カノニカル分布の導出 の履歴(No.2)
更新概要†
納得のいく「カノニカル分布の導出法」がネット上でなかなか見つけられなかったため、自分でやってみました。
でもまだ完全には納得していません。。。
目次†
カノニカル分布の導出1:状態密度を使う†
注目する系 (System) が温度 の熱浴 (Reserver) と平衡状態にあるとします。
また、熱浴側のエネルギー が となるような熱浴の微視的状態の数を と書けるとします。すなわち は熱浴の状態密度です。
この熱浴に対して、
1. 「エネルギーが の範囲にある」という巨視的状態の持つエントロピーは
(ボルツマンのエントロピー)2. 閉じた系に対する熱力学の等式:
3. 熱浴の、エネルギー に対する確率密度関数 は次式で与えられる。
&math( p_\mathrm{R}(E)=\frac{W_{\mathrm R}(E)}{\int_{-\infty}^\infty W_{\mathrm R}(E')dE'}\propto W_{\mathrm R}(E) ); (等分配の法則)
が成り立つことを前提としてカノニカル分布を導出します。
1., 2. から、温度 が統計力学的な量である により次のように定義されることが分かる。
&math( T(E)&\equiv\left(\frac{dS}{dE}\right)^{-1}\\ &=\left[k_B\frac{d}{dE}\Big\{\log \Big(W_\mathrm{R}(E)\delta E\Big)\Big\}\right]^{-1}\\ &=\left[k_B\frac{d}{dE}\Big\{\log W_\mathrm{R}(E)+\cancel{\log\delta E}\Big\}\right]^{-1}\\ &=\frac{1}{k_B}\left[\frac{d\log W_\mathrm{R}(E)}{dE}\right]^{-1}\\ );
このとき、小さなエネルギーの変化 に対して、
&math( \frac{1}{k_BT}=\frac{d\log W_\mathrm{R}(E)}{dE} = \frac{\log W_{\mathrm R}(E-\Delta E)-\log W_{\mathrm R}(E)}{-\Delta E} );
&math( \exp\left[-\frac{\Delta E}{k_BT}\right]=\frac{W_{\mathrm R}(E-\Delta E)}{W_{\mathrm R}(E)} );
さらに 3. を用いると、
&math( p_\mathrm{R}(E-\Delta E)=p_\mathrm{R}(E)\exp\left[-\frac{\Delta E}{k_BT}\right] );
ここで、系
と熱浴
とを合わせた全エネルギーを
とすれば、
注目する系が
を取る確率
は、
熱浴が
を取る確率
と等しくなります。
すなわち、
&math( p_{\mathrm S}(\Delta E)=p_{\mathrm S}(0)\exp\left[-\frac{\Delta E}{k_BT}\right] );
「 が小さい」という上記の条件を物理学的な言葉で記述するなら、「系が熱浴とエネルギーをやりとりしても熱浴の温度が変化しない」という条件に読み替えられるため、系が熱浴に対して小さい限り一般に、
&math( p_{\mathrm S}(E)=p_{\mathrm S}(0)\exp\left[-\frac{E}{k_BT}\right] );
や、
&math( p_{\mathrm S}(E+\Delta E)=p_{\mathrm S}(E)\exp\left[-\frac{\Delta E}{k_BT}\right] );
が成り立つことになります。
一方、「系が熱浴とエネルギーをやりとりしても熱浴の温度が変化しない」の数学的意味は、
の右辺の が定数ということなので、 「熱浴の状態密度が の近傍 でエネルギーとともにほぼ指数関数的に増加する」 であると理解できます。
納得のいかない点†
完全に離散的なままだと「エネルギーによる微分」が扱えないので、 離散的な状態を微分可能な程度にならした「状態密度」を導入して議論したのですが、 もっと離散的な系に密接に対応づけられないのかどうか、 まだ完全には納得がいっていません。