線形代数II/内積と計量空間 のバックアップソース(No.4)

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[[線形代数Ⅱ]]

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* 内積 [#k485e13a]

&math(K); 上の線形空間 &math(V); の任意の2つの元 &math(\bm x,\bm y\in V); の間に、
次の公理を満たす演算 &math((\bm x,\bm y)\in K); が定義されるとき、この演算を内積と呼ぶ。

+ &math((\bm x,\bm y_1+\bm y_2)=(\bm x,\bm y_1)+(\bm x,\bm y_2));
+ &math((\bm x,c\bm y)=c(\bm x,\bm y));
+ &math((\bm y,\bm x)=\overline{(\bm x,\bm y)});
+ &math((\bm x,\bm x)\geqq 0); &math((\bm x,\bm x)=0\Leftrightarrow \bm x=\bm 0);

このとき、以下の定理を証明可能:

- &math(K=\mathbb R); の時は &math((\bm y,\bm x)=(\bm x,\bm y));~
   ∵ &math(x\in \mathbb R); に対して &math(x=\overline x);

- &math((\bm x_1+\bm x_2,\bm y)=(\bm x_1,\bm y)+(\bm x_2,\bm y));~
   ∵1. と 3. より

- &math((c\bm x,\bm y)=\overline c(\bm x,\bm y));~
   ∵2. と 3. より

- 任意の &math(\bm x\in V); に対して &math((\bm x,\bm 0)=(\bm 0,\bm x)=0);~
   ∵&math((\bm x,\bm 0)=(\bm x,0\bm 0)=0(\bm x,\bm 0)=0); および 3. 

- ノルム &math(\|\bm x\|=\sqrt{(\bm x,\bm x)}\geqq 0); を定義可能~
   ∵4. より

- 三角不等式が成り立つ &math(\|\bm x+\bm y\|\leqq\|\bm x\|+\|\bm y\|);

- シュワルツの不等式が成り立つ~
   &math(\|(\bm x,\bm y)\|\leqq\|\bm x\|\|\bm y\|); あるいは 
&math(-1\leqq\frac{\|(\bm x,\bm y)\|}{\|\bm x\|\|\bm y\|}\leqq 1);

- 2つのベクトルの間の角度 &math(\theta); を定義可能~
   &math((\bm x,\bm y)=\|\bm x\|\|\bm y\|\cos\theta);

内積が定義された線形空間を計量線形空間という。~
(ベクトルの大きさ(ノルム)および角度が定義された線形空間ということ)

&math((\bm x, \bm y)=0); のとき、&math(\bm x\perp\bm y); すなわち、
&math(\bm x); と &math(\bm y); は直交するという~
  → &math(\bm x=\bm 0); は任意のベクトルと直交する

* 正規直交系 [#i1230363]

&math(\bm e_1, \bm e_2, \dots, \bm e_k); が

- 正規性: &math((\bm e_i,\bm e_i)=1); つまり &math(\|\bm e_i\|=1);
- 直交性: &math((\bm e_i,\bm e_j)=0); つまり &math(\bm e_i\perp\bm e_j); (&math(i\ne j);)

を満たすとき、正規直交系を為すという。あるいはまとめて、

- &math((\bm e_i,\bm e_j)=\delta_{ij});

とも書ける。

ここで、

&math(\delta_{ij}=\left\{\begin{array}{ll}
1 & (i=j)\\
0 & (i\ne j)
\end{array}\right .);

* 正規直交系は一次独立である [#ic67f1e7]

&math(\sum_{i=1}^nc_i\bm e_i=\bm 0); とすると、左から &math(\bm e_j); を掛けることで、

&math(
(左辺)
&=\Big(\bm e_j,\sum_{i=1}^nc_i\bm e_i\Big)\\
&=\Big(\bm e_j,\sum_{i=1}^nc_i\bm e_i\Big)\\
&=\sum_{i=1}^nc_i\left(\bm e_j,\bm e_i\right)\\
&=\sum_{i=1}^nc_i\delta_{ij}\\
&=c_j
);

一方

&math(
(右辺)=(\bm e_j,\bm 0)=0
);

したがって、任意の &math(j); に対して &math(c_j=0);

* 正規直交基底 [#s47e26a7]

ある基底が正規直交系を為すとき、正規直交基底と呼ぶ。

* 内積の成分表示 [#o879b519]

&math(\widetilde E=\set{\bm e_1,\bm e_2,\dots,\bm \e_n}); を正規直交基底とし、

&math(\bm x=\sum_{i=1}^n x_i\bm e_i);、&math(\bm y=\sum_{i=1}^n y_i\bm e_i); とすると、

&math(
(\bm x,\bm y)&=\Big(\sum_{i=0}^n x_i\bm e_i,\bm y\Big)\\
&=\sum_{i=1}^n\overline x_i\Big(\bm e_i, \sum_{j=1}^n y_j\bm e_j\Big)\\
&=\sum_{i=1}^n\sum_{j=1}^n\overline x_iy_j(\bm e_i, \bm e_j)\\
&=\sum_{i=1}^n\sum_{j=1}^n\overline x_iy_j\delta_{ij}\\
&=\sum_{i=1}^n\overline x_iy_i
);

を得る。

一方、1年生の時に学んだ &math(n); 次元実ベクトル空間 &math(\mathbb R^n); における標準内積は

&math(
(\bm x,\bm y)=\sum_{i=1}^nx_iy_i
);

であった。これに対して、&math(n); 次元複素数ベクトル空間 &math(\mathbb C^n); における標準内積は

&math(
(\bm x,\bm y)=\sum_{i=1}^n\overline x_iy_i
);

と定義される。→ この定義が内積の公理を満たすことを各自確認せよ

すなわち、%%%正規直交基底での内積の成分表示%%%は「標準内積」となる

* エルミート共役 [#de0c0da8]

&math(m,n); 行列 &math(A=\big(\,a_{ij}\,\big)); に対して、

- 転置行列:&math(^t\!A=\big(\,a_{ji}\,\big));
- 複素共役:&math(\overline A=\big(\,\overline{a_{ji}}\,\big));
- エルミート共役:&math(A^\dagger=\overline{^t\!A}=^t\!\overline{A}=\big(\,\overline{a_{ji}}\,\big));

とくに、列ベクトル &math(\bm x=\begin{pmatrix}x_1\\x_2\\\vdots\\x_n\end{pmatrix}); に対しては、

-転置:&math(^t\!\bm x=\begin{pmatrix}x_1&x_2&\dots&x_n\end{pmatrix});
-複素共役:&math(\overline{\bm x}=\begin{pmatrix}\overline x_1\\\overline x_2\\\vdots\\\overline x_n\end{pmatrix});
-エルミート共役:&math(\bm x^\dagger=\overline{^t\!\bm x}=^t\!\overline{\bm x}=\begin{pmatrix}\overline x_1&\overline x_2&\dots&\overline x_n\end{pmatrix});

エルミート共役は、次の性質を持つ。

- &math(\left(A^\dagger\right)^\dagger=A);
- &math((\bm x,\bm y)=\bm x^\dagger \bm y);
- &math((\bm x,A\bm y)=(A^\dagger\bm x,\bm y)=\bm x^\dagger A\bm y);

* 対称行列、直交行列 と エルミート行列、ユニタリ行列 [#g3931b9c]

&math(A); が実行列のとき &math(A^\dagger=^t\!\!A); である。

|実行列・ベクトルについて      |複素行列・ベクトルについて              |
|対称行列 &math(^t\!S=S);      |エルミート行列 &math(H^\dagger=H); |
|直交行列 &math(^t\!R=R^{-1}); |ユニタリ行列 &math(U^\dagger=U^{-1}); |

性質:
- 対称行列 &math(S); について &math((\bm x,S\bm y)=(S\bm x,\bm y)); (実内積)
- エルミート行列 &math(H); について &math((\bm x,H\bm y)=(H\bm x,\bm y)); (複素内積)

性質:
- 直交行列 &math(R); により内積が保存される &math((R\bm x,R\bm y)=(\bm x,\bm y));
- ユニタリ行列 &math(U); により複素内積が保存される &math((U\bm x,U\bm y)=(\bm x,\bm y));

* 正規行列 [#ldb799b7]

&math(A^\dagger A=AA^\dagger); を満たす行列を正規行列と呼ぶ。

実対称行列、実直交行列、エルミート行列、ユニタリ行列は正規行列であるが、他にもたくさんある。

1年生の時、直交行列により対角化可能な行列と、不可能な行列があることを学んだ。

実は「ユニタリ行列により対角化できること」と「正規行列であること」とは同値であるが、
ここでは証明しない。

* 質問・コメント [#wc06c3f7]

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