量子力学Ⅰ/水素原子 のバックアップソース(No.8)
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* 目次 [#g9171a84] [[量子力学Ⅰ]] #contents &mathjax(); * 水素原子 [#t0f489c6] 動径方向のシュレーディンガー方程式: &math( -\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\PD^2}{dr^2}rR(r)+ \underbrace{\left\{V(r)+\frac{\hbar^2}{2m}\frac{l(l+1)}{r^2}\right\}}_{V'(r)} rR(r)=\varepsilon rR(r) ); 正規直交関係: &math( \int_0^\infty \big\{rR'(r)\big\}^*\big\{rR(r)\big\}\,dr=1 ); &math(rR(r)); に関する条件は、正規直交性の積分範囲が &math((-\infty,\infty)); から &math([0,\infty)); になったことを除けば、 &math(V(r)); と遠心力とを加えた仮想的なポテンシャル &math(V'(r)); の中を運動する粒子の 一次元シュレーディンガー方程式と一致する。 水素原子の原子核の電荷は &math(e); であるが、 ここでは少し一般化して電荷を &math(Ze); として解こう。 また、原子核の質量は電子の質量に比べてずっと大きいので、 原子核は原点で静止していると考える。((正確に解くのであれば電子の位置を表すのに重心から測った相対座標を用い、&math(m); を換算質量で置き換えればよく、問題の本質は変わらない。)) &math(V(r)=-\frac{1}{4\pi\epsilon_0}\frac{Ze^2}{r}); まず、長さを無次元化するため &math(\rho=Z\frac{r}{a_0}); と置き、 これを用いて &math(rR(r)=\chi(\rho)); と書こう。 ただし &math(a_0=\frac{4\pi\epsilon_0\hbar^2}{e^2m}=5.29177\times 10^{-11}\,\mathrm{m}); はボーア半径と呼ばれ、後に見るように &math(Z=1); つまり水素原子の基底状態は &math(R(r)\propto e^{-r/a_0}); となる。 すると方程式は、 &math( \frac{\PD^2\chi}{\PD\rho^2}+\left\{\frac{2}{\rho}-\frac{l(l+1)}{\rho^2}\right\}\chi+\eta\chi=0 ); のように単純化できる。 ただし、&math(\eta=\varepsilon/\varepsilon_0); であり、後に見るように &math(-\varepsilon_0=-Z^2\left(\frac{e^2}{4\pi\epsilon_0}\right)^2\frac{m}{2\hbar^2}); が系の基底状態のエネルギーとなる。 ポテンシャルエネルギーが &math(Z); 倍になると、より強い引力により電子が原子核の近くに分布するようになることと合わさって、系のエネルギーは &math(Z^2); 倍になる。 調和振動子の時と同様に &math(\chi(\rho)=e^{-\rho/n}\sum c_k\rho^k); と置いて方程式に代入し、係数 &math(c_k); に対する条件を検討することにより、 &math(\eta=-\frac{1}{n^2}); (ただし &math(n); は &math(n>l); の整数) となるときのみ解が存在することを示せる。→ [[詳しくはこちら>@量子力学Ⅰ/水素原子/メモ]] このとき、 &math(\varepsilon_n=-\varepsilon_0\frac{1}{n^2}); と表わせ、系のエネルギーは &math(l); にはよらず &math(n); だけで決まる。 &math(l); に対する縮退はクーロンポテンシャルに特有の物である。 先に見たように &math(l); は角運動量を表わすから、&math(l); が大きくなれば運動エネルギーが大きくなる。 しかしここでは、ちょうどその変化を打ち消すようにポテンシャルエネルギーが低下するために、 異なる &math(l); を持つ状態のエネルギーが縮退している。 ポテンシャル形状がクーロン相互作用と少しでも違えばこの縮退は解け、 異なる &math(l); に属する状態は異なるエネルギーを持つようになる。 |CENTER:|CENTER:|CENTER:|CENTER:|CENTER:|CENTER:|c | n | l | m |名称|縮退度(水素)|縮退度(一般)| |1|0|0| 1s |1|1| |2|0|0|2s|4|1| |~|1|-1,0,1|2p|~|3| |3|0|0|3s|9|1| |~|1|-1,0,1|3p|~|3| |~|2|-2,-1,0,1,2|3d|~|5| |4|0|0|4s|16|1| |~|1|-1,0,1|4p|~|3| |~|2|-2,-1,0,1,2|4d|~|5| |~|3|-3,-2,-1,0,1,2,3|4f|~|7| 例えば、1つの原子核の周りを複数の電子が回る状況において、 個々の電子が感じるポテンシャルエネルギーを平均場近似で扱う場合には、 原子核からのポテンシャルは他の電子の存在によって遮蔽されるため、 純粋なクーロンポテンシャルよりも早く減衰すると考えられる。 こうして &math(l); に対する縮退が解けるために、 現実の原子では &math(l); の異なる電子軌道は異なるエネルギーを持つことになる。 一方、量子数 &math(m); はそもそも方程式に現れないため、 &math(m); のみが異なる &math(2l+1); 個の状態は ポテンシャルエネルギーが中心対称である限り、その具体的な形状によらず縮退している。 * 正規化条件 [#vc79835b] &math(\rho); で表した正規直交性は、 &math( \int_0^\infty \big\{rR'(r)\big\}^*\big\{rR(r)\big\}\,dr &=\int_0^\infty {\chi'\big(\rho(r)\big)}^*\chi\big(\rho(r)\big)\,dr\\ &=\frac{a_0}{Z}\int_0^\infty {\chi'(\rho)}^*\chi(\rho)\,d\rho\\ &=\int_0^\infty \Big\{\sqrt{\frac{a_0}{Z}}\chi'(\rho)\Big\}^*\Big\{\sqrt{\frac{a_0}{Z}}\chi(\rho)\Big\}\,d\rho\\ &=1); となる。 * 具体的な解の形 [#f2d8c7df] &math(n=1); のとき、 &math(l=0); であれば &math(\sqrt{\frac{a^0}{Z}}\chi_{1s}(\rho)=2\rho e^{-\rho}); &math(n=2); のとき、 &math(l=0); であれば &math(\sqrt{\frac{a^0}{Z}}\chi_{2s}(\rho)=\frac{1}{\sqrt 2}\left[\rho-\frac{1}{2}\rho^2 \right]e^{-\rho/2}); &math(l=1); であれば &math(\sqrt{\frac{a^0}{Z}}\chi_{2p}(\rho)=\frac{1}{2\sqrt 6}\rho^2e^{-\rho/2}); &math(n=3); のとき、 &math(l=0); であれば &math(\sqrt{\frac{a^0}{Z}}\chi_{3s}(\rho)=\frac{2}{3\sqrt{3}}\left[\rho-\frac{2}{3}\rho^2+\frac{2}{27}\rho^3 \right]e^{-\rho/3}); &math(l=1); であれば &math(\sqrt{\frac{a^0}{Z}}\chi_{3p}(\rho)=\frac{8}{27\sqrt{6}}\left[\rho^2-\frac{1}{6}\rho^3 \right]e^{-\rho/3}); &math(l=2); であれば &math(\sqrt{\frac{a^0}{Z}}\chi_{3d}(\rho)=\frac{4}{81\sqrt{30}}\rho^3e^{-\rho/3}); &math(n=4); のとき、 &math(l=0); であれば &math(\sqrt{\frac{a^0}{Z}}\chi_{4s}(\rho)=\frac{1}{4}\left[\rho-\frac{3}{4}\rho^2+\frac{1}{8}\rho^3-\frac{1}{192}\rho^4 \right]e^{-\rho/4}); &math(l=1); であれば &math(\sqrt{\frac{a^0}{Z}}\chi_{4p}(\rho)=\frac{\sqrt 5}{16\sqrt{3}}\left[\rho^2-\frac{1}{4}\rho^3+\frac{1}{80}\rho^4 \right]e^{-\rho/4}); &math(l=2); であれば &math(\sqrt{\frac{a^0}{Z}}\chi_{4d}(\rho)=\frac{1}{64\sqrt{5}}\left[\rho^3-\frac{1}{12}\rho^4 \right]e^{-\rho/4}); &math(l=3); であれば &math(\sqrt{\frac{a^0}{Z}}\chi_{4f}(\rho)=\frac{1}{768\sqrt{35}}\rho^4e^{-\rho/4}); * 体積あたりの確率密度の $r$ 依存性 [#d695a2df] 上記を &math(R(r)); に直した式は教科書((裳華房 基礎物理学選書 「量子力学(I)」小出昭一郎 著))の P101 に載っている。 - &math(R_n{}^l(r)); の多項式部分は &math(n-1); 次関数である - &math(R_n{}^l(r)=0); の解を考えれば -- &math(r=0); が &math(l); 重根となっており、 -- &math(r>0); に残りの &math(n-1-l); 個の根を持つ したがって、&math(|R(r)|); のグラフは次のようになる。((縦軸は s 状態は &math(r=a_0); の値で、それ以外は最大値で規格化した)) &attachref(Hydrogen.png,,33%); - s 状態: -- 1s は &math(r=0); から単調減少 -- 2s は &math(r=0); から減少するが1つ節を持つ -- 3s は &math(r=0); から減少するが2つ節を持つ -- 4s は &math(r=0); から減少するが3つ節を持つ -- ... - p 状態 -- 2p は &math(r=0); から線形に立ち上がり、ピーク後単調減少 -- 3p は &math(r=0); から線形に立ち上がり、ピーク後減少するが1つ節を持つ -- 4p は &math(r=0); から線形に立ち上がり、ピーク後減少するが2つ節を持つ -- ... - d 状態 -- 3d は &math(r=0); から2次関数的に立ち上がり、ピーク後単調減少 -- 4d は &math(r=0); から2次関数的に立ち上がり、ピーク後減少するが1つ節を持つ -- ... - f 状態 -- 4f は &math(r=0); から3次関数的に立ち上がり、ピーク後単調減少 -- ... この &math(|R(r)|); を二乗した &math(|R(r)|^2); が体積あたりの電子の確率密度に比例する。 &math(|R(r)|); は常に原点あるいは原点に一番近い山において最大値を取ることが分かる。 * 半径あたりの確率密度 [#hc1431de] 一方、電子がどのくらいの半径の箇所に高確率で見いだせるか、 を考る場合には、その確率分布は &math(4\pi r^2|R(r)|^2); である。 半径 &math(r\sim r+dr); の球殻の体積が &math(4\pi r^2dr); であることに注意せよ。 &math(|R(r)|); は常に原点付近で最大値を取るのに対して、 &math(r^2|R(r)|^2); は原点から最も遠い &math(2(n-1-l)); 個目の根の外側の部分で最大値を取ることが分かる。 &attachref; 半径の関数として表される物理量、たとえばポテンシャルエネルギーや、 運動エネルギーの期待値を求める際にはこちらの確率密度が役に立つ。 * 半径あたりの確率密度の最大値 [#va487bb8] * 半径あたりの確率密度に対する期待値 [#p1fc63b8]
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