線形写像・像・核・階数 のバックアップソース(No.17)

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#contents
#mathjax

* 写像 [#h358e130]

&math(f); が集合 &math(U); から集合  &math(U'); への写像であることを、

&math(f: U \to U'); 

と書く。

このような &math(f); は、
&math(U); の元それぞれに対して1つずつ、
&math(U'); の元を対応させる規則のことである

> &math(\forall x\in U, f(x)\in U');

「1つずつ」が重要

+ 対応する元が &math(U'); の外に出てしまうようなら &math(U\to U'); の写像とは呼ばない~
&math(f(x)=1/x); に対して &math(f(0)\not\in \mathbb R);
+ 対応する元が2つ以上あれば写像とは呼ばない~
&math(f(x)=|x|^{1/2}=\pm\sqrt x); に対して &math(f(1)=\set{1,-1}\not\in \mathbb R);~
(複素関数論では多価関数を扱う)

&math(\bm x); を &math(f(\bm x)); に対応づけることを強調する場合には、

&math(f:\bm x\mapsto f(\bm x));

のようにも書く。

例: &math(f: \bm x\mapsto 3\bm x+\bm c);

&math(f: U \to U'); の表記と対比させて理解すること。

* 線形写像 [#ibeddaa7]

&math(V,V'); を線形空間として、
&math(f:V\to V'); が次の条件を満たすとき、&math(f); は「線形である」と言うのであった。

- &math(f(a\bm x+b\bm y)=af(\bm x)+bf(\bm y));

すなわち、写像がベクトル和やスカラー倍に対して透過的であるということ。

左辺の和やスカラー倍が &math(V); で定義された演算であるのに対して、~
右辺の和やスカラー倍は &math(V'); で定義された演算であることに注意せよ。~
(すなわち &math(V); と &math(V'); は同じスカラーの上に定義されている必要がある)

線形の条件は、&math(T:V\to V'); として、

- &math(T(\bm x+\bm y)=T\bm x+T\bm y);
- &math(T(c\bm x)=cT\bm x);

と書いても同じ意味になる。

(このように、引数が1つの時に括弧を省略して書くこともよく行われる。
特に線形写像を大文字のアルファベットで表わすとき)

例:~
&math(V=\{xの3次以下の多項式\});、&math(V'=\{xの2次以下の多項式\}); として、
&math(T:V\to V'); を

&math(T\bm v\equiv\frac{d}{dx} \bm v); ただし &math(\bm v\in V);

と定義すれば、これは線形写像になる。

&math(
\because T(a\bm x+b\bm y)=\frac{d}{dx}(a\bm x+b\bm y)=a\frac{d}{dx}\bm x+b\frac{d}{dx}\bm y=aT\bm x+bT\bm y
);

微分や積分は 典型的な線形写像 として以後頻出する

&math(Tx); という書き方は &math(\frac{d}{dx} \bm x); などという書き方と対応する。

こういう場合、&math(T); を 線形「演算子」などとも呼ぶ。

例:~
先に見た、多項式と数ベクトル表現との間の変換

- &math(ax^2+bx+c\in P^2[x]\mapsto \begin{pmatrix}a\\b\\a-b+c\end{pmatrix}\in \mathbb R^3);
- &math(\begin{pmatrix}a\\b\\c\end{pmatrix}\in \mathbb R^3\mapsto ax^2+bx+(-a+b+c)\in V);

も線形写像になっている。

** 練習 [#j3e80a73]

問:&math(T); が線形写像であれば、&math(T(\bm 0)=\bm 0); となることを示せ。

答:&math(T(\bm 0)=T(0\bm 0)=0T(\bm 0)=\bm 0);

(最後の部分で、任意の &math(\bm x); について &math(0\bm x=\bm 0); となることを使った)

* 像 $\Image T$ [#n43982dd]

写像 &math(T:V\to V'); の「像」は、~
>&math(\Image T\equiv\set{\bm x'\in V'|\exists \bm x\in V, \bm x'=T\bm x});

として定義され、&math(T(V)); とも書かれる。当然、&math(\Image T\subset V'); である。

上記の集合の記号は 「&math(\Image T); は、
ある &math(\bm x\in V); に対して &math(\bm x'=T\bm x); が成り立つような
&math(V); の元 &math(\bm x'); からなる集合である」 と読む。

高校で関数について定義域、値域を考えたが、その値域にあたる。

&attachref(image.png,,33%);

** 線形写像の像は線形空間となる [#vbbe7187]

線形空間の部分集合が部分空間となることを示すには、
その集合が演算に対して閉じていることを確かめればよかった。

&math(\forall\bm x',\forall\bm y'\in \Image T); に対して、
&math(\bm x'=T\bm x, \bm y'=T\bm y); となるような &math(\bm x,\bm y\in V); が存在するから、

&math(
a\bm x'+b\bm y'&=aT\bm x+bT\bm y\\
&=T(a\bm x+b\bm y)\in \Image T
);

すなわち
&math(\forall\bm x',\forall\bm y'\in \Image T\Rightarrow a\bm x'+b\bm y'\in \Image T); であり、
&math(\Image T\subset V'); はベクトル和とスカラー倍について閉じている。

したがって、&math(\Image T); は部分空間となる。

** 階数 [#oe674987]

ある線形写像 &math(T:V\to V'); の「階数」は、~
>&math(\rank T\equiv\dim (\Image T));

として定義される。すなわち像の次元。

行列の階数との関係は後述する。

例:

&math(f:\mathbb R\to\mathbb R^2); が &math(f:a\mapsto\begin{pmatrix}2a\\-a\end{pmatrix}); ならば、&math(\Image f=\Big[\begin{pmatrix}2\\-1\end{pmatrix}\Big]); であり、&math(\rank f=1); である。

&math(f:\mathbb R^2\to\mathbb R^2); が &math(f:\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}\mapsto\begin{pmatrix}x\\0\end{pmatrix}); ならば、&math(\Image f=\Big[\begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix}\Big]); であり、&math(\rank f=1); である。

練習:

&math(T: V\to V'); のとき、

&math(\dim (\Image T)\le \dim V);

&math(\dim (\Image T)\le \dim V');

を示せ。

解答:

前者は、&math(\dim V); の任意の基底 &math(\bm b_1,\bm b_2,\dots,\bm b_n); に対して
&math(T\bm b_1,T\bm b_2,\dots,T\bm b_n); が &math(\Image T); を張ることと、
&math((次元)=(基底の数)=(線形独立なベクトルの数)<(生成元の数)); であることから証明される。

後者は &math(\Image T); が &math(V'); の部分空間であることから自明。

* 全射(上への写像) [#u804c5ca]

写像 &math(T:V\to V'); が &math(\Image T=V'); を満たすとき、上への写像あるいは全射であるという。
(教科書の「全写」は間違い)

これは、任意の &math(\bm x'\in V'); に対して、
そこに移ってくる &math(\bm x\in V, T\bm x=\bm x'); を見つけられること、
と同義である。

&attachref(上への写像.png,,33%);

例えば、&math(T:a\mapsto\begin{pmatrix}2a\\-a\end{pmatrix}); は 
&math(T:\mathbb R\to\mathbb R^2); なら全射ではないが、~
&math(T:\mathbb R\to\Big[\begin{pmatrix}2\\-1\end{pmatrix}\Big]); なら全射である。

* 単射(1対1写像) [#f9291c06]

一般の写像では異なるベクトルが同じ値に移される場合があるが、
&math(\bm x\ne \bm y); であれば必ず &math(T(\bm x)\ne T(\bm y)); であるとき、
&math(T); は単射である、あるいは、1対1写像である、という。

&attachref(写像.png,,33%);

- &math(V); と &math(\Image T); との間に1対1対応を生む
- &math(V); と &math(V'); との間だと0対1の場合もある

* 全単射(上への1対1写像) [#x5e3aeb2]

単射かつ全射であることをいう。

&math(V'); の元の1つ1つに &math(V); の元が1つ1つ対応することになる。

このときに限り、「逆写像 &math(T^{-1}:V'\to V);」が定義できる。

&math(T^{-1}:T(\bm x)\mapsto\bm x);

- 全単射でないと逆写像は定義できないことに注意せよ
-- 1対1でないと、ある &math(v'\in V'); に複数の &math(v\in V); が対応してしまう
-- 上への写像でないと、ある &math(v'\in V'); に対応する &math(v\in V); が存在しない場合がある
- 逆写像も全単射になり、逆写像の逆写像は元の写像である

** 練習 [#cdc16e96]

問:~
線形写像の逆写像 &math(T^{-1}); は線形写像であることを示せ

答:~
&math(\bm x'=T(\bm x), \bm y'=T(\bm y)); とすると、
&math(\bm x=T^{-1}(\bm x'),\bm y=T^{-1}(\bm y'));

一方、

&math(T(a\bm x+b\bm y)=aT(\bm x)+bT(\bm y)=a\bm x'+b\bm y'); 

の両辺に &math(T^{-1}); を作用させると

&math(a\bm x+b\bm y=T^{-1}(a\bm x'+b\bm y')); 

この左辺は &math(aT^{-1}(\bm x')+bT^{-1}(\bm y')); と等しいことから、
&math(T^{-1}); が線形であることが示される。

* &ruby(どうけい){同型}; [#j11499b9]

2つの線形空間 &math(V); と &math(V'); の間に全単射の線形写像 &math(T); を定義できるとき、
&math(V); と &math(V'); は同型であるといい、&math(V\simeq V'); と書く。

このとき、&math(T); を同型写像と呼ぶ。

注)同型である2つの線形空間の間には無数の異なる同型写像を定義可能であるが、
1つでも同型写像を定義できれば同型と呼ぶ。


同型の空間は非常に似た構造を持つ。

- &math(\bm a+\bm b=\bm c); なら &math(T(\bm a)+T(\bm b)=T(\bm c));
- &math(k\bm a=\bm b); なら &math(kT(\bm a)=T(\bm b));
- &math(\bm b_1,\dots,\bm b_n); が &math(V); の基底なら、~
&math(T(\bm b_1),\dots,T(\bm b_n)); は &math(V'); の基底となる
- などなど

特に、すべての &math(K); 上の &math(n); 次元ベクトル空間は &math(K^n);
に同型であるため、1年生でやった数ベクトル空間が、
任意の(有限次元の)線形空間を理解するための基礎となる。

∵ &math(V); の元から数ベクトル表現への写像が同型写像となる。

** 同値関係 [#wbf24771]

線形空間の「同型」は同値関係の公理を満たす。すなわち、

+ &math(V\simeq V);   : 反射律 (恒等写像による同型)
+ &math(V\simeq V'\to V'\simeq V); : 対称律 (逆写像による同型)
+ &math(V\simeq V' \wedge V'\simeq V''\to V\simeq V''); : 推移律 (合成写像による同型)

** 一方を調べればもう一方が分かる例 [#f06ed7b5]

&math(V\to V'); の同型写像を &math(T(\bm x)); とすると、

&math(\bm a, \bm b, \bm c\in V); が線形独立であれば、~
&math(T(\bm a), T(\bm b), T(\bm c)\in V'); も線形独立である。~

対偶を証明する。証明するのは、~
「&math(T(\bm a), T(\bm b), T(\bm c)\in V'); が線形従属ならば、~
&math(\bm a, \bm b, \bm c\in V); も線形従属である。」

もし &math(T(\bm a), T(\bm b), T(\bm c)\in V'); が従属なので、
すべてがゼロではない3つのスカラー &math(\alpha,\beta,\gamma); に対して

&math(\alpha T(\bm a)+\beta T(\bm b)+\gamma T(\bm c)=\bm 0);

が成立する。&math(T); は線形なので、

&math((左辺)=T(\alpha \bm a+\beta \bm b+\gamma \bm c)=\bm 0);

ここで両辺に &math(T^{-1}); を掛けると、&math(T^{-1}(\bm 0)=\bm 0); より、

&math(\alpha \bm a+\beta \bm b+\gamma \bm c=\bm 0);

&math(\alpha,\beta,\gamma); はすべてがゼロではないから、
&math(\bm a, \bm b, \bm c); は線形従属。

* &ruby(かく){核}; $\Kernel T$ [#naf8d1e7]

線形写像 &math(T:V\to V'); の核 (Kernel):

&math(\Kernel T\equiv\set{\bm x\in V|T\bm x=\bm 0});

** 核はゼロを含む [#ve5a77e3]

&math(\because T\bm 0=\bm 0');

** 核は線形空間となる [#c0b617ac]

&math(\forall\bm x,\forall\bm y\in \Kernel T); に対して、

&math(
T(a\bm x+b\bm y)=aT\bm x+bT\bm y=a\bm 0+b\bm 0=\bm 0+\bm 0=\bm 0
);

より、&math(a\bm x+b\bm y\in \Kernel T); となる。

すなわち、&math(\Kernel T\in V); はベクトル和とスカラー倍に対して閉じており、
部分空間となる。

** 1対1写像の条件 [#ua8a6434]

&math(\Kernel T=\set{\bm 0}); は &math(T); が1対1写像であるための必要十分条件となる。

なぜなら、

&math(\Kernel T\supsetneq \set{\bm 0}); なら複数の元が &math(\bm 0); に移る。

逆に、&math(\bm x\ne \bm y); かつ &math(T\bm x=T\bm y); ならば &math(T(\bm x-\bm y)=\bm 0); より
&math(\bm x-\bm y\in \Kernel T); かつ &math(\bm x-\bm y\ne \bm 0); より &math(\Kernel T\ne\set{\bm 0});

* 次元定理 [#pcd7ea8a]

上記をまとめると下図のようになる。

&attachref(次元定理.png,,33%);

-&math(\Kernel T); は &math(V); の、&math(\Image T); は &math(V'); の、部分空間である
-&math(\Kernel T); に含まれる元は &math(\bm 0); に移る
-&math(V-\Kernel T); に含まれる元は &math(\Image T-\set{\bm 0}); に移る

線形写像の次元定理とは、次の関係のことである。

&math(\dim V-\dim(\Kernel T)=\dim(\Image T)=\rank T);

略証明:

&math(\Kernel T); の基底を &math(\bm a_1,\bm a_2,\dots,\bm a_n); として、
これにいくつかベクトルを加えた &math(\bm a_1,\bm a_2,\dots,\bm a_{\dim V}); 
が &math(V); の基底となるようにできる。

このとき &math(n=\dim(\Kernel T)); である。

&math(\bm a_1,\bm a_2,\dots,\bm a_n); は &math(T); によってすべて &math(\bm 0); 
に移る一方、&math(\bm a_{n+1},\bm a_{n+2},\dots,\bm a_{\dim V}); は
&math(\Image T); に移り、&math(T(\bm a_{n+1}),T(\bm a_{n+2}),\dots,T(\bm a_{\dim V})); は 
&math(\Image T); の基底を為す。

すなわち、

&math(\dim(\Image T)=\rank T=\dim V-n=\dim V-\dim(\Kernel T));

** 退化次数 [#obe2a00d]

もともと &math(\dim V); の次元を持つ線形空間が、
&math(T); で移されることにより &math(\rank T=\dim(\Image T)=\dim V-\dim(\Kernel T)); 
の次元に縮まることから、&math(\dim (\Kernel T)); を退化次数と呼ぶこともある。

** 練習 [#v63fd410]

&math(T:\mathbb R^3\to\mathbb R^4);

&math(
\bm x'=\begin{pmatrix}x'\\y'\\z'\\w'\end{pmatrix}=T\bm x=\begin{pmatrix}3&0&0\\0&1&0\\0&0&0\\0&1&0\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}x\\y\\z\end{pmatrix}
); 

&math(\mathbb R^3=
\Bigg[\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix},\begin{pmatrix}0\\1\\0\end{pmatrix},\begin{pmatrix}0\\0\\1\end{pmatrix}\Bigg]=
\Bigg[\begin{pmatrix}1\\1\\0\end{pmatrix},\begin{pmatrix}1\\1\\1\end{pmatrix},\begin{pmatrix}1\\-1\\0\end{pmatrix}\Bigg]=
\Bigg[\begin{pmatrix}1\\1\\0\end{pmatrix},\begin{pmatrix}1\\1\\1\end{pmatrix},\begin{pmatrix}1\\-1\\0\end{pmatrix},\begin{pmatrix}3\\2\\1\end{pmatrix}\Bigg]
);

&math(\dim \mathbb R^3=3);

&math(\dim \mathbb R^4=4);

&math(\Image T
=\Bigg[
\begin{pmatrix}3\\0\\0\\0\end{pmatrix},
\begin{pmatrix}0\\1\\0\\1\end{pmatrix},
\begin{pmatrix}0\\0\\0\\0\end{pmatrix}
\Bigg]
=\Bigg[
\begin{pmatrix}3\\0\\0\\0\end{pmatrix},
\begin{pmatrix}0\\1\\0\\1\end{pmatrix}
\Bigg]);

&math(\dim(\Image T)=2);

&math(\Kernel T
=\Bigg[
\begin{pmatrix}0\\0\\1\end{pmatrix}
\Bigg]);

&math(\dim(\Kernel T)=1);

&math(\dim \mathbb R^3=\dim(\Image T)+\dim(\Kernel T));

** 行列による線形写像の階数 [#vd4b4e79]

&math(T:\mathbb R^m\to\mathbb R^n);

&math(T(\bm x)=A\bm x); ただし &math(A); は &math(n\times m); 行列

すなわち、

&math(A=\begin{pmatrix}\bm a_1\Bigg.&\bm a_2&\dots&\bm a_m\end{pmatrix});
ただし &math(\bm a_1,\bm a_2,\dots,\bm a_m); は &math(n); 次縦ベクトル

の時、

&math(\Image T=\big[ \bm a_1,\bm a_2,\bigg.\dots,\bm a_m \big]);

(右辺は &math(\{\bm a_i\}); が張る空間)であるから、&math(\dim (\Image T)); は &math(A); の列ベクトルが張る空間の次元となる。

後に見るように、これは行列の階数と等しくなる。

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* 質問・コメント [#g72202c9]

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