多粒子系の波動関数とボゾン・フェルミオン のバックアップの現在との差分(No.11)

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[[量子力学Ⅰ]]

* 1粒子系の量子力学の復習 [#vcf8a3db]
* 概要 [#q7edd673]

量子力学において1粒子の運動は、
粒子の位置を変数とする複素関数(波動関数)が満たす
シュレーディンガー方程式により記述された。
これまで、1粒子のシュレーディンガー方程式の解法を細かく見てきたが、
以下では多粒子系の問題について考える。(教科書では「量子力学II」に収録されている9章の内容となる)

粒子の位置:&math(\bm r);~
波動関数:&math(\psi(\bm r,t));~
方程式:&math(i\hbar\frac{\PD}{\PD t}\psi(\bm r,t)=\hat H\psi(\bm r,t));
** 目次 [#g08172c8]
#contents

シュレーディンガー方程式は両辺に共通な &math(\psi(\bm r,t)); を除いて考えると
* 2粒子系の量子力学 [#w3265732]

 &math(\frac{\hbar}{-i}\frac{\PD}{\PD t}(\dots)=\hat H(\dots));
古典的なハミルトニアンは系のエネルギーを位置と運動量で表したものであった。

の形をしている。これは前期量子論における
したがって2粒子系であれば、2つの粒子の位置座標 &math(\bm r_1,\bm r_2); 
および、運動量 &math(\bm p_1,\bm p_2); を使って、

 &math(\hbar\omega=\varepsilon);
 &math(
H(\bm r_1,\bm r_2,\bm p_1,\bm p_2)=\underbrace{\frac{p_1^2}{2m_1}+\frac{p_2^2}{2m_2}}_{運動エネルギー}+\underbrace{\mathop{V(\bm r_1,\bm r_2,t)}_{\ } }_{ポテンシャル}
);

という関係に対応しているのであった。
などとなる。

ただし、&math(\hat H); は古典力学におけるハミルトニアン、
ただし中に現れる粒子の運動量 &math(\bm p); を &math(\hbar\bm \nabla/i); で置き換えたものである。
量子力学ではハミルトニアンに &math(\bm p\to\frac{\hbar}{i}\bm \nabla);
の置き換えをして、演算子

シュレーディンガー方程式を解いて得られた波動関数の絶対値の二乗が
時刻 &math(t); に粒子を位置 &math(\bm r); を見いだす確率となる。
 &math(
\hat H\big(\bm r_1,\bm r_2,\frac{\hbar}{i}\bm \nabla_{r_1},\frac{\hbar}{i}\bm \nabla_{r_2}\big)=
-\frac{\hbar^2}{2m_1}\nabla_{r_1}^2
-\frac{\hbar^2}{2m_2}\nabla_{r_2}^2
+V(\bm r_1,\bm r_2,t)
);

その他の物理量 &math(O); の期待値 &math(\langle O\rangle); は、
物理量に対応する演算子を &math(\hat O); として次のように与えられる。
を得る。ただし、&math(\nabla_{r_1}^2=\frac{\partial^2}{\partial \bm r_1^2}); は &math(\bm r_1); に対するラプラシアン、&math(\nabla_{r_2}^2=\frac{\partial^2}{\partial \bm r_2^2}); は &math(\bm r_2); に対するラプラシアン、

 &math(\big\langle O(t)\big\rangle=\int\psi(\bm r,t)^\dagger \hat O \psi(\bm r,t) d\bm r);
これが波動関数に作用する演算子となるのであるから、
2粒子系の波動関数は &math(\bm r_1,\bm r_2); の関数であるはずだ。

* 2粒子系の量子力学 [#w3265732]
 2粒子系の波動関数: &math(\Psi(\bm r_1,\bm r_2,t)); 

2つの電子の位置座標をそれぞれ &math(\bm r_1,\bm r_2); とする。
すると、シュレーディンガー方程式は

2粒子系の波動関数を &math(\Psi(\bm r_1,\bm r_2,t)); として、
 &math(i\hbar\frac{\PD}{\PD t}\Psi(\bm r_1,\bm r_2,t)=\hat H\Psi(\bm r_1,\bm r_2,t));

シュレーディンガー方程式を
と書ける。

 &math(i\hbar\frac{\PD}{\PD t}\Psi(\bm r_1,\bm r_2,t)=\hat H\Psi(\bm r_1,\bm r_2,t));
波動関数を大文字にしたのは教科書に合わせるためで、表記上の問題しかない。
教科書では、1粒子波動関数を小文字 &math(\psi,\varphi); で、多粒子波動関数を大文字 
&math(\Psi,\Phi); で表すことになっている。

としたならば、これは1粒子系で学んだ内容の自然な拡張となっており、
事実これが正しい2粒子系のシュレーディンガー方程式である。
波動関数を大文字にしたのは教科書に合わせるためで表記上の問題しかない。
教科書では1粒子波動関数を小文字 &math(\psi,\varphi); で、多粒子波動関数を大文字 &math(\Psi,\Phi); 
で表すことにしている。
 波動関数の絶対値の二乗: &math(\big|\Psi(\bm r_1,\bm r_2,t)\big|^2d\bm r_1d\bm r_2); 

&math(\hat H); は古典力学における2粒子系のハミルトニアンに現れる
2つの粒子の運動量 &math(\bm p_1,\bm p_2); を
&math(\bm\nabla_{\bm r_1}, \bm\nabla_{\bm r_2}); に置き換えたものとなる。
は時刻 &math(t); において、
-粒子1を位置 &math(\bm r_1); の近傍の &math(d\bm r_1); に、
-粒子2を位置 &math(\bm r_2); の近傍の &math(d\bm r_2); に、

>例:~
2粒子がクーロン相互作用しているなら、&math(V(\bm r_1,\bm r_2)=\frac{1}{4\pi\epsilon_0}\frac{e_1e_2}{|\bm r_1-\bm r_2|}); となるから、~
  &math(
\hat H(\bm r_1,\bm r_2,t)=
-\frac{\hbar^2}{2m_1}\bm\nabla_{r_1}^2-\frac{\hbar^2}{2m_2}\bm\nabla_{r_2}^2
+\frac{1}{4\pi\epsilon_0}\frac{e_1e_2}{|\bm r_1-\bm r_2|});~
である。~
見出す確率となる。

シュレーディンガー方程式を解いて得られた波動関数の絶対値の二乗が
時刻 &math(t); に2つの粒子をそれぞれ位置 &math(\bm r_1); および &math(\bm r_2); に見いだす確率となる。
物理量 &math(O(\bm r_1,\bm r_2,\bm p_1,\bm p_2)); の期待値 &math(\overline O); は、
対応する演算子 &math(\hat O(\bm r_1,\bm r_2,\hbar\bm \nabla_{r_1}/i,\hbar\bm \nabla_{r_2}/i)); 
を用いて次のように与えられる。

その他の物理量 &math(O); の期待値 &math(\langle O\rangle); は、
物理量に対応する演算子を &math(\hat O); として次のように与えられる。
 &math(
\overline O(t)=\iint \Psi^*(\bm r_1,\bm r_2,t)\,\hat O\,\Psi(\bm r_1,\bm r_2,t)\,d\bm r_1\,\bm r_2
);

 &math(\langle O(t)\rangle=\iint \Psi^*(\bm r_1,\bm r_2,t)\hat O \Psi(\bm r_1,\bm r_2,t)d\bm r_1\bm r_2);
これらが1粒子系で学んだ内容の自然な拡張となっていることを確認せよ。



* 多粒子系の量子力学 [#ne59b5a9]

位置座表をそれぞれ &math(\bm r_1,\bm r_2,\dots,\bm r_n); として、~
一般の &math(n); 粒子系では、位置座表をそれぞれ &math(\bm r_1,\bm r_2,\dots,\bm r_n); として、
波動関数を &math(\Psi(\bm r_1,\bm r_2,\dots,\bm r_n,t)); とすれば良い。

このときハミルトニアンは例えば次のような形に書けるはずで、

&math(
\hat H(\bm r_1,\bm r_2,t)=
 &math(
\hat H=
\underbrace{\sum_{j=1}^n -\frac{\hbar^2}{2m_j}\bm\nabla_{r_j}^2}_{運動エネルギー}+
\underbrace{V(\bm r_1,\bm r_2,\dots,\bm r_n)\rule[-16.5pt]{0pt}{10pt}}_{ポテンシャルエネルギー}
\underbrace{V(\bm r_1,\bm r_2,\dots,\bm r_n,t)\rule[-16.5pt]{0pt}{10pt}}_{ポテンシャルエネルギー}
);

これを用いてシュレーディンガー方程式はやはり次の形に書ける。

 &math(i\hbar\frac{\PD}{\PD t}\Psi=\hat H\Psi);

波動関数の物理的意味は、時刻 &math(t); において、
それぞれの粒子を位置 &math(\bm r_1,\bm r_2,\dots,\bm r_n); 
の周囲 &math(d\bm r_1,d\bm r_2,\dots,d\bm r_n); 
に見出す確率が &math(|\Psi|^2d\bm r_1\dots d\bm r_n); である。

これまで学んだとおり、1粒子のシュレーディンガー方程式でも
解析的に閉じた解が得られるのは非常に単純な問題に限られており、
そのような場合であっても解を得るには高度な数学を要する。
そのような例外的な場合に限ってさえ、解を得るには高度な数学を要するのであった。

多体のシュレーディンガー方程式を解析的に解くことはほぼ不可能であるため、
様々な近似を用いて1体の問題に直し、さらに近似を用いて1体の問題を解くことにより、
多体のシュレーディンガー方程式を解析的に閉じた形で解くことはほぼ不可能であるため、
様々な近似を用いて1体の問題に直し、さらに近似を用いて複雑な1体問題を解くことにより、
ようやく実験結果と比較できるような理論的予測が得られる。

もう1つ、多体問題ではシュレーディンガー方程式だけでは波動関数が一意に定まらない。
シュレーディンガー方程式に加えて対称性に関する制約を与えて始めて解が一意に定まることになる。
以下この点について考える。


* 同種粒子の不可弁別性 [#q8a2e6f8]

多粒子系において、粒子 &math(j); と &math(k); とが同種の粒子
(たとえば電子)であるとする。
多粒子系の量子力学では%%%シュレーディンガー方程式に加えて%%%、同種の粒子の間に不可弁別性が成り立つことが求められる。

粒子 &math(j); が &math(\bm r_a); に、~
粒子 &math(k); が &math(\bm r_b); に、それぞれ見いだされる確率と、~
~
粒子 &math(j); が &math(\bm r_b); に、~
粒子 &math(k); が &math(\bm r_a); に、それぞれ見いだされる状態と、~
~
は常に等しい、というのが同種粒子の不可弁別性である。
粒子 &math(j); と &math(k); とが同種の粒子なら、
- 粒子 &math(j); が &math(\bm r_a); に、粒子 &math(k); が &math(\bm r_b); に、存在する状態と
- 粒子 &math(j); が &math(\bm r_b); に、粒子 &math(k); が &math(\bm r_a); に、存在する状態と

は物理的に区別されない、同一の状態である、というのが同種粒子の不可弁別性である。

量子力学では観測するまで粒子の位置は決まっていない。

観測した結果、2カ所に電子が見つかったとして、
それらのどちらがどちらの電子かを判別する方法はない。
そもそもそれら2つの状態は区別できない、
として構築した理論が現実をよく再現する。

上記を式で書けば、
したがって、そもそもそれら2つの状態は区別できないものとして扱うべきだ、
とするのが不可弁別性であり、これに基づき構築した理論が現実をよく再現する。

&math(
&\big|\Psi(\dots,\bm r_a,\dots,\bm r_b,\dots,t)\big|^2\\
=&\big|\Psi(\dots,\bm r_b,\dots,\bm r_a,\dots,t)\big|^2\\
&\hspace{1.4cm}^\uparrow_j\hspace{1.1cm}^\uparrow_k
);
すべての粒子に「個別の軌道」が存在することをよりどころとする
古典論とは大きく異なる考え方であることに注意せよ。

すなわち、同種の2つの粒子の位置座標を入れ替えても、波動関数の絶対値は変化せず、
その位相のみが変化する。
またこの要請はシュレーディンガー方程式とは独立に与えられることにも注意せよ。
* 多粒子系の物理量 [#i5550a42]

この位相変化の大きさを見積もるのに、多くの教科書では次のような議論が行われる。
粒子の不可弁別性により、

>位置の入れ替えで生じる位相変化の大きさを &math(C); とする、~
すなわち、~
&math(
C&\Psi(\dots,\bm r_a,\dots,\bm r_b,\dots,t)\\
=\phantom{C}&\Psi(\dots,\bm r_b,\dots,\bm r_a,\dots,t)\\
&\hspace{1.3cm}^\uparrow_j\hspace{1.1cm}^\uparrow_k
);~
もう一度入れ替えると元に戻るから、~
&math(
C^2&\Psi(\dots,\bm r_a,\dots,\bm r_b,\dots,t)\\
=C&\Psi(\dots,\bm r_b,\dots,\bm r_a,\dots,t)\\
=\phantom{C}&\Psi(\dots,\bm r_a,\dots,\bm r_b,\dots,t)\\
&\hspace{1.3cm}^\uparrow_j\hspace{1.1cm}^\uparrow_k
);~
ここから &math(C^2=1); が得られ、&math(C=\pm 1); を得る。~
- 粒子1の位置
- 粒子2の運動量

ただ、&math(C); が &math(\bm r_a, \bm r_b); に依存しない定数であるというのは
それほど自明なことではない。
などの物理量は、「観測可能量」とはならない。

議論を場の量子論などまで進めることにより、&math(C=\pm 1); であることを導ける。
観測可能(定義可能)な物理量としては、

&math(C); が &math(+1); となるか &math(-1); となるかは粒子の種類により異なり、
電子では &math(-1); に、光子では &math(+1); になる。
- 全エネルギー
- 全運動量
- 全角運動量

前者のように &math(C=-1); となる粒子はフェルミ粒子(フェルミオン)と呼ばれ、~
後者のように &math(C=+1); となる粒子はボーズ粒子(ボゾン)と呼ばれる。
のような「全粒子の物理量の総和」や、

フェルミ粒子はスピンが半整数値をとり、~
ボーズ粒子はスピンが整数値をとることも、同時に導かれる。
- ある範囲に入る粒子の数
- 上向きスピンを持つ粒子の数

* パウリの排他律 [#ze677499]
のように「ある条件を満たす粒子数」など、~
「個々の粒子を区別せずに定義できるもの」のみとなる。

フェルミオンに関する著しい性質として、
2つのフェルミオンが同じ座標にいる確率は常にゼロになる。
* 粒子の入れ替え演算子とその固有値 [#o688ef49]

なぜならこの場合、2つの位置座標を入れ替えても関数形が変わらないため、
不可弁別性が成り立つとき、同種粒子 &math(j); と &math(k); とを入れ替えた状態は同じ状態を表すから、

&math(
&\Psi(\dots,\bm r_a,\dots,\bm r_a,\dots,t)=C\Psi(\dots,\bm r_a,\dots,\bm r_a,\dots,t)\\
 &math(
&\big|\Psi(\dots,\bm r_a,\dots,\bm r_b,\dots,t)\big|^2\\
=&\big|\Psi(\dots,\bm r_b,\dots,\bm r_a,\dots,t)\big|^2\\
&\hspace{1.4cm}^\uparrow_j\hspace{1.1cm}^\uparrow_k
);

&math(
&(1-C)\Psi(\dots,\bm r_a,\dots,\bm r_a,\dots,t)=0\\
);
でなければならない。すなわち、

&math(
&2\Psi(\dots,\bm r_a,\dots,\bm r_a,\dots,t)=0\\
 &math(
&\Psi(\dots,\bm r_a,\dots,\bm r_b,\dots,t)\\
=C&\Psi(\dots,\bm r_b,\dots,\bm r_a,\dots,t)\ \ \ ただし |C|=1\\
&\hspace{1.4cm}^\uparrow_j\hspace{1.1cm}^\uparrow_k
);

となり、波動関数の値がゼロになる。
であるから、同種の2つの粒子の座標(一般には空間座標+スピン座標)を入れ替えても、
波動関数の絶対値は変化せず、位相のみが変化することになる。

ボゾンの場合には &math(1-C=0); となるため、必ずしも波動関数はゼロとならず、
同じ座標に複数の粒子が存在できる。
不可弁別性だけが条件であれば、
&math(C); は時刻 &math(t); や位置座標 &math(\bm r_k); の関数であっても構わないのであるが、
実際には以下に見るように、&math(C); の値は粒子の種類によって &math(\pm 1); のどちらか一方を取る。

通常「パウリの排他律」と言った場合には、
「複数のフェルミ粒子が同じ量子状態を占めることはできない」という意味であるが、
根本にある原理は上記と同じである。
* 相互作用のない2つの粒子 [#ec9cc311]
このことを、「関数に作用して粒子 &math(j); と &math(k); の座標入れ替える」
という「座標の入れ替え演算子 &math(\hat P_{jk}); 」を導入して解説する。

例として、遠く離れた2つの水素原子の基底状態を考える。
まず、この &math(\hat P_{jk}); は線形演算子である。

2つの原子が遠く離れていれば、
原子核 1 の周りの電子の確率分布や、原子核 2 の周りの電子の確率分布は、
水素原子が1個しかない場合の確率分布と ほぼ等しいはずである。

孤立水素原子の基底状態の、時間によらない波動関数を &math(\varphi_0(\bm r)); とすれば、

すなわち、~
原子核 1 の周りの電子の存在確率は &math(|\varphi_0(\bm r-\bm R_1)|^2);~
原子核 2 の周りの電子の存在確率は &math(|\varphi_0(\bm r-\bm R_2)|^2);~
とほぼ等しいことになる。ただし、&math(\bm R_1,\bm R_2); は2つの原子核の位置を表す。

そこで、

&math(\varphi_1(\bm r)=\varphi_0(\bm r-\bm R_1));~
&math(\varphi_2(\bm r)=\varphi_0(\bm r-\bm R_2));

と置き、系全体の波動関数を

&math(\Phi_\mathrm{d}(\bm r_1,\bm r_2)=\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2));

としてみると、

&math(|\Phi_\mathrm{d}(\bm r_1,\bm r_2)|^2=|\varphi_1(\bm r_1)|^2|\varphi_2(\bm r_2)|^2);

となり、電子 1 の空間分布は電子 2 の位置によらず &math(|\varphi_1(\bm r_1)|^2); で表され、
電子 2 の空間分布は電子 1 の位置によらず &math(|\varphi_2(\bm r_2)|^2); で表される。

また、系のハミルトニアンは、

&math(
\hat H&=
\underbrace{\left[-\frac{1}{2m}\bm \nabla_{\bm r_1}^2-\frac{1}{4\pi\epsilon_0}\frac{e^2}{|\bm r_1-\bm R_1|}\right]}
_{\displaystyle\hat H_1}
+\underbrace{\left[-\frac{1}{2m}\bm \nabla_{\bm r_2}^2-\frac{1}{4\pi\epsilon_0}\frac{e^2}{|\bm r_2-\bm R_2|}\right]}
_{\displaystyle\hat H_2}
+\underbrace{\cancel{\frac{1}{4\pi\epsilon_0}\frac{e^2}{|\bm r_1-\bm r_2|}}}
_{\displaystyle 相互作用を無視}\\
&=\hat H_1+\hat H_2
 &math(
\hat P_{12}\big[af(\bm r_1,\bm r_2)+bg(\bm r_1,\bm r_2)\big]
&=af(\bm r_2,\bm r_1)+bg(\bm r_2,\bm r_1)\\
&=a\big[\hat P_{12}f(\bm r_1,\bm r_2)\big]+b\big[\hat P_{12}g(\bm r_1,\bm r_2)\big]\\
);

であるから、上記波動関数に作用させれば
したがって、その「固有状態」を考えることができる。
固有関数の1つを &math(\Phi); とすると、

&math(
\hat H\mathit\Phi(\bm r_1,\bm r_2)
&=\hat H_1\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)+\hat H_2\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)\\
&=\big[\hat H_1\varphi_1(\bm r_1)\big]\varphi_2(\bm r_2)
 +\varphi_1(\bm r_1)\big[\hat H_2\varphi_2(\bm r_2)\big]\\
&=\varepsilon\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)+\varepsilon\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)\\
&=2\varepsilon\mathit\Phi(\bm r_1,\bm r_2)
 &math(
\hat P_{jk}&\Phi(\dots,\bm r_a,\dots,\bm r_b,\dots)=C\Phi(\dots,\bm r_a,\dots,\bm r_b,\dots)\\
=&\Phi(\dots,\bm r_b,\dots,\bm r_a,\dots)
);

のように、&math(E=2\varepsilon); の固有関数となっており、時間を含まないシュレーディンガー方程式の解となっていることを表している。
が成り立ち、このとき &math(C); は &math(\hat P_{jk}); の固有値であるから、&math(\bm r_a,\bm r_b); によらない定数である。

ただしこの波動関数はフェルミ粒子に要求される半対称性 &math(\Phi(\bm r_2,\bm r_1)=-\Phi(\bm r_1,\bm r_2)); を満たさない。電子 1 が &math(\bm R_1); 付近に、電子 2 が &math(\bm R_2); 付近に存在することを表す波動関数は不可弁別性を満たさないためだ。
さらに、&math(\hat P_{jk}^2); は恒等変換となるから &math(C^2=1); 
であり、そこから &math(\hat P_{jk}^2); に固有値が存在すれば &math(C=\pm 1); に限られることが分かる。

正しい波動関数は、~
電子 1 が原子核 1 に、電子 2 が原子核 2 に束縛された状態と、~
電子 1 が原子核 2 に、電子 2 が原子核 1 に束縛された状態と、~
を、等しい確率で混ぜ合わせて得られる。
つまり、実際の粒子の波動関数は &math(\hat P_{jk}); の固有関数になる、というのである。

&math(\Phi(\bm r_1,\bm r_2)=C_1\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)+C_2\varphi_2(\bm r_1)\varphi_1(\bm r_2));
* 多粒子ハミルトニアンの対称性 [#jc3b610f]

等確率にするためには &math(|C_1|=|C_2|); とすべきであり、フェルミオンでは &math(\pm C); の形にすればよい。一見、&math(C=1/\sqrt 2); とすれば良さそうであるが、&math(\varphi_1); と &math(\varphi_2); との重なりを完全に無視できない限り上記2つの項は直交しないため、&math(C=1/\sqrt 2); と取っても規格化は達成されない。このことは下でもう少し詳しく見る。
どんな波動関数に対しても &math(C); が時間的依存しない定数となることを多粒子ハミルトニアンの対称性から以下のように導ける。

&math(\Phi(\bm r_1,\bm r_2)=C\big\{\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)-\varphi_1(\bm r_2)\varphi_2(\bm r_1)\big\});
2つの陽子の位置を &math(\bm R_1,\bm R_2); に固定した水素様「分子」の2つの電子に対するポテンシャルは、それぞれの座標を &math(\bm r_1,\bm r_2); として

この波動関数が &math(\Phi(\bm r_2,\bm r_1)=-\Phi(\bm r_1,\bm r_2)); を満たすことは容易に確かめられる。
 &math(
V(\bm r_1,\bm r_2)&=\frac{e^2}{4\pi\epsilon_0}\Biggl[
\underbrace{
\frac{-1}{|\bm r_1-\bm R_1|}+
\frac{-1}{|\bm r_1-\bm R_2|}}_{電子1と原子核}+
\underbrace{
\frac{-1}{|\bm r_2-\bm R_1|}+
\frac{-1}{|\bm r_2-\bm R_2|}}_{電子2と原子核}+
\underbrace{\frac{+1}{|\bm r_1-\bm r_2|}}_{電子間相互作用}
\Biggr]\\
&=V_{1体}(\bm r_1)+V_{1体}(\bm r_2)+V_{2体}(\bm r_1,\bm r_2)
); 

以上が1粒子の波動関数から粒子の不可弁別性を考慮して2粒子の波動関数を作る際の標準的な手順となる。
と書ける。

※ボーズ粒子であれば、&math(C_1=C_2=C); と取ればよい。
このポテンシャルが2つの電子の位置座標 &math(\bm r_1,\bm r_2); 
の入れ替えに対して対称性を持っている(値が変わらない)ことに注意せよ。

** 確率分布 [#y920ce4b]
 &math(\hat P_{12}V(\bm r_1,\bm r_2)&=V(\bm r_2,\bm r_1)\\
&=V(\bm r_1,\bm r_2));

&math(
\Big|\Phi(\bm r_1,\bm r_2)\Big|^2 &=C^2\Big[
\big|\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)\big|^2+\big|\varphi_1(\bm r_2)\varphi_2(\bm r_1)\big|^2
-\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)\varphi_1^*(\bm r_2)\varphi_2^*(\bm r_1)
-\varphi_1^*(\bm r_1)\varphi_2^*(\bm r_2)\varphi_1(\bm r_2)\varphi_2(\bm r_1)
\Big]\\
&=C^2\Big[
\big|\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)\big|^2+\big|\varphi_1(\bm r_2)\varphi_2(\bm r_1)\big|^2
-2\,\mathrm{Re}\Big\{\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)\varphi_1^*(\bm r_2)\varphi_2^*(\bm r_1)\Big\}
\Big]\\
);
したがって、ハミルトニアンも入れ替えに対して対称になる。

1粒子の時間によらない波動関数は常に実数に取れることを利用すると、
2粒子に限らず一般に、ハミルトニアンは同種粒子の入れ替えに対して対称な形をしている。~
 ↔ 質量やポテンシャル=相互作用が異なる粒子は「同種」と言えない

&math(
\Big|\Phi(\bm r_1,\bm r_2)\Big|^2 
&=C^2\Big[
\big|\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)\big|^2+\big|\varphi_1(\bm r_2)\varphi_2(\bm r_1)\big|^2
-2\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)\varphi_1(\bm r_2)
\Big]\\
);
粒子 &math(j,k); が同種粒子であれば &math(\hat P_{jk}); は &math(\hat H); と可換となる。なぜなら、任意の &math(\Psi); に対して、

ここから、粒子1の確率分布を求めると、

&math(
P(\bm r_1)
&=\int\Big|\Phi(\bm r_1,\bm r_2)\Big|^2 d\bm r_2\\
&=C^2\Big[
\big|\varphi_1(\bm r_1)\big|^2\int\big|\varphi_2(\bm r_2)\big|^2d\bm r_2+\big|\varphi_2(\bm r_1)\big|^2\int\big|\varphi_1(\bm r_2)\big|^2d\bm r_2
-2\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_1)\int\varphi_2(\bm r_2)\varphi_1(\bm r_2)d\bm r_2
\Big]\\
&=C^2\Big[
\big|\varphi_1(\bm r_1)\big|^2+\big|\varphi_2(\bm r_1)\big|^2
-2\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_1)\int\varphi_2(\bm r_2)\varphi_1(\bm r_2)d\bm r_2
\Big]\\
 &math(
\hat P_{jk}\big\{\hat H\Psi\big\}=\big\{\hat P_{jk}\hat H\big\}\big\{\hat P_{jk}\Psi\big\}=\hat H\big\{\hat P_{jk}\Psi\big\}
);

&math(\varphi_1); と &math(\varphi_2); とが直交する場合には
&math(\int\varphi_2(\bm r_2)\varphi_1(\bm r_2)d\bm r_2=0); であるから
第3項は消えて、
すなわち、

&math(
P(\bm r_1)
&=\frac{1}{2}\Big[
\big|\varphi_1(\bm r_1)\big|^2+\big|\varphi_2(\bm r_1)\big|^2
\Big]\\
);
 &math(\hat P_{jk}\hat H=\hat H\hat P_{jk}); あるいは &math([\hat P_{jk},\hat H]=0); 

粒子の確率分布は単に &math(|\varphi_1|^2); と &math(|\varphi_2|^2); 
の平均値となる。
このことから、

一方、&math(\varphi_1); と &math(\varphi_2); とが直交しない場合には、
&math(\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_1)); がゼロと見なせない領域、つまり
&math(\varphi_1); と &math(\varphi_2); とが両方ともゼロと見なせない領域で、
&math(|\varphi_1|^2); と &math(|\varphi_2|^2); の平均値からずれることになる。
((&math(\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_1)); がゼロと見なせない領域が存在することは、2つの粒子が相互作用をしないという仮定に反することになるため近似の精度には注意が必要である))
+ 両者の同時固有関数が存在すること(← [[不確定性原理>量子力学Ⅰ/不確定性原理#hb461116]] で学んだ)
+ &math(\hat P_{jk}); に対応する物理量は定数であり、時間によらないこと~
&math(\frac{d}{dt}\langle C\rangle=\frac1{i\hbar}[\hat P_{jk},\hat H]=0);~
(← 近い内容を[[エーレンフェストの定理>量子力学Ⅰ/エーレンフェストの定理#j882b192]]で学んだ)

2つの波動関数を水素原子の基底状態を模して &math(\propto e^{-|\bm r-\bm R|});
と置き、&math(P(\bm r_1)); を計算した結果を以下に示す。
が結論される。

2つの波動関数が両方とも値を持つことになる中央部で不自然に確率分布が小さくなっている他は、
おおむね1粒子波動関数を足し合わせた分布が再現されていることが分かる。
すなわち、時間に寄らないシュレーディンガー方程式の解(ハミルトニアンの固有関数)であり、
なおかつ &math(\hat P_{jk}); の固有状態となるような波動関数が存在する。
現実の(非定常な)波動関数はそのような同時固有状態の線形結合で表される。

&ref(two-hydrogens-2d.png);
そして、系がある時刻において &math(\hat P_{jk}); の固有状態にあれば、
時刻が変化してもやはり同じ固有値(&math(+1); または &math(-1);)
の固有状態のままである。

&ref(two-hydrogens-profile.png);
* ボゾンとフェルミオンの対称性・反対称性 [#s491e79c]

#collapsible(Mathematica ソース);
場の量子論などの進んだ研究から、
多粒子系の波動関数はシュレーディンガー方程式の解になることに加えて
任意の同種粒子に対する入替操作 &math(\hat P_{jk}); に対する
固有関数になっているという条件も満たさねばならないことが知られている。

 LANG:mathematica
 phi[x_, q_, d_] := Exp[-Sqrt[(x - d)^2 + q^2]]
 
 phi1 = Compile[{x1, q1, d}, 
    NIntegrate[
     2 Pi q2 (phi[x1, q1, d] phi[x2, q2, -d] - 
        phi[x1, q1, -d] phi[x2, q2, d]),
     {x2, -100.0, 100.0}, {q2, 0, 100.0}]];
 
 image = Table[phi1[x, q, 3], {x, 0, 10, 0.1}, {q, 0, 5, 0.1}];
 
 ListDensityPlot[
  Flatten[Table[{x, q, 
     image[[Abs[Round[x/0.1]] + 1]][[Abs[Round[q/0.1]] + 1]]}, {x, -10,
      10, 0.1}, {q, -5, 5, 0.1}], 1], PlotRange -> All, 
  AspectRatio -> 1/2]
 
 profile = Table[phi1[x, 0, 3], {x, 0, 10, 0.01}];
 
 ListPlot[Table[{x, profile[[Abs[Round[x/0.01]] + 1]]}, {x, -10, 10, 
    0.01}], PlotRange -> All]
 
#collapsible();
* スレーター行列式 [#o506f6bd]
例えば電子2個、光子2個からなる系の波動関数 &math(\Psi); について、
&math(1); 番目と &math(2); 番目が電子であれば &math(\hat P_{12}); に対する固有値は &math(-1); となり、&math(3); 番目と &math(4); 番目が光子であれば、&math(\hat P_{34}); に対する固有値は &math(+1); となる。したがって、この波動関数は、

上でフェルミオンの波動関数が以下の性質を持っていることを学んだ。
 &math(\hat H\Psi=E\Psi);~
 &math(\hat P_{12}\Psi=-\Psi);~
 &math(\hat P_{34}\Psi=\Psi);

- 座標を入れ替えると符号が反転する
- 同じ座標が2つ以上あるとゼロになる
を満たさなければならないことになる。(本当は、光子などを扱うには相対論的効果や生成・消滅過程を考慮した記述が必要になるため この書き方はかなりあやうい。雰囲気だけ読み取って欲しい。)

これは行列式の以下の性質とよく似ている。
入れ替え演算子の固有値は &math(C=\pm 1); に限られるのであった:

- 2つの行を入れ替えると符号が反転する
- 同じ行が2つ以上あるとゼロになる
- &math(C=-1); となる粒子はフェルミ粒子(フェルミオン)と呼ばれる~
→ スピンは半整数値を取る
-- 素粒子とされるクォーク(通常単独では存在しない)やレプトン(電子やニュートリノなど)
-- 3つのクォークからなるハドロン(陽子や中性子など)
-- 奇数個のフェルミオンが硬く結びついた粒子(He^^3^^ 原子 = 陽子×2+中性子×1+電子×2 など)~
 → そのような粒子の入れ替えはフェルミオンの奇数回の入れ替えに分解できる~
~
- &math(C=+1); となる粒子はボーズ粒子(ボゾン)と呼ばれる~
→ スピンは整数値を取る
-- 素粒子の間の相互作用を媒介するゲージ粒子である光子やウィークボソン、グルーオンなど(それぞれ電磁気力、弱い力、強い力を媒介)
-- 偶数個のフェルミオンが強く結びついた粒子(超流動を生じる He^^4^^ 原子 = 陽子×2+中性子×2+電子x2、超伝導を担うクーパー対 = 電子×2 など)~
 → そのような粒子の入れ替えはフェルミオンの偶数回の入れ替えに分解できる
-- フォノンやプラズモンなど、集団励起状態を表す準粒子

実際、上で見た2電子の波動関数は
すべての量子力学的粒子はこのどちらかに属する。

&math(
\Phi(\bm r_1,\bm r_2)
&=\frac{1}{\sqrt 2}\Big[\varphi_1(\bm r_1)\varphi_2(\bm r_2)-\varphi_1(\bm r_2)\varphi_2(\bm r_1)\Big]\\
&=\frac{1}{\sqrt 2}\left|\begin{matrix}
\varphi_1(\bm r_1) & \varphi_1(\bm r_2) \\
\varphi_2(\bm r_1) & \varphi_2(\bm r_2) \\
\end{matrix}\right|
);
重要なことなのでもう一度書くと、粒子の入れ替えに対する
フェルミ粒子の反対称性 &math(\hat P_{jk}\Psi=-\Psi); や
ボーズ粒子の対称性 &math(\hat P_{jk}\Psi=\Psi); 
は、「シュレーディンガー方程式とは独立した基本原理」であるから、
多粒子系の波動関数を求める際には、それがシュレーディンガー方程式を満たすことに加えて、
これらの対称性を備えていることも確認しなければならない。

のように2×2の行列式の形に表せる。
以下では主に電子を想定して、フェルミオンについて主に学ぶ。
ボゾンについては付録的に述べる。

一般の多粒子系においても、
** 波動関数の一意性 [#t95bbee6]

&math(
\Phi(\bm r_1,\bm r_2,\dots,\bm r_n)
&=\frac{1}{\sqrt{n!}}\left|\begin{matrix}
\varphi_1(\bm r_1) & \varphi_1(\bm r_2) & \dots  & \varphi_1(\bm r_n) \\
\varphi_2(\bm r_1) & \varphi_2(\bm r_2) &        & \vdots \\
\vdots             &                    & \ddots & \vdots \\
\varphi_n(\bm r_1) & \dots              & \dots  & \varphi_n(\bm r_n) \\
\end{matrix}\right|
);
逆に言えば、与えられたポテンシャルに対してシュレーディンガー方程式(+境界条件+規格化条件)だけでは
数学的に波動関数を一意に定めることはできず、
対称性を指定して始めて波動関数が1つに定まるのである(位相因子を除いて)。
* パウリの排他律1 [#ze677499]

とすることで、相互作用を無視できる &math(n); 個の粒子の波動関数を1粒子の波動関数から作れる。
フェルミオンに関する著しい性質として、
2つのフェルミオンが同じ座標を取る確率は常にゼロになる。

この右辺に現れる行列式はスレーター行列式と呼ばれる。
なぜならこの場合、2つの位置座標を入れ替えても形が変わらないため、

行列式の定義により、右辺には &math(n!); 個の項が現れる。
それぞれの項は、&math(n); 個の粒子をそれぞれどの1粒子状態に割り当てるか、
の割り当て方の1つ1つに対応し、その割り当て方は &math(n!); 通り存在する。
それらに適切な符号を付け、均等に加えたのがスレーター行列式である。
 &math(
\Psi(\dots,\bm r_a,s_a,\dots,\bm r_a,s_a,\dots,t)=C\Psi(\dots,\,&\bm r_a,s_a,\dots,\bm r_a,s_a,\dots,t)\\
&\ \ \uparrow\hspace{17mm}\uparrow\\
&\ \ \ 入れ替えた
);

&math(
\Phi(\bm r_1,\bm r_2,\dots,\bm r_n)
&=\frac{1}{\sqrt{n!}}\sum_{(p_1\ p_2\ \cdots\ p_n)}\sigma(p_1\ p_2\ \cdots\ p_n)
\varphi_1(\bm r_{p_1})\varphi_2(\bm r_{p_2})\dots\varphi_n(\bm r_{p_n})
 &math(
&(1-C)\Psi(\dots,\bm r_a,s_a,\dots,\bm r_a,s_a,\dots,t)=0\\
);

※ボゾンの場合には各項の符号を与える &math(\sigma(p_1\ p_2\ \cdots\ p_n)); の部分を &math(+1); 
に置き換えればよい
フェルミオン &math(C=-1); では

* 平均場近似 [#sbab0752]
 &math(
&2\Psi(\dots,\bm r_a,s_a,\dots,\bm r_a,s_a,\dots,t)=0\\
);

上記のように1粒子状態を複数集めて他粒子状態を作れるためには、
粒子間の相互作用がないことを仮定しなければならないが、
それでは興味のある問題は1つも解けないことになってしまう。
となり、波動関数の値がゼロであることが導かれるためだ。
これはパウリの排他律の一例となっている。

そこで、擬似的に相互作用をなくすために他の粒子からの相互作用を平均化してしまい、
ポテンシャル &math(V); に含めてしまうことが行われる。
ここで、&math(s_?); はスピン座標である。この授業ではスピンについて深く学ばないが、
スピンが異なれば波動関数値が異なって構わないため、ここで言う「同じ座標」とは、
「同じ空間座標かつ同じスピン」という意味に捉えて欲しい。

例えば、粒子 1 が &math(\bm r_1); にある際に他の粒子から受けるポテンシャルは、
ボゾンの場合には &math(1-C=0); となるため、必ずしも波動関数はゼロとならず、
同じ座標に複数の粒子が存在できる。

&math(V(\bm r_1,\bm r_2,\dots,\bm r_n));
* 質問・コメント [#t9e105fe]

であるはずのところを、
#article_kcaptcha

&math(V_1(\bm r_1)=\int\dots\int V(\bm r_1,\bm r_2,\dots,\bm r_n)\ |\Phi(\bm r_1',\bm r_2,\dots,\bm r_n)|^2\,d\bm r_1'd\bm r_2d\bm r_3\dots d\bm r_n);

としてしまったのが「平均場」である。

粒子 &math(j); に対する平均場を &math(V_j(\bm r_j)); と書けば、この粒子の運動は

&math(\left[-\frac{\hbar^2}{2m}\nabla^2+V_j(\bm r_j)\right]\phi_j(\bm r_j)=\varepsilon_j\phi_j(\bm r_j));

という1体問題の波動方程式を解くことで得られる。

とはいえ &math(\rho(\bm r_2,\bm r_2,\dots,\bm r_n)); が未知である限り上記の方程式は決定されないのであるが、上記の方程式の解を使えば

 &math(\rho(\bm r_2,\bm r_2,\dots,\bm r_n)=|\varphi_2(\bm r_2)|^2\,|\varphi_3(\bm r_3)|^2\dots|\varphi_n(\bm r_n)|^2);

などと書けることから、&math(\varphi_j(\bm r_j)); をうまく決めて上記の1体ポテンシャルと波動方程式が自己無矛盾(=自己無撞着=セルフコンシステント)に解けたとすれば、その波動方程式が平均場近似の下での「正しい波動関数」であると言える。

このように、相互作用する多粒子に対する問題を、平均化された場の中を運動する1体問題として近似し、平均場と波動方程式をセルフコンシステントに解く方法を「平均場近似による方法」と呼ぶ。

多体問題をそのまま解くことはほぼ不可能であるため、量子力学における多体問題はほぼ必ず平均場近似を用いて議論される。


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