量子力学Ⅰ/不確定性原理 のバックアップソース(No.6)

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[[量子力学Ⅰ/波動関数の解釈]]

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* 不確定性原理 [#q23b2625]

これまでことある毎に「量子力学においては位置や運動量などの物理量は確率的にしか決まらない」
と言う話をしてきた。

ただしこれには例外があって、固有関数のところで学んだように、
ある物理量演算子の固有関数については(測定精度の問題を除いて)物理量が確定値を取るのであった。

例えば粒子が &math(x=x_0); に存在する、という状態は、

 &math(\varphi_{x=x_0}(x)=\delta(x-x_0));

であるから、この粒子に関しては &math(x); 座標は確定値を取る。
このデルタ関数を指数関数の積分表示に直せば、

 &math(
\varphi_{x=x_0}(x)=\frac{1}{2\pi}\int_{-\infty}^\infty e^{ik(x-x_0)} dk
);

となるから、この状態はあらゆる運動量 &math(p=\hbar k); の固有関数 &math(e^{ikx});
が均等な重みで重ね合わされた物になっていて、運動量の測定値は完全に不確定になる。

すなわち、&math(\sigma_x=0);、&math(\sigma_p=+\infty); となる。

逆に運動量が確定値 &math(p=p_0); を取る状態は、

 &math(\varphi_{p=p_0}(x)=e^{ip_0x/\hbar});

だが、このとき

 &math(|\varphi_{p=p_0}(x)|^2=1);

より、位置に対する確率密度は全空間で一定値を取り、
&math(x); 座標の測定値は完全に不確定になる。
(そのためこの関数は通常の意味では規格化できない)

すなわち、&math(\sigma_x=+\infty);、&math(\sigma_p=0); となる。

「不確定性原理」は上記のように、
「&math(x); と &math(p_x); が同時に正確に定まるような状態は存在しない」という原理である。

ただし、この言葉は3つの異なる意味で使われるため注意せよ。

+ &math(x); と &math(p_x); が両方とも正確に定まるような量子状態は存在しない
+ 粒子の &math(x); と &math(p_x); を両方とも正確に設定することはできない
+ 測定前の状態に対して &math(x); と &math(p_x); を両方とも正確に測定する手段が存在しない

1. について、計算の詳細は後述するとして、
シュレーディンガー方程式より導かれる結果は次のようになる。

 &math(
\sigma_x\cdot\sigma_{p_x} = 
\sqrt{\big\langle (x-\langle x\rangle)^2\big\rangle}
\sqrt{\big\langle (p_x-\langle p_x\rangle)^2\big\rangle} \ge \frac{\hbar}{2}
);

どんな波動関数に対してもこの不等式が成り立つことは、
そもそも電子自身が「上記の不等式以上に定まった位置や運動量を持つことがない」
ことを示している。

これは 2. と密接に関係していて、

3. は例えば、粒子の位置を測定するためにどんな優れた手法を採用したとしても、
その測定は粒子の運動量にある一定の撹乱を与えてしまうため、
続けて運動量を測定した際に誤差を生じる。
といった内容で、 1., 2. とは別の問題であるがしばしば混同されてきた。

実際、この不確定性原理はハイゼンベルグが提唱した物であるが、
当初彼が議論したのは位置 &math(x); を測定する際の測定誤差 &math(\epsilon_x); と、
その位置の測定により運動量 &math(p); が受ける撹乱 &math(\eta_p); の積 &math(\epsilon_x\eta_p); 
に関ついてであり、ハイゼンベルグの思考実験においては &math(\epsilon_x\eta_p\ge\hbar/2); 
が得られた。

1. で見た量子ゆらぎに関する不確定性  &math(\sigma_x\cdot\sigma_{p_x}\ge\hbar/2); と、~
3. で見た測定の及ぼす撹乱に関する不確定性 &math(\epsilon_x\eta_p\ge\hbar/2); とは長い間混同されてきたが、~
特に後者については測定のしかたによっては正しくなく、
上記の不等式を下回る実験が可能であることが近年報告されている。
((http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevA.67.042105))


* 不確定性原理の導出 [#g5fe668e]

定義より、

 &math(\sigma_x=\sqrt{\big\langle (x-\langle x\rangle)^2\big\rangle});

 &math(\sigma_p=\sqrt{\big\langle (p-\langle p\rangle)^2\big\rangle});

であるから、

 &math(
(\sigma_x\cdot\sigma_p)^2
=\sigma_x^2\sigma_p^2=\big\langle (x-\langle x\rangle)^2\big\rangle \big\langle (p-\langle p\rangle)^2\big\rangle
);

演算子 &math(\alpha=x-\langle x\rangle);、
&math(\beta=p-\langle p\rangle=-i\hbar\frac{d}{dx}-\langle p\rangle); を導入すると、
どちらもエルミートである。

これは、

 &math(\int \psi^*(x\psi)\,d\bm r=\int (x\psi)^*\psi\,d\bm r);

 &math(
\int \psi^*\hat p\psi)\,d\bm r
&=\int \psi^*(\frac{\hbar}{i}\frac{\PD}{\PD x}\psi)\,d\bm r\\
&=-\int \frac{\hbar}{i}\frac{\PD}{\PD x}\psi^*\psi\,d\bm r
+\underbrace{\Big[\psi^*\psi\Big]_{-\infty}^{+\infty}}_{=0}\\
&=\int \hat p^*\psi^*\psi\,d\bm r\\
&=\int (\hat p\psi)^*\psi\,d\bm r\\
);

より、&math(x,\hat p); がどちらもエルミートであることと、
定数もエルミートであること、エルミート同士の和がエルミートになること、から導かれる。

&math(\alpha,\beta); のエルミート性を用いることで、

 &math(
(\sigma_x\cdot\sigma_p)^2
&=\int \psi^*\alpha^2\psi\,dx\int \psi^*\beta^2\psi\,dx\\
&=\int (\alpha\psi)^*(\alpha\psi)\,dx\int (\beta\psi)^*(\beta\psi)\,dx\\
&=\int |\alpha\psi|^2\,dx\int |\beta\psi|^2\,dx\\
);

を得る。最後の積分を関数の内積として考えれば、それぞれ関数 &math(\alpha\psi); 
と &math(\beta\psi); のノルムの2乗を表わしている。
2つのベクトル &math(\bm x,\bm y); に対して一般に、

 &math(|\bm x|^2|\bm y|^2\ge|(\bm x,\bm y)|^2);

が成り立つから(シュバルツの不等式)、

 &math(
(\sigma_x\cdot\sigma_p)^2
&\ge\left|\int (\alpha\psi)^*(\beta\psi)\,dx\right|^2\\
&=\left|\int \psi^*\alpha\beta\psi\,dx\right|^2\\
&=\left|\int \psi^*\left(\frac{\alpha\beta-\beta\alpha}{2}+\frac{\alpha\beta+\beta\alpha}{2}\right)\psi\,dx\right|^2\\
&=\frac{1}{4}\left|\int \psi^*(\alpha\beta-\beta\alpha)\psi\,dx\right|^2
 +\frac{1}{4}\left|\int \psi^*(\alpha\beta+\beta\alpha)\psi\,dx\right|^2\\
);

と変形できる。最後の等式で落とした項は、

 &math(
&\phantom{+}
  \frac{1}{4}\left(\int \psi^*(\alpha\beta-\beta\alpha)\psi\,dx\right)^*
            \left(\int \psi^*(\alpha\beta+\beta\alpha)\psi\,dx\right)\\
&+\frac{1}{4}\left(\int \psi^*(\alpha\beta+\beta\alpha)\psi\,dx\right)^*
            \left(\int \psi^*(\alpha\beta-\beta\alpha)\psi\,dx\right)\\
&=\frac{1}{4}\int \psi(\alpha^*\beta^*-\beta^*\alpha^*)\psi^*\,dx
            \int \psi^*(\alpha\beta+\beta\alpha)\psi\,dx\\
&+\frac{1}{4}\int \psi(\alpha^*\beta^*+\beta^*\alpha^*)\psi^*\,dx
            \int \psi^*(\alpha\beta-\beta\alpha)\psi\,dx\\
&=\frac{1}{2}\int \psi(\alpha^*\beta^*\psi^*)\,dx
            \int \psi^*(\alpha\beta\psi)\,dx
 -\frac{1}{2}\int \psi(\beta^*\alpha^*\psi^*)\,dx
            \int \psi^*(\beta\alpha\psi)\,dx\\
&=\frac{1}{2}\int (\alpha\beta\psi)^*\psi\,dx
            \int \psi^*(\alpha\beta\psi)\,dx
 -\frac{1}{2}\int (\beta\alpha\psi)^*\psi\,dx
            \int \psi^*(\beta\alpha\psi)\,dx\\
&=\frac{1}{2}\int (\beta\psi)^*(\alpha\psi)\,dx
            \int \psi^*(\alpha\beta\psi)\,dx
 -\frac{1}{2}\int (\alpha\psi)^*(\beta\psi)\,dx
            \int \psi^*(\beta\alpha\psi)\,dx\\
&=\frac{1}{2}\int \psi^*(\beta\alpha\psi)\,dx
            \int \psi^*(\alpha\beta\psi)\,dx
 -\frac{1}{2}\int \psi^*(\alpha\beta\psi)\,dx
            \int \psi^*(\beta\alpha\psi)\,dx\\
&=0
);

となって消える。

&math(
(\alpha\beta-\beta\alpha)\psi
&= x\frac{\hbar}{i}\frac{\PD}{\PD x}\psi-\frac{\hbar}{i}\frac{\PD}{\PD x}(x\psi)\\
&= x\frac{\hbar}{i}\frac{\PD}{\PD x}\psi-x\frac{\hbar}{i}\frac{\PD}{\PD x}(x\psi)-\frac{\hbar}{i}\psi\\
&= -\frac{\hbar}{i}\psi\\
);

より、

 &math(
(\sigma_x\cdot\sigma_p)^2
&\ge\frac{1}{4}\left|\int \psi^*(i\hbar)\psi\,dx\right|^2
 +\frac{1}{4}\left|\int \psi^*(\alpha\beta+\beta\alpha)\psi\,dx\right|^2\\
&\ge\frac{\hbar^2}{4}
 +\frac{1}{4}\left|\int \psi^*(\alpha\beta+\beta\alpha)\psi\,dx\right|^2\\
&\ge\frac{\hbar^2}{4}
);

すなわち、

 &math(\sigma_x\cdot\sigma_p\ge\frac{\hbar}{2});

を得る。

** 波動関数から理解する不確定性の意味 [#d6a6e62e]

運動量の標準偏差がゼロであるような波動関数はどのようなものであろうか?

&math(\hat p-\langle p\rangle); がエルミートであることを用いて式変形すれば、

 &math(
\sigma_p^2
&=\iiint\psi^*\left(\hat p-\langle p\rangle\right)^2\psi\,d\bm r\\
&=\iiint\left(\hat p\psi-\langle p\rangle\psi\right)^*
        \left(\hat p\psi-\langle p\rangle\psi\right)\,d\bm r\\
&=\iiint\left|\hat p\psi-\langle p\rangle\psi\right|^2\,d\bm r\\
&=0
);

となり、すなわち至る所で

 &math(\hat p\psi=\frac{\hbar}{i}\frac{\PD\psi}{\PD x}=\langle p\rangle\psi);

が要求される。これは、

 &math(\psi(\bm x,t)=\psi(\bm 0,t)e^{i\langle p\rangle x/\hbar});

を表わしており、このとき &math(|\psi(\bm x,t)|^2=|\psi(\bm 0,t)|^2); となり
波動関数の絶対値は &math(x); によらず一定値を取る。すなわち波動関数は &math(x); の全範囲に広がってしまう。

** 最小波束 [#y416874e]

2つの不等号で等号が成り立つ条件は、

+ シュバルツの不等式で2つのベクトルが平行であること~
すなわち &math(\gamma); を定数として &math(\alpha\psi=\gamma\beta\psi);
+ &math(\int \psi^*(\alpha\beta+\beta\alpha)\psi\,dx=0);

1. より、

 &math(
(x-<x>)\psi=\gamma(\frac{\hbar}{i}\frac{\PD}{\PD x}-<p>)\psi
);

 &math(
\frac{\PD\psi}{\PD x}=\frac{i}{\hbar}\left(\frac{x-<x>}{\gamma}+<p>\right)\psi
);

 &math(
\psi(x,t)=\psi_0e^{\frac{i}{\hbar}\left(\frac{(x-<x>)^2}{2\gamma}+<p>x\right]}
);

また、1. の式を 2. に代入すれば、

&math(
0&=\int \psi^*\frac{\alpha^2}{\gamma}\psi\,dx+\int (\beta\psi)^*\alpha\psi\,dx\\
&=\int \psi^*\frac{\alpha^2}{\gamma}\psi\,dx+\int (\frac{\alpha}{\gamma}\psi)^*\alpha\psi\,dx\\
&=\left(\frac{1}{\gamma}+\frac{1}{\gamma^*}\right)\int \alpha^2|\psi|^2\,dx\\
);

&math(\int \alpha^2|\psi|^2\,dx>0); より、&math(1/\gamma+1/\gamma^*=0); 
すなわち &math(\gamma+\gamma^*=0); となり、&math(\gamma); は純虚数でなければならない。

&math(x); の絶対値が大きいところで &math(\psi); が有限となるためには
&math(\gamma); は負の虚数でなければならない。
実際、&math(\gamma=-2i\sigma_x^2/\hbar);、&math(\psi_0=1/\sqrt{2\pi\sigma_x^2}); とすることにより

 &math(
\psi(x,t)=\frac{1}{\sqrt{2\pi\sigma_x^2}}\exp\left[\frac{(x-\langle x\rangle)^2}{4\sigma_x^2}+\frac{i\langle p\rangle}{\hbar}x\right]
);

が得られ、この式は &math(\sigma_x^2 = \langle \alpha^2\rangle); を満足する、
規格化された波動関数を与える。

* 要検討 [#n66e6b52]

http://www.phys.asa.hokkyodai.ac.jp/osamu/lectures/qm/node31.html

のような技巧的な証明の方が簡単か?

* 観測の不確定性 [#x4da8807]

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