球関数 $Y^m_l(\theta,\phi)$:角運動量の固有関数†
の方程式
&math(\Big[\sin\theta \frac{\PD}{\PD \theta}
\Big(\sin\theta\frac{\PD}{\PD \theta}\Big)+l(l+1) \sin^2\theta\Big]\Theta(\theta)=m^2\Theta(\theta));
は、
が
の範囲の整数になるときのみ解を持ち、その固有関数はルジャンドルの陪関数を用いて表わすことができる。
ただし、
はルジャンドルの多項式で、
によって与えられる。これらを用いた
&math(
Y_l^m(\theta,\phi)=(-1)^{(m+|m|)/2}\sqrt{\frac{2l+1}{4\pi}\frac{(l-|m|)!}{(l+|m|)!}}P_l^{|m|}(\cos\theta)e^{im\phi}
);
は規格直交完全な固有関数となり、この関数を 球面調和関数 と呼ぶ。
|
・・・
|
-
より、
&math((-1)^{(m-|m|)/2}=\begin{cases}
- 1\hspace{0.5cm}&m>0\ または\ m\,が偶数\\
- 1&m<0\ かつ\ m\,が奇数
\end{cases});
-
は実数関数である
-
と
の
次同次関数になっている
(
などとなることに注意せよ)
- 全角運動量の2乗
は
である
- 全角運動量
の大きさは、
であるが、慣例として「角運動量が
の時」などという
-
を s 状態、
を p 状態、
を d 状態、
を f 状態、などと言う
-
は
の変化に対して
回だけ位相が回転するが、大きさは変化しない
-
軸周りの角運動量
は
である
- 全角運動量が
のとき
軸周りの角運動量が
となるのは当然と思えるはず
-
のときも、不確定性により
は完全にゼロにはならないため、
ではなく
となる
方向別に
の大きさをプロットした。
-
方向は位相が回転するだけで大きさは変化しない
-
と
は位相のみが異なり、同じ形になる
-
は球形
-
(
)は原点に節を持ち
方向に長く、
原点周りに
枚のひだを持つ。
が大きいほど
方向への伸びが長くなる。
-
(
) は
方向には値を持たず、
軸を取り囲むように
枚のひだを持つ。
-
はドーナツ型になる。
が大きいほど扁平で、半径も大きい。
$z$ が特殊なわけではない†
上のグラフを見るとあたかも
が特殊な方向であるかのように錯覚するがそんなことはない。
や、
は、
とそっくり同じ形で、それぞれ
方向を向いた関数となる。
同じ量子数
に属する、縮退した
個の固有関数からなる任意の線形結合は
すべて同じ固有値に属する固有関数となる。その中で特に
の固有関数でもある物を
と名付けたに過ぎない。
の固有関数であるように選んだのだから
が特殊な軸になっているというだけ。
すなわち、球対称な定数関数となる。下図は
の場合。

演習:$m$ に関する漸化式†
であるから、
である。
しかし、
をそのままにして
だけ
を増減させてしまうとつじつまが合わなくなってしまう。
を
に変換するには、先に導入した演算子
が役に立つ。
具体的には次の等式が成り立つ。
&math(
\begin{cases}
\hat l_+Y_l{}^{m}(\theta,\phi)=\hbar\sqrt{(l-m)(l+m+1)}Y_l{}^{m+1}\\
\hat l_-Y_l{}^{m}(\theta,\phi)=\hbar\sqrt{(l+m)(l-m+1)}Y_l{}^{m-1}\\
\end{cases}
);
すなわち、
は量子数
を1だけ増やす/減らす演算子になっている。
(1)
シュレーディンガー方程式を解くに当たり、
は
の範囲に入らなければならないという制約があったが、
のとき、さらに1だけ増やそう/減らそうとすると何が起きるだろうか。
であることに注意して、
を導け。
ただし、
である。
(2)
は
の固有関数でも、
の固有関数でもないが、
や
の固有関数になっていることを示し、
その固有値を求めよ。
(3)
となることを確かめよ
(4) (2),(3) の結果を用いて
を示せ。
●解答はこちら
(4) より、
のときにも
となり
方向の角運動量はゼロにならない。すなわち、
&math(
\bm l^2=\hbar^2 l(l+1)=\underbrace{\ \hbar^2l^2\ }_{l_z^2} + \underbrace{\ \hbar^2l\ }_{\langle l_x^2+l_y^2\rangle}
);
と理解できるのである。