線形代数I/要点/1章 のバックアップソース(No.1)

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* ベクトル空間 [#qdd30274]

「集合 &math(V); が &math(\bm{K}); 上のベクトル空間である」というのは以下の2つの条件を満たすことである。

1.任意に選んだ &math(V); の元 &math(\bm{x}, \bm{y}); と &math(\bm{K}); の元 &math(\lambda, \mu); に対して、
加法:&math(\bm{x}+\bm{y}); と数乗法 &math(\lambda\bm{x}); が定義され、それぞれの演算結果と等しい要素が 
&math(V); の中に必ず存在する(加法と数乗法とが &math(V); に閉じている)。

2.加法と数乗法は教科書2〜3ページの8つの公理を満たす

* ベクトル [#a22d26c9]

ベクトル空間の要素をベクトルと呼ぶ。

* スカラー体 [#yc9440f2]

「〜上のベクトル空間」という際の「〜」にあたる集合をスカラー体と呼ぶ。

* 体 [#sb75c20a]

ベクトルの定義で見たとおり、スカラー体の要素は通常の意味での4則演算について閉じた集合となっている(ただしゼロでの割り算は除く)。

ここでは詳しく書かないが、このような4則演算について閉じた集合のことを「体」と呼ぶ。

このように集合内部で可能な演算によって集合の性質を調べていく数学を「代数」と呼ぶ。

Wikipedia で「代数学」「群」「体」「環」などについて調べてみるといい。

* 数ベクトル [#vc25d678]

高校で習ったような、実数や複素数を幾つか並べてつくったベクトルを数ベクトルと呼ぶ。

&math(n); 次元の実数ベクトルの集合を &math(\bm{R}^n);、~
&math(n); 次元の複素数ベクトルの集合を &math(\bm{C}^n);、~
&math(n); 次元の数ベクトル(実数か複素数か問わない)の集合を &math(\bm{K}^n); と書く。

これらの数ベクトルが高校で習ったのと同じ加法・数乗法に対してベクトル空間を為すことは簡単に確かめられる。

これらの書き方は、そもそも実数の集合を real の頭文字をとって &math(\bm{R}); と書き、同様に、
複素数の集合を complex の頭文字で &math(\bm{C}); と書くことを知っているとがんばって覚えるほどの
こともないはず。

そして「体」を英語で field と呼ぶので、体を &math(\bm{F}) と書くこともあるのだけれど、
教科書ではドイツ語の Körper から取って &math(\bm{K}) と書いている。

* 行ベクトル、列ベクトル [#n47a94e3]

縦ベクトルとか横ベクトルという呼び名は覚えやすいけど、行と列はどうなのか。

基本的に行列もそうだが「横書き文化」から来たものだと覚えると簡単。

つまり、行ベクトルは &math((a b c d)); のようなもので、列ベクトルは &math(\left(\begin{array}{c}a\\b\\c\\d\end{array}\right)); のようなもの。

* ベクトルの線形結合 [#z7df8c5c]

ベクトル &math(\bm{x}, \bm{y} \in V); に対して、係数 &math(a, b \in K); を掛けて足し合わせた、

&math(a\bm{x}+b\bm{y}); ・・・ ①

のようなものを &math(\bm{x}, \bm{y}); の線形結合と呼ぶ。

使い方としては、「&math(\bm{z} \in V); は &math(\bm{x}, \bm{y}); の線形結合としてあらわすことができる/できない」
などというのが一番多い。

つまり、ある特定の &math(\bm{x}, \bm{y}); に対して &math(a, b); をいろいろ変えると①の値はさまざまに変化するが、
ある特定の &math(a, b); に対して &math(\bm{z}=a\bm{x}+b\bm{y}); となることがあるか、無いかということを考えるわけである。

* 張る [#m843d902]

n個のベクトル &math(\bm{a}_1,\bm{a}_2,\bm{a}_3,\dots,\bm{a}_n); の線形結合として表すことのできるベクトルの集合を
&math(E); としよう。

このとき「&math(E); は &math(\bm{a}_1,\bm{a}_2,\bm{a}_3,\dots,\bm{a}_n); によって張られる集合である」と言い、
&math(E=[\bm{a}_1,\bm{a}_2,\bm{a}_3,\dots,\bm{a}_n]); と書く。

* 部分ベクトル空間 [#o9e9e945]

任意個数のベクトルにより張られる集合は、以下で示すとおりそれ自身がベクトル空間となっている。

このように、元となるベクトル空間の部分集合がそれ自身ベクトル空間である場合、それを部分ベクトル空間と言う。

ある集合が部分ベクトル空間であるということと、加法、数乗法がその集合の中で閉じていることは同値である。
なぜなら、そこで定義される加法、数乗法は教科書p2〜3に示された交換法則などの公理をすでに満たしている
ことが分かっているためである。

では証明に入ろう。

&math(E=[\bm{a}_1,\bm{a}_2,\bm{a}_3,\dots,\bm{a}_n]); に対して
&math(\bm{x_1}, \bm{x_2} \in E); とする。

すると「張られる」の定義から、

&math(\bm{x_1}= c_1 \bm{a}_1 + c_2 \bm{a}_2 + \dots + c_n \bm{a}_n); 

&math(\bm{x_2}= d_1 \bm{a}_1 + d_2 \bm{a}_2 + \dots + d_n \bm{a}_n); 

となるような &math(\{c_k\}); と &math(\{d_k\}); が存在する。

このとき、

&math(\bm{x_1}+\bm{x_2}= (c_1+d_1) \bm{a}_1 + (c_2+d_2) \bm{a}_2 + \dots + (c_n+d_n) \bm{a}_n); 

&math(\lambda\bm{x_1}= (\lambda c_1) \bm{a}_1 + (\lambda  c_2) \bm{a}_2 + \dots + (\lambda c_n) \bm{a}_n); 

と書け、加法と数乗法が &math(E); に閉じていることを示すことができる。

* 特殊な部分ベクトル空間 [#xa0ff735]

ゼロベクトルだけを含む空間 &math(\{\bm{o}\}); は部分ベクトル空間である。

ベクトル空間 &math(V); に対して &math(V); 自身は部分ベクトル空間である。

* ベクトル張られる集合の「形」 [#hed741f5]

&math(\bm{a}_1,\bm{a}_2,\bm{a}_3,\dots,\bm{a}_n); を3次元の位置ベクトルと考える。
このときこれらのベクトルで張られる領域はどんな形をしているだろうか?

高校でやったとおり &math(\bm{r}=c_1\bm{a_1}); は &math(c_1); をパラメータと考えると
原点を通り&math(c_1\bm{a_1});に平行な直線を表す。

同様に、&math(\bm{r}=c_1\bm{a_1}+c_2\bm{a_2}); は原点を通り&math(\bm{a_1});、&math(\bm{a_1});を含む平面を表し、~
そして &math(\bm{r}=c_1\bm{a_1}+c_2\bm{a_2}+c_3\bm{a_3}); は全空間を埋め尽くすことになるだろう。

では4つの場合は? &math(\bm{r}=c_1\bm{a_1}+c_2\bm{a_2}+c_3\bm{a_3}+c_4\bm{a_4});

3つだけで全空間を埋め尽くすのだから、さらに自由度が増えてもそれ以上集合が大きくなることはない。

というわけで、基本的にベクトル1つの線形結合は直線を、2つなら平面を、3つ以上なら立体的な空間全域を張ると考えればよい。

ただ、特殊な場合はそうとも限らない。

たとえばベクトル1個を選ぶときにゼロベクトルを取ってしまうとその一時結合は原点しか含まない。

ゼロベクトルでなくても2つのベクトルを選ぶときに同じ方向のものを選んでしまうと2個の線形結合で表せる領域は1個の時と変わらない。

このような状況を考えるために次の概念が導入される。

* 一次独立、一次従属 [#u5b27cc9]

あるベクトルの組 

&math(\bm{a}_1,\bm{a}_2,\bm{a}_3,\dots,\bm{a}_n \in V);  ・・・ ②

に対して

&math(c_1\bm{a_1}+c_2\bm{a_2}+c_3\bm{a_3}+c_4\bm{a_4}=\bm{o}); ・・・ ③

という式を作るとこれは &math(c_1, c_2,\dots,c_n ); に関する方程式になる。

この式が 

&math(c_1 = c_2 = \dots = c_n = 0 ); ・・・ ④

のときに成立するのは自明であるが、
ベクトルの選び方によって解がこれだけに限られる場合と、
他にも解がある場合とがありうる。

②が唯一③を解に持つとき、②のベクトルは「一次独立」であると言う。

逆に他に1つでも解を持つとき②のベクトルは「一次従属」であると言う。

* 一次従属の意味 [#t7724703]

&math(\bm{a}_1,\bm{a}_2,\bm{a}_3,\dots,\bm{a}_n \in V); が一次従属であれば~
&math(c_1\bm{a_1}+c_2\bm{a_2}+\dots+c_n\bm{a_n}=\bm{o}); となる &math(c_1, c_2,\dots,c_n ); として、
&math(c_i \ne 0); であるものが存在する。

このとき、

&math(\bm{a_i}=&(1/c_i)(c_1\bm{a_1}+c_2\bm{a_2}+\dots+c_n\bm{a_{i-1}}+\\&c_n\bm{a_{i+1}}+\dots+c_n\bm{a_n}));

と書くことができ、&math(\bm{a_i}); が残りのベクトルに張られる空間に含まれていることがわかる。

一次従属なベクトルの組はその中からあるベクトルを取り除いても張られる空間が変化しないような
ベクトルの組であることが分かる。

* 基底 [#r0d55acc]

あるベクトル空間 &math(V); を、一次独立なベクトルの組 &math(\bm{a}_1,\bm{a}_2,\bm{a}_3,\dots,\bm{a}_n \in V); に
より張られるとき、「&math(\bm{a}_1,\bm{a}_2,\bm{a}_3,\dots,\bm{a}_n); は &math(V) の基底である」と言う。

あるベクトル空間 &math(V); が与えられ、その基底を求めよ、というような問題では、
&math(V); からいくつか適当にベクトルを取り出し(たとえば &math(\bm{a},\bm{b},\bm{c});)、

+ それらが線形独立であること~
つまり &math(s\bm{a}+t\bm{b}+u\bm{c}=\bm{o}); の解が &math((s,t,u)=(0,0,0)); に限られること
+ それらで &math(V); が張られること~
つまり任意の &math(\bm{x} \in V); に対して &math(\bm{x}=s\bm{a}+t\bm{b}+u\bm{c}=\bm{o}); の解が
存在すること

を示せばよい。

* 次元 [#v76df21f]

あるベクトル空間 &math(V); が与えられたとき、その基底の取り方はいくつも
考えられる。

現段階では証明を省くが、どのように基底を取ったとしても、それを構成するベクトルの数は
ベクトルに固有の値であり、つねに同じ数になる。

この、「基底を構成するベクトルの数」をベクトル空間の次元と呼ぶ。

たとえば「ベクトル空間 &math(V); の時限を求めよ」という問題では、
適当な基底を作って見せ、その数を答えることになる。

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