量子力学Ⅰ/3次元調和振動子 のバックアップの現在との差分(No.10)

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#mathjax
&katex();

* 3次元調和振動子 [#a46a099a]
* 目次 [#p212d2aa]

原点からの距離に比例する大きさの、原点方向に引き戻す力を受ける粒子の運動を考える。
#contents

 &math(\bm F=-K\bm r);
* 復習:$x,y,z$ 座標で解いた3次元調和振動子 [#a46a099a]

 &math(V(r)=\frac{1}{2}Kr^2);
バネ定数 $K=m\omega^2$ ($\omega$ は系の固有角振動数)
の3次元調和振動子に対する時間を含まないシュレーディンガー方程式を
$x,y,z$ について変数分離して解けば、その解は $\varphi(x,y,z)=X(x)Y(y)Z(z)$ 
の形となり、$X(x),Y(y),Z(z)$ はそれぞれ1次元調和振動子に対する解となることを
[[量子力学Ⅰ/調和振動子#y596d643]] で学んだ。

であるから、
すなわち $r_0=\sqrt{\hbar/m\omega}$ およびエルミート多項式 $H_n$ を使って、

 (1) &math(V(x,y,z)=\frac{1}{2}K(x^2+y^2+z^2));
$$\begin{aligned}\varphi_{n_xn_yn_z}(x,y,z)=H_{n_x}(x/r_0)H_{n_y}(y/r_0)H_{n_z}(z/r_0)e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}\end{aligned}$$

 (2) &math(V(r,\theta,\phi)=\frac{1}{2}Kr^2);
対応するエネルギーは $N=n_x+n_y+n_z$ を用いて、

と書ける。
$$\begin{aligned}
\varepsilon_{n_xn_yn_z}&=\hbar\omega(n_x+n_y+n_z+3/2)\\
&=\hbar\omega(N+3/2)\\
\end{aligned}$$

以前、3次元調和振動子について学んだ際には、(1) の表式から
&math(x,y,z); について変数分離をして、1次元の調和振動子の積として解けることを見た。
したがって、エネルギー量子数 $N$ に対する縮退度は次のようになる。

 &math(\phi(x,y,z)=X(x)Y(y)Z(z));
|CENTER:|LEFT:|CENTER:|c
|$N=n_x+n_y+n_z$|     $(n_xn_yn_z)$     |縮退度|
|0|(0 0 0)|1|
|1|(1 0 0), (0 1 0), (0 0 1)|3|
|2|(2 0 0), (0 2 0), (0 0 2)|6|
|~|(1 1 0), (1 0 1), (0 1 1)|~|
|3|(3 0 0), (0 3 0), (0 0 3)|10|
|~|(2 1 0), (0 2 1), (1 0 2)|~|
|~|(1 2 0), (0 1 2), (2 0 1)|~|
|~|(1 1 1)                  |~|

ただし、&math(X(x),Y(y),Z(z)); はそれぞれエルミート多項式 &math(H_n); を使って、
* 球座標で解いた3次元調和振動子 [#fe164113]

 &math(H_n(\xi)e^{-\xi^2/2});
一方、この問題は球対称なポテンシャル

の形に書けるから、
$$\begin{aligned}V(r,\theta,\phi)=\frac{1}{2}Kr^2\end{aligned}$$

 &math(\phi_{n_xn_yn_z}(x,y,z)=H_{n_x}(x/r_0)H_{n_y}(y/r_0)H_{n_z}(z/r_0)e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}});
の中での運動であるから、球座標で展開して解けば

ただし、&math(r_0=\sqrt{\frac{\hbar}{m\omega}}); と表される。このとき、
$$\begin{aligned}\varphi_{nlm}'(r,\theta,\phi)=R_n{}^l(r)Y_l{}^m(\theta,\phi)\end{aligned}$$

 &math(
\varepsilon_N&=\varepsilon_{n_x}+\varepsilon_{n_y}+\varepsilon_{n_z}\\
&=\hbar\omega(n_x+n_y+n_z+3/2)\\
&=\hbar\omega(N+3/2)\\
);
の形の解が得られる。このとき、

ただし、&math(N=n_x+n_y+n_z); と置いた。
$$\begin{aligned}\varepsilon=\varepsilon_n{}^l\end{aligned}$$

一方、3次元調和振動子は上の &math(V(r)); 
の形を見ても明らかな通り球対称な中心力中における運動であるから、
これを球座標で展開して解くことにより、
と表せ、エネルギーは $m$ の値によらない。

 &math(\phi_{nlm}'(r,\theta,\phi)=R_n{}^l(r)Y_l{}^m(\theta,\phi));
|CENTER:60|CENTER:60|CENTER:200|CENTER:60|c
|状態|l|$m$|縮退度|
|$s$|$0$|$0$|$1$|
|$p$|$1$|$-1, 0, +1$|$3$|
|$d$|$2$|$-2, -1, 0, 1, 2$|$5$|
|$f$|$3$|$-3, -2, -1, 0, 1, 2, 3$|$7$|

と表せるはずである。ただしこのとき、
ただし、水素原子のところでも見たとおり、ポテンシャルの形状によっては $m$ 
に対する縮退以外にも、異なる $l$ を持つ状態が縮退することがある。

 &math(\varepsilon=\varepsilon_n{}^l);
* 両者の関係は? [#i65992c1]

と書き表せ、エネルギーは &math(m); の値によらない。
次に見るとおり、

* $x,y,z$ 座標形で求めた解と球座標解との対応 [#r859e16f]
- $N=0$ の縮退度は 1  →  $l=0$ (縮退度 1 の $s$ 状態)
- $N=1$ の縮退度は 3  →  $l=1$ (縮退度 3 の $p$ 状態)
- $N=2$ の縮退度は 6  →  $l=2$ (縮退度 5 の $d$ 状態) と $l=0$ (縮退度 1 の $s$ 状態) が縮退
- $N=3$ の縮退度は 10 →  $l=3$ (縮退度 7 の $f$ 状態) と $l=1$ (縮退度 3 の $p$ 状態) が縮退

3次元調和振動子を &math(x,y,z); 座標で説いた結果得られた解をエネルギーの低いものから並べれば、
にそれぞれ対応している。

|CENTER:|LEFT:|CENTER:|c
|&math(N=n_x+n_y+n_z);|     &math((n_xn_yn_z));     |縮退度|
|0|(0 0 0)|1|
|1|(1 0 0), (0 1 0), (0 0 1)|3|
|2|(2 0 0), (0 2 0), (0 0 2)|6|
|~|(1 1 0), (1 0 1), (0 1 1)|~|
|3|(3 0 0), (0 3 0), (0 0 3)|10|
|~|(2 1 0), (0 2 1), (1 0 2)|~|
|~|(1 2 0), (0 1 2), (2 0 1)|~|
|~|(1 1 1)                  |~|
* 演習:球座標による解の縮退 [#jd93721a]

などとなる。
$x,y,z$ 座標で変数分離して得られる解と、
$r,\theta,\phi$ 座標で変数分離して得られる解との関係を明らかにしたい。

すなわち、&math(N=0,1,2,3,\dots); のそれぞれに対して
独立な解が &math(1,3,6,10,\dots); 個存在することになる。
(1) 3次元調和振動子に対する動径方向の方程式は、
$r/r_0=\xi$ と書き換え、$rR(r)=X(\xi)$ と置けば、

一方、同じ系を球座標で解けばその角度依存性は先に見たとおり球面調和関数で表され、
$$
X''(\xi)=\Big[\xi^2-\frac{2\varepsilon}{\hbar\omega}+\frac{l(l+1)}{\xi^2}\Big]X(\xi)
$$

|CENTER:60|CENTER:60|CENTER:200|CENTER:60|c
|状態|l|m|縮退度|
|s|0|0|1|
|p|1|-1, 0, +1|3|
|d|2|-2, -1, 0, 1, 2|5|
|f|3|-3, -2, -1, 0, 1, 2, 3|7|
となることを示せ。($l=0$ のとき、この式は1次元調和振動子の式と一致する)

のように、&math(l=0); の解は縮退がなく、&math(l=1); の解は3重に、&math(l=2); は5重に縮退するはずである。
また、水素原子のところでも見たとおり、ポテンシャルの形状によっては &math(m); 
に対する縮退以外にも、異なる &math(l); を持つ状態が縮退することがある。
(2) $\frac{d^2}{d\xi^2}\left(\xi^k e^{-\xi^2/2}\right)=\left(\xi^2-(2k+1)+\frac{(k-1)k}{\xi^2}\right)\xi^k e^{-\xi^2/2}$ を確かめよ。

これはどういうことだろう?
(3) $X(\xi)=\xi^{l+1} e^{-\frac{\xi^2}{2}}$ が
$\varepsilon=\left(l+\frac{3}{2}\right)\hbar\omega$ に対する固有関数となることを示せ。

- 縮退のない &math(n=0); は s 状態であるべき
-- もし p 状態なら縮退した3つの独立な解があるはず!
- 3重に縮退した &math(n=1); は3重に縮退した p 状態であるか、あるいは3つの s 状態が縮退した状態である(今の場合前者が正解)
- 6重に縮退した &math(n=2); は縮退のない s 状態と5重に縮退した d 状態が縮退した状態、あるいは3重に縮退した p 状態が2つ縮退した状態である(今の場合前者が正解)
- 10重に縮退した &math(n=3); は3重に縮退した p 状態と7重に縮退した f 状態が縮退した状態、あるいは・・・
(4) $X(\xi)=\left(\xi^{l+1}-\frac{2}{2l+3}\xi^{l+3}\right)e^{-\xi^2/2}$
が $\varepsilon=\left(l+\frac{7}{2}\right)\hbar\omega$
に対する固有関数となることを示せ。

にそれぞれ対応していることが期待され、以下に見るように確かにそのようになっている。
(5) (発展)$X_n{}^l(\xi)=\left(\sum_{k=0}^n c_k\xi^{2k}\right)\xi^{l+1}e^{-\xi^2/2}$
が $\varepsilon=\left(l+2n+\frac{3}{2}\right)\hbar\omega$
に対する固有関数となるために要求される $c_k$ に対する漸化式を求めよ。

* $n=0$ の解 [#d4bfce50]
~

 &math(
\varphi_{000}(\bm r)
&=\left(\frac{4\pi}{r_0}\right)^{3/4}e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}
&\propto e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}
);
[[● 解答はこちら>@量子力学Ⅰ/3次元調和振動子/メモ#ne558c03]]

は &math(\theta,\phi); に依存しない。
** 解説 [#k1911005]

一方、&math(Y_0{}^0=1/\sqrt{4\pi}); も &math(\theta,\phi); に依存していないので、
(1) において $l=0$ とすれば1次元調和振動子と同じ方程式となる。

 &math(
\varphi_{000}(\bm r)
&\propto e^{-\frac{r^2}{r_0^2}}\,Y_0{}^0\\
);
(3) で $l=0$ とすれば $R(r)\propto e^{-\xi^2/2}$ となって、$N=0$ の解に相当する。

と書ける。
(3) で $l=1$ とすれば $R(r)\propto \xi e^{-\xi^2/2}$ となって、$N=1$ の解に相当する。

すなわち &math(n=0); の解は s 状態であり、&math(\varphi_{000}); に対して &math(\hat l^2=0,\hbar l_z=0); であることが分かる。
(3) で $l=2$ とした $R(r)\propto \xi^2 e^{-\xi^2/2}$ と、
(4) で $l=0$ とした $R(r)\propto \left(\xi-\frac{2}{3}\xi^3\right)e^{-\xi^2/2}$ とは同じエネルギーを持ち(縮退しており)、$N=2$ の解に相当する。

* $n=1$ の解 [#zc579fdf]
(3) で $l=3$ とした $R(r)\propto \xi^3 e^{-\xi^2/2}$ と、
(4) で $l=1$ とした $R(r)\propto \left(\xi^2-\frac{2}{5}\xi^4\right)e^{-\xi^2/2}$ とは同じエネルギーを持ち(縮退しており)、$N=3$ の解に相当する。

 &math(
\varphi_{100}(\bm r)\propto\frac{x}{r_0}e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}
=\sin\theta\cos\phi e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}
);
(5) のように、一般には 

 &math(
\varphi_{010}(\bm r)\propto\frac{y}{r_0}e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}
=\sin\theta\sin\phi e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}
);
#ref(3d-oscillator-energies.svg,around,right);
$$\begin{aligned}X_n{}^l(\xi)=\big(\xi\ \text{の}\ 2n\,\text{ 次多項式}\big)\ \xi^{l+1} e^{-\xi^2/2}\end{aligned}$$ 

 &math(
\varphi_{001}(\bm r)\propto\frac{z}{r_0}e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}
=\cos\theta e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}
);
の形で $\varepsilon=(l+2n+3/2)\hbar\omega$ に対する固有関数を作れるから$(n=0,1,2,\dots)$、
$N=l+2n$ となるように $l,n$ を選べば $N$ と同じエネルギーを与える。

ここで、
たとえば $N=4$ なら以下の通り15重に縮退する(図中の赤の点線に相当する)。
- $n=2,\ l=0$ の 1 個
- $n=1,\ l=2$ の 5 個
- $n=0,\ l=4$ の 9 個

 &math(
\begin{cases}
x=r\sin\theta\cos\phi\\
y=r\sin\theta\sin\phi\\
z=r\cos\theta
\end{cases}
);
* グラフ形状 [#ve6ee106]

でることに注意せよ。
距離を $r_0$ を単位として測った動径分布関数 $|X_n^l(\xi)|^2$ をプロットした。

一方、
&attachref(spherical_harmonic_oscillation.svg,,ogp); 

 &math(Y_1{}^0\propto \cos\theta);
上でも述べたように $l=0$ の解は1次元調和振動子の解にもなっているが、
$\varepsilon_n^l=\hbar\omega(2n+3/2)$ となっていることからも分かるとおり、

 &math(Y_1{}^{\pm 1}\propto \pm e^{i\phi}\sin\theta);
$$
(\text{1次元調和振動子の}\ n)=2(\text{動径運動量の}\ n)+1
$$

であったから、
という対応になっている。例えば上の $n=0$ のグラフは、一次元調和振動子の
$n=1$ のグラフの右半分、$n=1$ のグラフは一次元調和振動子の $n=3$ のグラフの右半分と重なる。

 &math(
\varphi_{100}(\bm r)\propto \frac{r}{r_0}e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}\,(Y_1{}^1-Y_1{}^{-1})/2
);
球対称な箱形ポテンシャルと同様に、

 &math(
\varphi_{010}(\bm r)\propto i\frac{r}{r_0}e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}\,(Y_1{}^1+Y_1{}^{-1})/2i
);
- $n$ が増加すると振動回数が増える → $r$ 方向の運動量が大きくなり振幅も増える
- $l$ が増加すると角運動量が増える → 原点付近の存在確率密度が低下する

 &math(
\varphi_{001}(\bm r)\propto \frac{r}{r_0}e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}\,Y_1{}^0
);
$l,n$ が増加すると運動エネルギーが増えるほか、分布が原点から遠ざかるためポテンシャルエネルギーが増加する。当然、$l$ が増えれば遠心力ポテンシャルのエネルギーも増加する。

すなわち、&math(N=1); に対応する &math(\varphi_{n_xn_yn_z}); はすべて、
エネルギーは $(l+2n+3/2)\hbar\omega$ なので、
$n$ の増加は $l$ の増加の2倍、エネルギーを増やす。

 &math(\frac{r}{r_0}e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}\,Y_1{}^m(\theta,\phi));
* $N=0$ の解 [#d4bfce50]

の形の関数の線形結合で表されることが分かる。
$$\begin{aligned}
\varphi_{\!\!\underbrace{000}_{n_xn_yn_z}}\!\!\!(x,y,z)
&=\Big(\frac 1{\sqrt\pi\,r_0}\Big)^{3/2}e^{-(x^2+y^2+z^2)/2r_0^2}\\
&=\underbrace{\sqrt{4\pi}\Big(\frac 1{\sqrt\pi\,r_0}\Big)^{3/2}e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}}_{R_0^0(r)}\cdot\underbrace{\frac1{\sqrt{4\pi}}}_{Y_0^0(r,\theta,\phi)}\\
&=\varphi_{\underbrace{0,0,0}_{n,l,m}}(r,\theta,\phi)
\end{aligned}$$

同じ固有値に属する固有関数の線形結合は、やはり同じ固有値に属する固有関数になるから、
&math(\hat l^2); に対する &math(l=1); の固有関数の線形結合として表されるこれらの関数は、
やはり &math(l=1); の固有関数になる。すなわち p 状態である。
すなわち $n=0$ の解は $1s$ 状態そのものであることが分かる。$s$ 状態の特徴として、波動関数自体が球対称になっている。

&math(\varphi_{001}); はそのまま &math(\hat l_z); の &math(m=0); に対する固有関数でもある。
* $N=1$ の解 [#zc579fdf]

&math(\varphi_{100},\varphi_{010}); はそのままでは &math(\hat l_z); の固有関数ではないが、
$N=l+2n=1$ は $n=0,l=1$ を表すから、球座標における解は

 &math(\varphi_{100}+i\varphi_{010}\propto Y_1{}^1);
$$\begin{aligned}\varphi_{0,1,m}(r,\theta,\phi)\propto\underbrace{\frac{r}{r_0}e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}}_{\propto\, R_0^1(r)}\,Y_1{}^m(\theta,\phi)\end{aligned}$$

 &math(\varphi_{100}-i\varphi_{010}\propto Y_1{}^{-1});
と表される。ただし $m=-1,0,1$ である。

とすることにより &math(\hat l_z); のそれぞれ &math(m=1,-1); の固有関数となる。
一方、$x,y,z$ 座標で解いた解は $N=n_x+n_y+n_z=1$ より、$(n_x,n_y,n_z)=(100),(010),(001)$ のいずれかとなり、それぞれ $p_x,p_y,p_z$ 軌道に相当する。

物理的には、&math(z); 方向に振動する &math(\varphi_{001}); については &math(z); 
軸周りの角運動量はゼロであり、&math(x,y); 方向に振動する &math(\varphi_{100},\varphi_{010}); 
についてもそれら単独ではやはり &math(z); 軸周りの角運動量の期待値はゼロである。
両者の関係は、

しかし、&math(x); 方向に振動しつつ同時に &math(y); 方向にも振動する場合、
それらの位相によっては &math(z); 軸周りの各運動量が生じることになる。
$$\begin{aligned}
p_x:\ \varphi_{100}(x,y,z)&\propto \frac x{r_0}e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}
=\frac r{r_0}\sin\theta\cos\phi \,e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}\\
&\propto \underbrace{\frac r{r_0}\,e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}}_{=\,R_0^1(r)}\cdot\big\{\underbrace{(-\sin\theta e^{i\phi})}_{\propto\,Y_1^1}-\underbrace{\sin\theta e^{-i\phi}}_{\propto\,Y_1^{-1}}\big\}/2\\
&= \frac{-1}{\sqrt2}\big\{\varphi_{0,1,1}(r,\theta,\phi)-\varphi_{0,1,-1}(r,\theta,\phi)\big\}
\end{aligned}$$

ここでは &math(\pm i=e^{\pm \pi/2}); をかけて足しており、
これは物理的には &math(x); 方向の振動に対して &math(y); 方向の振動の位相が &math(\pm \pi/2); 
だけずれており、なおかつ両方向の振幅が等しいことに対応する。
すなわち、&math(x); が &math(\sin\omega t); 的な振動をするとき
&math(y); が &math(\pm\cos\omega t); 的に振動することになり、
これはすなわち &math(z); 軸の周りの左回り/右回りの円運動に他ならない。
同様に、

* $n=2$ および $n=3$ の解 [#d984bf3e]
$$\begin{aligned}
p_y:\ \varphi_{010}(x,y,z)
&= \frac{i}{\sqrt2}\big\{\varphi_{0,1,1}(r,\theta,\phi)+\varphi_{0,1,-1}(r,\theta,\phi)\big\}
\end{aligned}$$

上では、
$$\begin{aligned}
p_z:\ \varphi_{001}(x,y,z)&= \varphi_{0,1,0}(r,\theta,\phi)
\end{aligned}$$

 &math(
\begin{array}{llll}
r (Y_1{}^{1}-Y_1{}^{-1})&\propto x&\to&\varphi_{px}=\frac{1}{\sqrt{2}}(Y_1{}^{1}-Y_1{}^{-1})\\
r i(Y_1{}^{1}+Y_1{}^{-1})&\propto y&\to&\varphi_{py}=\frac{-i}{\sqrt{2}}(Y_1{}^{1}+Y_1{}^{-1})\\
r Y_1{}^0&\propto z&\to&\varphi_{pz}=Y_1{}^0\\
\end{array}
);
の関係があることが分かる。

を用いて式変形を行ったが、これと同様に、
同じ固有値に属する固有関数の線形結合はやはり固有関数であるため、
これらの $p_x,p_y,p_z$ はすべて $l=1$ の固有関数、すなわち $p$ 状態である。

 &math(
\begin{array}{lllll}
r^2\, i(Y_2{}^{2}-Y_2{}^{-2})        &\propto xy&\to&\varphi_{dxy}&=\frac{-i}{\sqrt 2}(Y_2{}^{2}-Y_2{}^{-2})\\
r^2\, i(Y_2{}^{1}+Y_2{}^{-1})        &\propto yz&\to&\varphi_{dyz}&=\frac{-i}{\sqrt 2}(Y_2{}^{1}+Y_2{}^{-1})\\
r^2\, (Y_2{}^{1}-Y_2{}^{-1})        &\propto zx &\to&\varphi_{dzx}&=\frac{1}{\sqrt 2}(Y_2{}^{1}-Y_2{}^{-1})\\
r^2\, (Y_2{}^{2}+Y_2{}^{-2})&\propto x^2-y^2&\to&\varphi_{d(x^2-y^2)}&=\frac{1}{\sqrt 2}(Y_2{}^{2}+Y_2{}^{-2})\\
r^2\, Y_2{}^{0}              &\propto 3z^2-r^2&\to&\varphi_{d(3z^2-r^2)}&=Y_2{}^{0}
\end{array}
);
一方、$p_z$ に関しては $m=0$ の固有関数となるものの、$p_x,p_y$ に関しては $m=1$ と $m=-1$ の状態の線形結合となるため、$\hat l_z$ の固有関数とはならない。
これら2つについて $l_z$ を測定すれば、$1/2$ の確率で $\hbar$ が、
$1/2$ の確率で $-\hbar$ が、観測されることになる(それぞれ $m=+1,-1$ に対応する)。

などの関係を用いることにより、
数学的にはエネルギー固有値 $\varepsilon=(1+\frac32)\hbar\omega$ の固有空間は3次元であり、

- 6重に縮退した &math(N=2); は s 状態と d 状態が1つずつ縮退した状態
$$\varphi_{100}(x,y,z), \varphi_{010}(x,y,z), \varphi_{001}(x,y,z)$$

- 10重に縮退した &math(N=3); は p 状態と f 状態の縮退した状態
と、

になっていることを確かめられる。具体的には、
$$\varphi_{1,0,-1}(r,\theta,\phi),\varphi_{1,0,0}(r,\theta,\phi),\varphi_{1,0,+1}(r,\theta,\phi)$$

&math(N=2); の解は、
とはどちらもこの空間を張る正規直交基底となっている。
両者を結ぶ上記の方程式は基底の変換に対応し、行列を使えば

 &math(\left(-1+\frac{2}{3}\frac{r^2}{r_0^2}\right)e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}\,Y_{0}^{0});
 と、
 &math(\frac{r^2}{r_0^2}e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}\,Y_{2}^{m});
$$
\begin{pmatrix}
\varphi_{100}&\varphi_{010}&\varphi_{001}
\end{pmatrix}=
\begin{pmatrix}
\varphi_{0,1,1}&\varphi_{0,1,0}&\varphi_{0,1,-1}
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
{}-1/\sqrt2&i/\sqrt2&0\\
0&0&1\\
1/\sqrt2&i/\sqrt2&0\\
\end{pmatrix}
$$

の線形結合で、
と書ける。これは正規直交基底から正規直交基底への基底の変換行列であるからユニタリー行列となっている。

&math(N=3); の解は、
* $N=2$ および $N=3$ の解 [#d984bf3e]

 &math(\left(1-\frac{2}{5}\frac{r^2}{r_0^2}\right)\frac{r}{r_0}e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}\,Y_1^m);
 と、
 &math(\frac{r^3}{r_0^3}e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}\,Y_3^m);
$N=2$ の解のうち、

の線形結合で、それぞれ表せる。[[詳しい計算はこちら>@量子力学Ⅰ/3次元調和振動子/メモ]]
 $\begin{aligned}\varphi_{200},\ \varphi_{020},\ \varphi_{002}\end{aligned}$ は $l=0$ の解と $l=2$ の解の線形結合で、

* 演習:3次元調和振動子の動径方向の方程式 [#jd93721a]
 $\begin{aligned}\varphi_{110},\ \varphi_{011},\ \varphi_{101}\end{aligned}$ は $l=2$ の解のみで

上で出てきた動径方向の関数が、対応する &math(l); 
の値に対して3次元調和振動子の方程式の解になっていることと、
その固有値が与えられた &math(n); から予想されるエネルギー値に等しいことを確かめたい。
それぞれ表せる。すなわち後者は $d$ 状態に対応するが、前者は $s$ 状態と $d$ 状態の混合、
すなわち $\hat{\bm l}^2$ の固有関数ではなく、
全角運動量を測定すれば 1/3 の確率で $l=0$ を、2/3 の確率で $l=2$ を取る。

(1) 3次元調和振動子に対する動径方向の方程式は、
&math(r/r_0=\xi); と書き換え、&math(rR(r)=X(\xi)); と置けば、
$N=3$ の解のうち、

&math(
-\frac{X''(\xi)}{X(\xi)}+\xi^2+\frac{l(l+1)}{\xi^2}=\frac{2\varepsilon}{\hbar\omega}\\
);
 $\begin{aligned}\varphi_{111}\end{aligned}$ は純粋な $f$ 状態であるが、

となることを示せ。(&math(l=0); のとき、この式は1次元調和振動子の式と一致する)
 他は、$p$ 状態と $f$ 状態の混合となっている。

(2) &math(-\frac{d^2}{d\xi^2}\left(\xi^n e^{-\xi^2/2}\right)=\left(-\xi^2+(2n+1)-\frac{(n-1)n}{\xi^2}\right)\xi^n e^{-\xi^2/2}); となることを確かめよ。
[[詳しい計算はこちら>@量子力学Ⅰ/3次元調和振動子/メモ]]

(3) &math(X(\xi)=\xi^{l+1} e^{-\frac{\xi^2}{2}}); が
&math(\varepsilon=\left(l+\frac{3}{2}\right)\hbar\omega); に対する固有関数となることを示せ。
* 正規直交系同士の変換 [#l1680560]

(4) &math(X(\xi)=\left\{\xi^{l+1}-\frac{2}{2(l+1)+1}\xi^{l+3}\right\}e^{-\xi^2/2});
が &math(\varepsilon=\left(l+\frac{7}{2}\right)\hbar\omega);
に対する固有関数となることを示せ。
ここで見たように、エネルギー量子数 $N=n_x+n_y+n_z=l+2n$ で指定されるエネルギー固有値 $\varepsilon_N$ は $N\ne 0$ に対して縮退しており、その固有空間に取った2つの正規直交完全系が
$\big\{\varphi_{n_xn_yn_z}\big\}$ および $\big\{\varphi_{n,l,m}\big\}$ である。

このような正規直交系同士の間の変換はユニタリー行列で表される。

ここで2つの正規直交系の変換行列 $U$ は [[線形代数IIで学んだ基底の変換行列>線形代数II/基底の変換#lb2f5ba0]] のように、

$$
\Big( \varphi_{n_xn_yn_z}\ \varphi_{n'_xn'_yn'_z}\ \dots\ \varphi_{n^{\prime\prime}_xn^{\prime\prime}_yn^{\prime\prime}_z} \Big)=\Big( \varphi_{n,l,m}\ \varphi_{n',l',m'}\ \dots\ \varphi_{n^{\prime\prime},l^{\prime\prime},m^{\prime\prime}} \Big)U
$$

として定義される。

例えば、$N=0$ の

$$
\Big(\ \varphi_{\!\!\underbrace{0\,0\,0}_{n_xn_yn_z}}\ \Big)=\Big(\ \varphi_{\underbrace{0,0,0}_{n,l,m}}\ \Big)\Big(\ 1\ \Big)
$$

は自明だとしても、$N=1$ の

$$
\Big(\ \varphi_{\!\!\!\!\underbrace{100}_{n_xn_yn_z}}\ \varphi_{010}\ \varphi_{001}\ \Big)=
\Big(\ \varphi_{0,1,-1}\ \varphi_{0,1,0}\ \varphi_{\underbrace{0,1,1}_{n,l,m}}\ \Big)
\ \underbrace{\begin{pmatrix}-1/\sqrt 2&i/\sqrt 2&0\\0&0&1\\1/\sqrt 2&i/\sqrt 2&0 \end{pmatrix}\rule[-20pt]{0pt}{0pt}}_{U}
$$

に対しては、

$$
U^\dagger U=
\begin{pmatrix}-1/\sqrt 2&0&1/\sqrt 2\\-i/\sqrt 2&0&-i/\sqrt 2\\0&1&0 \end{pmatrix}
\begin{pmatrix}-1/\sqrt 2&i/\sqrt 2&0\\0&0&1\\1/\sqrt 2&i/\sqrt 2&0 \end{pmatrix}=
\begin{pmatrix}1&0&0\\0&1&0\\0&0&1 \end{pmatrix}
$$

を確かめられる。

2つの正規直交系 $\{\phi_i\}$ と $\{\psi_i\}$ の間の変換行列 $U$ がユニタリーになることは以下のように導ける。

$U$ の要素を $u_{ij}$ として、

$$
U=\Big(\ u_{ij}\ \Big)
$$

と置くと、

$$
\begin{pmatrix}\phi_1&\phi_1&\dots&\phi_n\rule[-5px]{0px}{15px}\end{pmatrix}=
\begin{pmatrix}\psi_1&\psi_1&\dots&\psi_n\rule[-5px]{0px}{15px}\end{pmatrix}U
$$

は、

$$
\phi_i=\sum_k \psi_k u_{ki}
$$

の関係を表す。これを使って $\big\{\phi_i\big\}$ の正規直交性を変形すると、

$$
\begin{aligned}
\Big(\phi_i,\ \phi_j\Big)
&=\sum_k\sum_l \Big(\psi_k,\ \psi_l\Big)u_{ki}^*u_{lj}\\
&=\sum_k\sum_l \delta_{kl}u_{ki}^*u_{lj}\\
&=\sum_k u_{ki}^*u_{kj}=\delta_{ij}\\
\end{aligned}
$$

を得るが、これはそのままユニタリーの条件 

$$U^\dagger U=E$$ 

を表している。

~
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