スピントロニクス理論の基礎/3 の変更点
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[[[前の章へ]>スピントロニクス理論の基礎/2]] <<<< [[スピントロニクス理論の基礎]](目次) >>>> [[[次の章へ]>スピントロニクス理論の基礎/4]] * 3 スピントロニクスの現象論 [#hbb0ee4a] #contents * 3-1 電流による磁化反転 [#bfa2e246] 3d 強磁性体では伝導電子もかなり強いスピン分極を受けている。 これは、アップスピンとダウンスピンの電子状態密度がエネルギー方向にずれており、 その結果フェルミレベルでの状態密度に差があることから生じる。 伝導電子のフェルミレベルでの状態密度をアップ &math(n_+); およびダウン &math(n_-); と表し、それらの寿命(平均自由行程を決める散乱寿命)をそれぞれ &math(\tau_+,\tau_-); とする。 するとスピン依存の電気伝導度は、 &math(\sigma_\pm\equiv e^2n_\pm\tau_\pm/m); であり、電流密度は &math(j_\pm=\sigma_\pm E); と表せる。 ここから電流のスピン分極率は、(3.1) &math(P\equiv \frac{j_+-j_-}{j_++j_-}=\frac{n_+\tau_+-n_-\tau_-}{n_+\tau_++n_-\tau_-}); で与えられる。&math(P); の値は完全に分極しているとき &math(P=\pm 1); を取り、 分極のない時 (&math(j_+=j_-=j/2);) には &math(P=0); となる。 実験的に、&math(P); が &math(1); に近い値を取りうることが確認されている。 したがって、強磁性金属に電流を流すと、 &math(j_s\equiv j_+-j_-=Pj); のスピン流が流れることになる。(&math(j=j_++j_-); に注意) ** スピン流のスピン空間での対称性 [#ped5c25b] 「ただしこのスピン流はスピン空間での対称性を持っておらず、 一様磁化の下で磁化方向へ射影したスピン流、つまり断熱成分である」 の意味はよく分からない。文脈からすると、これと対極にあるのが 「SU(2)対称なスピン流」であり、こちらは断熱成分ではないという事になるけれど・・・ ここで見るスピン流が角運動量を運ぶことは明らかに思える。 実際にアップまたはダウンのスピンが流れているから。 文脈からすると、「SU(2)対称なスピン流」では角運動量は運ばれないということになるのだろうか? ** 薄膜磁化の反転 [#ne16dda1] 注目する強磁性体薄膜層へ、スピン分極度 &math(P); で電流密度 &math(j); が流れ込むとする。 このとき、単位時間あたり単位面積あたりのスピン流入量は、 &math(\frac{1}{2}Pj/e); である。磁性体薄膜層の単位格子を &math(a^3);、単位格子に1つのスピン &math(S); が存在するなら、 単位面積当たりのスピン数は、膜厚を &math(L); として、 &math(SL/a^\red{3}); &math(SL/a^{\red {3}}); であるから、注入スピン密度がこの値を上回る時刻 &math( \frac{Pj}{2e}\Delta t > S\frac{L}{a^{\red 3}}\\ \Delta t > S\frac{L}{a^{\red 3}}\frac{2e}{Pj} ); までには磁化の反転が生じることが期待される。 しかし実際の系では、注入した磁化は ''磁気緩和'' により失われるため、 スピン注入量が少ないときには磁化の反転が生じない。 ** 磁気緩和 [#c08ee126] 磁化した物質中でのスピンの運動は 4-1 で詳しく扱うが、 スピンは隣り合うスピン間の相互作用の他に、磁気異方性エネルギーがある。 これは局在スピンの方向をある安定する方向(磁気容易軸)へ向けようとする力であり、 その効果はハミルトニアンに &math(-KS_z^2/2); のような項を加えることにより表すことができる。 ここで考えるような小さな薄い強磁性層で、磁化がほぼ一様に近い状況では、 通常最も重要な物はこの磁気異方性エネルギーである。 (4-1で主に扱う最隣接スピンとの相互作用は薄いかどうかに依らない様に思えるが、 それよりも形状異方性によって容易軸方向へ揃える効果が大きくなると言うことか?) &math(H_S=\int\frac{d^3}{a^3}\mathcal H_S=-\int\frac{d^3}{a^3}\frac{1}{2}KS_z^2=-\int\frac{d^3}{a^3}\frac{1}{2}KS^2\cos^2\theta); と置けば、 &math(\frac{\delta H_S}{\delta \phi}=\frac{\PD \mathcal H_S}{\PD \phi}-\frac{\PD}{\PD t}\frac{\PD \mathcal H_S}{\PD \dot\phi}=0); &math(\frac{\delta H_S}{\delta \theta}=\frac{\PD \mathcal H_S}{\PD \theta}-\frac{\PD}{\PD t}\frac{\PD \mathcal H_S}{\PD \dot\theta}=KS^2\cos\theta\sin\theta); より、(4.12) は(1行目に余計な &math(S); が付いていることに注意して) &math( \hbar \dot {\bm S}&=-KS\cos\theta \begin{pmatrix}-S\sin\theta\sin\phi\\S\sin\theta\cos\phi\\0\end{pmatrix}\\ &=-KS\cos\theta\begin{pmatrix}0\\0\\1\end{pmatrix}\times\begin{pmatrix}S\sin\theta\cos\phi\\S\sin\theta\sin\phi\\S\cos\theta\end{pmatrix}\\ &=-KS_z\bm e_z\times\bm S ); (4.9) と比べると、 &math( \dot \theta&=0\\ \dot \phi&=-KS_z\\ ); また、 &math( |\dot S|&\sim -\frac{1}{2}KS^2\sin 2\theta/\hbar ); となるような気がするのだけれど・・・ 教科書では磁化の運動の速さを、 &math(|\dot S|\sim K/\hbar); としているが、これがどこから来た物かよく分からなかった。 汎関数微分に慣れていないのでもう少し勉強が必要かもしれない? 磁化の緩和を磁化の運動の速さに比例するとして、単位時間当たり角運動量が &math(\hbar \alpha |\dot S|); だけ散逸すると仮定する。このときの無次元パラメータ &math(\alpha); を Gilbert 緩和定数と呼ぶ。 上記の &math(|\dot S|); を代入すると、単位時間当たりの角運動量緩和は &math(\alpha K); となりそうだが、教科書では &math(\alpha KS); としていて、これもよく分からない。本当は &math(|\dot S|\sim KS/\hbar); が正しいのだろうか? ここで言う「角運動量」は今注目しているz方向の成分のこと・・・かな?だとすると、 &math( \dot S_z=-S\sin\theta\dot\theta=\alpha KS ); &math( \dot\theta=-\frac{\alpha K}{\sin\theta} ); ということ? 角運動量の緩和による単位時間当たりのエネルギー減少量が教科書の通り &math(\hbar \alpha |\dot {\bm S}|^2/S); だとすると、 &math( -\frac{d}{dt}\left(-\frac{1}{2}KS^2\cos^2\theta\right)&=-KS^2\cos\theta\sin\theta\dot\theta\\ &=\hbar \alpha |\dot {\bm S}|^2/S ); どうやってもつじつまが合わない気がする・・・ 何か根本的に勘違いしているのかもしれない。 ここらで仕切り直して: 系の角運動量が単位時間当たりに &math(\alpha KS); だけ失われていくならば、 スピン偏極電流により磁化を反転させるためには少なくとも失われるよりも多くのスピンを注入する必要があり、 &math(\frac{jPa^2}{e}\gtrsim \alpha KS); が、磁化反転に必要な閾値電流を与える。 *** 正しくは [#o5e5bbe3] 4-4 で Gilbert 緩和項のあるときのスピンダイナミクスが議論されているので、 そのあたりを読んでから戻るとようやく理解できる。 緩和項によるスピンの時間変化は (4.31) によれば &math(-\frac{\alpha}{S}\bm S\times\dot{\bm S}); であり、&math(\bm S\perp\dot{\bm S}); よりこの大きさは &math(\alpha|\dot{\bm S}|); である。 3章の記述とは &math(\hbar); 分の差異があるが、もしかしたら &math(\alpha\rightarrow \hbar\alpha); とする流儀もあるのかも? さらに上記の成分は &math(\bm e_\theta); 方向を向いているため、z方向の角運動量変化はこれに &math(\sin\theta); を掛けた大きさになる。 &math(|\dot S_z|=|-S\sin\theta\,\dot\theta|=\alpha|\dot{\bm S}|\sin\theta); すなわち、 &math(|\dot\theta|=\alpha|\dot{\bm S}|/S); 系のハミルトニアンが &math(H_S=-\int\frac{d^3r}{a^3}\frac{1}{2}KS_z^2=-\int\frac{d^3r}{a^3}\frac{1}{2}KS^2\cos^2\theta); で与えられるとき、 上記の通り &math( |\dot S| \sim -KS^2\cos\theta\sin\theta/\hbar ); であることから、単位時間当たりのエネルギー散逸を見積もると、 &math( \left|-\frac{d}{dt}H_S\right|&=\left|-\frac{d}{dt}\left(-\frac{1}{2}KS^2\cos^2\theta\right)\right|\\ &=|KS^2\cos\theta\sin\theta\dot\theta|\\ &=\left|\alpha KS\cos\theta\sin\theta|\dot{\bm S}|\right|\\ &=\frac{\hbar\alpha }{S}\left|KS^2\cos\theta\sin\theta/\hbar|\dot{\bm S}|\right|\\ &=\frac{\hbar\alpha }{S}|\dot{\bm S}|^2\\ ); となって、&math(\hbar); を残して結果が合う。 この &math(\hbar); はどこから来たかというと、 [[スピントロニクス理論の基礎/4#x9214915]] のように、 &math(&\frac{dH_S}{dt}=-\frac{\red{\hbar}\alpha}{S} \dot{\bm S}^2); が正しく、3章、4章とも &math(\hbar); が抜けているようだ。 3章で出てくる &math(|\dot S|\sim K/\hbar); は上記の &math(|\dot S|); を何らかの形で近似した物なのだろうか? 上の結果を使うと &math( |\dot S_z|=\alpha KS^2\cos\theta\sin^2\theta/\hbar ); を得るが、これも教科書の &math(\alpha KS); という値とは異なってしまう・・・ もしも角運動量の緩和「率」というのが &math(|\dot S_z|/S); を表しているなら、 &math(\cos); や &math(\sin); の部分と &math(\hbar); を除いて合っていることになるのかもしれないが??? まだよく分からない。 ** 電流による時壁の運動 [#w6909d3e] * 質問・コメント [#oc9ef424] #article_kcaptcha
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