ベリー位相・ベリー接続・ベリー曲率 のバックアップ(No.4)

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量子力学Ⅰ

目次

Berry 位相・Berry 接続・Berry 曲率

このページは バンド理論の勉強 の元になった 2020年の若林先生の授業内容を元に書いたものですが、私の理解が足りない部分につて後から勉強しなおした結果、内容は大幅に再構成されています。そのため内容には誤りが多いかもしれません。ご容赦ください。

一次摂動に関しては EMANの物理学・量子力学・摂動論 が大変参考になりました。

波動関数の位相とパラメータ依存性

一般に固有値問題を解いて得られる固有ベクトルにはその係数が自由パラメータとして残る。 つまりシュレーディンガー方程式を解いて得られた波動関数に任意の複素数をかけてもシュレーディンガー方程式の解となる。

ただし量子力学では固有関数を規格化するため、この条件から係数の絶対値が決まる。 そして位相だけが自由に選べ、観測可能な物理量は波動関数の位相の選び方によらないことが知られている。

特に、ハミルトニアンが何らかのパラメータ $\bm q$ (例えば波数 $\bm k$)を含んでいるとき、 異なるパラメータに対する解ごとに位相を任意に選んだとしても LCOA 近似の上では何ら問題ない。

ところが波動関数の位相のパラメータ依存性が問題になってくるケースが後で出てくるため、この点について以下で吟味する。

何らかの方法で固有値と固有関数、特に波動関数の位相までをパラメータに依存する形で定めたものを次のように書こう。

$$ \hat H(\bm q)\,|\psi_{\bm q}^{(n)}\rangle=\varepsilon_{\bm q}^{(n)}\,|\psi_{\bm q}^{(n)}\rangle $$

$(n)$ は $n$ 番目のバンド、つまり小さいほうから $n$ 番目の固有値であることを表す。

上で述べたのは、これに適当な位相 $\varphi(\bm q)$ を掛けて、

$$ |\tilde\psi_{\bm q}^{(n)}\rangle=e^{-i\varphi(\bm q)}|\psi_{\bm q}^{(n)}\rangle $$

のように決めた $|\tilde\psi_{\bm q}^{(n)}\rangle$ も、$|\psi_{\bm q}^{(n)}\rangle$ と同様に正しい波動関数である、ということだ。

同じ物理状態に対する解の位相

上で書いた位相 $\varphi(\bm q)$ の選び方によっては、

  1. パラメータ $\bm q_1$ と $\bm q_2$ とが同じ物理状態を表すにも関わらず $|\tilde\psi_{\bm q_1}^{(n)}\rangle$ の位相と $|\tilde\psi_{\bm q_2}^{(n)}\rangle$ の位相が異なる
  2. パラメータ $\bm q$ を $\bm q_1$ から連続的に動かして再び $\bm q_1$ に戻した時に位相が変わってしまう

といったことが起きる。

これが電流を求める際などに重要になってくる。

例:グラフェンの $K$ 状態の周りの電子

グラフェンの $K$ 点回りの波動方程式の解は

$$\bm k=\begin{pmatrix}k\cos\phi\\k\sin\phi\end{pmatrix}$$

と置いたときに

$$ \Phi_{\bm k}=\frac1{\sqrt2}\begin{pmatrix}e^{i\phi}\\1\end{pmatrix} $$

と表された。

$\phi\to\phi+2\pi$ のように $\bm k$ がK点周りを一周したとき、 上記の表式では

$$ \frac1{\sqrt2}\begin{pmatrix}e^{i\phi+2\pi}\\1\end{pmatrix} =\frac1{\sqrt2}\begin{pmatrix}e^{i\phi}\\1\end{pmatrix} $$

となって波動関数は位相を含めて元に戻る。

これに位相 $e^{-\phi/2}$ を掛けると、

$$ \tilde\Phi_{\bm k}=\frac1{\sqrt2}\begin{pmatrix}e^{i\phi/2}\\e^{-i\phi/2}\end{pmatrix} $$

となって、こちらは

$$ \frac{1}{\sqrt 2}\begin{pmatrix} e^{i(\phi+2\pi)/2}\\e^{-i(\phi+2\pi)/2} \end{pmatrix}=\frac{1}{\sqrt 2}\begin{pmatrix} {}-e^{i\phi/2}\\-e^{-i\phi/2} \end{pmatrix} $$

のように一周回ると符号が反転してしまう。

例:マグネティックモノポールとスピンの系(1)

原点に大きさ $M$ のマグネティックモノポールの存在を仮定し、

$$ \bm B=\frac{M}{r^2}\frac{\bm r}{r} $$

$\bm r=(r,\theta,\phi)$ に大きさ $s$ のスピンを置く。

$$ \bm s=s\bm\sigma $$

相互作用を表すハミルトニアンは $r,\theta,\phi$ をパラメータとして含み、

$$ \begin{aligned} \hat H(r,\theta,\phi) &=-\bm B\cdot\hat\bm s\\ &=-\underbrace{\frac{sM}{r^2}}_{\varepsilon_0}\Big(\frac{\bm r}{r}\Big)\cdot\hat\bm\sigma\\ &=-\varepsilon_0(\hat\sigma_x\sin\theta\cos\phi+\hat\sigma_y\sin\theta\sin\phi+\hat\sigma_z\cos\theta)\\ &=-\varepsilon_0\begin{pmatrix} \cos\theta&\sin\theta e^{-i\phi}\\ \sin\theta e^{-i\phi}&-\cos\theta \end{pmatrix} \end{aligned} $$

これを解くと、

$$ \varepsilon^{(1)}=+\varepsilon_0, \ \psi^{(1)}=\begin{pmatrix} \sin(\theta/2) e^{-i\phi}\\ {}-\cos(\theta/2) \end{pmatrix} $$

$$ \varepsilon^{(2)}=-\varepsilon_0, \ \psi^{(2)}=\begin{pmatrix} \cos(\theta/2)\\ \sin(\theta/2) e^{i\phi} \end{pmatrix} $$

が求まるが、この波動関数は $\theta=0$ において

$$ \psi^{(1)}=\begin{pmatrix} 0\\-1 \end{pmatrix}, \ \psi^{(2)}=\begin{pmatrix} 1\\0 \end{pmatrix} $$

であるのに対して、 $\theta=\pi$ においては

$$ \psi^{(1)}=\begin{pmatrix} e^{-i\phi}\\0 \end{pmatrix}, \ \psi^{(2)}=\begin{pmatrix} 0\\e^{i\phi} \end{pmatrix} $$

となって、波動関数の位相が $\phi$ によって異なる値を取るような解となっている。

$$ \begin{cases} r_x=r\sin\theta\cos\phi\\ r_y=r\sin\theta\sin\phi\\ r_z=r\cos\theta\\ \end{cases} $$

の値は $\theta=\pi$ において $\phi$ が異なっても等しいから、 $\theta=\pi$ においては $\phi$ が異なっても物理的には同一の系を表す。

実際、得られる解は位相を除いて等しい。

すなわち $\theta,\phi$ をパラメータとして見ると、

1. パラメータ $(\theta,\phi)=(\pi,\phi_1)$ と $(\theta,\phi)=(\pi,\phi_2)$ とが同じ物理状態を表すにも関わらず $|\tilde\psi_{(\pi,\phi_1)}^{(n)}\rangle$ の位相と $|\tilde\psi_{(\pi,\phi_2)}^{(n)}\rangle$ の位相が異なる

あるいは、

2. パラメータ $\bm r$ を $\bm r_1=(0,0,-1)$ から連続的に動かして再び $\bm r_1=(0,0,-1)$ に戻した時に位相が変わってしまう(前者が $(\theta,\phi)=(\pi,\phi_1)$ に後者が $(\theta,\phi)=(\pi,\phi_2)$ に対応していると考える)

の例になっている。

同じ物理状態を表すパラメータに対する解の位相差を求める方法

天下りではあるが、パラメータ $\bm q_1$ と $\bm q_2$ とが同じ物理状態を表すとき、ある適当な経路に沿って

$$ \gamma=i\int_{\bm q_1}^{\bm q_2}\langle\psi_{\bm q}|\bm\nabla_{\bm q}|\psi_{\bm q}\rangle \cdot d\bm q $$

を計算して求まる $\gamma$ が $|\psi_{\bm q_1}\rangle$ と $|\psi_{\bm q_2}\rangle$ との間の位相差を表すことが知られている。(2つの波動関数は同じ物理状態に対する解なので位相を除いて一致する)

すなわち、

$$ |\psi_{\bm q_2}\rangle=e^{-i\gamma}\,|\psi_{\bm q_1}\rangle $$

ここではこれが成り立ちそうなことを確かめよう。

$|\psi_{\bm q}\rangle$ に $\bm q$ に依存する位相を掛けた

$$ |\tilde\psi_{\bm q}\rangle=e^{-i\varphi(\bm q)}|\psi_{\bm q}\rangle $$

に対して $\tilde\gamma$ を計算すると、

$$ \bm\nabla_{\bm q}|\tilde\psi_{\bm q}\rangle= {}-i\big[\bm\nabla_{\bm q}\varphi(\bm q)\big]e^{-i\varphi(\bm q)}|\psi_{\bm q}\rangle+ e^{-i\varphi(\bm q)}\big[\bm\nabla_{\bm q}|\psi_{\bm q}\rangle\big] $$

であるから、

$$ \begin{aligned} \tilde\gamma &=i\int_{\bm q_1}^{\bm q_2}\langle\tilde\psi_{\bm q}|\bm\nabla_{\bm q}|\tilde\psi_{\bm q}\rangle \cdot d\bm q\\ &=\int_{\bm q_1}^{\bm q_2}\underbrace{\bm\nabla_{\bm q}\varphi(\bm q)\cdot d\bm q\rule[-9pt]{0pt}{0pt}}_{d\varphi_{\bm q}}+ \underbrace{i\int_{\bm q_1}^{\bm q_2}\langle\psi_{\bm q}|\bm\nabla_{\bm q}|\psi_{\bm q}\rangle d\bm q}_{\gamma}\\ &=\gamma+\varphi(\bm q_2)-\varphi(\bm q_1) \end{aligned} $$

となり、$\gamma$ は確かに始点と終点との位相差を反映しそうだ。

あとは位相差がゼロの時にちゃんと $\gamma=0$ になることかなにかを示せればいいのだけれど・・・今のところ考え中。

Berry 接続

上で定義した $\gamma$ では $\langle\psi_{\bm q}|\bm\nabla_{\bm q}|\psi_{\bm q}\rangle \cdot d\bm q$ を線積分したが、この意味についてもう少し詳しく考えてみる。

$|\psi_{\bm q}^{(n)}\rangle$ の周囲で $\bm q$ を少し変えたときに波動関数がどう変わるか調べてみよう。

$$ \hat H(\bm q+\delta \bm q)\,|\psi_{\bm q}^{(n)}+\delta \psi_{\bm q}^{(n)}\rangle=(\varepsilon_{\bm q}^{(n)}+\delta\varepsilon_{\bm q}^{(n)})\,|\psi_{\bm q}^{(n)}+\delta\psi_{\bm q}^{(n)}\rangle $$

これを一次まででばらしてみる、

$$\hat H(\bm q+\delta \bm q)=\hat H(\bm q)+\underbrace{\bm\nabla_{\bm q}\hat H(\bm q)\cdot \delta\bm q}_{\text{摂動項}}$$

$$ \delta\varepsilon_{\bm q}^{(n)}=\bm\nabla_{\bm q}\varepsilon_{\bm q}^{(n)}\cdot\delta\bm q $$ を使って、

$$ \big(\hat H(\bm q)+\bm\nabla_{\bm q}\hat H(\bm q)\cdot \delta\bm q\big)\, |\psi_{\bm q}^{(n)}+\delta \psi_{\bm q}^{(n)}\rangle=(\varepsilon_{\bm q}^{(n)}+\bm\nabla_{\bm q}\varepsilon_{\bm q}^{(n)}\cdot\delta\bm q)\,|\psi_{\bm q}^{(n)}+\delta\psi_{\bm q}^{(n)}\rangle $$

$$ \hat H(\bm q)\,|\delta \psi_{\bm q}^{(n)}\rangle {}+\bm\nabla_{\bm q}\hat H(\bm q)\cdot \delta\bm q\, |\psi_{\bm q}^{(n)}\rangle =\varepsilon_{\bm q}^{(n)}\,|\delta\psi_{\bm q}^{(n)}\rangle+ \bm\nabla_{\bm q}\varepsilon_{\bm q}^{(n)}\cdot\delta\bm q\,|\psi_{\bm q}^{(n)}\rangle $$

左から $\langle\psi_{\bm q}^{(n')}|$ をかけると、

$$ (\varepsilon_{\bm q}^{(n')}-\varepsilon_{\bm q}^{(n)})\,\langle\psi_{\bm q}^{(n')}|\delta \psi_{\bm q}^{(n)}\rangle=-\langle\psi_{\bm q}^{(n')}| \bm\nabla_{\bm q}\hat H(\bm q)\cdot \delta\bm q\, |\psi_{\bm q}^{(n)}\rangle+ \bm\nabla_{\bm q}\varepsilon_{\bm q}^{(n)}\cdot\delta\bm q\,\delta_{n'n} $$

$n'=n$ では

$$ \langle\psi_{\bm q}^{(n)}|\bm\nabla_{\bm q}\hat H(\bm q)\,|\psi_{\bm q}^{(n)}\rangle= \bm\nabla_{\bm q}\varepsilon_{\bm q}^{(n)} $$

$n'\ne n$ では

$$ \langle\psi_{\bm q}^{(n')}|\delta \psi_{\bm q}^{(n)}\rangle= \langle\psi_{\bm q}^{(n')}|\bm\nabla_{\bm q}|\psi_{\bm q}^{(n)}\rangle\cdot \delta\bm q=- \frac{\langle\psi_{\bm q}^{(n')}| \bm\nabla_{\bm q}\hat H(\bm q)\, |\psi_{\bm q}^{(n)}\rangle}{\varepsilon_{\bm q}^{(n')}-\varepsilon_{\bm q}^{(n)}}\cdot \delta\bm q $$

すなわち一次摂動でおなじみの形、

$$ \langle\psi_{\bm q}^{(n')}|\bm\nabla_{\bm q}|\psi_{\bm q}^{(n)}\rangle=- \frac{\langle\psi_{\bm q}^{(n')}| \bm\nabla_{\bm q}\hat H(\bm q)\, |\psi_{\bm q}^{(n)}\rangle}{\varepsilon_{\bm q}^{(n')}-\varepsilon_{\bm q}^{(n)}} $$

が出る。これで $\bm\nabla_{\bm q}|\psi_{\bm q}^{(n)}\rangle$ を $|\psi_{\bm q}^{(n')}\rangle$ で展開した際の係数が $n'=n$ を除き求まったので、

$$ \bm\nabla_{\bm q}|\psi_{\bm q}^{(n)}\rangle= \underbrace{\langle\psi_{\bm q}^{(n)}|\bm\nabla_{\bm q}|\psi_{\bm q}^{(n)}\rangle}_{=-i\bm A}\ |\psi_{\bm q}^{(n)}\rangle+ \sum_{n'\ne n}- \frac{\langle\psi_{\bm q}^{(n')}| \bm\nabla_{\bm q}\hat H(\bm q)\, |\psi_{\bm q}^{(n)}\rangle}{\varepsilon_{\bm q}^{(n')}-\varepsilon_{\bm q}^{(n)}}\ |\psi_{\bm q}^{(n')}\rangle $$

と書ける。$n'=n$ の成分の係数はわからないので、形式的に $\langle\psi_{\bm q}^{(n)}|\bm\nabla_{\bm q}|\psi_{\bm q}^{(n)}\rangle$ と書いている。上のように定義した

$$ \bm A=i\langle\psi_{\bm q}^{(n)}|\bm\nabla_{\bm q}|\psi_{\bm q}^{(n)}\rangle $$

は Berry 接続と呼ばれる実ベクトルになる。

なぜ実数になるかというと、

$$ \begin{aligned} |\psi_{\bm q+\delta\bm q}^{(n)}\rangle &=|\psi_{\bm q}^{(n)}\rangle+|\delta\psi_{\bm q}^{(n)}\rangle\\ &=(1+\delta_n)|\psi_{\bm q}^{(n)}\rangle+\sum_{n'\ne n} \delta_{n'}|\psi_{\bm q}^{(n')}\rangle \end{aligned} $$

と書けるとき、$|\psi_{\bm q+\delta\bm q}^{(n)}\rangle$ が規格化されている条件は、

$$ \langle\psi_{\bm q+\delta\bm q}^{(n)}|\psi_{\bm q+\delta\bm q}^{(n)}\rangle=(1+\delta_n^*)(1+\delta_n)+\sum_{n'\ne n} |\delta_{n'}|^2=1 $$

であり、2次の項を落とすと、

$$ \delta_n^*+\delta_n=0 $$

が得られる。これは $\delta_n$ が純虚数であることを表し、すなわち $\bm A$ が実数であることを表す。 *1もっと簡単に書くと、あるベクトル $\bm v$ がノルムを変えず変化して $\bm v+\delta\bm v$ となったとすると、$$\begin{aligned}&\|\bm v\|^2=\|\bm v+\delta\bm v\|^2=\\&\|\bm v\|^2+2\,\text{Re}\,(\bm v,\delta\bm v)+\|\delta\bm v\|^2\end{aligned}$$2次の微少量を無視すると$$\,\text{Re}\,(\bm v,\delta\bm v)=0$$すなわち、$\delta\bm v$ の $\bm v$ 成分は純虚数でなければならない。ということ。

Berry 位相

上で $\delta_n\ll 1$ のとき、

$$ 1+\delta_n\sim e^{\delta_n} $$

つまり、

$$ 1-i\bm A\cdot\delta\bm q\sim e^{-i\bm A\cdot\delta\bm q} $$

であるから、$\bm q\to\bm q+\delta\bm q$ の変化により、$|\psi_{\bm q}^{(n)}\rangle$ 方向の成分は大きさを変えず位相のみ $-\delta\gamma=-\bm A\cdot\delta\bm q$ だけ回転することになる。(とりあえずほかの成分のことは気にしない)

$$ |\psi_{\bm q+\delta\bm q}^{(n)}\rangle =\underbrace{e^{-i\bm A\cdot\delta\bm q}\rule[-15pt]{0pt}{0pt}}_{\text{位相変化}}\,|\psi_{\bm q}^{(n)}\rangle+\underbrace{\sum_{n'\ne n} \delta_{n'}|\psi_{\bm q}^{(n')}\rangle}_{\text{気にしない}} $$

そこでこれを積分した値を考えると $\bm q_A$ から $\bm q_B$ までの変化で位相は、$e^{-i\gamma}$ ただし

$$ \gamma=\int_{\bm q_A}^{\bm q_B}d\gamma=\int_{\bm q_A}^{\bm q_B}\bm A\cdot d\bm q $$

だけ変化する。(ん~、よく考えると積分の最中に $\bm q$ の値が刻々と変わっていくので、それぞれの $d\gamma$ が何を基準としたどういう位相なのか、それらを単に足していいのか、いまいちピンと来ていないかも)

始点と終点が等しいとき($\bm q_A=\bm q_B$)、終点で他の成分は消えて $|\psi_{\bm q_A}^{(n)}\rangle$ 成分のみが残り、$|\psi_{\bm q_A}^{(n)}\rangle$ と $|\psi_{\bm q_B}^{(n)}\rangle$ との違いは位相のみになる。というか、ハミルトニアンは同じなのでその解となる波動関数は位相を除き決まるから、その位相の違いを考える。

通常の物質(後で条件について議論する)では戻ってきたときの位相差はゼロになるが、上でも見たようにグラフェンの $K$ 点回りなど特殊な条件下で有限の値となる場合がある。

この、「周回して残る位相」を Berry 位相と呼ぶ。

$$ \gamma=\oint_C \bm A\cdot d\bm q $$

Berry 曲率

Berry 位相の定義で出てくる

$$ \gamma=\oint_C \bm A\cdot d\bm q $$

という式は電磁気学で出てくる

$$ (\text{磁束})=\oint_C (\text{ベクトルポテンシャル})\cdot d\bm r $$

とクリソツだなあ、などと思いつつ、ストークスの定理を使って、

$$ \begin{aligned} \gamma&=\oint_C \bm A\cdot d\bm q\\ &=\int_S(\underbrace{\bm\nabla\times A}_{=\,\bm\Omega})\cdot d\bm S\\ &=\int_S\bm\Omega\cdot d\bm S\\ \end{aligned} $$

と書き直すと、ここに出てくる Berry 曲率

$$\Omega=\bm\nabla\times A$$

は電磁気学における磁束密度に相当する量となる。

ベリー曲率 $\bm \Omega$磁束密度 $\bm B$
ベリー接続 $\bm A$ベクトルポテンシャル $\bm A$
ベリー位相 $\gamma$磁束 $N$

磁束密度のない場所では必ず磁束がゼロになるのと同様に、 Berry 曲率がゼロであれば Berry 位相も必ずゼロになる。

Berry 曲率の具体的な形としては例えば、

$$ \begin{aligned} \Omega_z &=\frac{\partial A_y}{\partial x}-\frac{\partial A_x}{\partial y}\\ &=i\frac{\partial}{\partial x}\Big(\langle\psi_{\bm q}^{(n)}|\frac{\partial}{\partial y}|\psi_{\bm q}^{(n)}\rangle\Big)- i\frac{\partial}{\partial y}\Big(\langle\psi_{\bm q}^{(n)}|\frac{\partial}{\partial x}|\psi_{\bm q}^{(n)}\rangle\Big)\\ &=i\langle\tfrac{\partial\psi_{\bm q}^{(n)}}{\partial x}|\tfrac{\partial\psi_{\bm q}^{(n)}}{\partial y}\rangle+ \cancel{i\langle\psi_{\bm q}^{(n)}|\frac{\partial^2}{\partial x\partial y}|\psi_{\bm q}^{(n)}\rangle}- \cancel{i\langle\psi_{\bm q}^{(n)}|\frac{\partial^2}{\partial y\partial x}|\psi_{\bm q}^{(n)}\rangle}- i\langle\tfrac{\partial\psi_{\bm q}^{(n)}}{\partial y}|\tfrac{\partial\psi_{\bm q}^{(n)}}{\partial x}\rangle\\ &=-2\,\text{Im}\,\langle\tfrac{\partial\psi_{\bm q}^{(n)}}{\partial x}|\tfrac{\partial\psi_{\bm q}^{(n)}}{\partial y}\rangle\\ \end{aligned} $$

などとなる。

$$ \langle\tfrac{\partial\psi_{\bm q}^{(n)}}{\partial x}|\tfrac{\partial\psi_{\bm q}^{(n)}}{\partial y}\rangle= \sum_{n'} \langle\tfrac{\partial\psi_{\bm q}^{(n)}}{\partial x}|\psi_{\bm q}^{(n')}\rangle \langle\psi_{\bm q}^{(n')}|\tfrac{\partial\psi_{\bm q}^{(n)}}{\partial y}\rangle $$

の形に上で求めた

$$ \bm\nabla_{\bm q}|\psi_{\bm q}^{(n)}\rangle= {}-i\bm A\ |\psi_{\bm q}^{(n)}\rangle+ \sum_{n'\ne n}- \frac{\langle\psi_{\bm q}^{(n')}| \bm\nabla_{\bm q}\hat H(\bm q)\,|\psi_{\bm q}^{(n)}\rangle}{\varepsilon_{\bm q}^{(n')}-\varepsilon_{\bm q}^{(n)}}\ |\psi_{\bm q}^{(n')}\rangle $$

を入れると、

$$ \langle\tfrac{\partial\psi_{\bm q}^{(n)}}{\partial x}|\tfrac{\partial\psi_{\bm q}^{(n)}}{\partial y}\rangle= \underbrace{A_xA_y}_{\text{実数}}+ \sum_{n'\ne n} \frac{\langle\psi_{\bm q}^{(n)}| \tfrac{\partial}{\partial x}\hat H(\bm q)\,|\psi_{\bm q}^{(n')}\rangle\langle\psi_{\bm q}^{(n')}| \tfrac{\partial}{\partial y}\hat H(\bm q)\,|\psi_{\bm q}^{(n)}\rangle}{\big(\varepsilon_{\bm q}^{(n')}-\varepsilon_{\bm q}^{(n)}\big)^2} $$

より、

$$ \Omega_z=-2\,\text{Im}\,\sum_{n'\ne n} \frac{\langle\psi_{\bm q}^{(n)}| \tfrac{\partial}{\partial x}\hat H(\bm q)\,|\psi_{\bm q}^{(n')}\rangle\langle\psi_{\bm q}^{(n')}| \tfrac{\partial}{\partial y}\hat H(\bm q)\,|\psi_{\bm q}^{(n)}\rangle}{\big(\varepsilon_{\bm q}^{(n')}-\varepsilon_{\bm q}^{(n)}\big)^2} $$

を得る。

Berry 位相の重要性

なぜ Berry 位相が重要かというと、 $\bm q$ として $\bm k$ を取るとき、

$$ \bm\nabla_{\bm k} \hat H $$

は群速度 $v_g=\frac{\partial\omega}{\partial k}=\frac1\hbar\frac{\partial E}{\partial k}$ に相当する演算子

$$ \hat\bm v_g=\frac{1}{\hbar}\bm\nabla_{\bm k}\hat H $$

に $\hbar$ をかけたものとなる。

逆に、群速度と関連する「電流」などを求めようとすると、その過程で Berry 位相が出てくるため学んでおく必要がある。ということなのだと思う。

Zak 位相

Berry 位相の線積分は始点と終点が同じとなる「周回積分」だったが、ある $\bm k$ から隣のブリルアンゾーンの対応する $\bm k+\bm G$ まで Berry 接続を線積分した値は Zak 位相と呼ばれる。$\bm k$ と $\bm k+\bm G$ は物理的には同じ状態であるから、両者に対する波動関数は位相以外同一のものとなるが、その位相差が Zak 位相である。

実は Berry 曲率は時間反転対称性と空間反転対称性の両方を持つような普通の物質の中では常にゼロになってしまうため、Berry 位相はゼロになることが多い(磁束密度がゼロの時の磁束に対応)のに対して、そのような場合にも Berry 接続自体は有限になり、Zak 位相が有限となる場合が生じる(ベクトルポテンシャルがゼロでなければ値が残る可能性あり)。

この議論は磁場がない空間でもベクトルポテンシャルは有限になっており、その空間での波動関数に影響を及ぼしうるというアハラノフ=ボーム効果(AB 効果)のアナロジーとして理解できるとのこと。


*1 もっと簡単に書くと、あるベクトル $\bm v$ がノルムを変えず変化して $\bm v+\delta\bm v$ となったとすると、$$\begin{aligned}&\|\bm v\|^2=\|\bm v+\delta\bm v\|^2=\\&\|\bm v\|^2+2\,\text{Re}\,(\bm v,\delta\bm v)+\|\delta\bm v\|^2\end{aligned}$$2次の微少量を無視すると$$\,\text{Re}\,(\bm v,\delta\bm v)=0$$すなわち、$\delta\bm v$ の $\bm v$ 成分は純虚数でなければならない。ということ。

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