射影・直和・直交直和 のバックアップソース(No.4)

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#contents

* ベクトルの成分 [#x61c2758]

ある規格化されたベクトル &math(\bm e); が与えられ、~
別のベクトル &math(\bm x); を 
&math(\bm e); に平行な成分 &math(\bm x_{\parallel}); と、
&math(\bm e); に平行な成分 &math(\bm x_{\perp}); とに分けることを考える。

&math(\bm x=\bm x_{\parallel}+\bm x{\perp});

&math(\bm x_{\parallel}); は &math(\bm e); と平行なので、

&math(\bm x_{\parallel}=x_{\parallel} \bm e); 

と書き直すと、

&math(\bm x=x_{\parallel}\bm e+\bm x{\perp});

両辺に左から &math(\bm e); をかけることで、

&math((\bm e,\bm x)=x_{\parallel});

が得られ、

&math(\bm x_{\parallel}=(\bm e,\bm x)\bm e);~
&math(\bm x_{\perp}=\bm x-\bm x_\parallel=\bm x-(\bm e,\bm x)\bm e);

としてこれらのベクトルを求められる。~
(同じことをグラム・シュミットの直交化の中で行った)

この &math(\bm x_\parallel); を &math(\bm x); の &math(\bm e); 方向成分と呼ぶ。

*** 注意 [#s8228082]

複素ベクトルに対しては &math((\bm x,\bm e)\ne(\bm e,\bm x)); なので、
どちらから掛けるかが重要になる。

&math((\bm e,\bm x)=(\bm e,x_\parallel \bm e)=x_{\parallel}); だが、~
&math((\bm x,\bm e)=(x_\parallel \bm e,\bm e)=\overline{x_{\parallel}}); となってしまう。

* 射影演算子 [#c9c77b82]

&math(
\bm x_{\parallel}&=(\bm e,\bm x)\bm e\\
&=\bm e (\bm e,\bm x)\\
&=\bm e \bm e^\dagger \bm x\\
&=P_{\bm e} \bm x
);

ただし、&math(P_{\bm e}=\bm e\bm e^\dagger); である。

この行列は &math(\bm x); から &math(\bm e); 方向成分を取り出す行列となる。

&math(P_{\bm e}); を &math(\bm e); 軸への射影演算子と呼ぶ。

** 射影演算子はエルミート行列になる。 [#tee56cfe]

&math(\big(P_{\bm e}\big)_{ij}=e_j \overline{e_i});

&math(\big(P_{\bm e}\big)_{ji}=e_i \overline{e_j}=\overline{(e_j \overline{e_i})});

より、&math(\big(P_{\bm e}\big)_{ji}=\overline{\big(P_{\bm e}\big)_{ij}});

* 直和 [#u527a7fd]

あるベクトルを「成分」に分ける話を一般化する。

&math(W_1,W_2,\dots,W_r); を &math(V); の部分空間とし、~
各 &math(W_k); の基底をすべて合わせると &math(V); の基底となる場合、~
その基底を &math(B=\langle\bm b_1,\bm b_2,\dots,\bm b_n\rangle); とすると、

&math(
\bm x&=\underbrace{x_1\bm b_1+x_2\bm b_2}_{\bm x_1\in W_1}
+\underbrace{x_3\bm b_3+\ \ }_{\bm x_2\in W_2}
\dots\underbrace{\ \ +x_n\bm b_n}_{\bm x_r\in W_r}\\
&=\bm x_1+\bm x_2+\dots+\bm x_r
);

のように、&math(\{W_k\}); のベクトル &math(\{\bm x_k\}); 
(&math(W_k);成分)の和として一意に表せる。

このような場合に
&math(V=W_1\dot +W_2\dot +W_3\dot +\dots\dot +W_r); と書き、~
&math(V); は &math(W_1,W_2,\dots,W_r); の直和である、という。

具体的な &math(\bm x_k); の値を求めるには、
基底 &math(B); に対する &math(\bm x); の成分をすべて求めないとならないが、
一般にこれはそれほど簡単ではない。

** 例 [#cfcc0b83]

&math(\mathbb R^2); の部分空間、~
&math(V=\set{\bm x\in \mathbb R^2|\bm x=t{\textstyle\begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix}},t\in \mathbb R}); ~
&math(W=\set{\bm x\in \mathbb R^2|\bm x=t{\textstyle\begin{pmatrix}1\\1\end{pmatrix}},t\in \mathbb R}); ~

に対して、&math(\mathbb R^2=V\dot +W); である。

&attachref(直和.png,,33%);

この場合、&math(\bm x=\bm x_V+\bm x_W); に分けようとして、
&math(\bm x_V=\Big(\begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix},\bm x\Big)); 
などとしたのではうまく行かないことが分かる。

** (発展)和空間との関係 [#lf9a2deb]

&math(V); の部分空間 &math(W_1,W_2,\dots,W_r); に対して、
&math(W_1,W_2,\dots,W_r); を含む最小の線形空間を
これらの空間の和空間と呼び、&math(W_1+W_2+\dots+W_r); と書く。

&math(V=W_1\dot +W_2\dot +\dots\dot +W_r); 

であること(直和であること)と、

&math(V=W_1+W_2+\dots+W_r); かつ &math(\dim V=\dim W_1+\dim W_2+\dots+\dim W_r); 

であること、あるいは、

&math(V=W_1+W_2+\dots+W_r); かつ &math(W_1,W_2,\dots,W_r); が &math(\bm 0); 意外に共通の元を持たないこと

とは同値である。

* 直交直和 [#d251a548]

各 &math(W_k); の''正規直交''基底をすべて合わせると &math(V); の''正規直交''基底となる場合、
&math(V=W_1\oplus W_2\oplus W_3\oplus \dots\oplus W_r); と書き、~
&math(V); は &math(W_1,W_2,\dots,W_r); の直交直和である、という。

このとき、&math(\bm x_i\in W_i); と &math(\bm x_j\in W_j); は &math((\bm x_i,\bm x_j)=0); となる。
ただし &math((i\ne j));

ベクトル &math(\bm x); の &math(W_k); 成分 &math(\bm x_k); は &math(W_k); の正規直交基底を &math(\bm e_1,\bm e_2,\dots,\bm e_m); とすると、

&math(\bm x_k=\sum_{i=1}^m \bm e_i\bm e_i^\dagger \bm x);

と表せるから、&math(P_{W_k}=\sum_{i=1}^m \bm e_i\bm e_i^\dagger); が 
&math(W_k); への射影演算子となる。エルミート演算子の和はエルミートなので、
これもエルミート演算子になる。

&math(V=W_1\oplus W_2); のとき、&math(W_2); を &math(W_1); の直交補空間と呼び、
&math(W_2=W_1^\perp); と書く。

** 例1 [#mfbb4345]

&math(\mathbb R^3); の部分空間として
&math(\bm a=\begin{pmatrix}1\\2\\3\end{pmatrix},\bm b=\begin{pmatrix}-1\\0\\1\end{pmatrix}); で張られる空間 &math(V=[\bm a,\bm b]\in \mathbb R^3);を考える。

&math(\mathbb R^3); から &math(V); への射影演算子を求めよ。

解答:

&math(\bm b,\bm a); からシュミットの直交化を用いて正規直交系を作る。

&math(\bm e_1=\frac{1}{\|\bm b\|}\bm b=\frac{1}{\sqrt 2}\begin{pmatrix}-1\\0\\1\end{pmatrix});

&math(
\bm f_2
&=\bm a-(\bm e_1,\bm a)\bm e_1\\
&=\bm a-\bm e_1\bm e_1^\dagger\bm a\\
&=\begin{pmatrix}1\\2\\3\end{pmatrix}
-\frac{1}{2}\begin{pmatrix}-1\\0\\1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}-1&0&1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}1\\2\\3\end{pmatrix}\\
&=\begin{pmatrix}1\\2\\3\end{pmatrix}-\begin{pmatrix}-1\\0\\1\end{pmatrix}\\
&=\begin{pmatrix}2\\2\\2\end{pmatrix}

);

&math(
\bm e_2=\frac{1}{\|\bm f_2\|}\bm f_2=\frac{1}{\sqrt{3}}\begin{pmatrix}1\\1\\1\end{pmatrix}
);

したがって、求める射影演算子は

&math(
P_V&=\bm e_1\bm e_1^\dagger+\bm e_2\bm e_2^\dagger\\
&=\frac{1}{2}\begin{pmatrix}-1\\0\\1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}-1&0&1\end{pmatrix}
+ \frac{1}{3}\begin{pmatrix}1\\1\\1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}1&1&1\end{pmatrix}\\
&=\frac{1}{2}\begin{pmatrix}1&0&-1\\0&0&0\\-1&0&1\end{pmatrix}
+ \frac{1}{3}\begin{pmatrix}1&1&1\\1&1&1\\1&1&1\end{pmatrix}\\
&=\frac{1}{6}\begin{pmatrix}5&2&-1\\2&2&2\\-1&2&5\end{pmatrix}
);

各射影演算子がエルミート(実数行列では対称)になっていることにも注目。

** 例2 [#tac0cf13]

3次元空間に原点を通る平面 &math(x+y+z=0); を考える。
この平面への射影演算子を求めよ。

* 質問・コメント [#m8a71c0e]

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