線形代数I/行列式 の変更点

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[[線形代数I]]

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培風館「教養の線形代数(五訂版)」に沿って行っている授業の授業ノート(の一部)です。

* 2次の行列式(デターミナント) [#r81825be]

2次の正方行列 &math(A); の行列式(デターミナントを日本語では行列式と呼ぶ)は、

&math(\det A=|A|=\left|\begin{array}{cc}a&b\\c&d\end{array}\right|=ad-bc);

であることを高校で学んだ。(最近は学ばないのかも)

ここで、
&math(\left|\left[\begin{array}{cc}a&b\\c&d\end{array}\right]\right|);
と書く代わりに
&math(\left|\begin{array}{cc}a&b\\c&d\end{array}\right|);
と書くことに注意せよ。

一般に &math(n); 次の正方行列に行列式が定義される。

例:3次の場合~
&math(\left|\begin{array}{ccc}a&b&c\\d&e&f\\g&h&i\end{array}\right|=aei+bfg+cdh-ceg-bdi-afh);

&math(n); 次の行列式は
+ &math(n); 個の要素を掛け合わせ、符号を付けて足し合わせたもの
+ 掛け合わされる &math(n); 個の要素は各列から1つずつ、各行から1つずつ取られる~
つまり、1つの項の中に現れる &math(n);個の因子に同じ行、同じ列の要素がダブって含まれることは無い。
+ 付ける符号の決め方は後で学ぶ。

2. のルールを満たす積の作り方は &math({}_nP_n=n!); 通りある。

例:&math(n=3); の時

各行に対してどの列を取るかを表にすると、

|積|1行目|2行目|3行目|符号|
|&math(aei);|1|2|3|+|
|&math(bfg);|2|3|1|+|
|&math(cdh);|3|1|2|+|
|&math(ceg);|3|2|1|-|
|&math(bdi);|2|1|3|-|
|&math(afh);|1|3|2|-|

列の取り方が &math({}_nP_n=n!); 通りになることが分かる。

* 3.1 順列 [#ha430b95]

各項の符号を定義するため「順列」について学ぶ。

&math(n); 次の順列とは、&math(1\sim n); の数字を任意の順に並べ替えて丸括弧でくくった物。

- 1次:(1)
- 2次:(1 2), (2 1)
- 3次:(1 2 3), (2 3 1), (3 1 2), (3 2 1), (2 1 3), (1 3 2)
-  &math(\vdots);

(1つの順列の中に同じ数字は複数回現れないことに注意せよ)

** n 次の順列は n! 個存在する [#f4535f1c]

&math({}_nP_n=n!); 個存在する。

&math(1!=1);, &math(2!=2\cdot 1=2);, &math(3!=3\cdot 2\cdot 1=6);, &math(4!=4\cdot 3\cdot 2\cdot 1=24);, &math(5!=120);, &math(6!=720);, &math(7!=5040);, ・・・

** 文字で書くときは [#q3f51f60]

&math((p_1\ p_2\ p_3\ \cdots\ p_n)); などと書く。

&math(p_1, p_2, p_3, \cdots, p_n); には &math(1\sim n); の自然数が1回ずつ現れる。

** 転倒数 [#p2df7dc3]

&math(p_i); と &math(p_j); が、&math(i<j); にもかかわらず &math(p_i>p_j); となるとき、
&math(p_i,p_j); は「転倒している」と言う。~
(&math((1\ 2\ 3\ \cdots\ n)); の順を基準として、入れ替わっていると言う意味)

- (1 2 3) 転倒はない → 転倒数 0
- (1 3 2) 3 と 2 が転倒 → 転倒数 1
- (2 3 1) 2 と 1, 3 と 1 が転倒 → 転倒数 2
- (3 2 1) 3 と 2, 3 と 1, 2 と 1 が転倒 → 転倒数 3

間違いなく数えるには、それぞれの数字に対して、
自身よりも右にあって、自身よりも小さな数字の出現回数を数えて、
最後に全て加えればいい。

&math((2\ 5\ 1\ 3\ 7\ 4\ 6));~
&math(\phantom{(}1+3+0+0+2+0+0=6);

** 順列の符号 [#t6b04865]

&math(\varepsilon(p_1\ p_2\ \cdots\ p_n)); と書く。

順列の符号は &math(\pm 1); の値を取り、
- &math(+1); : 転倒数が偶数の場合
- &math(-1); : 転倒数が奇数の場合

両方まとめると、転倒数が &math(r); の時に

&math(\varepsilon(p_1\ p_2\ \cdots\ p_n)=(-1)^r);

** 隣り合う要素の入れ替えで符号は反転する [#k48cbbe4]

&math(\varepsilon(\cdots\ p_i\ p_{i+1}\ \cdots)&=\\-\varepsilon(\cdots\ p_{i+1}\ p_i\ \cdots)&);

∵ &math(p_i,p_{i+1}); 以外の要素の組については転倒数が変化しない。~
したがって、~
(1) &math(p_i<p_{i+1}); の時、入れ替えにより転倒数は1増える~
(2) &math(p_i>p_{i+1}); の時、入れ替えにより転倒数は1減る~

どちらの場合も、符号は反転する。

** 任意の要素の入れ替えで符号は反転する [#sde58dab]

&math(\varepsilon(\cdots\ p_i\ \cdots\ p_j\ \cdots)&=\\-\varepsilon(\cdots\ p_j\ \cdots\ p_i\ \cdots)&);

∵&math(i<j);とすれば、~
&math(i);番目と&math(i+1);番目、&math(i+1);番目と&math(i+2);番目、…、&math(j-1);番目と&math(j);番目をこの順に入れ替えると、入れ替え階数は&math(j-i);回であるから

(左辺)&math(=(-1)^{j-i}\varepsilon(\cdots\ p_{i+1}\ \cdots\ p_j\ p_i\ \cdots));

となる。(&math( p_{i+1}\ \cdots\ p_j); と &math(p_i); とを入れ替えた)

さらに、&math(j-2);番目と&math(j-1);番目、&math(j-3);番目と&math(j-2);番目、…、&math(i);番目と&math(i+1);番目をこの順に入れ替えると、入れ替え階数は&math(j-i-1);回であるから

&math(=(-1)^{2(j-i)-1}\varepsilon(\cdots\ p_j\ p_{i+1}\ \cdots\ p_{j-1}\ p_i\ \cdots)=);(右辺)

となる。(&math(p_j); と &math( p_{i+1}\ \cdots\ p_{j-1}); とを入れ替えた)

* n次正方行列の行列式 [#l1f19614]

&math(A=[a_{ij}]); とすると、行列式は次のように定義される。

&math(|A|=\sum_{(p_1\ p_2\ \cdots\ p_n)}\varepsilon(p_1\ p_2\ \cdots\ p_n)a_{1p_1}a_{2p_2}\cdots a_{np_n});

- &math(\sum_{(p_1\ p_2\ \cdots\ p_n)}); は、&math(n); 次の順列全てについて、それぞれ &math(\varepsilon(p_1\ p_2\ \cdots\ p_n)a_{1p_1}a_{2p_2}\cdots a_{np_n}); の値を計算し、
できた &math(n!); 個の項を足し合わせた値を意味する。

例1: &math(n=2); の時:

2次の順列を転倒数で分類すれば、

&math(+1:\ (1\ 2)\\-1:\ (2\ 1));

したがって、

&math(
\left|\begin{array}{cc}a&b\\c&d\end{array}\right|
&=\sum_{(p_1\ p_2)}\varepsilon(p_1\ p_2)a_{1p_1}a_{2p_2}\\
&=\underbrace{\varepsilon(1\ 2)a_{11}a_{22}}_{(p_1\ p_2)\,=\,(1\ 2)}+
  \underbrace{\varepsilon(2\ 1)a_{12}a_{21}}_{(p_1\ p_2)\,=\,(2\ 1)}\\
&=ad-bc
);

例2: &math(n=3); の時:

3次の順列を転倒数で分類すれば、

&math(+1:\ (1\ 2\ 3), (2\ 3\ 1), (3\ 1\ 2)\\-1:\ (3\ 2\ 1), (2\ 1\ 3), (1\ 3\ 2));

したがって、

&math(
\left|\begin{array}{ccc}a&b&c\\d&e&f\\g&h&i\end{array}\right|
=\sum_{(p_1\ p_2\ p_3)}\varepsilon(p_1\ p_2\ p_3)a_{1p_1}a_{2p_2}a_{3p_3}
);

&math(
\begin{array}{r@{\hspace{1cm}}c@{\hspace{1cm}}l}
=\varepsilon(1\ 2\ 3)a_{11}a_{22}a_{33}&\rightarrow&+aei\\
+\varepsilon(2\ 3\ 1)a_{12}a_{23}a_{31}&\rightarrow&+bfg\\
+\varepsilon(3\ 1\ 2)a_{13}a_{21}a_{32}&\rightarrow&+cdh\\
+\varepsilon(3\ 2\ 1)a_{13}a_{22}a_{31}&\rightarrow&-ceg\\
+\varepsilon(2\ 1\ 3)a_{12}a_{21}a_{33}&\rightarrow&-bdi\\
+\varepsilon(1\ 3\ 2)a_{11}a_{23}a_{32}&\rightarrow&-afh
\end{array}
);

&math(=aei+bfg+cdh-ceg-bdi-afh);

* 3.2 行列式の性質 [#n55fd6dd]

** すぐ分かる内容 [#xa7c98d3]

- &math(A=[a]); なら &math(|A|=a);~
&math(\because|A|=|[a]|=|a|=\sum_{(p_1)}\varepsilon(p_1)a_{1p_1}=+a_{11}=a);
- &math(|A|); は正にも負にもなる (絶対値とは異なる)
- &math(A); が整数のみからなる行列なら &math(|A|); も整数となる

** 行に対する多重線形性 [#x3d21891]

「線形」とは、~
&math(\begin{cases}f(ax)=af(x)\\f(x+y)=f(x)+f(y)\end{cases});

を満たすような関数 &math(f); を表す性質。

- &math(f(x)=Ax); なら線形
- &math(f(x)=Ax+B); だと線形ではない

行列式の多重線形性は、&math(A=\begin{bmatrix}\hspace{5mm}\bm a_1\hspace{5mm}\\\bm a_2\\[-4pt]\vdots\\[-6pt]\bm a_n\end{bmatrix}); を行列 &math(A); の行ベクトル分解として次の2つが成り立つこと。

&math(\begin{cases}\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\bm a_1\hspace{10mm}\\[-6pt]\vdots\\[-8pt]c\bm a_k\\[-6pt]\vdots\\[-8pt]\bm a_n\end{vmatrix}=c\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\bm a_1\hspace{10mm}\\[-6pt]\vdots\\[-8pt]\bm a_k\\[-6pt]\vdots\\[-8pt]\bm a_n\end{vmatrix}\\\phantom{0}\\\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\bm a_1\hspace{10mm}\\[-6pt]\vdots\\[-8pt]\bm a_k+\bm a'_k\\[-6pt]\vdots\\[-8pt]\bm a_n\end{vmatrix}=\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\bm a_1\hspace{10mm}\\[-6pt]\vdots\\[-8pt]\bm a_k\\[-6pt]\vdots\\[-8pt]\bm a_n\end{vmatrix}+\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\bm a_1\hspace{10mm}\\[-6pt]\vdots\\[-8pt]\bm a'_k\\[-6pt]\vdots\\[-8pt]\bm a_n\end{vmatrix}\end{cases});

これは、行列式を「行ベクトルを与えると数値を返す関数」と見たときに、

&math(f(\bm a_1,\bm a_2,\dots,\bm a_n)=\begin{vmatrix}\hspace{5mm}\bm a_1\hspace{5mm}\\\bm a_2\\[-4pt]\vdots\\[-6pt]\bm a_n\end{vmatrix});

すべての引数 &math(\bm a_1,\bm a_2,\dots,\bm a_n); に対して線形性を持つと言うことであり、この意味で「多重」と言われる。

*** 証明 [#o56fb42b]

&math(
&(第1式左辺)\\
&=\sum_{(p_1\ p_2\ \dots\ p_n)}\varepsilon(p_1\ p_2\ \dots\ p_n)a_{1p_1}\dots (ca_{kp_k})\dots a_{np_n}\\
&=c\sum_{(p_1\ p_2\ \dots\ p_n)}\varepsilon(p_1\ p_2\ \dots\ p_n)a_{1p_1}\dots a_{kp_k}\dots a_{np_n}\\
&=(第1式右辺)
);

&math(\sum); 中で、&math(k); 行目の要素が現れるのは &math(ca_{kp_k}); の部分しかないことに注意せよ。

同様に、

&math(
(第2式左辺)\\
&=\sum_{(p_1\ p_2\ \dots\ p_n)}\varepsilon(p_1\ p_2\ \dots\ p_n)a_{1p_1}\dots (a_{kp_k}+a'_{kp_k})\dots a_{np_n}\\
&=\sum_{(p_1\ p_2\ \dots\ p_n)}\varepsilon(p_1\ p_2\ \dots\ p_n)a_{1p_1}\dots a_{kp_k}\dots a_{np_n}\\
&\ +\sum_{(p_1\ p_2\ \dots\ p_n)}\varepsilon(p_1\ p_2\ \dots\ p_n)a_{1p_1}\dots a'_{kp_k}\dots a_{np_n}\\
&=(第2式右辺)
);

** 行に対する交代性 [#pcc1c994]

行を入れ替えると符号が反転する

&math(
\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\vdots\hspace{10mm}\\[-6pt]\bm a_i\\[-4pt]\vdots\\[-6pt]\bm a_j\\[-4pt]\vdots\end{vmatrix}=-\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\vdots\hspace{10mm}\\[-6pt]\bm a_j\\[-4pt]\vdots\\[-6pt]\bm a_i\\[-4pt]\vdots\end{vmatrix}
);

*** 証明 [#c78216fd]

&math(
(左辺)\\
&=\phantom{-}\sum_{(\dots p_i\dots p_j\ \dots)}\varepsilon(\dots p_i\dots p_j\ \dots)\dots a_{ip_i}\dots a_{jp_j}\dots\\
&=\phantom{-}\sum_{(\dots p_i\dots p_j\ \dots)}\varepsilon(\dots p_i\dots p_j\ \dots)\dots a_{ip_j}\dots a_{jp_i}\dots\\
&=-\sum_{(\dots p_i\dots p_j\ \dots)}\varepsilon(\dots p_j\dots p_i\ \dots)\dots a_{ip_j}\dots a_{jp_i}\dots\\
&=-\sum_{(\dots p_j\dots p_i\ \dots)}\varepsilon(\dots p_j\dots p_i\ \dots)\dots a_{ip_j}\dots a_{jp_i}\dots\\
&=(右辺)
);

- 1行目→2行目:実数の積の交換法則
- 2行目→3行目:順列要素の入れ替え
- 3行目→4行目:Σの添え字が変更になることで和を取る順番が変化するが、&math(n);次の順列すべてについて和を取れば、全体として現れる項は等しくなる。

** 行に対するその他の性質 [#q0b1d0e6]

*** 同じ値を持つ行が複数存在すると行列式はゼロ [#g78107b7]

等しい値の行を入れ替えても行列式の値は変わらないが、
同時に符号は反転するはず。

&math(\because\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\vdots\hspace{10mm}\\[-6pt]\bm a_i\\[-4pt]\vdots\\[-6pt]\bm a_i\\[-4pt]\vdots\end{vmatrix}=-\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\vdots\hspace{10mm}\\[-6pt]\bm a_i\\[-4pt]\vdots\\[-6pt]\bm a_i\\[-4pt]\vdots\end{vmatrix});

&math(x=-x); の解は &math(x=0); であるから、この行列式の値はゼロ。

*** ゼロ行を含む行列式はゼロ [#z56e5cce]

&math(\bm o=0\bm o); より、

&math(\because\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\vdots\hspace{10mm}\\[-6pt]\bm o\\[-4pt]\vdots\end{vmatrix}=0\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\vdots\hspace{10mm}\\[-6pt]\bm o\\[-4pt]\vdots\end{vmatrix}=0);

*** ある行の定数倍を別の行に加えても行列式の値は変化しない [#e8030686]

&math(\because&\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\vdots\hspace{10mm}\\[-6pt]\bm a_i\\[-4pt]\vdots\\[-6pt]\bm a_j+c\bm a_i\\[-4pt]\vdots\end{vmatrix}\\=&\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\vdots\hspace{10mm}\\[-6pt]\bm a_i\\[-4pt]\vdots\\[-6pt]\bm a_j\\[-4pt]\vdots\end{vmatrix}+\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\vdots\hspace{10mm}\\[-6pt]\bm a_i\\[-4pt]\vdots\\[-6pt]c\bm a_i\\[-4pt]\vdots\end{vmatrix}\\=&\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\vdots\hspace{10mm}\\[-6pt]\bm a_i\\[-4pt]\vdots\\[-6pt]\bm a_j\\[-4pt]\vdots\end{vmatrix}+c\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\vdots\hspace{10mm}\\[-6pt]\bm a_i\\[-4pt]\vdots\\[-6pt]\bm a_i\\[-4pt]\vdots\end{vmatrix}\\=&\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\vdots\hspace{10mm}\\[-6pt]\bm a_i\\[-4pt]\vdots\\[-6pt]\bm a_j\\[-4pt]\vdots\end{vmatrix});

** 次数の低下(行方向) [#k4d335e0]

1列目が &math(a_{11}); を残してすべてゼロであるとき、
行列式を次数の1つ小さな行列式で表せる。

&math(\begin{vmatrix}a_{11}&a_{12}&\dots&a_{1n}\\0&a_{22}&\dots&a_{2n}\\\vdots&\vdots&\ddots&\vdots\\0&a_{n2}&\dots&a_{nn}\end{vmatrix}=a_{11}\begin{vmatrix}a_{22}&\dots&a_{2n}\\\vdots&\ddots&\vdots\\a_{n2}&\dots&a_{nn}\end{vmatrix});

*** 証明 [#acb6f94b]

(左辺)

&math(=\sum_{(p_1\ p_2\ \dots\ p_n)}\varepsilon(p_1\ p_2\ \dots\ p_n)a_{1p_1}a_{2p_2}\dots a_{np_n});

ここで、元の行列の形から &math(a_{k1}); は &math(k\ne 1); の時にゼロとなる。

一方、&math(p_1\ne 1); の項では &math(p_2\sim p_n); のうちどれかが必ず 1 になる。

&math(p_k=1); とすると、積 &math(a_{2p_2}\dots a_{np_n}); の中に &math(a_{kp_k}=a_{k1}); ただし &math(k\ne 1); が現れるから、そのような項はすべて消えてしまう。

結果として、&math(p_1=1); の項のみが残されて、

&math(&=\sum_{(1\ p_2\ \dots\ p_n)}\varepsilon(1\ p_2\ \dots\ p_n)a_{11}a_{2p_2}\dots a_{np_n}\\&=a_{11}\sum_{(1\ p_2\ \dots\ p_n)}\varepsilon(1\ p_2\ \dots\ p_n)a_{2p_2}\dots a_{np_n});

ここで、&math(n); 次の順列 &math((1\ p_2\ \dots\ p_n)); と
&math(n-1); 次の順列 &math((p_2\!-\!1\ \dots\ p_n\!-\!1)); とは同じ転倒数を持ち、符号も等しい。

さらに、前者が可能な値すべてを動くとき、後者は &math(n-1); 次の順列全てを動く。

したがって、&math((p_2\!-\!1\ \dots\ p_n\!-\!1)=(p'_1\ \dots\ p'_n)); と書けば、

&math(=a_{11}\sum_{(p'_1\ \dots\ p'_{n-1})}\varepsilon(p'_1\ \dots\ p'_{n-1})a_{2(p'_1+1)}\dots a_{n(p'_{n-1}+1)});

=(右辺)

*** 系 [#s1de0665]

- 上三角行列の行列式は対角成分の積に等しい~
~
&math(\begin{vmatrix}a_{11}&a_{12}&\dots&a_{1n}\\&a_{22}&\dots&a_{2n}\\&&\ddots&\vdots\\O&&&a_{nn}\end{vmatrix}=a_{11}a_{22}\dots a_{nn});
- 単位行列の行列式は1~
~
&math(|I|=1);

* 3.3 行に対する基本変形 [#z1260090]

** ある行を c 倍 [#obd64adc]

&math(|P_i(c)A|=c|A|);

&math(A=I); の時 &math(|P_i(c)|=c); より &math(|P_i(c)A|=|P_i(c)||A|); とも書ける

** ある行に別の行の c 倍を加えると行列式は変化しない [#pfe12347]

&math(|P_{ij}(c)A|=|A|);

&math(A=I); の時 &math(|P_{ij}(c)|=1); より &math(|P_{ij}(c)A|=|P_{ij}(c)||A|); とも書ける

** ある行と別の行とを入れ替えると行列式は反転 [#jd6af178]

&math(|P_{ij}A|=-|A|);

&math(A=I); の時 &math(|P_{ij}|=-1); より &math(|P_{ij}A|=|P_{ij}||A|); とも書ける

** 基本行列と行列式 [#dfb8cd06]

上で見た内容から、以下の2つの性質が明らかになった。

- 基本行列の行列式はゼロではない 
- &math(P); が基本行列の時 &math(|PA|=|P||A|);

** 正則行列と行列式 (補題3.7) [#t46bc6fe]

任意の正則行列 &math(P); は基本行列の積で書けるから、

正方行列 &math(A); に正則行列 &math(P); を左から掛ける時

&math(|PA|=|P_k\cdots P_2P_1A|=|P_k||P_{k-1}|\cdots|P_2||P_1||A|=|P||A|);

すなわち行列 &math(P, A); の積の行列式 &math(|PA|); は、
行列式 &math(|P|,|A|); の積で表わされる。

* 正則行列と行列式 [#d196fbba]

- 正則行列の行列式はゼロではない

∵ &math(|A|=|P_k\cdots P_2P_1|=|P_k||P_{k-1}\cdots P_2P_1|=|P_k||P_{k-1}|\cdots|P_2||P_1|\ne 0);

- &math(A); が正則でない場合 &math(|A|=0);

∵ &math(PA=X); を階段行列とすると、&math(X); はゼロ行ベクトルを含むため、
&math(|PA|=|X|=0);

一方、(1) より &math(|PA|=|P||A|); であるから &math(|A|=0);

- 正則性の判定 : 以下はすべて同値な条件となる (定理3.9)

-- &math(A); が正則であること
-- &math(\rank A=n);
-- &math(|A|\ne 0); 

- 逆行列の行列式 &math(|A^{-1}|=\frac{1}{|A|});~
∵ &math(A^{-1}A=I); より &math(|A^{-1}|\,|A|=|I|=1);

* 積の行列式は行列式の積で表せる (定理3.8) [#e9d71600]

&math(A,B); を正方行列とすれば &math(|AB|=|A||B|); が成り立つ。

*** 証明 [#h4c884bf]

(1) &math(A); が正則な場合は既に証明した
(1) &math(A); が正則な場合は[[既に証明した>#t46bc6fe]]

(2) &math(A); が正則でない場合

&math(|A|=0); であり、また &math(AB); も正則でないため &math(|AB|=0);

したがって、&math(|AB|=|A||B|=0);

* 行列の転置と行列式 [#i160a367]

** 基本行列の転置をとっても行列式は変化しない [#xb0be8a7]

&math(P_i(c)); および &math(P_{ij}); は対称行列であるから自明。

&math(P_{ij}(c)); については、

&math(\left|\transpose P_{ij}(c)\right|=\left|P_{ji}(c)\right|=1=\left|P_{ij}(c)\right|);

** 転置をとっても行列式は変化しない [#i8895fed]

&math(A); が正則でなければ &math(\transpose A); も正則でないので、
&math(|A|=|\transpose A|=0);

&math(A); が正則ならば、基本行列の積で書けて

&math(&|\transpose A|=|\transpose (P_k\dots P_2P_1)|=|\transpose P_1 \transpose P_2\dots \transpose P_k|=|\transpose P_1||\transpose P_2|\dots|\transpose P_k|\\&=|P_1||P_2|\dots|P_k|=|P_1P_2\dots P_k|=|A|);

* 列に対する性質 [#ne249c82]

転置に対する定理のおかげで、行に対する性質はすべて列に対しても成立する。

+ { 行 or 列 } に対する多重線形性
+ { 行 or 列 } に対する交代性
+ { 行 or 列 } に対する基本変形
++ ある { 行 or 列 } を c 倍すると行列式も c 倍
++ ある { 行 or 列 } に別の { 行 or 列 } の c 倍を加えると行列式は変化しない
++ ある { 行 or 列 } と別の { 行 or 列 } とを入れ替えると行列式は反転 
+ 次数の低下({ 行 or 列 }方向)
+ { 行 or 列 } に対するその他の性質
++ 同じ値を持つ { 行 or 列 } が複数存在すると行列式はゼロ
++ ゼロの { 行 or 列 } を含む行列式はゼロ

* 次数の低下の一般公式 [#d1081daa]

ある行、あるいはある列が、1つの要素を除いてゼロの時、要素の添え字に依存する符号を付けて次数を低下できる。

&math(\begin{vmatrix}A&\vdots&B\\\bm o&a_{ij}&\bm o\\C&\vdots&D\end{vmatrix}=\begin{vmatrix}A&\bm o&B\\\dots&a_{ij}&\dots\\C&\bm o&D\end{vmatrix}=(-1)^{i+j}a_{ij}\begin{vmatrix}A&B\\C&D\end{vmatrix});

行方向に &math(i-1); 回、列方向に &math(j-1); 回、行・列を入れ替えることで、それぞれ

&math(=(-1)^{i+j-2}\begin{vmatrix}a_{ij}&\bm o&\bm o\\\vdots&A&B\\\vdots&C&D\end{vmatrix});
&math(=(-1)^{i+j-2}\begin{vmatrix}a_{ij}&\dots&\dots\\\bm o&A&B\\\bm o&C&D\end{vmatrix});

の形にでき、&math((-1)^{-2}=1); を用い、また (1,1) 要素を前に出せば上記公式を得る。

* 一般の行列式の求め方 [#w8bbc1b5]

- 行および列に対する基本変形で、ある行または列を掃き出す
- 次数を低下する

を繰り返すことで、大きな行列でも行列式の値を計算できる。

* 3.4 行列式の展開 [#k37dc095]

** 余因子 [#y178e5f5]

ある行列 &math(A); を、&math(a_{ij}); を中心に次のように分割する。

&math(|A|=\begin{vmatrix}B&\bm ?&C\\\bm ?&a_{ij}&\bm ?\\D&\bm ?&E\end{vmatrix});

&math(i); 行目と &math(j); 列目を除いてできる行列式に符号を付けた

&math(\Tilde a_{ij}=(-1)^{i+j}\begin{vmatrix}B&C\\D&E\end{vmatrix});

を、&math(A); の &math((i,j)); 余因子と呼ぶ。

余因子を使うと、次数の低下を次のように書ける。

&math(\begin{vmatrix}B&\bm o&C\\\bm ?&a_{ij}&\bm ?\\D&\bm o&E\end{vmatrix}=\begin{vmatrix}B&\bm ?&C\\\bm o&a_{ij}&\bm o\\D&\bm ?&E\end{vmatrix}=a_{ij}\Tilde a_{ij}); 

&math(\Tilde a_{ij}); の表式は &math(a_{ij}); を含まないことに注意せよ。

** i 行目に対する展開 [#t1dbf2af]

&math(\begin{vmatrix}&&\text{\Large $\ast$}&&\\[10pt]a_{i1}&a_{i2}&a_{i3}&\hdots&a_{in}\\[10pt]&&\text{\Large $\ast$}&&\\\end{vmatrix});

&math(=\begin{vmatrix}&&\text{\Large $\ast$}&&\\[10pt]a_{i1}&0&0&\hdots&0\\[10pt]&&\text{\Large $\ast$}&&\\\end{vmatrix}+\begin{vmatrix}&&\text{\Large $\ast$}&&\\[10pt]0&a_{i2}&0&\hdots&0\\[10pt]&&\text{\Large $\ast$}&&\\\end{vmatrix}+\dots+\begin{vmatrix}&&\text{\Large $\ast$}&&\\[10pt]0&0&0&\hdots&a_{in}\\[10pt]&&\text{\Large $\ast$}&&\\\end{vmatrix});

&math(=a_{i1}\Tilde a_{i1}+a_{i2}\Tilde a_{i2}+\dots+a_{in}\Tilde a_{in});

&math(=\sum_{k=1}^n a_{ik}\Tilde a_{ik}=|A|); (任意の &math(i); に対して成り立つ)

** j 列目に対する展開 [#t1dbf2af]

&math(\sum_{k=1}^n a_{kj}\Tilde a_{kj}=|A|); (任意の &math(j); に対して成り立つ)

** ゼロとなる和 [#z30a683a]

&math(i\ne i'); あるいは &math(j\ne j'); の時、

&math(\sum_{k=1}^n a_{i'k}\Tilde a_{ik}=0); (任意の &math(i\ne i'); に対して成り立つ)

&math(\sum_{k=1}^n a_{kj'}\Tilde a_{kj}=0); (任意の &math(j\ne j'); に対して成り立つ)

となる。

なぜならこれらは、
- &math(A); の &math(i); 行目に &math(i'); 行目と同じ行をコピーした
- &math(A); の &math(j); 列目に &math(j'); 行目と同じ行をコピーした

行列の行列式を、それぞれ &math(i); 行目、&math(j); 行目で展開した形であるため。

&math(|A'|=\begin{vmatrix}\hspace{10mm}\vdots\hspace{10mm}\\[-6pt]\bm a'_i\\[-4pt]\vdots\\[-6pt]\bm a'_i\\[-4pt]\vdots\end{vmatrix}=0);

&math(A); の &math((i,j)); 余因子と、~
&math(A'); の &math((i,j)); 余因子とは等しいことが重要である。

(そもそも &math(\Tilde a_{ij}); には &math(i); 行目の成分も &math(j); 行目の成分もまったく含まれない)

例:

&math(
A=\begin{bmatrix}
a&b&c\\
d&e&f\\
g&h&i
\end{bmatrix}
); のとき、

&math(
\begin{vmatrix}
a&b&c\\
d&e&f\\
d&e&f
\end{vmatrix}
&=
\begin{vmatrix}
a&b&c\\
d&e&f\\
d&0&0
\end{vmatrix}+
\begin{vmatrix}
a&b&c\\
d&e&f\\
0&e&0
\end{vmatrix}+
\begin{vmatrix}
a&b&c\\
d&e&f\\
0&0&f
\end{vmatrix}\\
&=d(-1)^{3+1}\begin{vmatrix}b&c\\e&f\end{vmatrix}
+e(-1)^{3+2}\begin{vmatrix}a&c\\d&f\end{vmatrix}
+f(-1)^{3+3}\begin{vmatrix}a&b\\d&e\end{vmatrix}\\
&=d\,\tilde a_{31}+e\,\tilde a_{32}+f\,\tilde a_{33}\\
&=a_{21}\tilde a_{31}+a_{22}\tilde a_{32}+a_{23}\tilde a_{33}\\
&=\sum_{j=1}^3a_{2j}\tilde a_{3j}
);

2行目を3行目にコピーした行列式を元の &math(A); の余因子で書けていることに注意。

* 余因子行列と逆行列 [#c22fd6e5]

** 余因子行列 [#g68ecee0]

&math(\Tilde A=\transpose \,[\Tilde a_{ij}]=[\Tilde a_{ji}]=\begin{bmatrix}\Tilde a_{11}&\cdots&\Tilde a_{n1}\\\vdots&\ddots&\vdots\\\Tilde a_{1n}&\cdots&\Tilde a_{nn}\end{bmatrix});

転置に注意せよ。

** 余因子行列の性質 [#a64e8d03]

&math(A \Tilde A=\left[\,\sum_{k=1}^n a_{ik}\Tilde a_{jk}\,\right]=\Big[\,|A|\delta_{ij}\,\Big]);

&math(\Tilde A A=\left[\,\sum_{k=1}^n \Tilde a_{ki}a_{kj}\,\right]=\Big[\,|A|\delta_{ij}\,\Big]);

すなわち、

&math(A\Tilde A=\Tilde AA=|A|I);

&math(\frac{1}{|A|}\Tilde A=A^{-1});

ここからも、&math(|A|\ne 0); であれば &math(A); が正則であることを確認できる。

* クラメル(Cramer)の公式 [#qde444eb]

連立一次方程式を &math(A\bm x=\bm b);、その解を &math(\bm x=\begin{bmatrix}x_1\\x_2\\\vdots\\x_n\end{bmatrix}); とすると、&math(|A|\ne 0); のとき

&math(x_1=\frac{|\bm b\ \bm a_2\ \bm a_3\ \dots\ \bm a_n|}{|A|});

&math(x_2=\frac{|\bm a_1\ \bm b\ \bm a_3\ \dots\ \bm a_n|}{|A|});

・・・

&math(x_n=\frac{|\bm a_1\ \bm a_2\ \bm a_3\ \dots\ \bm b|}{|A|});

と表せる。

*** 証明 [#w95aedb3]

&math(A=\begin{bmatrix}a_1&a_2&\hdots&a_n\end{bmatrix}); のように列ベクトルに分割する。

&math(\bm b=A\bm x=x_1\bm a_1+x_2\bm a_2+\dots x_n\bm a_n=\sum_{k=1}^n x_k\bm a_k);

したがって、

&math(\Big|\bm a_1\ \dots\ \bm a_{i-1}\ \bm b\ \bm a_{i+1}\ \dots\ \bm a_n\Big|);

&math(=\left|\bm a_1\ \dots\ \bm a_{i-1}\ \left(\sum_{k=1}^n x_k\bm a_k\right)\ \bm a_{i+1}\ \dots\ \bm a_n\right|);

&math(=\sum_{k=1}^n x_k\Big|\bm a_1\ \dots\ \bm a_{i-1}\ \bm a_k\ \bm a_{i+1}\ \dots\ \bm a_n\Big|);

&math(=x_i\Big|\bm a_1\ \dots\ \bm a_{i-1}\ \bm a_i\ \bm a_{i+1}\ \dots\ \bm a_n\Big|);

&math(=x_i|A|);

両辺を &math(|A|); で割れば与式を得る。

* コメント [#ze07bf42]

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