エーレンフェストの定理 のバックアップソース(No.11)

更新

[[前の単元 <<<>量子力学Ⅰ/物理量の固有関数]]
             [[量子力学Ⅰ]]             
[[>>> 次の単元>量子力学Ⅰ/不確定性原理]]~

* 物理量期待値の時間変化 [#j882b192]

ある物理量を表わす演算子を &math(\hat O); として、
この期待値 &math(\langle \hat O\rangle); の時間変化を考える((ただし、&math(\hat O); は時刻 &math(t); を陽に含んでおらず、&math(\frac{\PD\hat O}{\PD t}=0); とする))。

 &math(
\frac{d}{dt}\langle\hat O\rangle
&=\frac{d}{dt}\iiint \psi^*\hat O\psi\,d\bm r\\
&=\iiint \frac{d}{dt}\Big(\psi^*\hat O\psi\Big)\,d\bm r\\
&=\iiint\psi^* \hat O\frac{\PD\psi}{\PD t}+\psi^* \frac{\PD\hat O}{\PD t}\psi+\frac{\PD\psi^*}{\PD t}\hat O\psi\,d\bm r\\
&=\iiint\psi^* \hat O\frac{\PD\psi}{\PD t}+\Big(\frac{\PD\psi}{\PD t}\Big)^*\hat O\psi\,d\bm r
);

&math(\psi^* \frac{\PD\hat O}{\PD t}\psi=0); として真ん中の項は落とした。((&math(O); が顕わに時間に依存している場合にはこの項も残る))

シュレーディンガー方程式により 

 &math(\frac{\PD\psi}{\PD t}=\frac{1}{i\hbar}\hat H\psi);

であるから、

 &math(
\frac{d}{dt}\langle\hat O\rangle
&=\iiint\psi^* \hat O\Big(\frac{1}{i\hbar}\hat H\Big)\psi+\Big(\frac{1}{i\hbar}\hat H\psi\Big)^*\hat O\psi\,d\bm r\\
&=\iiint\frac{1}{i\hbar}\psi^* \hat O\hat H\psi+\frac{1}{-i\hbar}\Big(\hat H\psi\Big)^*\hat O\psi\,d\bm r\\
&=\frac{1}{i\hbar}\iiint\psi^* \hat O\hat H\psi-\Big(\hat H\psi\Big)^*\hat O\psi\,d\bm r\\
&=\frac{1}{i\hbar}\iiint\psi^* \hat O\hat H\psi-\psi^*\hat H\hat O\psi\,d\bm r\hspace{1.5cm}\because\ \hat H\ はエルミート\\
&=\frac{1}{i\hbar}\iiint\psi^*\Big(\hat O\hat H-\hat H\hat O\Big)\psi\,d\bm r\\
&=\frac{1}{i\hbar}\langle \hat O\hat H-\hat H\hat O \rangle
);

したがって、期待値の時間変化は演算子とハミルトニアンとの交換関係の期待値で表わされる。

 &math(
\frac{d}{dt}\langle\hat O\rangle
&=\frac{1}{i\hbar}\langle \hat O\hat H-\hat H\hat O \rangle
);

ここから、演算子とハミルトニアンが交換するならば、その物理量は時間に依存しない保存量となることが分かる。


ここに現れた &math(\hat H\hat O-\hat O\hat H); に代表される、
&math(\hat A\hat B-\hat B\hat A); の形を &math(\hat A); と &math(\hat B); との交換子と呼び、
しばしば &math(\hat A\hat B-\hat B\hat A=[\hat A,\hat B]); と書く。
また、交換子で表される &math(\hat A,\hat B); の関係を交換関係と呼ぶ。

演算子の期待値を求める計算にはこれからも交換子が頻出する。

* 演習:エーレンフェストの定理 [#wbe3d8ad]

初期状態において電子の存在確率があまり広がっておらず、
その広がりに対してポテンシャル &math(V(\bm r,t)); の変化が十分に緩やかであれば、
電子の運動は古典論から予想されるものと等しくなるはずである。
このことを確かめてみよう。

まず、電子の位置座標((求めているのは期待値の変化であるが、ここでは電子はあまり広がっていないと考えているため、期待値はそのまま電子の位置と見なせる。))の時間変化を求める((&math(x,t); は独立なパラメータであるため、&math(\frac{\PD x}{\PD t}=0); である。))。

(1) &math(\hat O=x); と置き、

 &math(\frac{d}{dt}\langle x\rangle
&=\frac{1}{i\hbar}\iiint\frac{1}{2m}\psi^*\Big(x\hat p^2-\hat p^2x\Big)\psi\,d\bm r
);

を導け。

(2) 交換関係 &math(x\hat p_x-\hat p_xx=i\hbar); を用いて、

 &math(\hat p_x^2x&=x\hat p_x^2-2i\hbar\hat p_x);

を導け。

(3) (2) および &math(x\hat p_y-\hat p_yx=0, x\hat p_z-\hat p_zx=0); を用いて、

 &math(x\hat p^2-\hat p^2x&=2i\hbar\hat p_x);

を導け。

(4) (1)、(3) を用いて、

 &math(
\frac{d}{dt}\langle x\rangle
&=\frac{\left\langle p_x\right\rangle}{m}
);

を導け。

次に運動量の時間変化について考える。

(5) &math(\hat p_x); と &math(\hat p^2); が交換することを導け。

(6) &math(\hat p_xV&=\frac{\hbar}{i}\frac{\PD V}{\PD x}+V\hat p_x); を導け。

(7) &math(\frac{d}{dt}\langle p_x\rangle&=-\left\langle\frac{\PD V}{\PD x}\right\rangle); を導け。

[[● 解答はこちら>@量子力学Ⅰ/エーレンフェストの定理/メモ]]

#hr

&math(y,z); に対しても同様の結果が得られるため、
&math(\bm r,\bm p); の期待値が古典論の運動方程式

 &math(\frac{d\bm r}{dt}=\frac{\bm p}{m});

 &math(\frac{d\bm p}{dt}=-\bm\nabla V);

に対応して、

 &math(\frac{d\langle\hat{\bm r}\rangle}{dt}=\frac{\langle\hat{\bm p}\rangle}{m});

 &math(\frac{d\langle\hat{\bm p}\rangle}{dt}=-\langle\bm\nabla V\rangle);

を満たすことが示された。

シュレーディンガー方程式が巨視的極限において古典論の運動方程式に一致する、という
この定理をエーレンフェストの定理と呼ぶ。

~
[[前の単元 <<<>量子力学Ⅰ/物理量の固有関数]]
             [[量子力学Ⅰ]]             
[[>>> 次の単元>量子力学Ⅰ/不確定性原理]]~

* 質問・コメント [#p8754055]

#article_kcaptcha

Counter: 18102 (from 2010/06/03), today: 20, yesterday: 0