量子力学Ⅰ/水素原子 のバックアップの現在との差分(No.10)

更新


  • 追加された行はこの色です。
  • 削除された行はこの色です。
[[前の単元 <<<>量子力学Ⅰ/角運動量の固有関数]]
[[前の単元 <<<>量子力学Ⅰ/球面調和関数]]
             [[量子力学Ⅰ]]             
[[>>> 次の単元>量子力学Ⅰ/球対称井戸型ポテンシャル]]~

* 概要 [#g9171a84]

#contents

水素様ポテンシャル内での電子の運動を考える。

#contents
&mathjax();

* 水素原子 [#t0f489c6]

動径方向のシュレーディンガー方程式:

 &math(
-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\PD^2}{dr^2}rR(r)+
\underbrace{\left\{V(r)+\frac{\hbar^2}{2m}\frac{l(l+1)}{r^2}\right\}}_{V'(r)}
rR(r)=\varepsilon rR(r)
);

正規直交関係:

 &math(
\int_0^\infty \big\{rR'(r)\big\}^*\big\{rR(r)\big\}\,dr=1
);

&math(rR(r)); に関する条件は、正規直交性の積分範囲が &math((-\infty,\infty)); 
から &math([0,\infty)); になったことを除けば、
&math(V(r)); と遠心力とを加えた仮想的なポテンシャル 
&math(V'(r)); の中を運動する粒子の
一次元シュレーディンガー方程式と一致する。

水素原子の原子核の電荷は &math(e); であるが、
ここでは少し一般化して電荷を &math(Ze); として解こう。
また、原子核の質量は電子の質量に比べてずっと大きいので、
原子核は原点で静止していると考える。((正確に解くのであれば電子の位置を表すのに重心から測った相対座標を用い、&math(m); を換算質量で置き換えればよく、問題の本質は変わらない。))
原子核は原点で静止していると考える。((正確に解くのであれば、電子の位置を表すのに核と電子の重心を原点とする相対座標を用い、さらに &math(m); を換算質量で置き換えればよい。このとき問題の本質は変わらない。))

 &math(V(r)=-\frac{1}{4\pi\epsilon_0}\frac{Ze^2}{r});

エネルギーを表す &math(\varepsilon); と区別するために、真空の誘電率を &math(\epsilon_0); と書いていることに注意せよ。&math(({\LARGE\varepsilon\leftrightarrow\epsilon}));

まず、長さを無次元化するため 

 &math(\rho=Z\frac{r}{a_0}); 

と置き、
これを用いて &math(rR(r)=\chi(\rho)); と書こう。
ただし &math(a_0=\frac{4\pi\epsilon_0\hbar^2}{e^2m}=5.29177\times 10^{-11}\,\mathrm{m}); 
はボーア半径と呼ばれ、後に見るように &math(Z=1); つまり水素原子の基底状態は &math(R(r)\propto e^{-r/a_0}); となる。
すると方程式は、
と置く。ただし &math(a_0=\frac{4\pi\epsilon_0\hbar^2}{e^2m}=5.29177\times 10^{-11}\,\mathrm{m}); 
はボーア半径と呼ばれる。

後に見るように &math(Z=1); つまり水素原子の基底状態は &math(R(r)\propto e^{-r/a_0}); となるから、&math(a_0); は水素の大きさ程度の長さである。

これを用いて &math(rR(r)=\chi(\rho)); と書くと動径方向の方程式は、

 &math(
\frac{\PD^2\chi}{\PD\rho^2}+\left\{\frac{2}{\rho}-\frac{l(l+1)}{\rho^2}\right\}\chi+\eta\chi=0
);

のように単純化できる。
ただし、&math(\eta=\varepsilon/\varepsilon_0); 

ここで、&math(\eta=\varepsilon/\varepsilon_0); 
であり、後に見るように &math(-\varepsilon_0=-Z^2\left(\frac{e^2}{4\pi\epsilon_0}\right)^2\frac{m}{2\hbar^2}); 
が系の基底状態のエネルギーとなる。
ポテンシャルエネルギーが &math(Z); 倍になると、より強い引力により電子が原子核の近くに分布するようになることと合わさって、系のエネルギーは &math(Z^2); 倍になる。
は系の基底状態のエネルギーとなる。

ポテンシャルエネルギーが &math(Z); 倍になると、より強い引力により &math(\rho=Z\frac{r}{a_0}); のように電子と原子核の距離は &math(1/Z); 倍になり、それに伴い系のエネルギーは &math(Z^2); 倍になる。

調和振動子の時と同様に &math(\chi(\rho)=e^{-\rho/n}\sum c_k\rho^k); 
と置いて方程式に代入し、係数 &math(c_k); に対する条件を検討することにより、

 &math(\eta=-\frac{1}{n^2});  (ただし &math(n); は &math(n>l); の整数)

となるときのみ解が存在することを示せる。→ [[詳しくはこちら>@量子力学Ⅰ/水素原子/メモ]]

このとき、

 &math(\varepsilon_n=-\varepsilon_0\frac{1}{n^2});

と表わせ、系のエネルギーは &math(l); にはよらず &math(n); だけで決まる。

- &math(l); 角運動量量子数(包囲量子数)
- &math(l); 角運動量量子数(方位量子数)
- &math(m); 磁気量子数
- &math(n); 主量子数 ← new!

&math(l); に対する縮退はクーロンポテンシャルに特有の物である。
先に見たように &math(l); は角運動量を表わすから、&math(l); が大きくなれば運動エネルギーが大きくなる。
しかしここでは、ちょうどその変化を打ち消すようにポテンシャルエネルギーが低下するために、
しかし後に見る理由から、ちょうどその変化を打ち消すようにポテンシャルエネルギーが低下するために、
異なる &math(l); を持つ状態のエネルギーが縮退している。
ポテンシャル形状がクーロン相互作用と少しでも違えばこの縮退は解け、
異なる &math(l); に属する状態は異なるエネルギーを持つようになる。

|CENTER:|CENTER:|CENTER:|CENTER:|CENTER:|CENTER:|c
| n | l | m |名称|縮退度(水素)|縮退度(一般)|
|1|0|0| 1s |1|1|
|2|0|0|2s|4|1|
|~|1|-1,0,1|2p|~|3|
|3|0|0|3s|9|1|
|~|1|-1,0,1|3p|~|3|
|~|2|-2,-1,0,1,2|3d|~|5|
|4|0|0|4s|16|1|
|~|1|-1,0,1|4p|~|3|
|~|2|-2,-1,0,1,2|4d|~|5|
|~|3|-3,-2,-1,0,1,2,3|4f|~|7|

例えば、1つの原子核の周りを複数の電子が回る状況において、
個々の電子が感じるポテンシャルエネルギーを平均場近似で扱う場合には、
原子核からのポテンシャルは他の電子の存在によって遮蔽されるため、
純粋なクーロンポテンシャルよりも早く減衰すると考えられる。
こうして &math(l); に対する縮退が解けるために、
現実の原子では &math(l); の異なる電子軌道は異なるエネルギーを持つことになる。
水素原子ではほぼ完全なクーロンポテンシャルを考えれば良いが、
電子を複数持つヘリウム以上の原子では、1つの電子は原子核からのポテンシャルの他に
他の電子からのポテンシャルも感じながら運動する。
他の電子からのポテンシャルは原子核からのポテンシャルを遮蔽するよう働くため、
純粋なクーロンポテンシャルよりも早く減衰することになる。
こうして &math(l); に対する縮退が解け、
現実の原子では &math(l); の異なる電子軌道は異なるエネルギーを持つ。

一方、量子数 &math(m); はそもそも方程式に現れないため、
&math(m); のみが異なる &math(2l+1); 個の状態は
ポテンシャルエネルギーが中心対称である限り、その具体的な形状によらず縮退している。
物理的には、エネルギーは回転速度(= 各運動量の大きさ &math(|\bm l|);)によって変化しうるが、
回転軸の方向(= &math(m); で決まる)には寄らないということであり、
これは系が等方的(= 中心対象)であることに対応する。

* 正規化条件 [#vc79835b]

&math(\rho); で表した正規直交性は、

 &math(
\int_0^\infty \big\{rR'(r)\big\}^*\big\{rR(r)\big\}\,dr
&=\int_0^\infty {\chi'\big(\rho(r)\big)}^*\chi\big(\rho(r)\big)\,dr\\
&=\frac{a_0}{Z}\int_0^\infty {\chi'(\rho)}^*\chi(\rho)\,d\rho\\
&=\int_0^\infty \Big\{\sqrt{\frac{a_0}{Z}}\chi'(\rho)\Big\}^*\Big\{\sqrt{\frac{a_0}{Z}}\chi(\rho)\Big\}\,d\rho\\
&=1);

となる。

* 具体的な解の形 [#f2d8c7df]

&math(n=1); のとき、

  &math(l=0); であれば &math(\sqrt{\frac{a^0}{Z}}\chi_{1s}(\rho)=2\rho e^{-\rho});
  &math(l=0); であれば &math(\sqrt{\frac{a_0}{Z}}\chi_{1s}(\rho)=2\rho e^{-\rho}\hspace{2mm}\to\hspace{2mm}R_{1s}=\left(\frac{Z}{a_0}\right)^{3/2}2e^{-Zr/a_0});

&math(n=2); のとき、

  &math(l=0); であれば &math(\sqrt{\frac{a^0}{Z}}\chi_{2s}(\rho)=\frac{1}{\sqrt 2}\left[\rho-\frac{1}{2}\rho^2 \right]e^{-\rho/2});
  &math(l=0); であれば &math(\sqrt{\frac{a_0}{Z}}\chi_{2s}(\rho)=\frac{1}{\sqrt 2}\left[1-\frac{1}{2}\rho \right]\rho e^{-\rho/2}\hspace{2mm}\to\hspace{2mm}R_{2s}=\left(\frac{Z}{a_0}\right)^{3/2}\frac{1}{\sqrt 2}\left[1-\frac{1}{2}\left(\frac{Zr}{a_0}\right)\right]e^{-Zr/2a_0});

  &math(l=1); であれば &math(\sqrt{\frac{a^0}{Z}}\chi_{2p}(\rho)=\frac{1}{2\sqrt 6}\rho^2e^{-\rho/2});
  &math(l=1); であれば &math(\sqrt{\frac{a_0}{Z}}\chi_{2p}(\rho)=\frac{1}{2\sqrt 6}\rho^2e^{-\rho/2}\hspace{2mm}\to\hspace{2mm}R_{2p}=\left(\frac{Z}{a_0}\right)^{3/2}\frac{1}{2\sqrt 6}\left(\frac{Zr}{a_0}\right)e^{-Zr/2a_0});

&math(n=3); のとき、

  &math(l=0); であれば &math(\sqrt{\frac{a^0}{Z}}\chi_{3s}(\rho)=\frac{2}{3\sqrt{3}}\left[\rho-\frac{2}{3}\rho^2+\frac{2}{27}\rho^3 \right]e^{-\rho/3});
  &math(l=0); であれば &math(\sqrt{\frac{a_0}{Z}}\chi_{3s}(\rho)=\frac{2}{3\sqrt{3}}\left[1-\frac{2}{3}\rho+\frac{2}{27}\rho^2 \right]\rho e^{-\rho/3});

  &math(l=1); であれば &math(\sqrt{\frac{a^0}{Z}}\chi_{3p}(\rho)=\frac{8}{27\sqrt{6}}\left[\rho^2-\frac{1}{6}\rho^3 \right]e^{-\rho/3});
  &math(l=1); であれば &math(\sqrt{\frac{a_0}{Z}}\chi_{3p}(\rho)=\frac{8}{27\sqrt{6}}\left[\rho-\frac{1}{6}\rho^2 \right]\rho e^{-\rho/3});

  &math(l=2); であれば &math(\sqrt{\frac{a^0}{Z}}\chi_{3d}(\rho)=\frac{4}{81\sqrt{30}}\rho^3e^{-\rho/3});
  &math(l=2); であれば &math(\sqrt{\frac{a_0}{Z}}\chi_{3d}(\rho)=\frac{4}{81\sqrt{30}}\rho^3e^{-\rho/3});

&math(n=4); のとき、

  &math(l=0); であれば &math(\sqrt{\frac{a^0}{Z}}\chi_{4s}(\rho)=\frac{1}{4}\left[\rho-\frac{3}{4}\rho^2+\frac{1}{8}\rho^3-\frac{1}{192}\rho^4 \right]e^{-\rho/4});
  &math(l=0); であれば &math(\sqrt{\frac{a_0}{Z}}\chi_{4s}(\rho)=\frac{1}{4}\left[1-\frac{3}{4}\rho+\frac{1}{8}\rho^2-\frac{1}{192}\rho^3 \right]\rho e^{-\rho/4});

  &math(l=1); であれば &math(\sqrt{\frac{a^0}{Z}}\chi_{4p}(\rho)=\frac{\sqrt 5}{16\sqrt{3}}\left[\rho^2-\frac{1}{4}\rho^3+\frac{1}{80}\rho^4 \right]e^{-\rho/4});
  &math(l=1); であれば &math(\sqrt{\frac{a_0}{Z}}\chi_{4p}(\rho)=\frac{\sqrt 5}{16\sqrt{3}}\left[\rho-\frac{1}{4}\rho^2+\frac{1}{80}\rho^3 \right]\rho e^{-\rho/4});

  &math(l=2); であれば &math(\sqrt{\frac{a^0}{Z}}\chi_{4d}(\rho)=\frac{1}{64\sqrt{5}}\left[\rho^3-\frac{1}{12}\rho^4 \right]e^{-\rho/4});
  &math(l=2); であれば &math(\sqrt{\frac{a_0}{Z}}\chi_{4d}(\rho)=\frac{1}{64\sqrt{5}}\left[\rho^2-\frac{1}{12}\rho^3 \right]\rho e^{-\rho/4});

  &math(l=3); であれば &math(\sqrt{\frac{a^0}{Z}}\chi_{4f}(\rho)=\frac{1}{768\sqrt{35}}\rho^4e^{-\rho/4});
  &math(l=3); であれば &math(\sqrt{\frac{a_0}{Z}}\chi_{4f}(\rho)=\frac{1}{768\sqrt{35}}\rho^4e^{-\rho/4});

* 体積あたりの確率密度 [#d695a2df]

上記を &math(R(r)); に直した式は教科書((裳華房 基礎物理学選書 「量子力学(I)」小出昭一郎 著))の P101 に載っている。
&math(R_n{}^l(r)); は、

- &math(R_n{}^l(r)); の多項式部分は &math(n-1); 次関数である
- &math(R_n{}^l(r)=0); の解を考えれば
-- &math(r=0); が &math(l); 重根となっており、
-- &math(r>0); に残りの &math(n-1-l); 個の根を持つ
 &math(R_n{}^l(r)=\Big[rのn-1次多項式\Big]e^{-Zr/na_0});

したがって、&math(|R(r)|); のグラフは下図左のようになる。(縦軸は s 状態は &math(r=a_0); の値で、それ以外は最大値で規格化した)
の形をしており、&math(R_n{}^l(r)=0); の解を考えれば

この &math(|R(r)|); を二乗した &math(|R(r)|^2); が体積あたりの電子の確率密度に比例する。
&math(|R(r)|); は常に原点あるいは原点に一番近い山において最大値を取ることが分かる。
- &math(r=0); が &math(l); 重根となっており、
-- &math(l>0); に対しては &math(R_n{}^l(r)=0);
-- &math(l=0); に対しては &math(R_n{}^0(r)\ne 0); の有限値
- &math(r>0); に残りの &math(n-1-l); 個の根を持つ

したがって、&math(|R(r)|^2); のグラフは下図左のようになる。(縦軸は s 状態は &math(r=a_0); の値で、それ以外は最大値で規格化した。s 状態は &math(r=0); で大きな値を取るが、上記の通り有限であり、発散するわけではない。)

この &math(|R(r)|^2); は体積あたりの電子の確率密度に比例する。
体積あたりの確率密度は常に原点あるいは原点に一番近い山において最大値を取ることが分かる。

&attachref(hydrogen.png,,33%);

* 半径あたりの確率密度 [#hc1431de]

一方、電子がどのくらいの半径の箇所に高確率で見いだせるか、
を考る場合には、その確率分布は &math(4\pi r^2|R(r)|^2); である。
半径 &math(r\sim r+dr); の球殻の体積が &math(4\pi r^2dr); であることに注意せよ。
を考る場合には、その確率分布は &math(|r^2R(r)|^2); である(動径分布関数と呼ばれる)。

これは、半径 &math(r); から &math(r+dr); の範囲に粒子を見出す確率を計算すると、

 &math(
&\int_r^{r+dr} r^2dr\int_0^\pi\sin\theta\,d\theta\int_0^{2\pi}d\phi\,|\varphi(r,\theta,\phi)|^2\\
&=\int_r^{r+dr} |R(r)|^2 r^2dr\underbrace{\int_0^\pi|\Theta(\theta)|^2\sin\theta\,d\theta}_{=\,1}\underbrace{\int_0^{2\pi}|\Phi(\phi)|^2d\phi}_{=\,1}\\[-3mm]
&=|rR(r)|^2\,dr\\
);

となることにより確認できる。

動径方向のシュレーディンガー方程式が、&math(R(r)); の方程式ではなく、
&math(rR(r)); の方程式となっていたのは、動径分布関数が &math(|rR(r)|^2); 
であることに対応していたのである。
すなわち、$R(r)$ ではなく $rR(r)$ こそが動径方向の「一次元波動関数」としての役割を持つ。

&math(|R(r)|); が常に原点付近で最大値を取るのに対して、
&math(r^2|R(r)|^2); は原点から最も遠い &math(n-1-l); 
個目の根の外側の部分で最大値を取ることが分かる。

半径の関数として表される物理量、たとえばポテンシャルエネルギーや、
運動エネルギーの期待値を求める際にはこちらの確率密度が役に立つ。
* 量子数 $n$ の意味 [#z46f54fd]

例えば 2s と 2p について &math(|rR|^2); のグラフを比較すると、2p の方が内側に寄っている。~
角運動量が大きければ遠心力で外へ寄るはずなのに、なぜだろうか?~
→ 実は、同じ &math(n); で比較することに無理がある。

&math(r); を変数とする波動関数に「山」の数が多い(波数が大きい)ことは、&math(r); 方向の運動量が大きいことに対応する。

- 一山:1s, 2p, 3d, 4f, ...
- 二山:2s, 3p, 4d, ...
- ...

そこで、山の数が同じもの(&math(r); 方向の運動量が同じもの)同士で比べれば、&math(l); 
が大きくなるほど外側へシフトする、という期待通りの結果になっている。
同様に、同じ角運動量を持つ状態同士を比べれば、$r$ 方向の運動量が大きくなるに伴い、$r$ 方向の「振幅」が大きくなるために軌道は原子核から遠ざかり、クーロンエネルギーも大きくなることが分かる。

&attachref(hydrogen2.png);

すなわち、基底状態(1s)から、
- &math(r); 方向の運動量を1単位増やしたのが 2s 軌道
- 角運動量を1単位増やしたのが 2p 軌道~
~
- &math(r); 方向を2単位増やしたのが 3s 軌道
- &math(r); 方向を1単位、角運動量を1単位増やしたのが 3p 軌道
- 角運動量を2単位増やしたのが 3d 軌道~
~
- ...

などとなっていて、クーロンポテンシャルに対してはたまたま &math(r); 
方向の運動量に対するエネルギー増加と角運動量に対するエネルギー増加が等しいため、
&math(n); の等しい順位が縮退しているのだ。

ここで、量子数の付け方には任意性があることに注意せよ。

例えば &math(n'=n-l); と定義すれば、&math(n'); は &math(r); 
方向の運動量に対応する量になるから、この &math(n'); 
を量子数としても形式上は問題ないし、むしろ物理的には分かりやすい。

- &math(n'=n-l);: &math(r); 方向の運動量の大きさを表す量子数
- &math(l);: 角運動量の大きさを表す量子数
- &math(m);: &math(z); 軸周りの角運動量を表す量子数

しかし、原子核周りの電子軌道に対しては慣例として、
常に上記で定義された &math(n); が量子数として用いられるため、
これに慣れておく必要がある。

逆に、以下にも見るとおり原子核周りの電子軌道以外の系では
&math(n); でなく &math(n'); を量子数と取ることが普通に行われるため、
混乱しないようにせよ。

** クーロンポテンシャルでない場合 [#i23d450f]

[[量子力学Ⅰ/球対称井戸型ポテンシャル]] で見るように、
球形の井戸型ポテンシャルに対しては、
&math(n'); に比べて、&math(l); に対するエネルギーの増加が小さくなり、
&math(l); に対する縮退が解ける。

これは、クーロンポテンシャルでは &math(l); すなわち角運動量の増加による遠心力のために軌道が原点から遠くへ移動すると、クーロンポテンシャルによるエネルギー増加があったが、箱型ポテンシャルにおいては角運動量の増加は運動エネルギーの増加としてしか寄与しないためである。

[[量子力学Ⅰ/3次元調和振動子]] で見るように、調和振動子ポテンシャルでは
&math(n'); の増加は、&math(l); の増加の2倍のエネルギーの増加を伴うため、
やはり &math(l); に対する縮退が解ける。

代わりに &math(n'+2l); が等しい、すなわち &math(n+l); が等しい状態が縮退することになる。

* 演習:半径に対する確率密度 [#pab093b5]

半径 &math(r); を &math(a_0/Z); を単位に測った場合、&math(R_{2s}(r)); は次のように表せる。

 &math(
R_{2s}(r)=\frac{1}{\sqrt{2}}\left(1-r/2\right)e^{-r/2}
);

(1) &math(|rR_{2s}(r)|^2); が極値を取る &math(r); の値を求めよ。

(2) (1) で求めた &math(r); に対して実際に極値を求め、
&math(|rR_{2s}(r)|^2); が最大値を取る &math(r); の値を求めよ。~
ただしここでは &math(\sqrt{5}\simeq 2, e^4\simeq 55); の近似で評価すれば十分である。

(3) &math(r); の期待値を求めよ。&math(\int_0^\infty r^ne^{-r}dr=n!); を用いてよい。

[[答えはこちら>@量子力学Ⅰ/水素原子/メモ#p9d25d32]]

** 解説 [#acfa9fb0]

通常のスケールでは、最大値を取る &math(r_\mathrm{max}); は 

 &math(r_\mathrm{max}=\frac{a_0}{Z}\cdot (3+\sqrt 5)\simeq\frac{a_0}{Z}\cdot 5.236);

一方、

 &math(\langle r\rangle=\frac{a_0}{Z}\cdot 6);

であり、両者はぴったり一致するわけではないが近い値を取ることが分かる。

~
&attachref(r2s.png,,50%);

~
[[前の単元 <<<>量子力学Ⅰ/角運動量の固有関数]]
[[前の単元 <<<>量子力学Ⅰ/球面調和関数]]
             [[量子力学Ⅰ]]             
[[>>> 次の単元>量子力学Ⅰ/球対称井戸型ポテンシャル]]~

* 質問・コメント [#jefab28c]

#article_kcaptcha


Counter: 18906 (from 2010/06/03), today: 13, yesterday: 0