量子力学Ⅰ/箱の中の自由粒子 のバックアップソース(No.3)
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[[量子力学I]] #contents * 概要 [#a6588189] 2つの簡単な例について、1次元の時間に依存しないシュレーディンガー方程式を解いて、 定常的な解を求めてみよう。 &math( \left(-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\PD^2}{\PD x^2}+V(x)\right)\psi(x)=E\psi(x) ); * 1次元の箱の中の自由粒子 [#kde8bf85] &math(a); を正の定数として、&math(0<x<a); の領域に閉じ込められた電子の定常状態を考える。 このような状況は、上記の範囲内で &math(V(x)=0);、範囲外で &math(V(x)=+\infty); と仮定することで実現され、井戸型ポテンシャルの問題とも呼ばれる。 &attachref(infinity-well.png,,25%); &math(V(x)=+\infty); の点で &math(\psi(x)\ne 0); であれば方程式を満たさないため、 箱の外では &math(\psi(x)=0); となる。 さらに、&math(\psi(x)); はいたるところ連続でなければならないから、 箱の内側でも壁面上では &math(\psi(x)=0); である。 一方、箱の内部では &math(V(x)=0); であるから、シュレーディンガー方程式は &math( -\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\PD^2}{\PD x^2}\psi(x)=E\psi(x) ); &math( \frac{\PD^2}{\PD x^2}\psi(x)=\frac{-2mE}{\hbar^2}\psi(x) ); となる。この一般解は、&math(k=\sqrt{\frac{2mE}{\hbar^2}}); と置いて、 &math(\psi(\bm r)=Ae^{ikx}+Be^{-ikx}); として与えられる。 境界条件から &math(A,B); を定めると、 &math(\psi(0)=A+B=0); &math(\psi(a)=A(e^{ika}-e^{-ika})=-2iA\sin(ka)=0); したがって、&math(n); を任意の整数として &math(ka=n\pi); すなわち、 &math(k=k_n=n\pi/a); という条件が得られる。このとき、 &math(E_n=\frac{\hbar^2 k_n^2}{2m}=\frac{\hbar^2 \pi^2}{2ma^2}n^2); がエネルギー固有値となり、対応する固有関数は、 &math(\psi_n(x)=\sqrt{\frac{2}{a}}\sin(n\pi x/a)); となる。係数 &math(\sqrt{\frac{2}{a}}); は、&math(\int_0^a|\psi(x)|^2\,dx=1); の規格化条件から決定した。 &math( \int_0^a|\psi(x)|^2\,dx &=\frac{2}{a}\int_0^a\big[\sin(n\pi x/a)\big]^2\,dx\\ &=\frac{2}{a}\int_0^a\frac{1-\cos(2n\pi x/a)}{2}\,dx\\ &=\frac{1}{a}\Big[x-\frac{a}{2n\pi}\sin(2n\pi x/a)\Big]_0^a\\ &=1\\ ); このように飛び飛びの固有値、固有関数を指定する &math(n); のような数を量子数と呼ぶ。 グラフは左が &math(\psi_n(x));、右が &math(|\psi_n(x)|^2); で、&math(n=1,2,3); を示している。 &ref(infinity-well1.png,,50%); &ref(infinity-well2.png,,50%); &math(n); 番目の固有関数は &math(n); 個のピークと &math(n-1); 個の&ruby(ふし){節};を持つ。 &math(n); が大きいほどエネルギーが高くなるが、ここでは &math(V(x)=0); であるから、 そのエネルギーはすべて運動エネルギーである。 古典論によれば無限大のエネルギー障壁は弾性壁となり、電子は壁の間を一定速度で往復運動する。 そしてこの往復運動の速度が系のエネルギーに相当する。 ここで求めたエネルギー固有関数は有限の運動エネルギーを持つ物の「定常状態」を表わし、 確率密度の空間分布は時間によらない。 &math(n=1); が最低エネルギーの状態を表わしており、そのような状態は基底状態と呼ばれる。 これに対して、&math(n>1); は励起状態と呼ばれる。 興味深いことに、&math(n=1); の基底状態においても系は有限の運動エネルギーを持っている。 &math(E_1=\frac{\hbar^2 \pi^2}{2ma^2}); 基底状態における運動をゼロ点運動、エネルギーをゼロ点エネルギーと呼ぶ。 一般に、電子を閉じ込める範囲が狭ければ狭いほど、ゼロ点エネルギーは上昇する。 * 3次元の箱の中の自由粒子 [#x7f96fce] &math(a,b,c); を正の定数として、&math(0<x<a,\ 0<y<b,\ 0<z<c); の領域に閉じ込められた電子の定常状態を考える。 &math(\psi(\bm x)=X(x)Y(y)Z(z)); のように変数分離できることを仮定すれば、 &math( &-\frac{\hbar^2}{2m}\left( \frac{\PD^2}{\PD x^2}+\frac{\PD^2}{\PD y^2}+\frac{\PD^2}{\PD z^2}\right)X(x)Y(y)Z(z)\\ &=-\frac{\hbar^2}{2m}\left[ \left(\frac{\PD^2}{\PD x^2}X(x)\right)Y(y)Z(z) + X(x)\left(\frac{\PD^2}{\PD y^2}Y(y)\right)Z(z) + X(x)Y(y)\left(\frac{\PD^2}{\PD z^2}Z(z)\right) \right]\\ &=EX(x)Y(y)Z(z) ); &math( \left(\frac{\PD^2}{\PD x^2}X(x)\right)\frac{1}{X(x)} + \left(\frac{\PD^2}{\PD y^2}Y(y)\right)\frac{1}{Y(y)} + \left(\frac{\PD^2}{\PD z^2}Z(z)\right)\frac{1}{Z(z)} =\frac{-2mE}{\hbar^2} ); 左辺の各項はそれぞれ &math(x,y,z); のみの関数であり、右辺は定数である。 任意の &math(x,y,z); に対してこの式が成り立つためには、左辺の各項が定数でなければならない。 すなわち、 &math( &\left(\frac{\PD^2}{\PD x^2}X(x)\right)\frac{1}{X(x)} = \frac{-2mE_x}{\hbar^2}\\ &\left(\frac{\PD^2}{\PD y^2}Y(y)\right)\frac{1}{Y(y)} = \frac{-2mE_y}{\hbar^2}\\ &\left(\frac{\PD^2}{\PD z^2}Z(z)\right)\frac{1}{Z(z)} = \frac{-2mE_z}{\hbar^2}\\ &E_x+E_y+E_z=E ); &math(X(x),Y(y),Z(z)); に対する方程式は1次元の箱形ポテンシャルの問題に帰着して、 &math(X_{n_x}(x)=\sqrt{\frac{2}{a}}\sin(n_x\pi x/a)); &math(E_{x,n_x}=\sqrt{\hbar^2 \pi^2}{2ma^2}n_x^2); 等の解を得る。&math(\psi(\bm x)); の解は量子数 &math(n_x,n_y,n_z); により指定できて、 &math(\psi_{n_x,n_y,n_z}(\bm x)=\sqrt{\frac{8}{abc}}\sin(n_x\pi x/a)\sin(n_y\pi y/b)\sin(n_z\pi z/c)); &math(E_{n_x,n_y,n_z}=\sqrt{\hbar^2 \pi^2}{2ma^2}(n_x^2+n_y^2+n_z^2)); となる。 例えば電子(&math(m=9.11\times 10^{-31}\,\mathrm{kg});) を &math(a=b=c=1\,\mathrm{nm}); に閉じ込めれば、ゼロ点エネルギーは &math(11.3\,\mathrm{eV}); となる。 次の準位は &math(E_{211}=E_{121}=E_{112}=22.6\,\mathrm{eV}); である。 このように異なる量子数に対応する波動関数のエネルギーが等しいとき、 それらの準位は縮退していると言う。この様子を示したのが下図左である。 &math(a=b\ne c); ではこのうちいくつかの縮退が解けて、準位の分裂が生じる。 &math(a=b=c/1.1); としたときのエネルギー準位と、分裂前の縮退した準位との関係を下図右に示した。 &attachref(3d-box.png,,25%); * 1次元の調和振動子 [#l80144e9] 調和振動子のポテンシャルは &math(V(x)=\frac{1}{2}kx^2); であるから、時間に依存しないシュレーディンガー方程式は &math( \left(-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{d^2}{dx^2}+\frac{k}{2}x^2\right)\psi(x)=E\psi(x) ); このような方程式を解く場合には、変数を無次元化するのが常套手段である。 すなわち、長さの次元を持つ自由変数 &math(x); を変数変換して、無次元の量 &math(\xi); で記述する。 ここでは、 &math(\xi=\sqrt{\frac{m\omega}{\hbar}}x);, &math(\lambda=\frac{2E}{\hbar\omega}); と置くと良い。ただし、&math(\omega=\sqrt{\frac{k}{m}}); は古典論から得られる角振動数である。 すると与式は、 &math( \left(-\frac{d^2}{d\xi^2}+\xi^2-\lambda\right)\psi(\xi)=0 ); となる。&math(\xi); の大きなところでは &math(\lambda\ll \xi^2); となるから、 そこでは &math(\psi); は近似的に次の方程式を満たす。 &math( \frac{d^2}{d\xi^2}\psi(\xi)=\xi^2\psi(\xi) ); ここから予想されるのは、 &math( \psi(\xi)=H(\xi)e^{\pm\xi^2/2} ); という解の形である。系が &math(x=0); 付近に束縛されていることから、 複号は負を取る。 &math( &-\frac{d^2}{d\xi^2}\big[H(\xi)e^{-\xi^2/2}\big]+\xi^2H(\xi)e^{-\xi^2/2}-\lambda H(\xi)e^{-\xi^2/2}\\ &=-\frac{d}{d\xi}\big[H'(\xi)e^{-\xi^2/2}-\xi H(\xi)e^{-\xi^2/2}\big]+\xi^2H(\xi)e^{-\xi^2/2}-\lambda H(\xi)e^{-\xi^2/2}\\ &=-H''(\xi)e^{-\xi^2/2}+2\xi H'(\xi)e^{-\xi^2/2}+H(\xi)e^{-\xi^2/2}-\lambda H(\xi)e^{-\xi^2/2}\\ &=0\\ ); 両辺を &math(e^{-\xi^2/2}\ne 0); で割れば、 &math( H''(\xi)=2\xi H'(\xi)+(1-\lambda) H(\xi) ); を得る。&math(H(\xi)=\sum_{l=0}^\infty c_l\xi^l); と置いて代入すれば、 &math( \sum_{l=0}^\infty l(l-1)c_l\xi^{l-2}=2\xi \sum_{l=0}^\infty l c_l\xi^{l-1}+(1-\lambda) \sum_{l=0}^\infty c_l\xi^l ); より &math(l\ge 0); において、 &math((l+2)(l+1)c_{l+2}=(2l+1-\lambda)c_l);~ &math(c_{l+2}=\frac{2l+1-\lambda}{(l+2)(l+1)}c_l);~ を得る。この式によれば、&math(c_0); を適当に決めると &math(c_{2n}); が、 &math(c_1); を適当に決めると &math(c_{2n+1}); が、 それぞれすべて決まることになる。 &math(c_0=0); あるいは &math(c_1=0); あるいは &math(2l+1-\lambda=0); が成立すれば、 それより大きな &math(l); に対して &math(c_l); がゼロになるが、 そうでない限り &math(c_l); がゼロになることはない。 &math(c_l); がゼロにならない場合、&math(l\to \infty); において &math(\frac{c_{l+2}}{c_l}=\frac{2l+1-\lambda}{(l+2)(l+1)}\to \frac{2}{l});~ が成り立つ。これは &math(f(\xi)=e^{2\xi^2}=frac{1}{0!}+\frac{2}{1!}\xi^2+\frac{2^2}{2!}\xi^4+\frac{2^3}{3!}\xi^6+\dots); とした時の係数の比と同じであり、このようになっていては &math(H(\xi)e^{-\xi^2/2}); が &math(\xi\to\pm\infty); でゼロに収束するという境界条件を満たさない。 すなわち、&math(c_0); あるいは &math(c_1); のどちらかがゼロであり、 もう一方と同じ偶奇性(パリティ)を持つある &math(l=n); において &math(\lambda=2l+1); が成立することが境界条件から要求され、 その結果 &math(c_l\ne 0); となる項は有限個となる。 - &math(n=0); のとき &math(\lambda=1);, &math(H_0(\xi)=1); - &math(n=1); のとき &math(\lambda=3);, &math(H_1(\xi)=2\xi); - &math(n=2); のとき &math(\lambda=5);, &math(H_2(\xi)=4(1-2\xi^2)); - &math(n=3); のとき &math(\lambda=7);, &math(H_3(\xi)=c_1(\xi-\frac{2}{3}\xi^3)); - &math(n=4); のとき &math(\lambda=8);, &math(H_4(\xi)=c_0(1-4\xi^2+\frac{4}{3}\xi^4)); - ・・・ ここで現れた多項式 &math(H_n(\xi)); はエルミートの多項式と呼ばれる。 * 3次元の調和振動子 [#y596d643]
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