量子力学Ⅰ/不確定性原理 のバックアップ差分(No.8)

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[[量子力学Ⅰ/波動関数の解釈]]

#contents

* 同時固有関数 [#hb461116]

これまでことある毎に「量子力学においては位置や運動量などの物理量は確率的にしか決まらない」
と話してきた。

ただしこれには例外があって、「物理量演算子の固有関数」 については物理量が確定値を取るのであった。
ただしこれには例外があって、「物理量演算子の固有関数」 については物理量が ''確定値'' を取るのであった。

もし波動関数 &math(\psi); が物理量 &math(\hat\alpha); と &math(\hat\beta); 
の「同時固有関数」(両方の固有関数)であれば、物理量 &math(\alpha,\beta); 
はどちらも確定値を取ることになる。

>例:~
完全に自由な電子に対する運動量の固有関数は、同時にハミルトニアンの固有関数でもあるから、
&math(\bm p=\hbar \bm k,\epsilon=\hbar^2k^2/2m); は同時に確定値を取る。

&math(\hat\alpha\psi=\lambda_\alpha);、&math(\hat\beta\psi=\lambda_\beta); とすれば

 &math(\hat\alpha\hat\beta\psi=\hat\alpha\lambda_\beta\psi=\lambda_\alpha\lambda_\beta\psi);

 &math(\hat\beta\hat\alpha\psi=\hat\beta\lambda_\alpha\psi=\lambda_\beta\lambda_\alpha\psi);

であるから、

 &math((\hat\alpha\hat\beta-\hat\beta\hat\alpha)\psi=0);

となる。

したがって、任意の &math(\psi); に対して 
&math((\hat\alpha\hat\beta-\hat\beta\hat\alpha)\psi\ne 0); であるならば、同時固有関数は存在しない。

例えば、&math(x,\hat p_x); の同時固有関数や、&math(\hat l_x,\hat l_y); の同時固有関数などは存在しない。
一方、&math(\hat{l^2}); と &math(\hat l_z); は交換するから、これらの同時固有関数は存在する。

* 位置と運動量 [#b3565353]

 &math(
(x\hat p-\hat px)\psi
&=\left(x\frac{\hbar}{i}\frac{\PD}{\PD x}-\frac{\hbar}{i}\frac{\PD}{\PD x}x\right)\psi\\
&=-i\hbar\left\{x\frac{\PD\psi}{\PD x}-\frac{\PD}{\PD x}(x\psi)\right\}\\
&=-i\hbar\left\{\cancel{x\frac{\PD\psi}{\PD x}}-\psi-\cancel{x\frac{\PD\psi}{\PD x}}\right\}\\
&=i\hbar\psi
);

すなわち、

 &math(x\hat p-\hat px=i\hbar\ne 0);

であるから、&math(x); と &math(\hat p); の同時固有関数は存在せず、
両者が同時に決定されるような状態は存在しない。
両者が同時に確定するような状態は存在しない。

例えば粒子が &math(x=x_0); に存在する、という位置の固有状態は、
例えば粒子の運動量が確定値 &math(p=p_0); を取る、「運動量の固有状態」 は、

 &math(\varphi_{x=x_0}(x)=\delta(x-x_0));
 &math(\varphi_{p_x=\hbar k_x}(x)=\frac{1}{\sqrt\{2\pi\}}e^{ik_x x});

であるが、このデルタ関数を指数関数の積分表示に直せば、
だが、このとき

 &math(
\varphi_{x=x_0}(x)=\frac{1}{2\pi}\int_{-\infty}^\infty e^{ik(x-x_0)} dk
);
 &math(|\varphi_{p=p_0}(x)|^2=1/2\pi);

となり、この状態はあらゆる運動量 &math(p=\hbar k); の固有関数 &math(e^{ikx});
が均等な重みで重ね合わされた物になっている。つまり運動量の測定値は '''完全に''' 不確定になる。
であるから、位置に対する確率密度は全空間で一定値を取り、
&math(x); 座標の測定値は ''完全に不確定'' になる。
(そのためこの関数は通常の意味では規格化できない)

すなわち、この状態について &math(\sigma_x=0);、&math(\sigma_p=+\infty); である。
すなわち、&math(\sigma_p=0); であれば &math(\sigma_x=+\infty); である。

逆に運動量が確定値 &math(p=p_0); を取る状態は、
逆に、粒子が &math(x=x_0); に存在する、という 「位置の固有状態」 は、

 &math(\varphi_{p=p_0}(x)=e^{ip_0x/\hbar}/\sqrt\{2\pi\});
 &math(\varphi_{x=x_0}(x)=\delta(x-x_0));

だが、このとき
であるが、このデルタ関数を指数関数の積分表示に直せば、

 &math(|\varphi_{p=p_0}(x)|^2=1/2\pi);
 &math(
\varphi_{x=x_0}(x)=\frac{1}{2\pi}\int_{-\infty}^\infty e^{ik_x(x-x_0)} dk
);

より、位置に対する確率密度は全空間で一定値を取り、
&math(x); 座標の測定値は '''完全に''' 不確定になる。
(そのためこの関数は通常の意味では規格化できない)
となる。これはあらゆる運動量 &math(p_x=\hbar k_x); の固有関数 
&math(\varphi_{p_x=\hbar k_x}=\frac{1}{\sqrt{2\pi}}e^{ik_xx});
が均等な重みで重ね合わされた物になっている。

すなわち、&math(\sigma_x=+\infty);、&math(\sigma_p=0); である。
重みが一定 = 確率密度が一定 であるから、運動量の測定値は ''完全に不確定'' になる。

この両極端の場合を除けば &math(\sigma_x); も &math(\sigma_p); も有限値を取る。
以下のように、このとき必ず
すなわち、&math(\sigma_x=0); であれば &math(\sigma_p=+\infty); である。

2つの演算子が同時固有関数を持たないとき、片方を完全に確定すれば、
もう一方は完全に不確定となることが分かった。

この両極端の場合を除けば &math(\sigma_x); も &math(\sigma_p); も有限値を取ることになるが、
以下に示すように、このとき必ず

 &math(
\sigma_x\cdot\sigma_{p_x} \ge \frac{\hbar}{2}
);

となることを示せる。
となる。

&math(\sigma_x); と &math(\sigma_{p_x}); を同時にゼロにすることはできない、
というこの結論は、「不確定性原理」 の一例である。

* 不確定性の導出 [#g5fe668e]

一般に、エルミート演算子 &math(\hat\alpha,\hat\beta); に対して、

 &math(\sigma_\alpha\sigma_\beta\geqq \left|\frac{\langle\hat\alpha\hat\beta-\hat\beta\hat\alpha\rangle}{2}\right|);

であること、すなわち、

 &math(\langle\hat\alpha\hat\beta-\hat\beta\hat\alpha\rangle\ne 0);

のとき、&math(\sigma_\alpha); と &math(\sigma_\beta); を同時にゼロにはできないことを証明する。

 &math(
I(\lambda)
&\equiv\int \left|\Delta \alpha\psi+i\lambda\Delta \beta\psi\right|^2dx\\
);

と置けば、

 &math(I(\lambda)&=\int \left\{(\Delta \alpha+i\lambda\Delta \beta)\psi\right\}^*\left\{(\Delta \alpha+i\lambda\Delta \beta)\psi\right\}dx\\
&=\int \psi^*(\Delta \alpha-i\lambda\Delta \beta)(\Delta \alpha+i\lambda\Delta \beta)\psi\,dx\\
&=\int \psi^*\left\{\Delta \alpha^2+i\lambda(\Delta \alpha\Delta \beta-\Delta \beta\Delta \alpha)+\lambda^2\Delta \beta^2\right\}\psi\,dx\\
&=\langle\Delta\alpha^2\rangle+i\lambda\langle\Delta\alpha\Delta\beta-\Delta\beta\Delta\alpha\rangle+\lambda^2\langle\Delta\beta^2\rangle\\
&\geqq 0
);

が任意の &math(\lambda); に対して成り立つことになり、判別式は負になるはずである。

 &math(
&-\langle\Delta\alpha\Delta\beta+\Delta\beta\Delta\alpha\rangle^2
-4\langle\Delta\alpha^2\rangle\langle\Delta\beta^2\rangle\leqq 0\\
);

&math(\langle\Delta\alpha\Delta\beta+\Delta\beta\Delta\alpha\rangle); は純虚数になるので、
&math(\langle\Delta\alpha\Delta\beta-\Delta\beta\Delta\alpha\rangle); は純虚数またはゼロになるので(そうでないと上の不等号の左側が実数にならない)、

 &math(
&4\langle\Delta\alpha^2\rangle\langle\Delta\beta^2\rangle\geqq 
|\langle\Delta\alpha\Delta\beta+\Delta\beta\Delta\alpha\rangle|^2
4\langle\Delta\alpha^2\rangle\langle\Delta\beta^2\rangle &\geqq 
-\langle\Delta\alpha\Delta\beta+\Delta\beta\Delta\alpha\rangle^2 \\ &=
|\langle\Delta\alpha\Delta\beta-\Delta\beta\Delta\alpha\rangle|^2
);

 &math(
\sigma_\alpha\sigma_\beta=\sqrt{\langle\Delta\alpha^2\rangle\langle\Delta\beta^2\rangle}\geqq \left|\frac{\langle\Delta\alpha\Delta\beta-\Delta\beta\Delta\alpha\rangle}{2}\right|
);

さらに、

 &math(
\Delta\alpha\Delta\beta-\Delta\beta\Delta\alpha&=
(\hat\alpha-\langle\alpha\rangle)(\hat\beta-\langle\beta\rangle)-
(\hat\beta-\langle\beta\rangle)(\hat\alpha-\langle\alpha\rangle)\\
&=\hat\alpha\hat\beta-\hat\beta\hat\alpha
);

であるから、

 &math(\sigma_\alpha\sigma_\beta\geqq \left|\frac{\langle\hat\alpha\hat\beta-\hat\beta\hat\alpha\rangle}{2}\right|);

&math(\hat\alpha=x,\hat\beta=p); のとき、&math(\hat\alpha\hat\beta-\hat\beta\hat\alpha=i\hbar); より、
** 具体例 [#cd9db706]

&math(\hat\alpha=x,\hat\beta=p); のとき、&math(x\hat p_x-\hat p_xx=i\hbar); より、

 &math(\sigma_x\sigma_p\geqq \frac{\hbar}{2});

同様に、
同様に、&math(\hat l_x\hat l_y-\hat l_y\hat l_x=i\hbar\hat l_z); より、

 &math(\sigma_{l_x}\sigma_{l_y}\geqq \left|\frac{\hbar\langle l_z\rangle}{2}\right|);


* 不確定性原理 [#u6bedd3d]

「不確定性原理」は上記のように、
本来、量子力学で言うところの「不確定性原理」は上記のように、
「&math(x); と &math(p_x); が同時に正確に定まるような状態は存在しない」という原理である。

ただし、この言葉は3つの異なる意味で使われるため注意せよ。
ただし、この言葉は微妙に異なる、そして時には間違った文脈で使われることがあるため注意が必要である。

+ &math(x); と &math(p_x); が両方とも正確に定まるような量子状態は存在しない
+ 粒子の &math(x); と &math(p_x); を両方とも正確に設定することはできない
+ 測定前の状態に対して &math(x); と &math(p_x); を両方とも正確に測定する手段が存在しない
歴史的には、量子力学の黎明期に活躍した若き科学者、ハイゼンベルクが不確定性原理を提唱した。
その当時、量子力学はまだ多くの科学者に信用されていなかった。

1. について、計算の詳細は後述するとして、
シュレーディンガー方程式より導かれる結果は次のようになる。
古典力学においては、初期状態を与えてニュートン方程式を解けば原理的には未来永劫の時間発展を完全に正確に記述することができる。
これに対して量子力学では正確な初期条件を与えれば与えるほど、波動関数はすぐに広がってしまい、
一定時間経過後の物理量は確率的にしか求まらない。それどころか、完全に正確な初期条件を設定すること自体、量子力学では不可能である(物理系の初期条件は位置と速度を与えなければ決まらないこと、位置と速度の同時固有状態が存在しないこと、を思い出せ)。

どんな波動関数に対してもこの不等式が成り立つことは、
そもそも電子自身が「上記の不等式以上に定まった位置や運動量を持つことがない」
ことを示している。
このような点を見比べると、量子力学は古典力学に比べて不正確な、「劣った理論」と見えてしまいかねなかった。
また、多くの科学者はニュートン的な世界観、すなわち、未来は「初期条件」によって完全に決定されており、
「確率」などの入り込む余地はない、とする決定論的世界観を持っていたため、そのような世界観と相容れない
量子力学は受け容れがたかった。かのアインシュタインが「神はサイコロを振らない」と言ったのは象徴的である。

これは 2. と密接に関係していて、
そのような価値観、世界観を打ち破るべくハイゼンベルクが指摘したのが物理現象の不確定性である。
ハイゼンベルクは電子に光を当ててその位置と運動量を決定するという仮想的な実験について考察した。
電子の位置を正確に測定しようとすればより短い波長の光を使わなければならないが、
その場合光の運動量が大きくなり、位置測定後の電子の運動量が乱され、不正確になってしまう。
すなわち位置と運動量の両者を同時に、正確に決定するような測定方法は存在しないことを指摘した。
彼の思考実験は位置の正確性と運動量に与える撹乱の積が &math(\Delta x\Delta p_x\sim h); 
となることを示しており、ハイゼンベルクはこの結果を上記の物理量の不確定性と結びつけて説明した。

3. は例えば、粒子の位置を測定するためにどんな優れた手法を採用したとしても、
その測定は粒子の運動量にある一定の撹乱を与えてしまうため、
続けて運動量を測定した際に誤差を生じる。
といった内容で、 1., 2. とは別の問題であるがしばしば混同されてきた。
そもそも計測不可能な「初期状態」が実在すると仮定する古典物理学がおかしいのであって、
初期状態が計測不可能なことを原理に取り入れた量子力学こそ正しいと考えるべき、
という指摘である。

実際、この不確定性原理はハイゼンベルグが提唱した物であるが、
当初彼が議論したのは位置 &math(x); を測定する際の測定誤差 &math(\epsilon_x); と、
その位置の測定により運動量 &math(p); が受ける撹乱 &math(\eta_p); の積 &math(\epsilon_x\eta_p); 
に関ついてであり、ハイゼンベルグの思考実験においては &math(\epsilon_x\eta_p\ge\hbar/2); 
が得られた。
このような考え方は物理現象の見方を大きく変え、その後の量子力学の発展に大変役立った。

1. で見た量子ゆらぎに関する不確定性  &math(\sigma_x\cdot\sigma_{p_x}\ge\hbar/2); と、~
3. で見た測定の及ぼす撹乱に関する不確定性 &math(\epsilon_x\eta_p\ge\hbar/2); とは長い間混同されてきたが、~
特に後者については測定のしかたによっては正しくなく、
上記の不等式を下回る実験が可能であることが近年報告されている。
((http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevA.67.042105))
ただし、ここで議論した

* 最小波束 [#y416874e]
+ &math(x); と &math(p_x); が両方とも正確に定まるような量子状態は存在しないこと
+ 粒子の &math(x); の計測が必ず &math(p_x); に影響を与え、誤差を生んでしまうこと

2つの不等号で等号が成り立つ条件は、
の2つは本来区別して考えなければいけない問題であるにもかかわらず、
ハイゼンベルク以来長い間この2者の区別は曖昧なままになっていた。

+ シュバルツの不等式で2つのベクトルが平行であること~
すなわち &math(\gamma); を定数として &math(\alpha\psi=\gamma\beta\psi);
+ &math(\int \psi^*(\alpha\beta+\beta\alpha)\psi\,dx=0);
名古屋大学の&ruby(おざわまさなお){小澤正直};は2003年にこの点を明確に指摘し、
2012年には東京大学の&ruby(はせがわゆうじ){長谷川祐司};らと共にハイゼンベルクの思考実験の限界を下回る計測が可能であることを実験的に証明した。

1. より、
* 質問・コメント [#s1c0783f]

 &math(
(x-<x>)\psi=\gamma(\frac{\hbar}{i}\frac{\PD}{\PD x}-<p>)\psi
);
#article_kcaptcha

 &math(
\frac{\PD\psi}{\PD x}=\frac{i}{\hbar}\left(\frac{x-<x>}{\gamma}+<p>\right)\psi
);

 &math(
\psi(x,t)=\psi_0e^{\frac{i}{\hbar}\left(\frac{(x-<x>)^2}{2\gamma}+<p>x\right]}
);

また、1. の式を 2. に代入すれば、

&math(
0&=\int \psi^*\frac{\alpha^2}{\gamma}\psi\,dx+\int (\beta\psi)^*\alpha\psi\,dx\\
&=\int \psi^*\frac{\alpha^2}{\gamma}\psi\,dx+\int (\frac{\alpha}{\gamma}\psi)^*\alpha\psi\,dx\\
&=\left(\frac{1}{\gamma}+\frac{1}{\gamma^*}\right)\int \alpha^2|\psi|^2\,dx\\
);

&math(\int \alpha^2|\psi|^2\,dx>0); より、&math(1/\gamma+1/\gamma^*=0); 
すなわち &math(\gamma+\gamma^*=0); となり、&math(\gamma); は純虚数でなければならない。

&math(x); の絶対値が大きいところで &math(\psi); が有限となるためには
&math(\gamma); は負の虚数でなければならない。
実際、&math(\gamma=-2i\sigma_x^2/\hbar);、&math(\psi_0=1/\sqrt{2\pi\sigma_x^2}); とすることにより

 &math(
\psi(x,t)=\frac{1}{\sqrt{2\pi\sigma_x^2}}\exp\left[\frac{(x-\langle x\rangle)^2}{4\sigma_x^2}+\frac{i\langle p\rangle}{\hbar}x\right]
);

が得られ、この式は &math(\sigma_x^2 = \langle \alpha^2\rangle); を満足する、
規格化された波動関数を与える。

* 要検討 [#n66e6b52]

http://www.phys.asa.hokkyodai.ac.jp/osamu/lectures/qm/node31.html

のような技巧的な証明の方が簡単か?

* 観測の不確定性 [#x4da8807]


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