エーレンフェストの定理 のバックアップ(No.4)

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量子力学Ⅰ/波動関数の解釈

物理量期待値の時間変化

ある物理量を表わす演算子を \hat O として、 この期待値 \langle \hat O\rangle の時間変化を考える*1ただし、 \hat O は時刻 t を陽に含んでおらず、 \frac{\PD\hat O}{\PD t}=0 とする

 &math( \frac{d}{dt}\langle\hat O\rangle &=\frac{d}{dt}\iiint \psi^*\hat O\psi\,d\bm r\\ &=\iiint \frac{d}{dt}\Big(\psi^*\hat O\psi\Big)\,d\bm r\\ &=\iiint\psi^* \hat O\frac{\PD\psi}{\PD t}+\frac{\PD\psi^*}{\PD t}\hat O\psi\,d\bm r\\ &=\iiint\psi^* \hat O\frac{\PD\psi}{\PD t}+\Big(\frac{\PD\psi}{\PD t}\Big)^*\hat O\psi\,d\bm r );

シュレーディンガー方程式により

  \frac{\PD\psi}{\PD t}=\frac{1}{i\hbar}\hat H\psi

であるから、

 &math( \frac{d}{dt}\langle\hat O\rangle &=\iiint\psi^* \hat O\Big(\frac{1}{i\hbar}\hat H\Big)\psi+\Big(\frac{1}{i\hbar}\hat H\psi\Big)^*\hat O\psi\,d\bm r\\ &=\iiint\frac{1}{i\hbar}\psi^* \hat O\hat H\psi+\frac{1}{-i\hbar}\Big(\hat H\psi\Big)^*\hat O\psi\,d\bm r\\ &=\frac{1}{i\hbar}\iiint\psi^* \hat O\hat H\psi-\Big(\hat H\psi\Big)^*\hat O\psi\,d\bm r\\ &=\frac{1}{i\hbar}\iiint\psi^* \hat O\hat H\psi-\psi^*\hat H\hat O\psi\,d\bm r\hspace{1.5cm}\because\ \hat H\ はエルミート\\ &=\frac{1}{i\hbar}\iiint\psi^*\Big(\hat O\hat H-\hat H\hat O\Big)\psi\,d\bm r\\ &=\frac{1}{i\hbar}\langle \hat O\hat H-\hat H\hat O \rangle );

したがって、期待値の時間変化は演算子とハミルトニアンとの交換関係の期待値で表わされる。

 &math( \frac{d}{dt}\langle\hat O\rangle &=\frac{1}{i\hbar}\langle \hat O\hat H-\hat H\hat O \rangle );

ここから、演算子とハミルトニアンが交換するならば、その物理量は時間に依存しない保存量となることが分かる。

エーレンフェストの定理

初期状態において電子の存在確率があまり広がっておらず、 その広がりに対してポテンシャル V(\bm r,t) の変化が十分に緩やかであれば、 電子の運動は古典論から予想されるものと等しくなるはずである。 このことを確かめてみよう。

まず、電子の位置座標*2求めているのは期待値の変化であるが、ここでは電子はあまり広がっていないと考えているため、期待値はそのまま電子の位置と見なせる。の時間変化を求める*3 x,t は独立なパラメータであるため、 \frac{\PD x}{\PD t}=0 である。。 上式で \hat O=x と置けばよいから、

 &math( \frac{d}{dt}\langle x\rangle &=\frac{1}{i\hbar}\iiint \psi^*\Big[x\hat H-\hat Hx\Big]\psi\,d\bm r\\ &=\frac{1}{i\hbar}\iiint \psi^*\Big[x\Big(\frac{1}{2m}\hat p^2+\cancel{V}\Big)

  • \Big(\frac{1}{2m}\hat p^2+\cancel{V}\Big)x\Big]\psi\,d\bm r\\ &=\frac{1}{i\hbar}\iiint\frac{1}{2m}\psi^*\Big(x\hat p^2-\hat p^2x\Big)\psi\,d\bm r );

ここで、交換関係 x\hat p_x-\hat p_xx=i\hbar および、 x\hat p_y-\hat p_yx=x\hat p_z-\hat p_zx=0 を用いると、

 &math( \hat p_x^2x&=\hat p_x(x\hat p_x-i\hbar)\\ &=\hat p_xx\hat p_x-i\hbar\hat p_x\\ &=(x\hat p_x-i\hbar)\hat p_x-i\hbar\hat p_x\\ &=x\hat p_x^2-2i\hbar\hat p_x );

より、

 &math(x\hat p^2-\hat p^2x&=x(\hat p_x^2+\hat p_y^2+\hat p_z^2)-(\hat p_x^2+\hat p_y^2+\hat p_z^2)x\\ &=i\hbar\hat p_x);

であるから、

 &math( \frac{d}{dt}\langle x\rangle &=\frac{1}{\cancel{i\hbar}}\iiint\frac{1}{\cancel 2m}\psi^*\Big(\cancel 2\cancel{i\hbar}\hat p\Big)\psi\,d\bm r\\ &=\frac{1}{m}\iiint\psi^*\hat p\psi\,d\bm r\\ &=\frac{\left\langle p\right\rangle}{m} );

を得る。一方、運動量の時間変化は、

 &math( \frac{d}{dt}\langle p_x\rangle &=\frac{1}{i\hbar}\iiint\psi^*\left[\hat p_x\left(\frac{1}{2m}\hat p^2+V\right)

  • \left(\frac{1}{2m}\hat p^2+V\right)\hat p_x\right]\psi\,d\bm r\\ &=\frac{1}{i\hbar}\iiint\psi^*\Big(\frac{1}{2m}(\hat p_x\hat p^2-\hat p^2\hat p_x)+(\hat p_xV-V\hat p_x)\Big)\psi\,d\bm r );

ここで、 \hat p_x \hat p^2 は交換するから、 \hat p_x\hat p^2-\hat p^2\hat p_x=0 。一方、

 &math( \hat p_xV\psi&=\frac{\hbar}{i}\frac{\PD}{\PD x}(V\psi)\\ &=\frac{\hbar}{i}\frac{\PD V}{\PD x}\psi+V\frac{\hbar}{i}\frac{\PD}{\PD x}\psi\\ &=\Big(\frac{\hbar}{i}\frac{\PD V}{\PD x}+V\hat p_x\Big)\psi\\ );

より、

 &math( \frac{d}{dt}\langle p_x\rangle &=\frac{1}{i\cancel\hbar}\iiint\psi^*\Big(\frac{\cancel\hbar}{i}\frac{\PD V}{\PD x}\Big)\psi\,d\bm r\\ &=-\left\langle\frac{\PD V}{\PD x}\right\rangle );

となる。

y,z に対しても同様の結果が得られるため、 \bm r,\bm p の期待値が古典論の運動方程式

  \frac{d\bm r}{dt}=\frac{\bm p}{m}

  \frac{d\bm p}{dt}=-\bm\nabla V

を満たすことが示された。

巨視的極限に於いてシュレーディンガー方程式が古典論の運動方程式を与えるという この定理をエーレンフェストの定理と呼ぶ。


*1 ただし、 \hat O は時刻 t を陽に含んでおらず、 \frac{\PD\hat O}{\PD t}=0 とする
*2 求めているのは期待値の変化であるが、ここでは電子はあまり広がっていないと考えているため、期待値はそのまま電子の位置と見なせる。
*3 x,t は独立なパラメータであるため、 \frac{\PD x}{\PD t}=0 である。

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