スピントロニクス理論の基礎/5-4 の変更点

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* 5-4 ピン止めポテンシャルと困難軸磁気異方性 [#m0e54320]

* ピン止め効果 [#d8d3713d]

結晶中の点状欠陥が磁壁をピン止めするのは、
点状欠陥があることにより強磁性相互作用や異方性エネルギーがその点で
周りと異なる値を取るためと考えられる。

ここでは容易軸異方性 &math(K=0); が &math(\bm r=\bm o); において
&math(K+\delta K); なる値 (&math(\delta K>0);) を取る場合を考える。

(5.34)

&math(
V_\mathrm{pin}&=-\int d^3r\left(\delta K\frac{S_z^2}{2}\right)\delta^3(\bm r)\\
&=-\int\frac{d^3r}{a^3}\delta K\frac{S^2a^3}{2}\delta^3(\bm r)\sin^2\theta(\bm r)
);

これを集団座標で表せば、

(5.35)

&math(
V_\mathrm{pin}&=-\frac{\delta KS^2}{2}\sin^2\theta(\bm o)\\
&=-\frac{\delta KS^2}{2}\frac{1}{\cosh^2\frac{X}{\lambda}}\\
);

このときエネルギーは &math(X=0); で最小となり、
磁壁を原点にトラップするポテンシャルとなっている。

計算上は、&math(1/\cosh(X/\lambda)); を次のように近似するのが便利である。

&math(|X|\ll |\lambda|); で、

&math(
&\frac{1}{\cosh^2\frac{X}{\lambda}}=\frac{2^2}{(e^\frac{X}{\lambda}+e^{-\frac{X}{\lambda}})^2}\\
&=\frac{4}{e^\frac{2X}{\lambda}+2+e^{-\frac{2X}{\lambda}}}\\
&=\frac{4}{(1+\frac{2X}{\lambda}+\frac{2X^2}{\lambda^2}+\dots)+2+(1-\frac{2X}{\lambda}+\frac{2X^2}{\lambda^2}+\dots)}\\
&=\frac{4}{4+4\frac{X^2}{\lambda^2}+\dots}\\
&=\frac{1}{1+\frac{X^2}{\lambda^2}+\dots}\\
&=1-\frac{X^2}{\lambda^2}+\dots\\
);

&math(|X|\gg |\lambda|); で &math(\frac{1}{\cosh^2\frac{X}{\lambda}}\sim 0);

より、

&math(\frac{1}{\cosh^2\frac{X}{\lambda}}\sim \left(1-\frac{X^2}{\lambda^2}\right)\theta(\lambda-|X|));

&attachref(sec2.png);

図のように、&math(1-X^2/\lambda^2); だけでは &math(|X|>\lambda); で
負側に突き抜けてしまうため、ステップ関数 &math(\theta(\lambda-|X|)); を
掛けることで範囲外をゼロとしている。

&math(
V_\mathrm{pin}&\sim\frac{\delta KS^2}{2}\left(\frac{X^2}{\lambda^2}-1\right)\theta(\lambda-|X|)\\
);

** 次元のおさらい [#o7c684d5]

この後、磁壁の質量、調和振動の振動数、ポテンシャルの深さ、等の定数が出てくるが、
それらを見る前に次元を整理しておきたい。

- この教科書では &math(S); は次元を持たない
- &math(\hbar); は角運動量の次元 (&math(\mathrm{kg\,m^2/s});)
- &math(K); はエネルギーの次元 (&math(\mathrm{kg\,m^2/s^2});)
- &math(J); はエネルギー×(長さ)^^2^^の次元 (&math(\mathrm{kg\,m^4/s^2});)
- &math(N_w); は次元を持たない
- &math(V_\mathrm{pin}); や &math(V_0); はエネルギーの次元
- &math(\lambda,\xi); は距離の次元

** V__pin__ の書き換え [#ob6544b7]

上では点状ポテンシャルを仮定したが、ポテンシャルが有限の幅を持つ場合、
ポテンシャルの届く距離は &math(\lambda); よりも長くなる。
その距離を &math(\xi); とすれば、

(5.36)

&math(
V_\mathrm{pin}&\sim\frac{\delta KS^2}{2}\left(\frac{X^2}{\xi^2}-1\right)\theta(\xi-|X|)\\
);

と書ける。教科書では係数に &math(\red{\xi^2}); が現れるのだが、
それでは次元がおかしくなってしまうため、どう理解してよいか分からない。

ポテンシャルの届く距離が長くなった分だけ実質的なポテンシャル深さが深くなるのはありそうだけれど、
もし現れるにしても &math(\xi/\lambda); とかの形でないと次元がむちゃくちゃになってしまう。。。

とりあえず以下では磁壁部分に掛かる、「スピン1個あたり」に直したポテンシャル深さ &math(V_0); を

&math(V_0\equiv\frac{1}{2}\delta KS^2\frac{1}{N_w});

と定義してみた(実際のポテンシャルを磁壁を構成するスピン数で割った)。
教科書ではこれに &math(\red{\xi^2}); が掛かる。
上記の通りそれだと (5.36) で次元が合わない。
教科書ではこれに &math(\red{\xi^2}); が掛かるが、上記の通りそれだと (5.36) で次元が合わない。
&math(V_0); と &math(V_\mathrm{pin}); とを同じ次元にするためにも、
ここに &math(\red{\xi^2}); は必要ないはず。

&math(V_\mathrm{pin}&\sim N_wV_0\left(\frac{X^2}{\xi^2}-1\right)\theta(\xi-|X|)\\);

磁壁の質量や振動数は後に「&math(X); 粒子の極限」で出てくる定数なので、とりあえず天下りに

&math(M_w\equiv\frac{2\hbar^2A}{K_\perp\lambda a^3}=\frac{\hbar^2N_w}{K_\perp\lambda^2});

&math(\Omega_\mathrm{pin}\equiv\sqrt{\frac{2V_0K_\perp\lambda^2}{\hbar^2\xi^2}});

と置くと、確かにそれぞれ質量および振動数の次元を持ち、

&math(\frac{1}{2}M_w\Omega_\mathrm{pin}^2&=\frac{1}{2}\frac{\hbar^2N_w}{K_\perp\lambda^2}2K_\perp V_0\frac{\lambda^2}{\hbar^2\xi^2}\\
&=N_wV_0\frac{1}{\xi^2}\\);

となって、(5.36) を得る。

* 磁気困難軸異方性 [#wc915f07]

&math(z); 方向の容易軸異方性に加えて、~
&math(y); 方向に困難軸異方性を持っているとすると、~
そのハミルトニアンは

&math(
H_{K_\perp}&=\int\frac{d^3r}{a^3} \frac{K_\perp S_y^2}{2}\\
&=\int\frac{d^3r}{a^3} \frac{K_\perp S^2}{2}\sin^2\theta\sin^2\phi_0\\
&=\int\frac{d^3r}{a^3} \frac{K_\perp S^2}{2}\frac{1}{\cosh^2\frac{z-X}{\lambda}}\sin^2\phi_0\\
&=\frac{A}{a^3}\frac{K_\perp S^2}{2}\sin^2\phi_0\int dz \frac{1}{\cosh^2\frac{z-X}{\lambda}}\\
&=\frac{A}{a^3}\frac{K_\perp S^2}{2}\sin^2\phi_0 (2\lambda)\\
&=N_w\frac{K_\perp S^2}{2}\sin^2\phi_0\\
);

と表される。

* 質問・コメント [#x334ba35]

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