前の単元 <<<
線形代数II
>>> 次の単元
線形結合・一次独立・従属†
復習: &math(
\begin{pmatrix}1\\2\\3\\4\end{pmatrix},\
\begin{pmatrix}2\\2\\3\\4\end{pmatrix},\
\begin{pmatrix}1\\2\\3\\3\end{pmatrix}
); は一次独立か?
線形代数I で学んだ 線形結合・一次独立・従属の概念を一般の線形空間でも定義できる
の線形結合とは:
が「一次独立である」とは:
から
を導けること
以外でも成り立つなら「一次従属である」という
問:
実数を係数とする2次以下の
の多項式からなる線形空間
を考える
は線形独立か?
答:
とすると、
ここに現れた等号は、「左辺の多項式と右辺の多項式が等しい」という意味であるから、
左辺と右辺とで、対応する次数にかかる係数がすべて等しくなければならない。
すなわち、
となり、
これを満たす
は
しか存在しない。
したがって、与えられた3つのベクトルは線形独立である
演習:
において次のベクトルは線形独立か?
[1]
[2]
[3]
張る空間・生成元・部分空間†
の「張る空間」は次のように定義され、
と書く。(< > で括る流儀もある)
これは 「
の一次結合で表せるベクトルの集合」 と同義である。
このような
は和、スカラー倍に対して閉じており、それ自身も線形空間となる。
すなわち
は
の部分空間を為す。
、
のとき、
、
を
の「生成元」という。
多くの場合、
- 1つのベクトルにより張られる空間
は直線的である
←→ 直線の方程式
- 2つのベクトルにより張られる空間
は平面的である
←→ 平面の方程式
- 3つのベクトルにより張られる空間
は空間的である
←→ 空間の方程式
ただし
が一次従属だと、その限りではない!
線形空間の次元を考えるには、空間を張るベクトルの数に加えて、
それらが一次独立であることが重要。
4-2 基底・次元†
が
を張り、なおかつ一次独立であるとき、
は
の「基底」である、という。
基底を構成するベクトルの数を線形空間の「次元」と呼ぶ。
基底の例:
ある空間
について、基底の取り方には任意性があるが、
「次元」は一意に決まる。
このことは、
-
個のベクトルにより張られる空間から、
を越える個数の線形独立なベクトルを取り出せない
ことから導かれるが、この証明は省略する。 → (この証明)
演習:
は
の部分空間となる。
の基底を1つ定めよ。
列ベクトル表示(数ベクトル表現)†
定理:
を
の基底とすれば、
はこれらの一次結合として一意に表される。
証明:
基底は
を張るから、
を基底の一次結合として表せることは証明不要。
その表し方が「一意に決まること」を証明する。
もし、
であれば、これを変形して、
基底の線形独立性から、
として一意性が示される。
数ベクトル空間との1対1対応†
上記の線形結合を、行列のかけ算と同様の表示を使って
&math(
\bm x=\Big(\bm v_1\ \bm v_2\ \dots\ \bm v_n\Big)
\underbrace{\begin{pmatrix}
x_1\\ x_2\\\vdots\\x_n
\end{pmatrix}}_{\bm x'}=\Big(\bm v_1\ \bm v_2\ \dots\ \bm v_n\Big)\bm x'
);
の形に書けば、
に対して、対応する
次元列ベクトル
が1つ決まることになる。
逆に、
に対して、
が1つ決まるから、
線形空間
の元1つ1つと
の元1つ1つとの間に
1対1の対応が付くことになる。
を、基底
に対する
の「列ベクトル表示」という。
(列ベクトル表示は基底の取り方に依存することに注意せよ)
この対応関係は ベクトル和 や スカラー倍 に対しても保存されることから、
すべての
上の
次元線形空間
は、
同じ次元を持つ数ベクトル空間
と強い類似性を持つことが分かる。
こういう時、
と
は「同型である」、と言う。
以下で同型を厳密に定義する。
例:
実数を係数とする2次以下の
の多項式からなる線形空間
に、基底
を取る。
任意の
に対して、
と取れば、
が成り立ち、
基底
に対する
の数ベクトル表現
がただ一つ求まることになる。
逆に、任意の
に対して、
が求まる。
,
の数ベクトル表現は
,
なので、
-
のベクトル表現が
となること、
-
のベクトル表現が
となること、
を、容易に確認できる。
前の単元 <<<
線形代数II
>>> 次の単元