に対して可換群、&math(+); の単位元である 0 を除いて &math(*); に対しても可換群であり、さらに分配法則 &math(a*(b+c)=a*b+a*c); が成立する(つまり「四則演算」ができる集合のこと)

有理数 &math(\mathbb Q); や実数 &math(\mathbb R);、複素数 &math(\mathbb C); は
自由に四則演算の行える構造を持ち、「体」である。~
そこでしばしば 有理体、実数体、複素数体 などとも呼ばれる。

これ以外にも様々な代数的構造が研究されている。→ [[Wikipedia:代数的構造]]
これ以外にも様々な代数的構造が研究されている。→ [[Wikipedia:代数的構造]]&qr(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BB%A3%E6%95%B0%E7%9A%84%E6%A7%8B%E9%80%A0);

* 代数的構造の意味 [#i732e7d6]

「代数的構造」の優れた点は数学的に類似の構造を持つ対象を抜き出して、
それらをまとめて議論できる点にある。

異なる対象の「類似点」を公理の形で記し、公理のみを基に定理を導くことにより、
個々の対象に依存せず、すべての対象に適用可能な結論を導くことができるのである。

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* 質問・コメント [#ra2fb135]

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**細かいですが、間違いを見つけました。 [#l50c9472]
>[[工学システム学類の変な男]] (&timetag(2015-04-06T23:56:45+09:00, 2015-04-07 (火) 08:56:45);)~
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「代数学的構造の例: 群 」 のfor all とexistsの使用例の3ですがx と a が混在しています。~
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最近、このサイトをみつけました。教科書よりも読み易く、面白い読み物として利用させて頂いています。~

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- 指摘をありがとうございます。早速訂正しました。ぜひ役立ててもらえればこちらもうれしいです。 -- [[武内(管理人)]] &new{2015-04-09 (木) 23:13:57};

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