生成・消滅演算子による多粒子系の記述 の履歴(No.1)
更新生成・消滅演算子による多粒子系の記述†
多粒子状態の数表示†
1粒子に対する正規直交完全系を $\psi_1,\psi_2,\psi_2,\dots$ とし、そのそれぞれを $n_1,n_2,n_3,\dots$ 個の粒子($n_i$ は $0$ 以上の整数値)が占めることで作られる多粒子状態を $|n_1,n_2,\dots\rangle$ と表す(位相等について後でもう少し詳しい定義を与える)。
1粒子状態が完全であれば $|n_1,n_2,\dots\rangle$ も完全になるため、任意の多粒子状態をこの重ね合わせで表せる。
$$ \Psi=\sum_{\{n_1,n_2,\dots\}} C_{n_1,n_2,\dots}|n_1,n_2,\dots\rangle $$
一方、$|n_1,n_2,\dots\rangle$ に作用して粒子数 $n_i$ を取り出す「数演算子」 $\hat n_i$ を導入する。
$$ \hat n_i\,|n_1,n_2,\dots\rangle= n_i\,|n_1,n_2,\dots\rangle $$
$|n_1,n_2,\dots\rangle$ は $\hat n_i$ の固有状態とみなせることから、これらは「数状態」と呼ばれる。固有値が必ず実数となることから $\hat n_i$ はエルミートである。数状態は各1粒子状態を占める粒子の個数が確定した状態であるのに対して、一般の $\Psi$ に対してはそのような個数は確率的にしか決まらない。任意の $\Psi$ を数状態で展開した形は「数表示」と呼ばれる。
消滅演算子・生成演算子†
数状態に作用して $n_i$ を1だけ減少させる演算子として「消滅演算子」$\hat c_i$ を考える。ただし、作用後の関数は規格化されているとは限らないとして係数を $a_n$ と書いておく。
$$ \hat c\,|n\rangle=a_n\,|n-1\rangle\propto |n-1\rangle $$
粒子数が負にならないための条件として
$$ \hat c\,|0\rangle=0\ \ \ \ \text{すなわち} \ \ a_0=0 $$
を与えておく。$\hat c\,|n\rangle$ に $\hat n$ を作用させると、
$$ \hat n\hat c\,|n\rangle=(n-1)\hat c\,|n\rangle=\hat c(n-1)\,|n\rangle=\hat c(\hat n-1)\,|n\rangle $$
より、任意の $\Psi$ に対して
$$ [\hat n,\hat c]=-\hat c $$
が言える。
両辺のエルミート共役を取ると、
$$ \begin{aligned} [\hat n,\hat c]^\dagger=\hat c^\dagger\hat n^\dagger-\hat n^\dagger\hat c^\dagger=\hat c^\dagger\hat n-\hat n\hat c^\dagger=-c^\dagger \end{aligned} $$
すなわち、
$$ [\hat n,\hat c^\dagger]=\hat c^\dagger $$
であり、また、
$$ \hat n\hat c^\dagger=c^\dagger(\hat n+1) $$
である。この両辺を $|n\rangle$ に作用させれば
$$ \hat n\hat c^\dagger\,|n\rangle=c^\dagger(\hat n+1)\,|n\rangle=(n+1)c^\dagger\,|n\rangle $$
すなわち、
$$c^\dagger\,|n\rangle\propto|n+1\rangle$$
となり、$\hat c^\dagger$ が生成演算子として働くことがわかる。
ここでは係数を
$$c^\dagger\,|n\rangle=b_n\,|n+1\rangle$$
と書いておく。