線形代数II/代数学的構造 のバックアップ差分(No.3)

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* 代数学とは [#zb5eb4b1]

この授業は「線形代数」だ。

これまでに「線形」の意味は教わった。

>&math(f(\bm x)); が線形とは: &math(f(a \bm x+b \bm y)=a f(\bm x)+b f(\bm y)); が成り立つこと

>原点を通る直線的なグラフを持つ関数を思い浮かべると良い

では「代数学」とは?

これまで様々な「数」を学んできた。

- &math(\mathbb N); 自然数 = 加算・乗算について閉じている &math(a+b, a\times b);
- &math(\mathbb N); 自然数 = 加算・乗算について'''閉じている''' &math(a+b, a\times b);
- &math(\mathbb Z); 整数  = 減算についても閉じている &math(a-b);
- &math(\mathbb Q); 有理数 = 除算についても「ほぼ」閉じている &math(a/b);(ゼロは例外)
- &math(\mathbb Q); 有理数 = 除算についても「ほぼ」閉じている &math(a/b);(ゼロでの除算は例外)
- &math(\mathbb R); 実数  = 収束する有理数列の極限演算についても閉じている &math(\lim_{n\rightarrow\infty}a_n);
- &math(\mathbb C); 複素数 = 負数の開根操作についても閉じている &math(\sqrt{-1});

&math(\mathbb N \subset \mathbb Z \subset \mathbb Q \subset \mathbb R \subset \mathbb C);
であり、新しい「演算」の導入により「数の集合」を拡大してきた。

- 解析学は主に &math(\mathbb R); または &math(\mathbb C); の上、
あるいは &math(\mathbb R^n); や &math(\mathbb C^n); の上で、極限や微積分を扱う数学である

代数学は &math(\mathbb N, \mathbb Z, \mathbb Q, \mathbb R, \mathbb C); の系列から外れて、~
例えば、

>乗算は定義されるが加算は定義されない数の集合

などというように、「何らかの演算」が定義された「数の集合」を定め、
などというように、「何らかの演算」と、その演算に対して閉じた「数の集合」を定め、
そこに現れる「構造」を研究する。

これから学ぶ「ベクトル」も上でいう「数」の一員である。

* 代数学的構造の例: 群 [#i1c86368]

ある集合 &math(\mathbb U); にある演算 &math(*); が定義され、
&math(\mathbb U); は &math(*); について「閉じている」とする。~
(すなわち &math(\forall x,\forall y \in \mathbb U); について &math(x*y\in \mathbb U);)

( 「&math(\forall x\in \mathbb U); について」 は、「%%%任意の%%% &math(\mathbb U); の元 &math(x); について」 という意味 )

さらにこの演算が次の公理を満たすものとする。
+ &math(\forall a,\forall b,\forall c\in \mathbb U); に対して結合法則 &math((a*b)*c=a*(b*c)); が成り立つ
+ &math(\forall x \in \mathbb U); に対して &math(e*x=x*e=x); を満たすような特別な元(単位元) &math(e\in \mathbb U); が存在する
+ &math(\forall x \in \mathbb U); に対して、&math(x*y=y*x=e); を満たすような元(逆元)
&math(y\in \mathbb U); が存在する

このとき、「&math(\mathbb U); は演算 &math(*); について群である」 という。

** 群の例 [#we500591]

一見すると、&math(\mathbb U); を有理数 &math(\mathbb Q);、&math(*); を通常の乗算 &math(\times); 
と考えれば群の公理を満たしそうに思えるが、&math(0\in \mathbb Q); が逆元を持たないため、
有理数 &math(\mathbb Q); は乗算 &math(\times); について群とはならない。

&math(\mathbb U); を有理数 &math(\mathbb Q); からゼロを除いた集合とすれば、この集合は群となる。
&math(\mathbb U); を有理数 &math(\mathbb Q); からゼロを除いた集合とすれば、この集合は乗算 &math(\times); に対して群となる。

&math(\mathbb U); を整数 &math(\mathbb Z);、&math(*); を通常の加算 &math(+);、単位元を &math(0); と考えると公理を満たすから、&math(\mathbb Z); は加算について群である。(%%%加算の単位元%%%は &math(0); であることに注意)

&math(\mathbb U); を &math(k); の倍数 &math(\set{nk|n\in \mathbb Z});、&math(*); を通常の加算 &math(+);、単位元を &math(0); と考えると、これも群を為す。

群の要素数が有限である場合もある。

自明な群: &math(\mathbb U={1}); に対して、&math(1*1=1); と定義すれば、&math(\mathbb U); は群である。
自明な群: 1つしか要素を持たない集合 &math(\mathbb U={e}); に対して、&math(e*e=e); と定義すれば、&math(\mathbb U); は群である。

&math(\mathbb U={a,b,c}); に対して、演算 &math(*); を
|*|~a|~b|~c|
|~a|a|b|c|
|~b|b|c|a|
|~c|c|a|b|
と定義すれば、&math(\mathbb U); は群である。~
ただしこの表は、&math((左に書かれた数)*(上に書かれた数)); の演算結果を示した物である。~

元の数が有限の場合、「演算」はこのように表を作ることで任意に定義できる。
代数学で扱う「演算」は、このように表を作ることで任意に定義できる。

ただし、例えばこの表を、
|*|~a|~b|~c|
例えばこの表を、
|&math(\odot);|~a|~b|~c|
|~a|a|b|c|
|~b|b|c|b|
|~c|c|b|a|
とすると、&math((c*b)*b=b*b=c\ne c*(b*c)=c*b=b); となって結合法則を満たさなくなり、
&math(\mathbb U); は群ではなくなる。
とすると別の演算 &math(\odot); を定義できるが、&math((c\odot b)\odot b=b\odot b=c\ne c\odot (b\odot c)=c\odot b=b); となって &math(\odot); は結合法則を満たさず、
&math(\mathbb U); は &math(\odot); に対して群ではない。

「群」の公理は上のように単純なものであるが、
その数学的構造は非常に奥深く、群論だけで数学の1分野となる。~
その数学的構造は非常に奥深く、「群論」だけで数学の1分野となる。~

応用理工の数学カリキュラムでは群論の詳細には立ち入らないが、
結晶学や分子振動における点群や、
ゲージ理論などにおける対称性に関する議論に重要な応用があるため
どこかでまた学ぶことになるかもしれない。

* その他の代数的構造 [#udbe5ccb]

- 半群 = 群の公理から 2., 3. を除いて 1. のみを公理とする
- 群 = 上記
- 可換群 = 群の公理に交換律 &math(a*b=b*a); を加える
- 体 = 2つの演算 &math(+,*); を持ち、&math(+); に対して可換群、0 を除いて &math(*); に対しても可換群であり、さらに分配法則 &math(a*(b+c)=a*b+a*c); が成立する(つまり、四則演算ができる)
- 体 = 2つの演算 &math(+,*); を持ち、&math(+); に対して可換群、0 を除いて &math(*); に対しても可換群であり、さらに分配法則 &math(a*(b+c)=a*b+a*c); が成立する(つまり「四則演算」ができる集合のこと)

有理数 &math(\mathbb Q); や実数 &math(\mathbb R);、複素数 &math(\mathbb C); は
自由に四則演算の行える構造を持ち、「体」である。
自由に四則演算の行える構造を持ち、「体」である。~
そこでしばしば 有理体、実数体、複素数体 などとも呼ばれる。

これ以外にも様々な代数的構造が研究されている。

* 代数的構造の意味 [#i732e7d6]

「代数的構造」の優れた点は数学的に類似の構造を持つ対象を抜き出して、
それらをまとめて議論できる点にある。

異なる対称の「類似点」を公理の形で記し、公理のみを基に定理を導くことにより、
異なる対象の「類似点」を公理の形で記し、公理のみを基に定理を導くことにより、
個々の対象に依存せず、すべての対象に適用可能な結論を導くことができる。

* 質問・コメント [#ra2fb135]

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