電磁場中のシュレーディンガー方程式とゲージ変換†
電磁場中のシュレーディンガー方程式をゲージ変換して、ゲージ不変性を確認する。
電磁場中のシュレーディンガー方程式†
電磁場中のハミルトニアンはベクトルポテンシャル
、スカラーポテンシャル
を用いて次のように表せる。参考:電磁気学/電磁ポテンシャルの導入#k13bd197
すると電磁場中でのシュレーディンガー方程式は次のようになる。
ゲージ変換†
静電ポテンシャルをゲージ変換しても物理的には同じ状態を表す。
参考:電磁気学/電磁ポテンシャルの導入#fde7eaa7
ゲージ変換後のハミルトニアンとその解†
よく知られるように、ゲージ変換によりハミルトニアンは変化するが、波動関数は位相のみの変化にとどまる。位相の部分を
と置こう。
位相だけが異なるため、
となって、波動関数の空間分布はゲージ変換前の物と変わらないことになる。
波動関数の変換が「一次のユニタリー変換」となることことを指して、この変換は
群をなす、と言う。(
なら
次のユニタリー変換、
なら
次の固有値1のユニタリー変換)
電磁気学が
変換に対して不変であることを指して、電磁気学は
-ゲージ理論である、という。
解になっていることを確認する†
がゲージ変換後のシュレーディンガー方程式を満たすことを確かめよう。
より、
したがって、
ゲージ変換後のシュレーディンガー方程式は、
両辺を
で割れば、
となり、ゲージ変換前のシュレーディンガー方程式と同値であることが分かる。
すなわち、
がゲージ変換前のシュレーディンガー方程式の解であれば、
はゲージ変換後のシュレーディンガー方程式の解となる。
ゲージ変換により現れる余計な項が、
の時間微分や空間微分と打消し合ったことに注意せよ。
反対称性も問題ない†
電子が2個の時、
がフェルミオンの反対称性を満たす解であったとする。
ゲージ変換後の解は、
このように、位相部分の
は任意の粒子の入れ替えに対して対称な関数となるため、全体としての対称性・反対称性がゲージ変換によって失われることはない。
エネルギー期待値†
以下の通り、ゲージ変換の結果、エネルギー期待値が変化してしまうことが分かる。
なぜ
の期待値が変化してしまうかというと、
その理由はこの項がどこから来たかを考えれば一目瞭然である。
この項は
の項から現れており、
端的にはスカラーポテンシャルのゼロ点が変化したことに対応する。
一般のゲージ変換に対しては「スカラーポテンシャルのゼロ点」が空間的にも時間的にも一定である必要がない。エネルギーのゼロ点が変化すれば全エネルギーが変化するのは当然であるが、エネルギー変化は波動関数の位相にしか現れないため、上記の通りゲージ変換前後で波動関数の絶対値の自乗の空間分布は変化しない。