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#contents
* 写像 [#r6199a82]
ベクトル &math(\bm{x} \in \bm{R}^n); を与えるとベクトル &math(\bm{y} \in \bm{R}^m); を
返すような関数 &math(\bm{y}=\phi(\bm{x})); を考よう。
&math(\bm{R}^n); の部分集合 &math(E \subset \bm{R}^n); があり、これに含まれる点を
1点1点 &math(\bm{y}=\phi(\bm{x})); で写して、移った先の点の集合 &math(F); を考えると、
これは &math(\bm{R}^n); 中に ''&math(E); で定義される形状'' を &math(\bm{R}^m); の中
の ''ある形状'' に写す操作と考えることができる。
このような意味で、関数 &math(\phi); を &math(\bm{R}^n); から &math(\bm{R}^m); への
「写像」と呼ぶことがある。
1つの写像を定義することになる。
また、集合 &math(E); が写像 &math(\phi); で集合 &math(F); に写るとき、これを
&math(F=\phi(E)); と書く。
* 線形写像 [#sbf30899]
ある写像 &math(\phi); がベクトルの加法と数乗法に対して透過的であるとき、
つまり次の性質を持つとき、これを「線形写像」と呼ぶ。
&math(\bm{x}, \bm{y} \in \bm{R}^n);、&math(a, b \in R); として、
- &math(\phi(\bm{x}+\bm{y})=\phi(\bm{x}) + \phi(\bm{y}));
- &math(\phi(a\bm{x})=a\phi(\bm{x}));
あるいは、これらを一まとめにして、
- &math(\phi(a\bm{x}+b\bm{y})=a\phi(\bm{x})+b\phi(\bm{y}));
* 線形写像と行列 [#e12ef835]
&math(\bm{R}^n); から &math(\bm{R}^m); への ''任意の線形写像'' &math(\phi); は、
適当な (m,n)-行列 &math(A); を用いて、
&math(\phi(\bm{x})=A\bm{x});
と表すことができるという著しい特徴を持つ。
以下にこれを証明する。
&math(\bm{x} \in \bm{R}^n); を &math(\bm{R}^n); の標準基底 &math(\{\bm{e}_i\});、ただし、
&math(\bm{e}_1=(1,0,0,\dots,0));~
&math(\bm{e}_2=(0,1,0,\dots,0));~
&math(\bm{e}_3=(0,0,1,\dots,0));~
. . . .~
~
&math(\bm{e}_n=(0,0,0,\dots,1));~
を使って、
&math(\bm{x}=x_1 \bm{e}_1 + x_2 \bm{e}_2 + x_3 \bm{e}_3 + \dots + x_n \bm{e}_n );
と表す。
すると、線形写像の定義より、
&math(\phi(\bm{x})&=x_1 \phi(\bm{e}_1) + x_2 \phi(\bm{e}_2) + x_3 \phi(\bm{e}_3) + \dots + x_n \phi(\bm{e}_n) ) \\ &=x_1 \bm{e}^\prime_1 + x_2 \bm{e}^\prime_2 + x_3 \bm{e}^\prime_3 + \dots + x_n \bm{e}^\prime_n );
と書くことができる。ここで、&math(\bm{e}^\prime_i=\phi(\bm{e}_i) \in \bm{R}^m); である。
行列 &math(A); を、これら列ベクトル &math(\bm{e}^\prime_i); を横に並べた行列、すなわち
&math(A=\left[\bm{e}^\prime_1\ \bm{e}^\prime_2\ \bm{e}^\prime_3\ \dots\ \bm{e}^\prime_n\right]);
と置くと、
&math(\phi(\bm{x})=A\bm{x});
と書けることが分かる。
このように、線形であるという制約を課した「写像」は定義域に含まれるごく少数の
ベクトル(正確には次元数と同じ数の線形独立なベクトル、つまり1つの基底)について
その値が分かれば他の値はすべてそれらの線形結合として求めることができてしまう。
逆に、&math(\phi(\bm{x})=A\bm{x}); という写像は常に線形写像となるが、こちらはほぼ自明である。
* 合成写像 [#h807e6a2]
行列 &math(A); で定義される &math(\bm{R}^n); から &math(\bm{R}^m); への写像 &math(\phi); と
行列 &math(B); で定義される &math(\bm{R}^m); から &math(\bm{R}^k); への写像 &math(\psi); と
をこの順序で連続して適用した結果得られる &math(\bm{R}^n); から &math(\bm{R}^k);
への写像は、行列 &math(C=BA); で表すことができる。
このような写像を &math(\phi); と &math(\psi); との合成写像と呼ぶ。
&math(\psi(\phi(\bm{x}))= B(A\bm{x}) = (BA)\bm{x} = C\bm{x});
* 線形写像とベクトル空間 [#e575ef5e]
部分ベクトル空間を線形写像で写すと、移った先も部分ベクトル空間となる。
正確に言うと、
&math(\bm{R}^n); の部分ベクトル空間 &math(E); が線形写像 &math(\phi); で
&math(\bm{R}^m); の部分集合 &math(F); へ移ったとする。このとき &math(F); は
&math(\bm{R}^m); の部分ベクトル空間となる。
[[線形代数I/教科書定理/2.6]]
また逆に、
線形写像で写した先が部分ベクトル空間となるなら写す前も部分ベクトル空間である。
正確に言うと、
&math(\bm{R}^n); の部分集合 &math(E); が線形写像 &math(\phi); で
&math(\bm{R}^m); の部分ベクトル空間 &math(F); へ移ったならば、
&math(E); は &math(\bm{R}^n); の部分ベクトル空間でなければならない。
[[線形代数I/教科書定理/2.7]]
* 定義域 [#qf68b825]
写像 &math(\phi(\bm{x})); の &math(\bm{x}); として与えることのできる値の集合。
&math(\bm{R}^n); から &math(\bm{R}^m); への写像であれば &math(\bm{R}^n); のこと。
* 値域 [#q709b2c0]
写像 &math(\phi); の定義域全体が &math(\phi); で写される先を値域と呼ぶ。
&math(\bm{y}=\phi(\bm{x})); とすれば &math(\bm{y}); は値域の外の値を取ることは無い。
* 上への写像 [#ffc314ea]
&math(\bm{R}^n); から &math(\bm{R}^m); への写像 &math(\phi); の値域が &math(\bm{R}^m); 全体で
あるとき、&math(\phi); を上への写像と呼ぶ。
* 1対1写像 [#ue6f32a4]
&math(\bm{x}_1,\bm{x}_2 \in \bm{R}^n); が &math(\bm{x}_1 \ne \bm{x}_2); であれば
必ず &math(\phi(\bm{x}_1) \ne \phi(\bm{x}_2)); であるような写像を1対1写像と呼ぶ。
ある写像が1対1であることを示すためにはこの定義の対偶を取って、
&math(\phi(\bm{x}_1) = \phi(\bm{x}_2)); であれば &math(\bm{x}_1 = \bm{x}_2); である
ことを示す方が容易い場合が多い。
ある写像 &math(\phi); が1対1であれば、その値域を定義域に写す、&math(\phi); の
''逆写像'' について考えることが可能である。すなわち、&math(\bm{y}=\phi(\bm{x}));
であるときに &math(\bm{x}=\phi^{-1}(\bm{y})); となるような写像が存在する。
しかし、もとの写像が1対1ではない、すなわち互いに異なる &math(\bm{x}_1 \ne \bm{x}_2);
について &math(\phi(\bm{x}_1)=\phi(\bm{x}_2)); となってしまうのであれば、&math(\phi(x));
の値のみから元の &math(\bm{x}); を求めることは不可能で、逆写像は存在しない。
1対1写像はつまり逆写像の存在する写像のことであると言える。
* 核(カーネル, Kernel) [#k467800d]
&math(\phi); により &math(\bm{o}); に写される値の集合を &math(\phi); の核と呼び、
&math(\text{Ker}\,\phi); と書く。
&math(\text{Ker}\,\phi=\{\bm{x} \in \bm{R}^n | \phi(\bm{x})=\bm{o}\});
である。
* 1対1線形写像の持つ意味 [#m93819fb]
1対1の線形写像は非常に重要なものである。以下にこれを見ていく。
** 線形写像が1対1であればその核はゼロベクトルのみからなる [#p4f118f1]
つまり &math(\text{Ker}\,\phi=\{\bm{o}\}); である。
また、逆も成り立つ。
>> [[線形代数I/教科書定理/2.10]]
** 線形写像が1対1であれば任意の線形独立なベクトルは写った先でも線形独立である [#y98698dc]
また、逆も成り立つ。
>> [[線形代数I/教科書定理/2.11]]
** 線形写像が1対1であれば任意のn次元ベクトル空間はn次元ベクトル空間に写される [#sb0a7b41]
これは直前の定理からほぼ自動的に導かれるが非常に重要な結論である。
1対1でない場合には任意のn次元ベクトル空間はm次元ベクトル空間、ただし m<n に写される。
これが階数 (rank) の考え方につながる。
*** 証明 [#vc3ff334]
&math(\{\bm{e}_i\}_{i=1 \dots n}); を元のn次元ベクトル空間のある基底とする。
写った先のベクトル空間に含まれる任意の要素 &math(\bm{x}^\prime); に対して
&math(\bm{x}^\prime=\phi(\bm{x}));
となる &math(\bm{x}); が存在するが、この &math(\bm{x}); を
&math(\{\bm{e}_i\}_{i=1 \dots n}); を使って
&math(\bm{x}=x_1\bm{e}_1+x_2\bm{e}_2+\dots+x_n\bm{e}_n); と表すと、
&math(\bm{x}^\prime=x_1\phi(\bm{e}_1)+x_2\phi(\bm{e}_2)+\dots+x_n\phi(\bm{e}_n));
と書ける。すなわち &math(\{\phi(\bm{e}_i)\}_{i=1\dots n}); は写った先の
ベクトル空間を張る。
一方、&math(\phi); が1対1なので &math(\{\phi(\bm{e}_i)\}_{i=1\dots n}); は線形独立。
従って、&math(\{\phi(\bm{e}_i)\}_{i=1\dots n}); は写った先の基底となっていて、
写った先がn次元であることが証明される。
* 階数 (rank) [#t9be340d]
(以下書きかけ)
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