線形独立、基底及び次元 の履歴(No.16)

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線形結合・一次独立・従属

復習: &math( \begin{pmatrix}1\\2\\3\\4\end{pmatrix},\ \begin{pmatrix}2\\2\\3\\4\end{pmatrix},\ \begin{pmatrix}1\\2\\3\\3\end{pmatrix} ); は一次独立か?

線形代数I で学んだ 線形結合・一次独立・従属の概念を一般の線形空間でも定義できる

\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\in V の線形結合とは:

\sum_{i=1}^m c_i\bm v_i=c_1\bm v_1+c_2\bm v_2+\dots+c_m\bm v_m

\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\in V が「一次独立である」とは:

\sum_{i=1}^m c_i\bm v_i=\bm 0 から c_1=c_2=\dots=c_m=0 を導けること

c_1=c_2=\dots=c_m=0 以外でも成り立つなら「一次従属である」という

問:

実数を係数とする2次以下の x の多項式からなる線形空間 P^2[x] を考える

x^2+3x-2,\ -x^2+2x,\ 3x^2 は線形独立か?

答:

a(x^2+3x-2)+b(-x^2+2x)+c(3x^2)=0 とすると、

(a-b+3c)x^2+(3a+2b)x+(-2a)=0=0x^2+0x+0

ここに現れた等号は、「左辺の多項式と右辺の多項式が等しい」という意味であるから、 左辺と右辺とで、対応する次数にかかる係数がすべて等しくなければならない。

すなわち、 a-b+3c=0,3a+2b=0,-2a=0 となり、 これを満たす a,b,c (a,b,c)=(0,0,0) しか存在しない。

したがって、与えられた3つのベクトルは線形独立である

演習:

P^2[x] において次のベクトルは線形独立か?

[1] 2x^2+1,\ 2x-1,\ x^2+x

[2] x^2+x+1,\ x-4,\ x^2+2x

[3] x+1,\ x-1

張る空間・生成元・部分空間

\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\in V の「張る空間」は次のように定義され、

W\equiv\set{\bm v=\sum_{i=1}^m c_i\bm v_i| c_1,c_2,\dots,c_m\in K}

W=\big[\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\big] と書く。(< > で括る流儀もある)

これは 「 \bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m の一次結合で表せるベクトルの集合」 と同義である。

このような W は和、スカラー倍に対して閉じており、それ自身も線形空間となる。
すなわち W V の部分空間を為す。

\bm v_1 = \sum_{i=1}^m c_{1i}\bm v_i\in W \bm v_2 = \sum_{i=1}^m c_{2i}\bm v_i\in W のとき、

k\bm v_1 = \sum_{i=1}^m (kc_{1i})\bm v_i\in W (\bm v_1+\bm v_2) = \sum_{i=1}^m (c_{1i}+c_{2i})\bm v_i\in W

\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\in W\subset V W の「生成元」という。

例:

&math( W_1&=\big[\,(1,1,-1)\,\big]\hspace{3cm}\leftarrow\mathrm{(1,1,-1)により張られる空間}\\ &\equiv\big\{\,a(1,1,-1)\in\mathbb R^3\,|\,a\in\mathbb R\big\} \hspace{4.3mm}\leftarrow\mathrm{その定義}\\ );

とするとき、 (2,2,-2),\,(-5,-5,5)\in W_1 であるが、 (2,2,2)\notin W_1

&math( W_1=\big[\,(1,1,-1)\,\big]=\big[\,(2,2,-2)\,\big] );

であることもすぐに分かるが、さらには

&math( W_1&=\big[\,(1,1,-1),(2,2,-2)\,\big]\\ &\equiv\big\{\,a(1,1,-1)+b(2,2,-2)\in\mathbb R^3\,|\,a,b\in\mathbb R\big\} );

となることにも注意せよ。一方、

&math( W_1\neq W_2&=\big[\,(1,1,-1),(2,2,2)\,\big] );

である。実際、 W_1\subset W_2 であるが W_2\not\subset W_1 である。


多くの場合、

  • 1つのベクトルにより張られる空間 W_1=\big[\bm a\big] は直線的である
        ←→ 直線の方程式 \set{\bm p=s\bm a|s\in \mathbb R}
  • 2つのベクトルにより張られる空間 W_2=\big[\bm a,\bm b\big] は平面的である
        ←→ 平面の方程式 \set{\bm p=s\bm a+t\bm b|s,t\in \mathbb R}
  • 3つのベクトルにより張られる空間 W_3=\big[\bm a,\bm b, \bm c\big] は空間的である
        ←→ 空間の方程式 \set{\bm p=s\bm a+t\bm b+u\bm c|s,t,u\in \mathbb R}

ただし \bm a,\bm b,\bm c が一次従属だと、その限りではない!

線形空間の次元を考えるには、空間を張るベクトルの数に加えて、 それらが一次独立であることが重要。

4-2 基底・次元

\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\in V V を張り、なおかつ一次独立であるとき、
\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_m\in V V の「基底」である、という。

基底を構成するベクトルの数を線形空間の「次元」と呼ぶ。

基底の例:

  • \begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix}, \begin{pmatrix}0\\1\end{pmatrix}\in \mathbb R^2
  • \begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix}, \begin{pmatrix}1\\1\end{pmatrix}\in \mathbb R^2
  • x^2+3x-2,\ -x^2+2x,\ 3x^2\in P^2[x]

ある空間 V について、基底の取り方には任意性があるが、 「次元」は一意に決まる。

このことは、

  • n 個のベクトルにより張られる空間から、 n を越える個数の線形独立なベクトルを取り出せない

ことから導かれるが、この証明は省略する。 → (この証明)

演習:

(1) V=\set{\bm x=(x,y,z)\in \mathbb R^3 | x+y+2z=0} \mathbb R^3 の部分空間となる。 V の基底を1つ定めよ。

(2) 「複素数の集合 \mathbb C 」を「実数 \mathbb R 上の線形空間」と考えて、基底を1つ定めよ。

列ベクトル表示(数ベクトル表現)

準備

定理:

\bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_n\in V V の基底とすれば、 \forall \bm x\in V はこれらの一次結合として一意に表される。

証明:

基底は V を張るから、 \bm x を基底の一次結合として表せることは証明不要。

その表し方が「一意に決まること」を証明する。

もし、

\bm x=\sum x_i\bm v_i=\sum x_i'\bm v_i

であれば、これを変形して、

\sum (x_i-x_i')\bm v_i=\bm 0

基底の線形独立性から、

x_1-x_1'=x_2-x_2'=\dots=x_n-x_n'=0

として一意性が示される。

数ベクトル空間との1対1対応

上記の線形結合を、行列のかけ算と同様の表示を使って

&math( \bm x=\Big(\bm v_1\ \bm v_2\ \dots\ \bm v_n\Big) \underbrace{\begin{pmatrix} x_1\\ x_2\\\vdots\\x_n \end{pmatrix}}_{\bm x'}=\Big(\bm v_1\ \bm v_2\ \dots\ \bm v_n\Big)\bm x' );

の形に書けば、

\forall \bm x\in V に対して、対応する n 次元列ベクトル \bm x'=\begin{pmatrix}x_1\\ x_2\\\vdots\\x_n\end{pmatrix} \in \mathbb R^n が1つ決まることになる。

逆に、 \forall \bm x'\in \mathbb R^n に対して、 \bm x=\big(\bm v_1\ \bm v_2\ \dots\ \bm v_n\big)\bm x' \in V が1つ決まるから、

線形空間 V の元1つ1つと \mathbb R^n の元1つ1つとの間に 1対1の対応が付くことになる。

\bm x' を、基底 \bm v_1,\bm v_2,\dots,\bm v_n に対する \bm x の「列ベクトル表示」という。
(列ベクトル表示は基底の取り方に依存することに注意せよ)

この対応関係は ベクトル和 や スカラー倍 に対しても保存されることから、 すべての K 上の n 次元線形空間 V は、 同じ次元を持つ数ベクトル空間 K^n と強い類似性を持つことが分かる。

こういう時、 V K^n は「同型である」、と言う。

以下で同型を厳密に定義する。

例:

実数を係数とする2次以下の x の多項式からなる線形空間

P^2[x]=\{ax^2+bx+c|a,b,c\in \mathbb R\}

に、基底 \bm e_1=x^2-1,\bm e_2=x+1,\bm e_3=1 を取る。

任意の \bm x=ax^2+bx+c\in P^2[x] に対して、

\bm x'=\begin{pmatrix}a\\b\\a-b+c\end{pmatrix} と取れば、 \bm x=\begin{pmatrix}\bm e_1&\bm e_2&\bm e_3\end{pmatrix}\bm x' が成り立ち、

基底 \{\bm e_i\} に対する \bm x の数ベクトル表現 \bm x'\in \mathbb R^3 がただ一つ求まることになる。

逆に、任意の \bm x'=\begin{pmatrix}a'\\b'\\c'\end{pmatrix}\in \mathbb R^3 に対して、

\bm x=ax^2+bx+(-a+b+c)\in P^2[x]

が求まる。

\bm x=ax^2+bx+c\in P^2[x] , \bm y=a'x^2+b'x+c'\in P^2[x] の数ベクトル表現は

\bm x'=\begin{pmatrix}a\\b\\a-b+c\end{pmatrix} , \bm y'=\begin{pmatrix}a'\\b'\\a'-b'+c'\end{pmatrix}

なので、

  • k\bm x のベクトル表現が k\bm x' となること、
  • \bm x+\bm y のベクトル表現が \bm x'+\bm y' となること、

を、容易に確認できる。

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