正規行列の対角化可能性 の変更点

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#author("2024-09-28T07:10:13+00:00","","")
[[線形代数II/固有値問題・固有空間・スペクトル分解]]

#katex

* 正規行列 [#ua361752]

正規行列とは $A^\dagger A=A A^\dagger$ を満たす行列 $A$

ユニタリ行列により対角化可能であることと、正規行列であることとは同値である。

すなわち、

- ユニタリ行列により対角化可能であれば正規行列である
- 正規行列であればユニタリ行列により対角化可能である

の両方が証明可能。以下、やってみる。

** 復習 [#x1856935]

エルミート共役(随伴行列) $A^\dagger$ は $\overline{{}^t\! A}$ のことで、
転置行列の複素共役。転置行列 ${}^t\!A$ の複素数版と考えると良い。

同様に、ユニタリ行列 $A^\dagger=A^{-1}$ は直交行列 ${}^t\!A=A^{-1}$ の複素数版。

* ユニタリ行列により対角化可能であれば正規行列である [#p2b1755b]

$U$ をユニタリ行列 ($U^\dagger=U^{-1}$)、
$\Lambda$ を対角行列として($\Lambda$ は $\lambda$ の大文字)、

$$
U^\dagger A U=\Lambda=
\begin{pmatrix}
\lambda_1\\ 
&\lambda_2\\
&&\ddots\\
&&&\lambda_n
\end{pmatrix}
$$

が成り立つとき、$A=U\Lambda U^\dagger$ と書けるから、

$$
A^\dagger=(U\Lambda U^\dagger)^\dagger=U\Lambda^\dagger U^\dagger=U\overline{\Lambda}U^\dagger
\hspace{5mm}(\text{対角行列なので}\ {}^t\!\Lambda=\Lambda)
$$

したがって、

$$AA^\dagger=U\Lambda U^\dagger U\overline{\Lambda} U^\dagger=U\Lambda \overline{\Lambda} U^\dagger$$

$$A^\dagger A=U\overline{\Lambda} U^\dagger U\Lambda U^\dagger=U\overline{\Lambda} \Lambda U^\dagger$$

ここで、

$$
\Lambda \overline{\Lambda}=\overline{\Lambda}\Lambda=
\begin{pmatrix}
|\lambda_1|^2\\ 
&|\lambda_2|^2\\
&&\ddots\\
&&&|\lambda_n|^2
\end{pmatrix}
$$

であるから、$AA^\dagger=A^\dagger A$ が証明された。

* 正規行列であればユニタリ行列により対角化可能である [#hbdaa52d]

$A$ を $n$ 次元行列として、$n$ に対する数学的帰納法を用いる。

(1) $n=1$ のとき

任意の一次元行列 $A$ は始めから対角行列なので、
$U=E$ (単位行列)と取れば $U^\dagger A U$ は対角行列である。

(2) $n-1$ 次元で成り立つとすれば $n$ 次元でも成り立つことを証明する。

$A\bm x_1=\lambda\bm x_1$ を満たす $\lambda,\bm x_1$ を、
任意の $A$ に対して最低限1組は見つけられる。

この $\bm x_1$ に対して、$\bm x_1,\bm x_2,\dots,\bm x_n$ が正規直交系となるように
$\bm x_2,\dots,\bm x_n$ を定めれば、

$$U=\Big(\bm x_1\ \bm x_2\ \dots\ \bm x_n\Big)$$

はユニタリ行列となる。~
(ユニタリ行列の列ベクトルは正規直交系であった)

$$
\begin{aligned}
U^\dagger AU&=U^\dagger \Bigg(
A\bm x_1\ A\bm x_2\ \dots\ A\bm x_n
\Bigg)\\
&= \begin{pmatrix}
\bm x_1^\dagger\\\bm x_2^\dagger\\\vdots\\\ \ \bm x_n^\dagger\ \ 
\end{pmatrix} \Bigg(
\lambda\bm x_1\ A\bm x_2\ \dots\ A\bm x_n
\Bigg)=\begin{pmatrix}
\ \lambda & \bm b^\dagger \\
\ \bm 0   & \ \hspace{20pt}\rule[-25pt]{0pt}{50pt}A'\rule[-25pt]{0pt}{50pt}\hspace{20pt}
\end{pmatrix}
\end{aligned}
$$

ここで、
- $\bm b^\dagger$ は $n-1$ 次元の横ベクトル
- $A'$ は $n-1$ 次元の正方ベクトル

で、中身は $A$ や $U$ によって決まる。

ここまでは任意の行列 $A$ に対して成り立つ話。~
ここで $A$ が正規行列であるという条件を使う。

$$
(U^\dagger AU)^\dagger=U^\dagger A^\dagger U = \begin{pmatrix}
\ \overline \lambda & {}^t\bm 0 \\
\ \bm b   & \ \hspace{20pt}\rule[-25pt]{0pt}{50pt}{A'}^\dagger\rule[-25pt]{0pt}{50pt}\hspace{20pt}
\end{pmatrix}
$$

であるから、

$$
(U^\dagger A U)(U^\dagger A^\dagger U)=U^\dagger AA^\dagger U=\begin{pmatrix}
\ \lambda & \bm b^\dagger \\
\ \bm 0   & \ \hspace{20pt}\rule[-25pt]{0pt}{50pt}{A'}\rule[-25pt]{0pt}{50pt}\hspace{20pt}
\end{pmatrix}\begin{pmatrix}
\ \overline \lambda & {}^t\bm 0 \\
\ \bm b   & \ \hspace{20pt}\rule[-25pt]{0pt}{50pt}{A'}^\dagger\rule[-25pt]{0pt}{50pt}\hspace{20pt}
\end{pmatrix}
$$

$$
U^\dagger AA^\dagger U=\begin{pmatrix}
\ |\lambda|^2+\|\bm b\|^2 & \bm b^\dagger {A'}^\dagger \\
\ A'\bm b & \ \hspace{20pt}\rule[-25pt]{0pt}{50pt}{A'}{A'}^\dagger\rule[-25pt]{0pt}{50pt}\hspace{20pt}
\end{pmatrix}
$$

同様に、

$$
U^\dagger A^\dagger A U=\begin{pmatrix}
\ |\lambda|^2 & \overline\lambda\bm b^\dagger \\
\ \lambda\bm b & \ \hspace{20pt}\rule[-25pt]{0pt}{50pt}{A'}^\dagger{A'}\rule[-25pt]{0pt}{50pt}\hspace{20pt}
\end{pmatrix}
$$

これらが等しくなるためには、
- $\bm b=\bm 0$
- $A'{A'}^\dagger={A'}^\dagger A'$

すなわち、

$$
U^\dagger AU=\begin{pmatrix}
\ \lambda & {}^t\bm 0 \\
\ \bm 0   & \hspace{20pt}\rule[-25pt]{0pt}{50pt}A'\rule[-25pt]{0pt}{50pt}\hspace{20pt}
\end{pmatrix}
$$

かつ $A'$ は $n-1$ 次の正規行列でなければならない。

すると仮定より $A'$ は $n-1$ 次ユニタリ行列 $U'$ を用いて、

$${U'}^\dagger A'U'=\Lambda'$$

のように対角化可能である。

この $U'$ を用いて、$n$ 次正方行列

$$U''=\begin{pmatrix}
1&{}^t\bm 0\\
\bm 0&\hspace{10pt}\rule[-15pt]{0pt}{30pt}U'\rule[-15pt]{0pt}{30pt}\hspace{10pt}
\end{pmatrix}
$$

を作るとこれはユニタリ行列で、

$$
{U''}^\dagger (U^\dagger AU)
U''=\begin{pmatrix}
\ \lambda & {}^t\bm 0 \\
\ \bm 0   & \hspace{20pt}\rule[-25pt]{0pt}{50pt}{U'}^\dagger A'U'\rule[-25pt]{0pt}{50pt}\hspace{20pt}
\end{pmatrix}
=\begin{pmatrix}
\ \lambda & {}^t\bm 0 \\
\ \bm 0   & \hspace{20pt}\rule[-25pt]{0pt}{50pt}\Lambda'\rule[-25pt]{0pt}{50pt}\hspace{20pt}
\end{pmatrix}
$$

右辺は対角行列になっており、
左辺は $UU''$
$=U'''$ と置けば 
${U'''}^\dagger$
$AU'''$ と書ける。

さらに、ユニタリ行列は積について閉じているから $U'''$ はユニタリ行列である。

すなわち、$n$ 次元正規行列 $A$ をユニタリ行列 $U'''$ 
を用いて対角化できることが証明された。

* 質問・コメント [#nd96801f]

#article_kcaptcha
**無題 [#p30ad559]
> (&timetag(2024-09-28T07:10:13+00:00, 2024-09-28 (土) 16:10:13);)~
~
勘違いでしたらすみませんが、「同様に、」と「これらが等しくなるためには、」のあいだの式の右辺の右下の成分A’†A’には、bとb†からの寄与もA’†A’の各成分に和としてあるのではないでしょうか。b=0となるので証明に支障ありませんがどうでしょう。~

//

#comment_kcaptcha

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