球座標を用いた変数分離 の変更点

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* 目次 [#ibe32ff7]

[[量子力学Ⅰ]]

#contents

* 中心力場の中での運動 [#c3853c5e]

球対称なポテンシャル $V(\bm r)=V(r)$ の中での運動を考える。

このとき、$x,y,z$ の直交座標ではなく、
$r,\theta,\phi$ を用いた球座標を用いると都合がよい。

* 球座標における微分演算子(まとめ) [#xcdb86c0]

#ref(spherical-coordinate2.svg,right,around);

[[導出方法はこちら>@量子力学Ⅰ/球座標における微分演算子]]

球座標:

$$\begin{aligned}
\begin{cases}
x=r\sin\theta\cos\phi\\
y=r\sin\theta\sin\phi\\
z=r\cos\theta
\end{cases}
\end{aligned}$$

ラプラシアン:

$$\begin{aligned}\nabla^2=\Delta=&\frac{\PD^2}{\PD x^2}+\frac{\PD^2}{\PD y^2}+\frac{\PD^2}{\PD z^2}\\
=&\frac{1}{r}\frac{\PD^2}{\PD r^2}r+\frac{1}{r^2}\hat\Lambda\end{aligned}$$

$$\begin{aligned}\hat\Lambda=\frac{1}{\sin\theta} \frac{\PD}{\PD \theta}
\Big(\sin\theta\frac{\PD}{\PD \theta}\Big)+\frac{1}{\sin^2\theta} \frac{\PD^2}{\PD \phi^2}\end{aligned}$$

角運動量の大きさの2乗:

$$\begin{aligned}
\hat{\bm l}^2=|\bm r\times\hat{\bm p}|^2=-\hbar^2\hat\Lambda
\end{aligned}$$

ラプラシアンの $1/r^2$ の項の係数は、
角運動量の大きさの2乗の演算子 $\hat l^2$ と $-\hbar^2$ の係数を除いて等しい。

$z$ 軸まわりの運動量:

$$\begin{aligned}
\hat l_z=(\bm r\times\hat{\bm p})_z=-i\hbar\frac{\PD}{\PD\phi}
\end{aligned}$$

残りの角運動量:

$$\begin{aligned}
\hat l_x^2+\hat l_y^2=&\,\hat{\bm l}^2-\hat l_z^2\\
=&-\hbar^2\left[\frac{1}{\sin\theta} \frac{\PD}{\PD \theta}
\Big(\sin\theta\frac{\PD}{\PD \theta}\Big)+\frac{1}{\sin^2\theta} \frac{\PD^2}{\PD \phi^2}\right]+\hbar^2\frac{\PD^2}{\PD \phi^2}\\
=&-\hbar^2\left[\frac{1}{\sin\theta} \frac{\PD}{\PD \theta}
\Big(\sin\theta\frac{\PD}{\PD \theta}\Big)+\frac{1}{\tan^2\theta} \frac{\PD^2}{\PD \phi^2}\right]\\
\end{aligned}$$

角運動量の上昇・下降演算子(意味は後ほど):

$$\begin{aligned}\hat l_\pm=\hat l_x\pm i\hat l_y=\hbar e^{\pm i\phi}\Big(\pm\frac{\PD}{\PD\theta}+\frac{i}{\tan\theta}\frac{\PD}{\PD\phi}\Big)\end{aligned}$$

* 演習:シュレーディンガー方程式の変数分離 [#mfb957f5]

球座標表示におけるラプラシアンは以下のように表される。

$$\begin{aligned}\nabla^2=\frac{\PD^2}{\PD r^2}+\frac{2}{r}\frac{\PD}{\PD r}+\frac{1}{r^2}\hat\Lambda\end{aligned}$$

$$\begin{aligned}\hat\Lambda=\frac{1}{\sin\theta} \frac{\PD}{\PD \theta}
\Big(\sin\theta\frac{\PD}{\PD \theta}\Big)+\frac{1}{\sin^2\theta} \frac{\PD^2}{\PD \phi^2}\end{aligned}$$

以下の問いに従って、中心力場 $V(\bm r)=V(r)$ の中での粒子の運動について考えよ。

(1) $\displaystyle\frac{1}{r}\frac{\PD^2}{\PD r^2}r=\frac{\PD^2}{\PD r^2}+\frac{2}{r}\frac{\PD}{\PD r}$ を示せ。

(2) 与えられたラプラシアンの表式と (1) の結果を用いて、
球座標表示における時間を含まないシュレーディンガー方程式を書き下せ。
解答には $\hat\Lambda$ を用いて良い。

(3) 波動関数を $\varphi(r,\theta,\phi)=R(r)Y(\theta,\phi)$ と置き、
(2) の方程式を変数分離することにより、以下の方程式を導け。
ただし共通の定数を $l(l+1)$ と置いた。

$$\begin{aligned}
&-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{d^2}{d r^2}rR(r)+\left\{V(r)+\frac{\hbar^2l(l+1)}{2mr^2}\right\}rR(r)=\varepsilon\,rR(r)
\end{aligned}$$

$$\begin{aligned}
\hat\Lambda Y(\theta,\phi)=-l(l+1)Y(\theta,\phi)
\end{aligned}$$

(4) (3) の方程式を解いて得られる $Y(\theta,\phi)$ および $\varphi$ 
が角運動量の大きさの2乗 $\hat l^2$ の固有関数であり、その固有値が $\hbar^2l(l+1)$ 
となることを確かめよ。

(5) 古典論において、質量 $m$ の粒子が原点から $r$ の距離を角速度 $\omega$ 
で回転するときの角運動量は $L=mr^2\omega$ であり、遠心力は $f_c=mr\omega^2$ 
で与えられる。~
ここから遠心力に対するポテンシャルエネルギーが $V_c(r)=\frac{L^2}{2mr^2}$
と書けることを示し、(3) で得た $R(r)$ の方程式に現れる $\frac{\hbar^2l(l+1)}{2mr^2}$ 
の項が遠心力の寄与を表わすことを理解せよ。中心力場内では角運動量が保存量となるため、
遠心力とポテンシャルエネルギーとの関係は $L$ 一定の元で $\frac{\PD V_c}{\PD r}=-f_c$ 
であることに注意せよ。

(6) $Y(\theta,\phi)=\Theta(\theta)\Phi(\phi)$ と置いて (3) の第2式を変数分離すると以下の式が得られることを確かめよ。

$$\begin{aligned}\left\{\sin\theta \frac{d}{d \theta}\Big(\sin\theta\frac{d}{d \theta}\Big)+
l(l+1)\sin^2\theta-m^2\right\}\Theta(\theta)=0\end{aligned}$$

$$\begin{aligned}\frac{d^2}{d \phi^2}\Phi(\phi)=-m^2\Phi(\phi)\end{aligned}$$

$\begin{aligned}-m^2\end{aligned}$ と置いた(質量 $m$ と紛らわしいが慣例に従った)。

(7) $\Phi$ に対する方程式は、$\Phi$ が $\frac{d}{d \phi}\Phi(\phi)=im\Phi(\phi)$ を満たせば自動的に満たされる。この方程式を解き、連続の条件 $\Phi(2\pi)=\Phi(0)$ を満たすためには 
$m$ が整数値を取らなければならないことを確かめよ。

(8) (7), (3) を解いて得られた $\Phi(\phi)$ および $\varphi(r,\theta,\phi)$ は
$\hat l_z$ の固有関数であり、その固有値が $\hbar m$ であることを確かめよ。

[[●解答はこちら>@量子力学Ⅰ/球座標を用いた変数分離/メモ#cabc7bba]]

** 解説 [#zf4c1722]
&katex();

球対称ポテンシャル $V(\bm r)=V(r)$ に対する時間を含まないシュレーディンガー方程式:

$$\begin{aligned}
\hat H\varphi(\bm r)=\left[-\frac{\hbar^2}{2m}\nabla^2+V(r)\right]\varphi(\bm r)=\varepsilon \varphi(\bm r)
\end{aligned}$$

は、波動関数が球座標

$$\begin{aligned}
\begin{cases}
x=r\sin\theta\cos\phi\\
y=r\sin\theta\sin\phi\\
z=r\cos\theta
\end{cases}
\end{aligned}$$

を用いて $\varphi=R(r)Y(\theta,\phi)$ のように変数分離できることを仮定すると、

$$\begin{aligned}
\hat {\bm l}^2 \,Y_l(\theta,\phi)=\hbar^2l(l+1)\,Y_l(\theta,\phi)
\end{aligned}$$

$$\begin{aligned}
\displaystyle\underbrace{\bigg[-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{d^2}{dr^2}+\bigg\{V(r)+\overbrace{\frac{\hbar^2l(l+1)}{2mr^2}}^\text{遠心力ポテンシャル}\bigg\}\bigg]}_{\textstyle \hat H^l}\Big\{rR_n{}^l(r)\Big\}=\varepsilon_n{}^l\Big\{rR_n{}^l(r)\Big\}
\end{aligned}$$

の2つの方程式に分離できる。

第1式は $Y(\theta,\phi)$ が全角運動量の二乗 $\hat{\bm l}^2$ 
の固有関数であることを示しているが、これは波動関数 $\varphi$ 自体が 
$\hat{\bm l}^2$ の固有関数になるということと同義である。
($\hat{\bm l}^2$ は $R(r)$ に作用しないことに注意せよ)
つまり、上記の変数分離解は角運動量が一定となる運動を表す。

そして第2式は、全角運動量の二乗が $\hbar^2l(l+1)$ と確定した波動関数に対しては、
$rR(r)$ という関数が遠心力に対するポテンシャル $\hbar^2l(l+1)/2mr^2$ 
を含めた1次元ハミルトニアン $\hat H^l$ に対するシュレーディンガー方程式の解となる
ことを示している。

なぜ $R(r)$ でなく $rR(r)$ に対する方程式となるかというと、電子を $r$ から $r+dr$ の範囲に見出す確率が $|rR(r)|^2\,dr$ に比例するためである(球殻の体積 $=4\pi r^2dr$)。通常の一次元問題で $x$ から $x+dx$ の範囲に電子を見出す確率が $|\varphi(x)|^2\,dx$ と書けるのと比べると、$rR(r)$ が動径方向1次元波動関数であることが分かる。

全角運動量を決める量子数 $l$ (後にこれがゼロ以上の整数となることを見る)
が変わると $rR(r)$ に対する方程式も変化する。
各 $l$ に対して複数の固有値 $\varepsilon_n^l$ と固有関数 $R_n^l(r)$ 
が見つかるため、中心力場におけるエネルギー固有値は2つの量子数 $n, l$ で指定されることになる(下で出てくる量子数 $m$ には依存しない)。

$Y$ に対する方程式は $V(r)$ を含まない。
すなわち中心力でさえあれば、具体的にポテンシャル形状を決めないまま解ける。

$Y=\Theta(\theta)\Phi(\phi)$ のように変数分離できることを仮定すると、$Y(\theta,\phi)$ に対する方程式を

$$\begin{aligned}
\hat l_z^2\Phi(\phi)=-\hbar^2\frac{\partial^2}{\partial \phi^2}\Phi(\phi)=\hbar^2m^2\Phi(\phi)
\end{aligned}$$

$$\begin{aligned}
&\bigg\{-\frac{\hbar^2}{\sin\theta} \frac{\partial}{\partial \theta}\Big(\sin\theta\frac{\partial}{\partial \theta}\Big)
{}+\frac{\hbar^2 m^2}{\sin^2\theta}\bigg\}\Theta(\theta)=\\
&\bigg\{\underbrace{-\frac{\hbar^2}{\sin\theta} \frac{\partial}{\partial \theta}\Big(\sin\theta\frac{\partial}{\partial \theta}\Big)+\frac{\hbar^2m^2}{\tan^2\theta}\rule[-11pt]{0pt}{0pt}}_{\displaystyle l_x^2+l_y^2}+
\underbrace{\hbar^2 m^2\rule[-11pt]{0pt}{0pt}}_{\displaystyle l_z^2}\bigg\}\Theta(\theta)=\underbrace{\hbar^2l(l+1)\rule[-11pt]{0pt}{0pt}}_{\displaystyle l^2}\,\Theta(\theta)
\end{aligned}$$

の2つの方程式に分離できる。

$\Phi(\phi)$ に対する方程式は、$\Phi(\phi)$ が

$$
\hat l_z\Phi(\phi)=-i\hbar\frac{\partial}{\partial \phi}\Phi(\phi)=\hbar m\Phi(\phi)
$$

を満たすとすれば自動的に満たされる(この $m$ は「質量」と紛らわしいが慣例に従っておく)。この解は、

$$
\Phi(\phi)\propto e^{im\phi}
$$

となるが、$\phi$ は $z$ 軸周りの回転を表すから、
$\Phi$ には $\Phi(\phi+2\pi)=\Phi(\phi)$ の周期性が要求される。
ここから、$m$ が整数であることが必要となる($m=\dots,-2,-1,0,1,2,\dots$)。
このとき、$\Phi(\phi)$ は $\hat l_z$ の固有値 $\hbar m$ 
に対する固有関数となる。$\hat l_z$ は $\Theta(\theta)$ や $R(r)$ に影響しないから、これはすなわち $Y(\theta,\phi)$ や $\varphi(r,\theta,\phi)$ も $\hat l_z$ の固有関数となることを表す。

$\varphi$ に対して $z$ 軸周りの角運動量 $\hat l_z$ が確定値 $\hbar m$ を取り、
全角運動量の2乗 $\hat l^2$ が確定値 $\hbar^2l(l+1)$ を取ることになるから、
第2式の左辺で $\hbar^2 m^2$ を除いた部分が $\hat l_x^2+\hat l_y^2$ 
を表すことが分かる。

第2式は $\hat l_z$ が決定している状況で $\hat l^2$ の固有値および固有関数を求める問題になっており、
固有値 $\hbar^2l(l+1)$ に含まれる $l$ が

$$\begin{aligned}
l\ge |m|\hspace{5mm}\text{あるいは同じことだが}\hspace{5mm}l(l+1) > l^2 \ge m^2
\end{aligned}$$

を満たす''整数値''である場合にのみ解を持つことが知られている。物理的にはこの条件は、

$$
\underbrace{l_x^2+l_y^2+l_z^2}_{\hbar^2l(l+1)}=\underbrace{l_x^2+l_y^2}_{\hbar^2(l^2+l-m^2)\ge\,0}+\underbrace{l_z^2}_{\hbar^2m^2}
$$

に対応する。

このとき逆に、ある $l$ に対しては $-l\le m \le l$ となるため、

| 全角運動量 $\lvert\bm l\rvert\sim\hbar l$ | $z$ 軸周り角運動量 $l_z=\hbar m$ | 状態 |
| $l=0$ | $m=0$ | $s$ 状態 |
| $l=1$ | $m=-1,0,1$ | $p$ 状態 |
| $l=2$ | $m=-2,-1,0,1,2$ | $d$ 状態 |
| $l=3$ | $m=-3,-2,-1,0,1,2,3$ | $f$ 状態 |
| $\vdots$ | $\vdots$ | $\vdots$ |

原子の軌道を表す場合には、量子数 $l$ をそのまま用いる代わりに $s,p,d,f,g,\dots$ のアルファベットを用いる方が一般的である。$l$ とアルファベットの対応は以下の通り。原子を考える限り多くの場合 $f$ 軌道までで十分である。現在知られている最も重い原子でも、基底状態では $g, h$ などの電子軌道に電子が入ることはない。

|~ $l$   | 0  | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | … |
|~文字          | s | p | d | f | g | h | … |

上記を線形代数的な言葉でまとめるならば、

$$\begin{aligned}\hat{\bm l}^2Y_l{}^m(\theta, \phi)=\hbar^2l(l+1) Y_l{}^m(\theta, \phi)\end{aligned}$$

なる固有値問題において、固有値 $\hbar^2l(l+1)$ に対する 
$Y$ の固有空間は $2l+1$ 次元になる。
そして、この固有空間に角運動量の $z$ 成分を表す演算子 $\hat l_z$ に対する 
$2l+1$ 個の独立な固有関数(基底となる)を取ったのが
$Y_l{}^m(\theta, \phi)=\Theta_l{}^m(\theta)\Phi_m(\phi)$ であり、これは $\hat l^2$ と $\hat l_z$ の同時固有関数となる。すなわち、

$$\begin{aligned}\hat l_zY_l{}^m(\theta, \phi)=\hbar m Y_l{}^m(\theta, \phi)\end{aligned}$$

ただし、

$$\begin{aligned}l=0,1,2,\dots\end{aligned}$$ 

$$\begin{aligned}m=-l,-l+1,\dots,-1,0,1,\dots,l-1,l\end{aligned}$$ 

この関数は 球面調和関数 と呼ばれ、具体的には次の形を取る。

$$\begin{aligned}
Y_l^m(\theta,\phi)=
\underbrace{(-1)^{(m+|m|)/2}\sqrt{\frac{2l+1}{2}\frac{(l-|m|)!}{(l+|m|)!}}P_l^{|m|}(\cos\theta)}_{\Theta(\theta)}
\underbrace{\frac{1}{\sqrt{2\pi}}e^{im\phi}}_{\Phi(\phi)}
\end{aligned}$$

結果的に3次元の固有関数は3つの量子数 $l,m,n$ でラベル付けされ、

$$\begin{aligned}\varphi_{lmn}(r,\theta,\phi)=R_n^l(r)Y_l^m(\theta,\phi)=R_n^l(r)\Theta_l^m(\theta)\Phi_m(\phi)\end{aligned}$$

$$\begin{aligned}\hat H\varphi_{lmn}(r,\theta,\phi)=\varepsilon_n{}^l\varphi_{lmn}(r,\theta,\phi)\end{aligned}$$

すなわち、この系のエネルギー固有値は2つの量子数 $l,n$ により指定される。エネルギーが $m$ に依らないのは、今のような球対称な系において $x,y,z$ 座標をどの向きに取るかには任意性があるため、全角運動量が同じであればその成分が $x,y,z$ にどのように配分されているかでエネルギーが変化するようなことはない、として理解できる。

$\varphi_{lmn}$ に対して $\hat l^2 \varphi_{lmn}= \hbar^2l(l+1)\varphi_{lmn}$ 
であるから、この関数の全角運動量の大きさ $|\bm l|$ は $\hbar\sqrt{l(l+1)}$ であるが、
慣例として「角運動量の大きさが $\hbar l$ のとき」などという。

角運動量の大きさ $|\bm l|\sim\hbar l$ であるとき、その $z$ 成分 $l_z$ が 
$-\hbar l\le \hbar m\le \hbar l$ を満たすのは当然と思えるはずである。
$m=\pm l$ のときも、不確定性により $l_x,l_y$ は完全にはゼロとならず、
$l_x^2+l_y^2=\hbar^2 l$ となる。これが $|\bm l|^2=\hbar^2l^2$ とはならず、
$|\bm l|^2=\hbar^2l(l+1)$ となる理由である。

波動関数 $\varphi_{nml}(\bm r)=R_n{}^l(r)Y_l{}^m(\theta,\phi)$ 
を全空間で積分した際に1となるよう規格化するためには、$R(r),\Theta(\theta),\Phi(\phi)$ をそれぞれ、

$$\begin{aligned}
&\iiint|\varphi(\bm r)|^2d^3r=\\
&\int_0^\infty dr\int_0^\pi r\sin\theta\,d\theta\int_0^{2\pi}r\,d\phi\ |\varphi(\bm r)|^2=\\
&\underbrace{\int_0^\infty r^2|R(r)|^2dr}_{\displaystyle=1}
\ \underbrace{\int_0^\pi \sin\theta|\Theta(\theta)|^2 d\theta}_{\displaystyle=1}
\ \underbrace{\int_0^{2\pi}|\Phi(\phi)|^2 d\phi}_{\displaystyle=1}=1
\end{aligned}$$

となるように規格化すればよい。(実は確率密度関数としての正規化だけを考えれば $1\times 1\times 1$ ではなく、例えば $1/4\pi\times 2\times 2\pi$ となるよう規格化しても構わないのだが、それぞれを正規直交完全系となるよう規格化したのがこの形だ)

$R(r)$ に対する積分に $r^2$、
$\Theta(\theta)$ に対する積分に $\sin\theta$ の重みが
それぞれかかることに注意せよ。

それぞれの正規直交性は、

$$\begin{aligned}
\int_0^\infty \big\{rR_n{}^l(r)\big\}^*\big\{rR_{n'}{}^l(r)\big\}\,dr=\delta_{nn'}
\end{aligned}$$

$$\begin{aligned}
\int_0^\pi \sin\theta\ \Theta_l^m(\theta)^*\Theta_{l'}^m(\theta) d\theta=\delta_{ll'}
\end{aligned}$$

$$\begin{aligned}
\int_0^{2\pi}\Phi_m(\phi)^*\Phi_{m'}(\phi) d\phi=\delta_{mm'}
\end{aligned}$$

であり、このとき
であり、このとき $\varphi_{lmn}$ 自体が正規直交完全になり、

$$\begin{aligned}
\iiint\varphi_{lmn}^*(\bm r)\varphi_{l'm'n'}(\bm r)\,d^3r
&=\delta_{ll'}\delta_{mm'}\delta_{nn'}\\
&=\begin{cases}
\ 1&(l=l',\, m=m',\, n=n')\\
\ 0&(\text{それ以外})\\
\end{cases}
\end{aligned}$$

が成り立つ。

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* 質問・コメント [#q69076f4]

#article_kcaptcha
**演習問題解説 ミス [#kaa065ac]
>[[ね こ]] (&timetag(2018-08-04T06:15:07+09:00, 2018-08-04 (土) 15:15:07);)~
~
内容が充実していていつも参考にさせていただいております。~
~
軽微なミスの指摘になりますが、演習問題の解説の~
球対称ポテンシャルV=V(r)に対する時間を含まないシュレーディンガー方程式:~
の直下の式中で∂^2/∂x^2とありますが、∇^2ではないでしょうか。~

//
- ご指摘ありがとうございます、おっしゃるとおりでした。訂正いたしました。 -- [[武内(管理人)]] &new{2018-08-04 (土) 23:23:04};

#comment_kcaptcha

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