線形代数II/内積と計量空間 のバックアップ差分(No.11)

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#contents

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SIZE(24){COLOR(RED){本授業で採用している内積の公理は[[かけ算の順番が一般的な物と異なる>線形代数Ⅱ/内積と計量空間#e8db9a80]]ため注意せよ。}}

* 内積 [#k485e13a]

&math(K); 上の線形空間 &math(V); の任意の2つの元 &math(\bm x,\bm y\in V); の間に、
次の公理を満たす演算 &math((\bm x,\bm y)\in K); が定義されるとき、この演算を内積と呼ぶ。

+ &math((\bm x,\bm y_1+\bm y_2)=(\bm x,\bm y_1)+(\bm x,\bm y_2));
+ &math((\bm x,c\bm y)=c(\bm x,\bm y));
+ &math((\bm y,\bm x)=\overline{(\bm x,\bm y)});
+ &math((\bm x,\bm x)\geqq 0); &math((\bm x,\bm x)=0\Leftrightarrow \bm x=\bm 0);

このとき、以下の定理を証明可能:

- &math(K=\mathbb R); の時は &math((\bm y,\bm x)=(\bm x,\bm y));~
   ∵ &math(x\in \mathbb R); に対して &math(x=\overline x);

- &math((\bm x_1+\bm x_2,\bm y)=(\bm x_1,\bm y)+(\bm x_2,\bm y));~
   ∵1. と 3. より

- &math((c\bm x,\bm y)=\overline c(\bm x,\bm y));~
   ∵2. と 3. より

- 任意の &math(\bm x\in V); に対して &math((\bm x,\bm 0)=(\bm 0,\bm x)=0);~
   ∵&math((\bm x,\bm 0)=(\bm x,0\bm 0)=0(\bm x,\bm 0)=0); および 3. 

- ノルム &math(\|\bm x\|=\sqrt{(\bm x,\bm x)}\geqq 0); を定義可能~
   ∵4. より

- 三角不等式が成り立つ &math(\|\bm x+\bm y\|\leqq\|\bm x\|+\|\bm y\|);

- シュワルツの不等式が成り立つ~
   &math(|(\bm x,\bm y)|\leqq\|\bm x\|\|\bm y\|); あるいは 
&math(-1\leqq\frac{|(\bm x,\bm y)|}{\|\bm x\|\|\bm y\|}\leqq 1);

- 2つのベクトルの間の角度 &math(\theta); を定義可能~
   &math((\bm x,\bm y)=\|\bm x\|\|\bm y\|\cos\theta);

内積が定義された線形空間を計量線形空間という。~
(ベクトルの大きさ(ノルム)および角度が定義された線形空間ということ)

&math((\bm x, \bm y)=0); のとき、&math(\bm x\perp\bm y); すなわち、
&math(\bm x); と &math(\bm y); は直交するという~
  → &math(\bm x=\bm 0); は任意のベクトルと直交する

** 注意 [#e8db9a80]

実は上記内積の公理のうち2番目は、

 &math((\bm x,c\bm y)=c(\bm x,\bm y));

ではなく、

 &math((c\bm x,\bm y)'=c(\bm x,\bm y)');

とする流儀もあり、実は ''こちらの方が一般的である''。

この2つの定義の間には、

&math((\bm x,\bm y)=(\bm y,\bm x)');

の関係がある。

量子力学に出てくるディラックのブラ・ケット記法との整合性を重視して
この授業では前者を採用している。

COLOR(RED){本授業の受講者が他の教科書やWebページを参照する場合、あるいは他の教科書で学ぶ学生が本Webページを読む場合にはこの差に十分に注意すること。}

* 正規直交系 [#i1230363]

&math(\bm e_1, \bm e_2, \dots, \bm e_k); が

- 正規性: &math((\bm e_i,\bm e_i)=1); つまり &math(\|\bm e_i\|=1);
- 直交性: &math((\bm e_i,\bm e_j)=0); つまり &math(\bm e_i\perp\bm e_j); (&math(i\ne j);)

を満たすとき、正規直交系を為すという。あるいはまとめて、

- &math((\bm e_i,\bm e_j)=\delta_{ij});

とも書ける。

ここで、

&math(\delta_{ij}=\left\{\begin{array}{ll}
1 & (i=j)\\
0 & (i\ne j)
\end{array}\right .);

はクロネッカーのデルタである。

* 正規直交系は一次独立である [#ic67f1e7]

&math(\sum_{i=1}^nc_i\bm e_i=\bm 0); とすると、左から &math(\bm e_j); を掛けることで、

&math(
(左辺)
&=\Big(\bm e_j,\sum_{i=1}^nc_i\bm e_i\Big)\\
&=\Big(\bm e_j,\sum_{i=1}^nc_i\bm e_i\Big)\\
&=\sum_{i=1}^nc_i\left(\bm e_j,\bm e_i\right)\\
&=\sum_{i=1}^nc_i\delta_{ij}\\
&=c_j
);

一方

&math(
(右辺)=(\bm e_j,\bm 0)=0
);

したがって、任意の &math(j); に対して &math(c_j=0);

* 正規直交基底 [#s47e26a7]

ある基底が正規直交系を為すとき、正規直交基底と呼ぶ。

* 数ベクトルの標準内積 [#te5e5d66]

** 実数ベクトル [#m652d7b6]

標準内積:

  &math(\bm x=\begin{pmatrix}x_1\\\vdots\\x_n\end{pmatrix},
          \bm y=\begin{pmatrix}y_1\\\vdots\\y_n\end{pmatrix}); に対して

  &math((\bm x,\bm y)&=x_1y_1+x_2y_2+\dots+x_ny_n\\
                       &=\sum_{k=1}^nx_ky_k={}^t\!\bm x\bm y);

  ただし、&math({}^t\!\bm x=(x_1\ x_2\ \dots\ \x_n)); は &math(\bm x); の転置

は内積の公理を満たす。

ノルムの正値性:

  &math((\bm x,\bm x)&=\sum_{k=1}^nx_k^2\geqq 0);

基本ベクトル:

  &math(\bm e_1,\bm e_2,\dots,\bm e_n\in\mathbb{R}^n);, 
&math(\bm e_k=\begin{pmatrix}0\\\vdots\\1\\\vdots\\0\end{pmatrix}\begin{matrix}\ \\\ \\\leftarrow k\\\ \\\ \end{matrix});

  標準内積に対して正規直交基底となる。
  標準内積に対して &math(\mathbb R^n); の正規直交基底となる。

** 複素数の復習 [#b5173ea8]
** 複素数に関する復習 [#b5173ea8]

|複素数|&math(z=x+iy\in\mathbb C); ただし &math(x,y\in\mathbb R);|
|実部|&math(\mathrm{Re}\, z=\Re z=x);|
|虚部|&math(\mathrm{Im}\, z=\Im z=iy);|
|和|&math(z_1+z_2=(x_1+x_2)+i(y_1+y_2));|
|積|&math(z_1z_2=(x_1x_2-y_1y_2)+i(x_1y_2+y_1x_2));|
|複素共役|&math(\bar z=x-iy);|
|絶対値|&math(\|z\|=\sqrt{x^2+y^2});|
|絶対値と複素共役|&math(\|z\|^2=x^2+y^2=\bar zz=z\bar z);|
|商|&math(\frac{z_1}{z_2}=\frac{z_1\bar z_2}{z_2\bar z_2}=\,&\frac{1}{\|z_2\|^2}(x_1x_2+y_1y_2)+\\
&\frac{i}{\|z_2\|^2}(-x_1y_2+y_1x_2));|

** 複素数ベクトル [#aa6e0163]

実ベクトルと同様に内積を定義しようとすると、

&math({}^t\!\bm z\bm z=z_1^2+z_2^2+\dots+z_n^2); は必ずしも正の実数にならない!
  &math({}^t\!\bm z\bm z=z_1^2+z_2^2+\dots+z_n^2); は必ずしも正の実数にならない!

そこで標準内積を

  &math((\bm x,\bm y)={}^t\overline{\bm x}\bm y=\sum_{k=1}^n\bar x_ky_k);

とする。
と定義する。

  &math(\bm z=\begin{pmatrix}z_1\\z_2\\\vdots\\z_n\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}x_1+iy_1\\x_2+iy_2\\\vdots\\x_n+iy_n\end{pmatrix}); のとき、

  &math(\|\bm z\|^2=(\bm z,\bm z)=\sum_{k=1}^n\bar z_kz_k=\sum_{k=1}^n|z_k|^2=\sum_{k=1}^n x_k^2+y_k^2\geqq 0);

に注目!

このとき、基本ベクトルはやはり正規直交基底となる。
標準内積に対して、上記の基本ベクトルはやはり &math(\mathbb C^n); の正規直交基底となる。

* 正規直交基底に対する内積の成分表示 [#o879b519]

&math(\comment{widetilde} E=\langle \bm e_1,\bm e_2,\dots,\bm e_n\rangle); を正規直交基底とし、

&math(\bm x=\sum_{i=1}^n x_i\bm e_i=\Big(\bm e_1,\bm e_2,\dots,\bm e_n\Big)\bm x_E);、
&math(\bm y=\sum_{i=1}^n y_i\bm e_i=\Big(\bm e_1,\bm e_2,\dots,\bm e_n\Big)\bm y_E); とすると、

&math(
(\bm x,\bm y)&=\Big(\sum_{i=0}^n x_i\bm e_i,\bm y\Big)\\
&=\sum_{i=1}^n\overline x_i\Big(\bm e_i, \sum_{j=1}^n y_j\bm e_j\Big)\\
&=\sum_{i=1}^n\sum_{j=1}^n\overline x_iy_j(\bm e_i, \bm e_j)\\
&=\sum_{i=1}^n\sum_{j=1}^n\overline x_iy_j\delta_{ij}\\
&=\sum_{i=1}^n\overline x_iy_i\\
&={}^t\!\overline{\bm x_E}\bm y_E
);

を得る。

すなわち、%%%正規直交基底での内積の成分表示%%%は「標準内積」となる
すなわち、%%%正規直交基底に対する内積の成分表示%%% は 「標準内積」 となる

逆に、正規直交しない基底を用いた場合の内積の数値表現は複雑になるため、
計量空間に基底を取るときは正規直交基底を選ぶことが多い(便利だから)。

* エルミート共役 [#de0c0da8]

&math(m,n); 行列 &math(A=\big(\,a_{ij}\,\big)); に対して、

- 転置行列:&math(^t\!A=\big(\,a_{ji}\,\big));
- 複素共役:&math(\overline A=\big(\,\overline{a_{ji}}\,\big));
- エルミート共役:&math(A^\dagger=\overline{^t\!A}=^t\!\overline{A}=\big(\,\overline{a_{ji}}\,\big));

とくに、列ベクトル &math(\bm x=\begin{pmatrix}x_1\\x_2\\\vdots\\x_n\end{pmatrix}); に対しては、

-転置:&math(^t\!\bm x=\begin{pmatrix}x_1&x_2&\dots&x_n\end{pmatrix});
-複素共役:&math(\overline{\bm x}=\begin{pmatrix}\overline x_1\\\overline x_2\\\vdots\\\overline x_n\end{pmatrix});
-エルミート共役:&math(\bm x^\dagger=\overline{^t\!\bm x}=^t\!\overline{\bm x}=\begin{pmatrix}\overline x_1&\overline x_2&\dots&\overline x_n\end{pmatrix});

エルミート共役は、次の性質を持つ。

- &math(\left(A^\dagger\right)^\dagger=A);
- &math((AB)^\dagger=B^\dagger A^\dagger); (転置行列と同じ → &math({}^t\!(AB)={}^t\!B{}^t\!A);)
- &math((\bm x,\bm y)=\bm x^\dagger \bm y);
- &math((\bm x,A\bm y)=\bm x^\dagger A\bm y=\bm x^\dagger A^\dagger\bm y=(A^\dagger\bm x,\bm y));

&math(A^\dagger); を &math(A); の随伴行列と呼ぶ。

* 対称行列、直交行列 と エルミート行列、ユニタリ行列 [#g3931b9c]

&math(A); が実行列のとき &math(A^\dagger=^t\!\!A); である。

|実行列・ベクトルについて      |複素行列・ベクトルについて              |
|対称行列 &math(^t\!S=S);      |エルミート行列 &math(H^\dagger=H); |
|直交行列 &math(^t\!R=R^{-1}); |ユニタリ行列 &math(U^\dagger=U^{-1}); |

性質:
- 対称行列 &math(S); について &math((\bm x,S\bm y)=(S\bm x,\bm y)); (実内積)
- エルミート行列 &math(H); について &math((\bm x,H\bm y)=(H\bm x,\bm y)); (複素内積)

性質:
- 直交行列 &math(R); により内積が保存される &math((R\bm x,R\bm y)=(\bm x,\bm y));
- ユニタリ行列 &math(U); により複素内積が保存される &math((U\bm x,U\bm y)=(\bm x,\bm y));

* 正規行列 [#ldb799b7]

&math(A^\dagger A=AA^\dagger); を満たす行列を正規行列と呼ぶ。

実対称行列、実直交行列、エルミート行列、ユニタリ行列は正規行列であるが、他にもたくさんある。

1年生の時、直交行列により対角化可能な行列と、不可能な行列があることを学んだ。

実は「ユニタリ行列により対角化できること」と「正規行列であること」とは同値である。
証明は後ほど。

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* 質問・コメント [#wc06c3f7]

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