三次元空間での散乱現象 のバックアップソース(No.4)

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[[量子力学Ⅰ]]

* 三次元空間での散乱現象 [#u8667d1b]

実験的に意味のある散乱現象は、静止した粒子に高速で別の粒子が衝突するような過程である。
そのような物理現象を理論的に扱うには重心座標を用いて2粒子の相対運動を記述するのが常套手段となる。

ここではそのような問題を単純化して、静的で局所的なポテンシャル &math(V(\bm r)); に粒子が入射し、
散乱されるような現象を考える。

ポテンシャルは局所的であるから遠く離れた位置では粒子は自由運動する。
入射粒子はそのような遠方において運動量が確定しており、すなわち平面波で表される。

 &math(\psi_I(\bm r,t)=e^{i(\bm k_0\cdot\bm r-\omega_0t)});

粒子の流量が少ない極限では、散乱波の振幅は入射波の振幅に比例するから、
そのような極限においては入射波の振幅は任意に取ってよい。そこでここでは振幅を1とした。

標的となるポテンシャルにより散乱された波は、1次元の場合と異なり標的から3次元的に広がる。

散乱による入射波以外の成分、つまり散乱波および入射波の減衰を表す波動関数を 
&math(g(\bm r)); とすれば、入射波と散乱波とを合わせた全体としての波動関数は

 &math(\psi(\bm r,t)=e^{i\bm k_0\cdot\bm r}+g(\bm r,t));

のように書ける。

解くべきシュレーディンガー方程式は

 &math(i\hbar\frac{\PD}{\PD t}\psi(\bm r,t)=\left\{-\frac{\hbar^2}{2m}\nabla^2+V(\bm r)\right\}\psi(\bm r,t));

である。定常的な粒子の流れが実現している状況では波動関数の絶対値は時間によらないから、
定常状態についてのシュレーディンガー方程式と同様に変数分離を行い、

 &math(\left\{-\frac{\hbar^2}{2m}\nabla^2+V(\bm r)\right\}\varphi(\bm r)=\varepsilon\varphi(\bm r));

を解けばよいことになる。

* ボルン近似 [#p81b7a92]

ボルン近似では散乱ポテンシャル &math(V(\bm r)); が小さく、
そのため散乱波 &math(g(\bm r)); も小さいものとし、それらの低次の項のみを残して議論を行う。

上記のシュレーディンガー方程式に波動関数を代入して整理すれば、

 &math(\left\{-\frac{\hbar^2}{2m}\nabla^2+V(\bm r)-\varepsilon\right\}\left\{e^{i\bm k_0\cdot\bm r}+g(\bm r)\right\}=0);

このうち2次の微小量となる &math(V(\bm r)g(\bm r)); を落とせば、

 &math(
\left(\frac{\hbar^2}{2m}\nabla^2+\varepsilon\right)g(\bm r)=\left\{\frac{\hbar^2}{2m}k_0^2+V(\bm r)-\varepsilon\right\}e^{i\bm k_0\cdot\bm r}
);

&math(\varepsilon=\frac{\hbar^2k_0^2}{2m}); を代入すれば、

 &math(
\frac{\hbar^2}{2m}\left(\nabla^2+k_0^2\right)g(\bm r)=V(\bm r)e^{i\bm k_0\cdot\bm r}
);

となって、左辺の &math(g(\bm r)); が未知の関数、
右辺は既知の関数である。

* グリーン関数 [#i189bfd3]

上記のような方程式を解くための便利な方法として、グリーン関数を用いる方法がある。

一般に、ある線形な演算子 &math(\hat L); と既知の関数 &math(f(\bm r)); に対して、

 &math(\hat L g(\bm r)=f(\bm r));

を満たす &math(g(\bm r)); を求めたい場合、もし

 &math(\hat L G(\bm r)=\delta^3(\bm r));

となるような関数 &math(G(\bm r)); を適切な境界条件のもとで求められれば、
元の方程式の解 &math(g(\bm r)); を、

 &math(g(\bm r)=\iiint f(\bm r')G(\bm r-\bm r') d\bm r');

と表せる。

この &math(g(\bm r)); が元の方程式を満たすことは、

 &math(
\hat L g(\bm r)&=\iiint f(\bm r')\hat LG(\bm r-\bm r') d\bm r'\\
&=\iiint f(\bm r')\delta^3(\bm r-\bm r') d\bm r'\\
&=f(\bm r)
);

として確かめられる。&math(\hat L); は &math(\bm r); に対する微積分を含む可能性があるが、
&math(\bm r'); に対しては透過的であることに注意せよ。

グリーン関数 &math(G(\bm r)); が求まれば、
任意の &math(f(\bm r)); に対する解を微分方程式を解くことなく、
積分だけで求められることになる。

* 3次元の散乱現象のグリーン関数 [#vef9ba03]

 &math(G(\bm r)=\frac{e^{ik_0 r}}{r}\hspace{1.5cm}\left(\ne\frac{e^{i\bm k_0\cdot\bm r}}{r}\right));

と置けば、この関数が

 &math(
\left(\nabla^2+k_0^2\right)G(\bm r)=-4\pi\delta^3(\bm r)
);

を満たすことを確かめよう。

&math(r); の関数に対して、&math(\frac{\PD}{\PD x}=\frac{\PD r}{\PD x}\frac{d}{dr}=\frac{x}{r}\frac{d}{dr}); であることに注意して、

 &math(\frac{\PD}{\PD x}\frac{e^{ik_0r}}{r}=\frac{x}{r}\left(\frac{ik_0e^{ik_0r}}{r}-\frac{e^{ik_0r}}{r^2}\right));

 &math(
\frac{\PD^2}{\PD x^2}\frac{e^{ik_0r}}{r}=\left[\frac{ik_0e^{ik_0r}}{r^2}-\frac{e^{ik_0r}}{r^3}\right]
+\frac{x^2}{r}\left[\frac{-k_0^2e^{ik_0r}}{r^2}-\frac{2ik_0e^{ik_0r}}{r^3}-\frac{ik_0e^{ik_0r}}{r^3}+\frac{3e^{ik_0r}}{r^4}\right]
);

 &math(
\nabla^2\frac{e^{ik_0r}}{r}&=\cancel{\frac{3ik_0e^{ik_0r}}{r^2}}-\cancel{\frac{3e^{ik_0r}}{r^3}}
+\cancel{\frac{x^2+y^2+z^2}{r^2}}\left[\frac{-k_0^2e^{ik_0r}}{r}-\cancel{\frac{3ik_0e^{ik_0r}}{r^2}}+\cancel{\frac{3e^{ik_0r}}{r^3}}\right]\\
&=-k_0^2\frac{e^{ik_0r}}{r}
);

したがって、&math(\frac{e^{ik_0r}}{r}); が微分可能な、原点以外においては、

 &math(
\left(\nabla^2+k_0^2\right)G(\bm r)=0
);  (&math(r\ne 0);)

であり、この関数がデルタ関数であることと矛盾しない。

これを用いると、

 &math(
I&=\iiint\left(\nabla^2+k_0^2\right)\frac{e^{ik_0r}}{r}d\bm r\\
&=\int_0^\infty 4\pi r^2\left(\nabla^2+k_0^2\right)\frac{e^{ik_0r}}{r}dr\\
&=\lim_{\delta\to +0}\int_0^\delta 4\pi r^2\left(\nabla^2+k_0^2\right)\frac{e^{ik_0r}}{r}dr\\
);

&math(r\to 0); において &math(e^{ik_0r}\to 1); であるから、

 &math(
I&=\lim_{\delta\to +0}\int_0^\delta 4\pi r^2\left(\nabla^2+k_0^2\right)\frac{1}{r}dr\\
&=\lim_{\delta\to +0}\int_0^\delta 4\pi r^2\bm\nabla\cdot\Big(\bm\nabla\frac{1}{r}\Big)dr
+\lim_{\delta\to +0}\int_0^\delta 4\pi k_0^2r\,dr\\
&=\int_S \Big(\bm\nabla\frac{1}{r}\Big)\cdot\bm n\,dS
+\underbrace{\lim_{\delta\to +0}\left[2\pi k_0^2r^2\right]_0^\delta}_{=\,0}\\
&=\int_S -\frac{\bm r}{r^3}\cdot\bm n\,dS\\
&=\int_S -\frac{\bm n\cdot\bm n}{r^2}\,dS\\
&= -\frac{1}{r^2}\cdot 4\pi r^2\\
&=-4\pi
);

したがって、

 &math(
\left(\nabla^2+k_0^2\right)G(\bm r)=-4\pi\delta^3(\bm r)
);

が確かめられた。

* 散乱源から遠い個所での振幅 [#n42a9aab]

上で求めたグリーン関数を用いれば、

 &math(
g(\bm r)=-\frac{1}{4\pi}\frac{2m}{\hbar^2}\iiint\frac{e^{ik_0|\bm r-\bm r'|}}{|\bm r-\bm r'|}V(\bm r')e^{i\bm k_0\cdot\bm r'}d\bm r'
);

と表せる。

さらに、&math(V(\bm r)); が原点から近くにしか値を持たないことを仮定して、
散乱源から遠い個所での振幅を求める場合には、
&math(r'\ll r); が成り立つから、&math(r'/r); の1次までの近似において、

 &math(
|\bm r-\bm r'|=&\sqrt{(\bm r-\bm r')\cdot(\bm r-\bm r')}\\
=&\,\sqrt{r^2-2\bm r\cdot\bm r'-r'^2}\\
=&\,r\sqrt{1-\frac{2\bm r\cdot\bm r'}{r^2}-\cancel{\frac{r'^2}{r^2}}}\\
\simeq&\,r\left(1-\frac{\bm r\cdot\bm r'}{r^2}\right)\\
);

 &math(
\frac{1}{|\bm r-\bm r'|}\simeq \frac{1}{r}\left(1+\frac{\bm r\cdot\bm r'}{r^2}\right)\simeq\frac{1}{r}\\
);

このとき、

 &math(
g(\bm r)=&-\frac{1}{4\pi}\frac{2m}{\hbar^2}\iiint\frac{e^{ik_0\{r-(\bm r/r)\cdot\bm r'\}}}{r}V(\bm r')e^{i\bm k_0\cdot\bm r'}d\bm r'\\
=&-\frac{1}{4\pi}\frac{2m}{\hbar^2}\frac{e^{ik_0 r}}{r}\iiint V(\bm r')e^{ik_0(\bm k_0/k_0-\bm r/r)\cdot\bm r'}d\bm r'
);

#ref(scattering_direction.png,right,around,15%);

右辺の積分は &math(\bm r); の方向 &math(\bm r/r); のみに依存する関数となった。

散乱問題では入射波方向 &math(\bm k_0); を軸に、散乱方向 &math(\bm r); を球座標で表すと、
&math(\theta,\phi); がそのまま散乱角を表すため便利である。

このとき、

 &math(
g(\bm r)=&-\frac{1}{2\sqrt\pi}\frac{e^{ik_0 r}}{r}f(\theta,\phi)
);

と書けることになる。

* 散乱断面積 [#o36d97c5]

* ボルン近似(再) [#tde77db0]

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