スピントロニクス理論の基礎/X-5 のバックアップの現在との差分(No.2)

更新


  • 追加された行はこの色です。
  • 削除された行はこの色です。
目次はこちら >> [[スピントロニクス理論の基礎]]

#contents

* 経路積分について [#f4b27e61]

東京大学出版 須藤 晴 著~
「解析力学・量子論」10章を参考にしながら復習する。

** 経路積分の導入 [#ybcc7107]

時刻 &math(t=t_a); に &math(\bm x=\bm x_a); にあった系が、~
時刻 &math(t=t_b); に &math(\bm x=\bm x_b); にある確率が、~
&math(P(b,a)=|K(b,a)|^2); で表されるとする。

ファインマンの経路積分の考え方に依れば、

&math((t_a,\bm x_a)); と &math((t_b,\bm x_b)); を通る
すべての経路 &math(\bm x(t)); は、

その経路に沿った作用(ラグランジアンの時間積分)&math(S[\bm x(t)]); の 
&math(1/\hbar); を位相に持つ指数関数だけの寄与を &math(K); に及ぼす。

すなわち、

&math(
K(b,a)&\propto\sum_{\bm x(t)}\exp\left\{\frac{i}{\hbar}S[\bm x(t)]\right\}\\
&=\sum_{\bm x(t)}\exp\left\{\frac{i}{\hbar}\int_{t_a}^{t_b}dt\,\mathcal L[\bm x(t),\dot{\bm x}(t),t]\right\}
);

&math(P(b,a)=|K(b,a)|^2);

である。

** 古典極限 [#b1659215]

ある経路 &math(\bm x(t)); と少しだけ異なる &math(\bm x(t)+\delta\bm x(t)); 
ある経路 &math(\bm x(t)); と、そこから少しだけ異なる経路 &math(\bm x(t)+\delta\bm x(t)); 
とは、異なる位相を持って &math(K); に寄与する。その位相差は、

&math(\frac{\delta S}{\hbar}
=\frac{S[\bm x(t)+\delta\bm x(t)]-S[\bm x(t)]}{\hbar});

であるが、古典的な系(大きな系)では、小さな &math(\delta\bm x(t)); 
に対しても、&math(\delta S); が &math(\hbar); に比べて非常に大きくなるため、
異なる経路の寄与は互いに打ち消し合い、多くの場合に総和をほぼゼロと見なすことができる。

唯一確率が打ち消さずに残るのは、&math(S[\bm x(t)]); が &math(\bm x(t)); 
の変化に対して停留値となる場合であり、その結果、古典的な系では &math(S[\bm x(t)]); 
を最小とする経路のみが実現されることになる。

ミクロな系では小さな &math(\delta\bm x(t)); に対して
&math(\delta S); が &math(\hbar); と比較可能な大きさとなるために、
1つの経路のみが実現される形にはならず、「確率」が運動を支配することになる。

** 経路積分の時間分割 [#o5475c7e]

上記のような &math(K); を定義できるとすれば、~
時刻 &math(t=t_a); に &math(\bm x=\bm x_a); にあった系が、~
時刻 &math(t=t_c); に &math(\bm x=\bm x_c); にある確率は、~
途中の時刻 &math(t=t_b); にいる点 &math(\bm x=\bm x_b); を考えることで、~

&math(
K(c,a)=\int d\bm x_b K(c,b)K(b,a)
);

と表すことができる。

これを推し進めると、~
時刻 &math(t=t_0); に &math(\bm x=\bm x_a); にあった系が、~
時刻 &math(t=t_N); に &math(\bm x=\bm x_N); にある確率は、~
時間を &math(N); 個の区間に分割することにより、

&math(
K(N,0)=\int d\bm x_1\int d\bm x_2\dots\int d\bm x_{N-1} \prod_{n=0}^{N-1}K(n+1,n)
);

と表せることになる。

&math(N); が十分に大きく、&math(t_{n+1}-t_n); を十分に小さいと見なせる場合には、
その間にラグランジアン &math(\mathcal L(\bm x,\dot{\bm x}, t)); 
が大きく変化することはないであろう。
が大きく変化することはないであろう。(そのような確率を無視して計算を進めるということで、
本当ならもう少しちゃんとした議論が必要だが、直感的には受け入れられよう。)

&math(
\mathcal L(\bm x,\dot{\bm x}, t)\sim 
\mathcal L\big(\frac{\bm x_{n+1}+\bm x_{n}}{2},\frac{\bm x_{n+1}-\bm x_{n}}{t_{n+1}-t_n}, \frac{t_{n+1}+t_n}{2}\big)
);

したがって、

&math(
K(n+1,n)\sim
\frac{1}{A}\,\exp\left\{i\,\frac{t_{n+1}-t_n}{\hbar}\mathcal L\big(\frac{\bm x_{n+1}+\bm x_{n}}{2},\frac{\bm x_{n+1}-\bm x_{n}}{t_{n+1}-t_n}, \frac{t_{n+1}+t_n}{2}\big)\right\});

と書ける。ここで &math(A); は規格化定数で、後でまた議論する。

これを代入した

&math(
K(N,0)&=\int d\bm x_1\int d\bm x_2\dots\int d\bm x_{N-1} 
\prod_{n=0}^{N-1}\frac{1}{A}\,\exp\left\{i\,\frac{t_{n+1}-t_n}{\hbar}\mathcal L\big(\frac{\bm x_{n+1}+\bm x_{n}}{2},\frac{\bm x_{n+1}-\bm x_{n}}{t_{n+1}-t_n}, \frac{t_{n+1}+t_n}{2}\big)\right\}\\
&=\frac{1}{A^N}\int d\bm x_1\int d\bm x_2\dots\int d\bm x_{N-1} 
\,\exp\left\{i\sum_{n=0}^{N-1}\frac{t_{n+1}-t_n}{\hbar}\mathcal L\big(\frac{\bm x_{n+1}+\bm x_{n}}{2},\frac{\bm x_{n+1}-\bm x_{n}}{t_{n+1}-t_n}, \frac{t_{n+1}+t_n}{2}\big)\right\}\\
&=\frac{1}{A^N}\int d\bm x_1\int d\bm x_2\dots\int d\bm x_{N-1} 
\,\exp\left\{\frac{i}{\hbar}\sum_{n=0}^{N-1}S(n+1,n)\right\}\\
);

により、経路積分の具体的な計算方法が判明した。

慣用的にこの積分を、

&math(
K(N,0)&=\int \mathcal D\bm x \exp\left\{\frac{i}{\hbar}S[\bm x(t)]\right\}\\
&\equiv\lim_{N\rightarrow\infty}\frac{1}{A^N}\int d\bm x_1\int d\bm x_2\dots\int d\bm x_{N-1} 
\,\exp\left\{\frac{i}{\hbar}\sum_{n=0}^{N-1}S(n+1,n)\right\}\\
);

と書き表す。

** 確率密度振幅との関係 [#yfe6d28c]

量子力学で出てくる確率密度振幅は、~
系を時刻 &math(t); に &math(\bm x); に見出す確率を

&math(
|\psi(\bm x,t)|^2
);

とするものであった。

この &math(\psi); と上で定義した &math(K); との関係を、

&math(
\psi(\bm x',t')=\int d^3x K(\bm x',t';\bm x,t)\psi(\bm x,t)
);

と書くことができる。

** シュレーディンガー方程式の導出 [#pe60ef46]

上式を用いて無限小時間後の変化を考えよう。

&math(
&\psi(\bm x+\Delta\bm x,t+\Delta t)\\
&\sim \int d^3x K(\bm x+\Delta\bm x,t+\Delta t; \bm x,t)\psi(\bm x,t)\\
&=\int d^3x \frac{1}{A}\exp\left\{i\frac{\Delta t}{\hbar}\mathcal L\big(
\bm x+\frac{\Delta\bm x}{2},\frac{\Delta\bm x}{\Delta t}, t+\frac{\Delta t}{2}
\big)\right\}
);

簡単のため、ラグランジアンとしては単純な1粒子系の物とする。

&math(
\mathcal L(\bm x,\dot{\bm x},t)=\frac{1}{2}m\dot {\bm x}^2-U(\bm x,t)
);

代入すると、

&math(
&\frac{\Delta t}{\hbar}\mathcal L\big(
\bm x+\frac{\Delta\bm x}{2},\frac{\Delta\bm x}{\Delta t}, t+\frac{\Delta t}{2}
\big)\\
&=\frac{1}{2\hbar}m\frac{\Delta x^2}{\Delta t}-\frac{\Delta t}{\hbar}U(\bm x,t)\\
);

となり、&math(\Delta t\rightarrow 0); としたときには第1項が支配的となる。

&math(
\frac{1}{2\hbar}m\frac{\Delta x^2}{\Delta t}
);

この項は &math(\Delta t); に比べて &math(\Delta x^2); が大きいときには
位相の変化が激しくなって打ち消し合い、有意な寄与を与えないことから、

&math(
\frac{m\Delta x^2}{\Delta t}<\hbar
);

すなわち、

&math(
\Delta x^2<\frac{\hbar}{m}\Delta t
);

の部分だけが重要となる。

そこで、以下では &math(\Delta t); が小さいとして &math(\Delta t); の1次までを考えるが、
&math(\Delta x); についてはその2次までを考えることにする。

多少技巧的ではあるが、これまで~
時刻 &math(t); で &math(x); にあった系が~
時刻 &math(t+\Delta t); で &math(x+\Delta x); にある確率を考えていた物を、

時刻 &math(t); で &math(x-\Delta x); にあった系が~
時刻 &math(t+\Delta t); で &math(x); にある確率を考えることとして、

&math(
&\psi(x,t+\Delta t)=\psi(x,t)+\frac{\PD\psi}{\PD t}\Delta t\\
&\sim \int d(\Delta x) K(x,t+\Delta t; x-\Delta x,t)\psi(x-\Delta x,t)\\
&=\int d(\Delta x) \frac{1}{A}\exp\left\{i\frac{\Delta t}{\hbar}\mathcal L\big(
x-\frac{\Delta x}{2},\frac{\Delta x}{\Delta t}, t+\frac{\Delta t}{2}
\big)\right\}\psi(x-\Delta x,t)\\
&=\frac{1}{A}\int d(\Delta x) \exp\left\{
\frac{i}{2\hbar}m\frac{\Delta x^2}{\Delta t}-\frac{i\Delta t}{\hbar}U(x-\Delta x,t)
\right\}\psi(x-\Delta x,t)\\
&=\frac{1}{A}\int d(\Delta x) \exp\left\{
\frac{i}{2\hbar}m\frac{\Delta x^2}{\Delta t}\right\}
\exp\left\{-\frac{i\Delta t}{\hbar}U(x,t)
\right\}\psi(x-\Delta x,t)\\
&=\frac{1}{A}\int d(\Delta x) e^{
\frac{i}{2\hbar}m\frac{\Delta x^2}{\Delta t}}
\left\{1-\frac{i\Delta t}{\hbar}U(x,t)\right\}
\left\{\psi(x,t)-\Delta x\frac{\PD\psi}{\PD x}+\frac{\Delta x^2}{2}\frac{\PD^2\psi}{\PD x^2}\right\}\\
&=\frac{1}{A}\left\{1-\frac{i\Delta t}{\hbar}U(x,t)\right\}\int d(\Delta x) e^{
\frac{i}{2\hbar}m\frac{\Delta x^2}{\Delta t}}
\left\{\psi(x,t)-\Delta x\frac{\PD\psi}{\PD x}+\frac{\Delta x^2}{2}\frac{\PD^2\psi}{\PD x^2}\right\}\\
);

ここに、

&math(
\int dx\,x^n e^{iax}
);

の形の積分が3つ (&math(n=0,1,2);) 現れるが、これらはそれぞれ

&math(
\int dx\, e^{iax}=\sqrt{\frac{\pi i}{a}}
);

&math(
\int dx\, xe^{iax}=0
);

&math(
\int dx\, e^{iax}=\sqrt{\frac{-\pi i}{a^3}}=\frac{i}{a}\sqrt{\frac{\pi i}{a}}
);

と評価できて、

&math(
&\psi(x,t)+\frac{\PD\psi}{\PD t}\Delta t\\
&\sim \frac{1}{A}\left\{1-\frac{i\Delta t}{\hbar}U(x,t)\right\}
\sqrt{\frac{2\pi i\hbar\Delta t}{m}}
\left\{\psi(x,t)-\frac{\hbar\Delta t}{2m}\,\frac{\PD^2\psi}{\PD x^2}\right\}\\
&\sim \frac{1}{A}\sqrt{\frac{2\pi i\hbar\Delta t}{m}}
\left\{\psi(x,t)-\frac{\hbar\Delta t}{2m}\,\frac{\PD^2\psi}{\PD x^2}-\frac{i\Delta t}{\hbar}U(x,t)\psi(x,t)\right\}\\
);

&math(\Delta t\rightarrow 0); の時、両辺が等しくなるはずであるから、

&math(
\frac{1}{A}\sqrt{\frac{2\pi i\hbar\Delta t}{m}}=1
);

すなわち、

&math(
A=\sqrt{\frac{2\pi i\hbar\Delta t}{m}}
);

として、未定だった(&math(\Delta t); 依存の)係数 &math(A); が決定される。

これを代入すると、

&math(
&\psi(x,t)+\frac{\PD\psi}{\PD t}\Delta t\\
&\sim \psi(x,t)-\frac{\hbar\Delta t}{2m}\,\frac{\PD^2\psi}{\PD x^2}-\frac{i\Delta t}{\hbar}U(x,t)\psi(x,t)\\
);

&math(
i\hbar\frac{\PD\psi}{\PD t}\sim -\frac{\hbar^2}{2m}\,\frac{\PD^2\psi}{\PD x^2}+U(x,t)\psi(x,t)\\
);

として、シュレーディンガー方程式が得られた。

一般のラグランジアンの場合にも同様の導出が可能であり、
経路積分の考え方は、
ラグランジアンおよび作用を用いた古典力学の定式化を
自然な形で量子力学へ拡張するものであることが分かる。

* 質問・コメント [#q919aac0]

#article_kcaptcha


Counter: 3651 (from 2010/06/03), today: 2, yesterday: 0