線形独立、基底及び次元/次元の一意性 の履歴(No.2)
更新
次元の一意性†
基底を構成するベクトルの数を線形空間の「次元」と呼ぶ。
ある空間 について、基底の取り方には任意性があるが、「次元」は一意に決まる。
これは、
- 個のベクトルにより張られる空間から、 個以上のベクトルを取り出せば、 それらは必ず線形従属になる
すなわち、
- 個のベクトルにより張られる空間から、 を越える個数の線形独立なベクトルを取り出せない
ことから導かれる。同様にこの定理から、
- 次元空間を 個以下のベクトルで張ることはできない
- 次元空間に 個以上の線形独立なベクトルの組を見つけることはできない
が導ける。
$n$ 個のベクトルにより張られる空間から、$n$ 個以上のベクトルを取り出せば、それらは必ず線形従属になる†
として、 がすべて の線形結合で表せるとする。
すなわち、
である。
(*)
に上式を代入すると、
&math( \sum_{i=1}^m d_i \sum_{j=1}^n c_{ij}\bm b_j=\bm 0\\ \sum_{j=1}^n\left(\sum_{i=1}^m d_i c_{ij}\right)\bm b_j=\bm 0\\ );
この式は、すべての について、
&math( \sum_{i=1}^m d_i c_{ij}= \begin{pmatrix}c_{1j}&&c_{2j}&&\dots&&c_{mj}\end{pmatrix} \begin{pmatrix}d_1\\d_2\\\vdots\\d_m\end{pmatrix}=0 );
を満たせば必ず成り立つ。
それら 個のの条件をまとめて書くと、
&math( \begin{pmatrix} c_{11}&&c_{21}&&\dots&&c_{m1}\\ c_{12}&&c_{22}&& &&\vdots\\ \vdots&& &&\ddots&&\vdots\\ c_{1n}&&\dots&&\dots&&c_{mn}\\ \end{pmatrix} \begin{pmatrix}d_1\\d_2\\\vdots\\d_m\end{pmatrix}= \begin{pmatrix}0\\0\\\vdots\\0\end{pmatrix} );
となるが、左辺の行列は 行 列 ただし であるから、その階数は を越えない。
線形代数I で学んだように (線形代数I/行列の階数#r53ca169)、 変数の連立方程式の係数行列の階数が であれば、 その解は 個のパラメータを含む。
今の場合には係数行列の階数は 以下であるから、 上記方程式の解は 個以上のパラメータを含むことになる。
すなわち式 (*) は 以外にも解を持つことになり、 個のベクトルにより張られる空間から、 個以上のベクトルを 取り出せば、必ず線形従属になることが示された。
ある線形空間の次元は基底の取り方に依らず一意に定まる†
線形空間 の2つの基底を および とする。
であれば 個のベクトル で張られる空間から 個の線形独立なベクトル が取れることになり、上記定理と矛盾する。
であれば 個のベクトル で張られる空間から 個の線形独立なベクトル が取れることになり、上記定理と矛盾する。
したがって、 である。
$n$ 次元空間を $n$ 個以下のベクトルで張ることはできない†
個以下の個数、 個のベクトルで張った空間から 個の基底ベクトル(線形独立)を取ることはできない。
$n$ 次元空間に $n$ 個以上の線形独立なベクトルの組を見つけることはできない†
個の基底で張られた空間に 個以上の線形独立なベクトルの組を見つけることはできない