Fusion360歯車スクリプト/かさ歯車 の履歴(No.12)

更新


工作/Fusion360歯車スクリプト

かさば歯車

かさば歯車は2つの回転軸を任意の角度でかみ合わせることのできる歯車です。

フリーソフトとして公開している自作の 工作/Fusion360歯車スクリプト を使ってかさば歯車を作れるようになりました。

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かさば歯車は切削による製作が難しいため、いろいろな特性の歯形が開発されているようです。

その中で、3Dプリンタのように歯車の切削工程について考える必要がない場合には、 平面的な歯車として歯形がインボリュート曲線となるインボリュート歯車が使われるのと同様に、 かさば歯車として歯形が球面インボリュート曲線となる歯車を利用することができ、 よい特性が得られるという記事がこちらのリンク先にありました。

https://thermalprocessing.com/computerized-design-of-straight-bevel-gears-with-optimized-profiles-for-forging-molding-or-3d-printing/

この形状の歯車はすでに 1994 年の論文で論じられているようなので、恐らく特許的に問題になることもないはず???

ということで、このスクリプトでは球面インボリュート関数を歯形として持つかさば歯車を生成可能です。

  • 歯元のフィレット
  • 小径歯車の場合の切り下げ
  • まがり歯

にも対応しています。一方で、

  • フィレット半径の変更には対応していません
  • 転位にも対応していません

計算方法の詳細については 工作/歯車について勉強する6 を参照のこと。 球面インボリュートと言うだけあって、球面上で歯形を計算しています。

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かさば歯車の生成

bevel タブを開いてそのまま OK を押せば、図のように2つのかさば歯車が組み合わさった状態で生成されます

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歯車自体の大きさはモジュールと歯数、軸の角度で決定されます。 Width で歯の生成される幅を指定します。

これらの歯車は回転ジョイントで固定されていますので、モーションリンクを設定すればすぐに連動して動かせます。

歯形の詳細

バックラッシュゼロで作成した歯車の接触部分を拡大しました。

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2つの歯車が正しく接していることを確認できます。

繰り返しになりますが、このスクリプトが生成するかさば歯車の歯形は 通常の平歯車の歯形を流用したものではなく、 ちゃんとかさば歯車用に球面インボリュート曲線を使って形作られたものです。

また、このケースでは上側の小径歯車には切り下げが生じています。

切り下げとは、下の歯車の歯先が上の歯車の歯元と干渉するのを避けるために 歯元にえぐれた形状が生じることです。ここには球面トロコイド曲線が現れます。

このスクリプトでは歯末の球面インボリュート領域だけでなく 歯元の球面トロコイド領域も正しく計算するため、 この組み合わせでも問題なく歯車は回転します。

この部分を正しく計算せず球面インボリュート曲線のみで歯形を生成しようとすると 歯元の形状を定められなかったり、2つの歯車に干渉が生じて回転しなかったりと いった問題が生じます。

下側の歯車には切り下げは生じていませんが、 歯末のインボリュート領域と歯底を滑らかにつなぐフィレットとして やはり球面トロコイド曲線が現れています。

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モジュール6で歯数30と歯数15の歯車を90度で組み合わせ、バックラッシュを -0.03 mm に設定しました。 これらを組み合わせて動かしながら干渉部分を見ることで、歯当たりを確認できます。

本当はもう少し小さいバックラッシュで試したかったのですがブーリアン演算の失敗が頻発したため、意図的に大きな干渉を生じさせています。

球面インボリュート曲線で生成した歯面同士が正しく接触していることを確かめられました。

まがり歯への対応

Spiral Angle に値を入れるとまがり歯のかさば歯車を作れます。

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はすば歯車と同様に、まがり歯では正面モジュールが歯垂直モジュールに比べて大きくなるため、歯車自体も一回り大きくなっています。

負のバックラッシュと干渉解析を使った歯当たりの検証(失敗)

で、まがり歯でも歯当たりを検証してみたのですが・・・
すぐ歯の時と同様に負のバックラッシュを設定して干渉を見る方法ではうまく行かないようでした。

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本来なら歯筋に沿って連続するはずの接触領域が途切れ途切れになってしまっています。

負のバックラッシュを大きく取ってみたのがこちらです。
これを見ると歯面間の距離が揺らいでしまっていることが原因のように見えます。

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歯車の形状が悪いのかと思って慌てたのですが、どうやらこれは干渉領域の計算精度に問題があるためのようです。

Fusion 360 では複雑な曲面を持つボディ同士の間のブーリアン演算結果はあまり信用を置けないようです?!

歯溝形状との重ね合わせによる歯当たりの検証

以下のように、2つの歯車の干渉を見るのではなく、一方の歯車形状と、もう一方の歯溝形状との上下関係を見る方法だと計算は軽く、結果も見やすく、精度も高いものが得られるようでした。

まず十分な計算精度を確保するため大きなモジュール、ここではモジュール10で歯数12と歯数36の曲がり角30度の曲がり歯かさば歯車を生成しました。軸間の角度は90度です。このときバックラッシュを -0.05 mm に設定することで2つの歯車が若干ですが干渉するようにしておきます。

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ここで干渉解析を行うと、やはり干渉領域は途切れ途切れになってしまっており、正しい歯当たりが得られていないかのような結果が得られてしまいます。

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正しい解析を行うために、小さい方の歯車の歯溝形状を生成し、それをモーションリンクで大きな歯車と一緒に回転させます。干渉部分では歯溝形状が歯面より上に来るため、とても分かりやすく歯当たり位置を確認できます。

手順は以下の通りです:

  • ベベルギア生成の作業履歴グループを開く
  • その中の小さい方の歯車に関する履歴のうち「除去」がたくさん並んでいるところをすべて選択
  • 「フィーチャを抑制」する
  • 小さい歯車の歯溝位置に一連のパッチが出現したのを確認
  • それらをロフトで繋ぐことで歯溝形状を得る
  • その際、外から2つ目については選択せずにおきます
    • これは外端ぴったりに生成されたオリジナルの歯溝形状です
    • これをコピー、スケール、回転して他のパッチが生成されています
    • このオリジナルを選んでしまうとパッチの間隔が不均一になるため精度に悪影響があるようです
  • 生成された形状が歯溝形状と完全に一致することを確認するため小さい歯車との間で干渉解析を行います
    • 「一致する面を含める(Include Coincident Faces)」をチェックしなければ干渉なし
    • 「一致する面を含める(Include Coincident Faces)」をチェックすると歯溝全体が検出される
  • 生成された形状を小さい歯車と同じコンポーネントに移動します
  • 小さい歯車と大きい歯車との間にモーションリンクを生成します
  • 小さい歯車を非表示にして、歯溝形状を大きい歯車の上で転がします
  • 大きい歯車の歯面は負のバックラッシュ分だけ歯溝形状より上に来ることになります
  • 歯溝構造の曲面の上に現れた大きい歯車の歯面により色の変わるところが歯と歯の接触する領域になります

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このように確認すると歯の接触領域は大きく途切れることなく歯筋全体に渡って移動しており、 曲がり歯のはすば歯車の歯形が正確に出力されていることを確認できました。

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クラウンギアの代わりに使える?

クラウンギア(フェースギア)の歯形の計算は難しい気がするので、 かさ歯車で代用できると良いように思ったのだけれど、

かさ歯車では小歯車の軸方向への移動に敏感に歯当たりが変わってしまうので、 その点に注意が必要になりそう。

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やはりクラウンギアはクラウンギアで使い道があるわけだ。

→ その後、クラウンギアもこのスクリプトで生成できるようになりました。

かさば歯車を使った遊星歯車

こちらは https://youtu.be/Dimk-T-Wxow?t=947 にあった傘歯の遊星歯車的なもの。

ここでは上下の歯数が同じなのでギアー比は2倍になっている。

軸の傾きを調整することで歯数選択の自由度を稼げるので、通常の遊星歯車よりも設計の自由度が高いのかもしれません?

スラスト荷重(軸に沿った、つまりアキシャルな荷重)を生じてしまうのでそこだけ問題が残るのかな。

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