線形代数I/行列 の履歴(No.4)
更新1. 行列†
1.1 行列†
2x2 行列†
高校で習った。
行列
&math( \begin{pmatrix}1&2\\3&4\end{pmatrix} \hspace{1cm} \begin{pmatrix}\cos\theta&-\sin\theta\\\sin\theta&\cos\theta\end{pmatrix} );
ベクトル(縦と横)
&math( \begin{pmatrix}2\\1\end{pmatrix} \hspace{1cm} \begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix} \hspace{1cm} \begin{pmatrix}2&1\end{pmatrix} \hspace{1cm} \begin{pmatrix}x&y\end{pmatrix} \hspace{1cm} );
これらを使って、例えば行列とベクトルの積を計算できる。
&math( \begin{pmatrix}1&2\\3&4\end{pmatrix} \begin{pmatrix}2\\1\end{pmatrix} = \begin{pmatrix}4\\10\end{pmatrix} );
&math( \begin{pmatrix}1&2\\3&4\end{pmatrix} \begin{pmatrix}2&1\end{pmatrix} = );(定義されない)
この教科書ではカギ括弧を使う†
&math( \begin{bmatrix}1&2\\3&4\end{bmatrix} \hspace{1.5cm} \begin{bmatrix}2\\1\end{bmatrix} \hspace{1.5cm} \begin{bmatrix}2&1\end{bmatrix} );
行列
縦ベクトル
横ベクトル
(
行列)
(
行列)
もっと大きな行列を考えることもできるはず。
&math( \begin{bmatrix}1&2&3\\4&5&6\\7&8&9\end{bmatrix} \hspace{1cm} \begin{bmatrix}1&2\\3&4\\5&6\end{bmatrix} \hspace{1cm} \begin{bmatrix}1&2&3&4\\5&6&7&8\end{bmatrix} );
行列 行列 行列
一般の行列†
一般に
行列を考えることができる。
「数」を
行
列の長方形に並べてカギ括弧でくくった物を
行列と呼ぶ。
列
行 &math(\begin{bmatrix} a_{11}&a_{12}&\cdots&a_{1n}\\ a_{21}&a_{22}& &\vdots\\ \vdots& &\ddots&\vdots\\ a_{m1}&\cdots&\cdots&a_{mn}\\ \end{bmatrix});
横書き文化から来ているため、行数を縦に数える。
(日本初なら横に数えたかも?しかも右から!)
"matrix" を「行列」と訳した日本人は賢い!
→ 数字は常に、行、列、の順で書く
- 行列は → 行 列 の大きさ
- 成分は → 行目 列目 の成分
- は → 行目 列目 の成分
長方形に並べられた「数」が
- 実数の時は「実行列」
- 複素数の時は「複素行列」
行列の成分となる「数」を「スカラー」と呼ぶ。
(と、ここでは理解しておく。正しくは座標変換を学んでから)
スカラーは、考えている問題によって実数だったり、複素数だったりするが、 この教科書ではほぼ常に実数。
スカラーには四則演算が定義されている。
変数として使う文字†
行列を表す変数は大文字を使う。 ベクトルは太文字で。
- → 数値を表す
- → 行列を表す
- → ベクトルを表す
- → 横ベクトルでも同じ
ベクトルを表す太文字変数を手書きするときは、
縦線を1本増やしておく。例えばこのあたりを参照:
http://blog.livedoor.jp/yahatacl2/archives/974746.html
http://d.hatena.ne.jp/Gauss/20080722/1216724697
縦線を引く場所は必ずしも1通りに決まっているわけではないので、 「ベクトルを表したいんだな」という気持ちが伝われば、どこに引いても大丈夫。
行列の略記†
成分を全て書くのが面倒なときは、
&math(A=\begin{bmatrix} a_{11}&a_{12}&\cdots&a_{1n}\\ a_{21}&a_{22}& &\vdots\\ \vdots& &\ddots&\vdots\\ a_{m1}&\cdots&\cdots&a_{mn}\\ \end{bmatrix});
と書く代わりに、
と書く。
別途、例えば
などと与えておけば、
&math(A=\begin{bmatrix} 1&-1&-3&\cdots&4-2n\\ 4&2&0&\cdots &8-2n\\ 7&5&3& &\vdots\\ \vdots&\vdots& &\ddots&\vdots\\ 3m-2&2m-4&\cdots&\cdots&3m-2n\\ \end{bmatrix});
のことを表せる。
このような場合の
は、 と を決めれば値が1つ決まると言う意味で、 関数のような物である。したがって、添え字に使う文字を変えて
などと書いても全く同じ意味となる。
数ベクトルを行列と見なせる†
- 行列 ⇔ 横ベクトル
- 行列 ⇔ 縦ベクトル
線形代数IIでは「数ベクトル」以外のベクトルも出てくる。
零行列、ゼロ行列†
ただし
をゼロ行列と呼び、大文字のオー で表す。
行列であることを明示するときは、
と書く。
正方行列†
次正方行列とは、 行列のこと(正方形になる)
対角成分†
左上から右下への対角線上に並ぶ、 成分のこと
アスタリスク * の部分が対角成分。
単位行列†
正方行列で、対角成分だけが 1 で、他がゼロな物。
&math(\begin{bmatrix}1&0&0\\0&1&0\\0&0&1\end{bmatrix}\hspace{1cm} \begin{bmatrix}1&0&0&0\\0&1&0&0\\0&0&1&0\\0&0&0&1\end{bmatrix});
文字で表すときはアイ
を使う(
を使う流儀もある)。
ゼロ成分はしばしば省略される。また、大きさを表したいときは
のように次数を添え字にする。
&math(I_n=\begin{bmatrix} 1&&&\\ &1&&\\ &&\ddots&\\ &&&1 \end{bmatrix}); ← 次正方行列
略記すれば、
ただし、
&math(\delta_{ij}=\begin{cases} 1&i=j\\ 0&i\ne j \end{cases} );
このように定義された は「クロネッカーのデルタ」と呼ばれ、 今後他の教科でも良く出てくる。
ギリシャ文字の書き方は、例えば次のサイトを参照のこと:
http://homepage1.nifty.com/suzuri/gg/ggk001.html#111
例†
とすると、
&math( b_{ij}&=\sum_{k=1}^n a_{ik}\delta_{kj}\\ &=a_{i1}\delta_{1j}+a_{i2}\delta_{2j}+a_{i3}\delta_{3j}+\dots+a_{n1}\delta_{nj});
より、右辺のどこかに の形が現れ、 その項は の形をしている。
より、 である。
一方、 の時 なので、
したがって、
である。
→ 任意の行列 に単位行列を掛けても行列の値は変化しない
このように、クロネッカーのデルタの基本的な演算法則は、 を任意の関数、 として、
というものである。
1.2 行列の演算†
行列の和†
同じ型の2つの行列に対して定義される。
&math( \begin{bmatrix}a&b&c\\d&e&f\end{bmatrix} + \begin{bmatrix}g&h&i\\j&k&l\end{bmatrix} = \begin{bmatrix}a+g&b+h&c+i\\d+j&e+k&f+l\end{bmatrix});
とすれば、
行列のスカラー倍†
&math( k\begin{bmatrix}a&b&c\\d&e&f\end{bmatrix} = \begin{bmatrix}ka&kb&kc\\kd&ke&kf\end{bmatrix} );
とすれば、
このようにして「数」の四則演算を用いて行列の演算を定義していく。 高校で行列に関する演算をいろいろ習ったが、ここでは一旦全て「知らない振り」をして、 「定義された内容」および「そこから証明された定理」だけを使って何が言えるかを考える。 こういうのが数学の基本的なスタンスだ。
例えば行列の「和」は定義したが「差」はまだ定義していない。
符号反転†
と定義する。
性質:
行列の差†
&math( A-B\equiv A+(-B) ); と定義する。
性質:
行列の積†
&math(
\begin{bmatrix}a&b&c\\d&e&f\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}g&h\\i&j\\k&l\end{bmatrix}=
\begin{bmatrix}
ag+bi+ck & ah+bj+cl \\
dg+ei+fk & dh+ej+fl
\end{bmatrix}
);
行列
行列
行列
行列と
行列の積は
行列となる。
(
が共通の時のみ定義される)
とすれば・・・
どうなる?いくつか簡単な例を見てみると、
類推すれば、
&math(c_{ij}&=a_{i1}b_{1j}+a_{i2}b_{2j}+a_{i3}b_{3j}+\dots+a_{im}b_{mj}\\ &=\sum_{k=1}^m a_{ik}b_{kj});
と表せる。
は非常に重要なので、必ず覚えること。
行 列を表す添え字 により挟まれた添え字 を動かして和を取る形になっている。
例題†
をそれぞれ 行列として、その積である 行列を と表すとき、
であることを示せ。
回答:
行列 を考えると であるから、
&math(
&d_{ij}\\
&=\sum_{p=1}^m f_{ip}c_{pj}\\
&=\sum_{p=1}^m \left(\sum_{q=1}^la_{iq}b_{qp}\right)c_{pj}
);
分配法則を使って、
&math(
&=\sum_{p=1}^m \sum_{q=1}^la_{iq}b_{qp}c_{pj}\\
);
和を取る順番を変えて、
&math(
&=\sum_{q=1}^l\sum_{p=1}^ma_{iq}b_{qp}c_{pj}\\
);
ダミー変数である
と
を入れ替えて、
&math(
&=\sum_{p=1}^l\sum_{q=1}^ma_{ip}b_{pq}c_{qj}\\
);
として与式を得る。
1.3 行列の演算法則†
上記の定義から計算に役立ついくつかの演算法則(定理)を導く。
その前に:
行列の相等†
- 同じ型で
- 全ての対応する成分同士が等しいとき
2つの行列 と は等しいとして、
と書く。
例(例5)†
&math(A=\begin{bmatrix}1&2&3\\5&7&9\end{bmatrix}, \bm x=\begin{bmatrix}x\\y\\z\end{bmatrix}, \bm b=\begin{bmatrix}4\\8\end{bmatrix});
であるとき、行列(ベクトル)に対する方程式
は、
&math( \begin{bmatrix}x+2y+3z\\5x+7y+9z\end{bmatrix}= \bm b=\begin{bmatrix}4\\8\end{bmatrix});
であるから、
&math(\begin{cases} x+2y+3z=4\\ 5x+7y+9z=8 \end{cases} );
なる連立一次方程式と同値である。
2章では連立一次方程式を の形で行列を使って表し、 その性質や解法を勉強する。
和・スカラー倍について†
- ← 交換法則
- ← 結合法則
- ← 分配法則
- ← 分配法則
- ← 結合法則
成分に対する一次方程式を考えれば容易に成立する。
例えば などという交換法則は、 「数」についての交換法則として既知であるからここでは扱わない。
同じ で表される演算が、 数に対する物であるか、行列に対する物であるかに注意せよ。
積について†
- ← 結合法則
- ← 分配法則
- ← 分配法則
- ← 結合法則
2. と 3. の両方を書いているのは、行列の積に関する交換法則が成り立たないため。 成り立つなら片方でよいことになる。
1. については、上の例題 で見た内容と、 逆に を と置いた計算とを比較すれば証明できる。
2., 3. については、
&math(A(B+C)&=\left[\sum_{m}a_{im}(b_{mj}+c_{mj})\right]\\ &=\left[\sum_{m}a_{im}b_{mj}+\sum_{m}a_{im}c_{mj}\right]\\ &=\left[\sum_{m}a_{im}b_{mj}\right]+\left[\sum_{m}a_{im}c_{mj}\right]\\ );
として、「数」の分配法則に帰着する。
ゼロ行列について†
- ← 左辺と右辺の は大きさが異なる(場合がある)
単位行列について†
- AI=A
- IA=A
証明は上の例のようにすればよい。
これまで見たように、行列の演算法則は「数」の演算法則と非常によく似ている。
しかし、すべてが同じというわけではない。
行列と数との相違†
(a) 積に関する交換法則は成り立たない
ことがある。
→ そもそも順序を入れ替えると定義されないことすらある。
交換可能な場合、すなわち あるいは の時、 と とは「可換」である、と言う。
(b)
であっても、
となる場合がある。
このような
を零因子という。→
は
の左零因子である。
(c) でも あるいは を満たすような が存在するとは限らない。
行列に条件を付けると成り立つこともある。
- 対称行列(定義は後で)については (a), (b) とも数と同様の性質を持つ。
-
行列については、(a), (b), (c) とも大丈夫。
→ そもそも 行列はスカラーと同一視できる。
→ 括弧を省略したものがスカラーと思って良い。
正方行列のべき乗†
正方行列に限り自分自身との積を作れて、
&math( A^k=\begin{cases} I&(k=0)\\ \underbrace{A\dots A}_{k}&(k>0)\\ \end{cases} );
1.4 行列の転置†
転置†
の転置は、
行列 の転置は 行列となり、 と表される。
とすれば、
(右辺の添え字が でなく となっていることに注意)
を と書く流儀もある。 ( の 乗と区別するため、右上ではなく左上に書いたり 、大文字にして数値っぽくないようにしたり 、と工夫してある)
性質†
4. のみ注意が必要で、「積の転置は転置の積の順序を入れ替えた物」になる。
証明:
まず両辺の型が等しいことを確かめる。
とすれば、 であり、
一方で、 より であるから、
両辺の型は等しい。
ただし とすると、
一方で、 とすれば、
&math(d_{ij}&=\sum_{k=1}^m b'_{ik}a'_{kj}\\ &=\sum_{k=1}^m b_{ki}a_{jk}\\ &=\sum_{k=1}^m a_{jk}b_{ki}\\ );
となり、左辺と右辺の成分は等しくなる。
問10により なども成り立つ。
特別な形の行列†
- ゼロ行列
- 単位行列
- 対称行列
&math( \begin{bmatrix} a&b&c&d\\ b&f&g&h\\ c&g&k&l\\ d&h&l&p \end{bmatrix} \hspace{2cm} {}^t\!A=A );を満たす ( )
- 交代行列
&math( \begin{bmatrix} 0&b&c&d\\ - b&0&g&h\\
- c&-g&0&l\\
- d&-h&-l&0
\end{bmatrix}
\hspace{1cm}
{}^t\!A=-A
);を満たす (
)
特に、 より となる。
- 上三角行列
&math( \begin{bmatrix} a&b&c&d\\ 0&f&g&h\\ 0&0&k&l\\ 0&0&0&p \end{bmatrix} \hspace{2cm} i>j );のとき
- 下三角行列
&math( \begin{bmatrix} a&0&0&0\\ e&f&0&0\\ i&i&k&0\\ m&n&o&p \end{bmatrix} \hspace{2cm} i<j );のとき
- 対角行列
&math( \begin{bmatrix} a&0&0&0\\ 0&f&0&0\\ 0&0&k&0\\ 0&0&0&p \end{bmatrix} \hspace{2cm} i\ne j );のとき
対角行列は、対称行列であり、上三角行列であり、下三角行列である。
三角行列の対角成分はゼロでなくても良いことに注意。
1.5 正則行列†
「数」の演算では、 に対して がただ1つ存在して となる。
また、 となる が存在するなら であり、そのような はただ1つしか存在しない。
正則行列†
が正方行列であり、 となるような が存在するとき、 は正則行列であると言う。
- は自ずと正方行列となる
- 「正則行列である」は数で言うところの「 である」と言うような物
逆行列†
ある が与えられたとき、 もし となる が存在するなら、 そのような たただ1つしか存在しない。
∵もし2つあって かつ ならば、
より である。
そのような を の逆行列と呼び、 で表す。 (「 インバース」と読む)
逆行列の性質†
を同じ次数の正則行列とする。
-
∵ はそのまま が の逆行列であることを表す。
-
← 順序が入れ替わることに注意
∵ かつ
-
← 転置とインバースは入れ替え可能
∵ かつ
実際には正方行列 に対して を満たす行列 は必ず を満たすし、その逆も成り立つ。これは後に証明される。
1.6 行列の分割†
分割と小行列†
大きな行列を縦横に分割して小さなブロック(=小行列)に 分割 することがある。
&math( A=\left[ \begin{array}{ccc|cc} a&b&c&d&e\\ f&g&h&i&j\\ \hline k&l&m&n&o\\ p&q&r&s&t\\ \end{array} \right]=\begin{bmatrix} A_{11}&A_{12}\\ A_{21}&A_{22} \end{bmatrix} );
ただし、各小行列は
&math( &A_{11}=\begin{bmatrix}a&b&c\\f&g&h\end{bmatrix}, A_{12}=\begin{bmatrix}d&e\\i&j\end{bmatrix},\\ &A_{21}=\begin{bmatrix}k&l&m\\p&q&r\end{bmatrix}, A_{22}=\begin{bmatrix}n&o\\s&t\end{bmatrix},\\ );
である。
分割行列の演算†
各小行列の型が一致して、計算が可能な限り、
- &math(\begin{bmatrix} A_{11}&A_{12}\\ A_{21}&A_{22} \end{bmatrix}+\begin{bmatrix} B_{11}&B_{12}\\ B_{21}&B_{22} \end{bmatrix}= \begin{bmatrix} A_{11}+B_{11}&A_{12}+B_{12}\\ A_{21}+B_{21}&A_{22}+B_{22} \end{bmatrix} );
- &math(\begin{bmatrix} A_{11}&A_{12}\\ A_{21}&A_{22} \end{bmatrix}\begin{bmatrix} B_{11}&B_{12}\\ B_{21}&B_{22} \end{bmatrix}= \begin{bmatrix} A_{11}B_{11}+A_{12}B_{21}&A_{11}B_{12}+A_{12}B_{22}\\ A_{21}B_{11}+A_{22}B_{21}&A_{21}B_{12}+A_{22}B_{22}\\ \end{bmatrix} );
などとして、あたかも小行列を普通の数と見なした
行列のような演算が可能である。
ただし、小行列の積の順序は入れ替えられないことに注意せよ。
行列の分割は に限らず、任意の の小行列への分割が考えられる。
ベクトルへの分割†
とする。
を1列ごとに分割して、
&math(A&=\left[ \begin{array}{c|c|c|cc|c} a_{11}&a_{12}&a_{13}&a_{14}&\dots&a_{1n}\\ a_{21}&a_{22}&a_{23}&a_{24}&\dots&a_{2n}\\ \vdots&\vdots&\vdots&\vdots&&\vdots\\ a_{m1}&a_{m2}&a_{m3}&a_{m4}&\dots&a_{mn}\\ \end{array} \right]\\ &=\Bigg[\begin{matrix} \hspace{3mm}\bm a_{1}&\hspace{3mm}\bm a_{2}&\hspace{2mm}\bm a_{3}&\hspace{2mm}\bm a_{4}&\hspace{1mm}\dots&\hspace{2mm}\bm a_{n}\hspace{2mm} \end{matrix}\Bigg]);
と表したり、1行ごとに分割して、
&math( A&=\left[ \begin{array}{ccccc} a_{11}&a_{12}&a_{13}&\dots&a_{1n}\\\hline a_{21}&a_{22}&a_{23}&\dots&a_{2n}\\\hline \vdots&\vdots&\vdots&&\vdots\\\hline a_{m1}&a_{m2}&a_{m3}&\dots&a_{mn}\\ \end{array} \right] =\left[ \begin{array}{ccccc} \bm a'_1\\ \bm a'_2\\ \vdots\\ \bm a'_n\\ \end{array} \right]\\ );
と表すことがある。
ここで行分割のベクトルにプライム(ダッシュ)を付けているのはここだけの便宜的な物で、 行分割だから付けるというルールがあるわけではない。
例†
(1)
&math(AB=\begin{bmatrix}\bm a'_1\\\bm a'_2\\\hspace{5mm}\vdots\hspace{5mm}\\\bm a'_n\end{bmatrix}\Big[\ \ B\ \ \Big] =\begin{bmatrix}\bm a'_1B\\\bm a'_2B\\\hspace{7mm}\vdots\hspace{7mm}\\\bm a'_nB\end{bmatrix} );
(2)
&math(AB=\Bigg[\ \ A\ \ \Bigg]\Bigg[\begin{matrix}\bm b_1&\bm b_2&\dots&\bm b_n\end{matrix}\Bigg] =\Bigg[\begin{matrix}A\bm b_1&A\bm b_2&\dots&A\bm b_n\end{matrix}\Bigg]);
(3)
&math(AB= \begin{bmatrix}\bm a'_1\\\bm a'_2\\\hspace{5mm}\vdots\hspace{5mm}\\\bm a'_n\end{bmatrix} \Bigg[\begin{matrix}\bm b_1&\bm b_2&\dots&\bm b_n\end{matrix}\Bigg] =\begin{bmatrix} \bm a_1'\bm b_1&\bm a_1'\bm b_2&\dots&\bm a_1'\bm b_n\\ \bm a_2'\bm b_1&\bm a_2'\bm b_2&\dots&\bm a_2'\bm b_n\\ \vdots&&\ddots&\vdots\\ \bm a_m'\bm b_1&\bm a_m'\bm b_2&\dots&\bm a_m'\bm b_n\\ \end{bmatrix});
ここで、右辺の各項はベクトル と との内積になっていて、 その結果はスカラーである。すなわち、これがそのまま各成分を表している。
(4) と置けば、
&math(A\bm x&=\Bigg[\begin{matrix} \bm a_1&\bm a_2&\dots&\bm a_n \end{matrix}\Bigg]\begin{bmatrix}x_1\\x_2\\\vdots\\x_n\end{bmatrix}\\ &=x_1\bm a_1+x_2\bm a_2+\dots+x_n\bm a_n\\ &=\sum_{k=1}^n x_k\bm a_k );
基本ベクトル†
次の縦基本ベクトルとは、
&math(\bm e_1=\begin{bmatrix}1\\0\\0\\0\\\vdots\\0\end{bmatrix}, \bm e_2=\begin{bmatrix}0\\1\\0\\0\\\vdots\\0\end{bmatrix}, \bm e_3=\begin{bmatrix}0\\0\\1\\0\\\vdots\\0\end{bmatrix}, \dots, \bm e_n=\begin{bmatrix}0\\0\\0\\0\\\vdots\\1\end{bmatrix});
のような 本のベクトルである。
と書くこともできる。
横基本ベクトルは、
&math(\bm e'_1&=\begin{bmatrix}1&0&0&0&\dots&0\end{bmatrix}\\ \bm e'_2&=\begin{bmatrix}0&1&0&0&\dots&0\end{bmatrix}\\ \bm e'_3&=\begin{bmatrix}0&0&1&0&\dots&0\end{bmatrix}\\ &\vdots\\ \bm e'_n&=\begin{bmatrix}0&0&0&0&\dots&1\end{bmatrix}\\ );
で、
である。
例1:
単位行列の列分割、行分割は、
&math(I=\Bigg[\begin{matrix}\bm e_1&\bm e_2&\dots&\bm e_n\end{matrix}\Bigg]= \begin{bmatrix}\bm e'_1\\\bm e'_2\\\hspace{5mm}\vdots\hspace{5mm}\\\bm e'_n\end{bmatrix});
として基本ベクトルで書ける。
例2:
行列に基本ベクトルを掛けることで、特定の列や行を取り出すことができる。
&math( A\bm e_k&=\Bigg[\begin{matrix} \bm a_1&\bm a_2&\dots&\bm a_n \end{matrix}\Bigg]\begin{bmatrix}0\\\vdots\\\ \ 1\ \ \\\vdots\\0\end{bmatrix} \begin{matrix} \\ \\\leftarrow k\\ \\ \\ \end{matrix}\\ &=\bm a_k );
行目が取り出された。
&math( \bm e'_kA&=\mathop{\Big[\begin{matrix}0&\ldots&1&\ldots&0\end{matrix}\Big]}^k \begin{bmatrix}\bm a'_1\\\bm a'_2\\\hspace{5mm}\vdots\hspace{5mm}\\\bm a'_n\end{bmatrix}\\ &=\bm a'_k );
列目が取り出された。
特に、
成分が取り出された。