量子力学Ⅰ/3次元調和振動子 のバックアップ(No.11)

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復習:$x,y,z$ 座標で解いた3次元調和振動子

バネ定数 K の3次元調和振動子

 &math( V(x,y,z)&=\frac{1}{2}K(x^2+y^2+z^2)\\ &=\frac{1}{2}m\omega^2(x^2+y^2+z^2)\hspace{1cm}\omega:固有振動数 );

x,y,z について変数分離して、1次元調和振動子の積として解ける。

  \phi(x,y,z)=X(x)Y(y)Z(z)

X(x),Y(y),Z(z) はそれぞれエルミート多項式 H_n を使って、

  H_n(\xi)e^{-\xi^2/2}

の形となり、

  \phi_{n_xn_yn_z}(x,y,z)=H_{n_x}(x/r_0)H_{n_y}(y/r_0)H_{n_z}(z/r_0)e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}

ただし r_0=\sqrt{\hbar/m\omega} 。このとき、

 &math( \varepsilon_N&=\varepsilon_{n_x}+\varepsilon_{n_y}+\varepsilon_{n_z}\\ &=\hbar\omega(n_x+n_y+n_z+3/2)\\ &=\hbar\omega(N+3/2)\\ );

N=n_x+n_y+n_z       (n_xn_yn_z)      縮退度
0(0 0 0)1
1(1 0 0), (0 1 0), (0 0 1)3
2(2 0 0), (0 2 0), (0 0 2)6
(1 1 0), (1 0 1), (0 1 1)
3(3 0 0), (0 3 0), (0 0 3)10
(2 1 0), (0 2 1), (1 0 2)
(1 2 0), (0 1 2), (2 0 1)
(1 1 1)

すなわち、 N=0,1,2,3,\dots のそれぞれに対して 独立な解が 1,3,6,10,\dots 個存在することになる。

球座標で解いた3次元調和振動子

一方、この問題は球対称なポテンシャル

  V(r,\theta,\phi)=\frac{1}{2}Kr^2

における運動であるから、この解は球座標で展開して解くことにより

  \phi_{nlm}'(r,\theta,\phi)=R_n{}^l(r)Y_l{}^m(\theta,\phi)

と表せるはずである。ただしこのとき、

  \varepsilon=\varepsilon_n{}^l

と書き表せ、エネルギーは m の値によらない。

状態lm縮退度
s001
p1-1, 0, +13
d2-2, -1, 0, 1, 25
f3-3, -2, -1, 0, 1, 2, 37

ただし、水素原子のところでも見たとおり、ポテンシャルの形状によっては m に対する縮退以外にも、異なる l を持つ状態が縮退することがある。

両者の関係は?

次に見るとおり、

  • N=0 の縮退度は 1 → s 状態 (縮退度 1)
  • N=1 の縮退度は 3 → p 状態 (縮退度 3)
  • N=2 の縮退度は 6 → d 状態 (縮退度 5) と s 状態 (縮退度 1) が縮退
  • N=3 の縮退度は 10 → f 状態 (縮退度 7) と p 状態 (縮退度 3) が縮退

にそれぞれ対応している。

演習:3次元調和振動子の動径方向の方程式

上で出てきた動径方向の関数が、対応する l の値に対して3次元調和振動子の方程式の解になっていることと、 その固有値が与えられた n から予想されるエネルギー値に等しいことを確かめたい。

(1) 3次元調和振動子に対する動径方向の方程式は、 r/r_0=\xi と書き換え、 rR(r)=X(\xi) と置けば、

&math( X''(\xi)=\Big[\xi^2-\frac{2\varepsilon}{\hbar\omega}+\frac{l(l+1)}{\xi^2}\Big]X(\xi) );

となることを示せ。( l=0 のとき、この式は1次元調和振動子の式と一致する)

(2) \frac{d^2}{d\xi^2}\left(\xi^n e^{-\xi^2/2}\right)=\left(\xi^2-(2n+1)+\frac{(n-1)n}{\xi^2}\right)\xi^n e^{-\xi^2/2} となることを確かめよ。

(3) X(\xi)=\xi^{l+1} e^{-\frac{\xi^2}{2}} \varepsilon=\left(l+\frac{3}{2}\right)\hbar\omega に対する固有関数となることを示せ。

(4) X(\xi)=\left(\xi^{l+1}-\frac{2}{2l+3}\xi^{l+3}\right)e^{-\xi^2/2} \varepsilon=\left(l+\frac{7}{2}\right)\hbar\omega に対する固有関数となることを示せ。

解説

(3) で l=0 とすれば R(r)\propto e^{-\xi^2/2} となって、 N=0 の解に相当する。

(3) で l=1 とすれば R(r)\propto \xi e^{-\xi^2/2} となって、 N=1 の解に相当する。

(3) で l=2 とした R(r)\propto \xi^2 e^{-\xi^2/2} と、 (4) で l=0 とした R(r)\propto \left(\xi-\frac{2}{3}\xi^3\right)e^{-\xi^2/2} とは同じエネルギーを持ち(縮退しており)、 N=2 の解に相当する。

(3) で l=3 とした R(r)\propto \xi^3 e^{-\xi^2/2} と、 (4) で l=1 とした R(r)\propto \left(\xi^2-\frac{2}{5}\xi^4\right)e^{-\xi^2/2} とは同じエネルギーを持ち(縮退しており)、 N=3 の解に相当する。

$N=0$ の解

 &math( \varphi_{000}(\bm r) &=\left(\frac{4\pi}{r_0}\right)^{3/4}e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}} &\propto e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}} );

\theta,\phi に依存しない。

一方、 Y_0{}^0=1/\sqrt{4\pi} \theta,\phi に依存しないので、

 &math( \varphi_{000}(\bm r) &\propto e^{-\frac{r^2}{r_0^2}}\,Y_0{}^0\\ );

と書ける。

すなわち n=0 の解は s 状態であり、 \varphi_{000} に対して \hat l^2=0,\hbar l_z=0 であることが分かる。

$N=1$ の解

 &math( \varphi_{100}(\bm r)\propto\frac{x}{r_0}e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}} =\sin\theta\cos\phi e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}} );

 &math( \varphi_{010}(\bm r)\propto\frac{y}{r_0}e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}} =\sin\theta\sin\phi e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}} );

 &math( \varphi_{001}(\bm r)\propto\frac{z}{r_0}e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}} =\cos\theta e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}} );

ここで、

 &math( \begin{cases} x=r\sin\theta\cos\phi\\ y=r\sin\theta\sin\phi\\ z=r\cos\theta \end{cases} );

でることに注意せよ。

一方、

  Y_1{}^0\propto \cos\theta

  Y_1{}^{\pm 1}\propto \pm e^{i\phi}\sin\theta

であったから、

 &math( \varphi_{100}(\bm r)\propto \frac{r}{r_0}e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}\,(Y_1{}^1-Y_1{}^{-1})/2 );

 &math( \varphi_{010}(\bm r)\propto i\frac{r}{r_0}e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}\,(Y_1{}^1+Y_1{}^{-1})/2i );

 &math( \varphi_{001}(\bm r)\propto \frac{r}{r_0}e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}\,Y_1{}^0 );

すなわち、 N=1 に対応する \varphi_{n_xn_yn_z} はすべて、

  \frac{r}{r_0}e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}\,Y_1{}^m(\theta,\phi)

の形の関数の線形結合で表されることが分かる。

同じ固有値に属する固有関数の線形結合は、やはり同じ固有値に属する固有関数になるから、 \hat l^2 に対する l=1 の固有関数の線形結合として表されるこれらの関数は、 やはり l=1 の固有関数になる。すなわち p 状態である。

\varphi_{001} はそのまま \hat l_z m=0 に対する固有関数でもある。

\varphi_{100},\varphi_{010} はそのままでは \hat l_z の固有関数ではないが、

  \varphi_{100}+i\varphi_{010}\propto Y_1{}^1

  \varphi_{100}-i\varphi_{010}\propto Y_1{}^{-1}

とすることにより \hat l_z のそれぞれ m=1,-1 の固有関数となる。

物理的には、 z 方向に振動する \varphi_{001} については z 軸周りの角運動量はゼロであり、 x,y 方向に振動する \varphi_{100},\varphi_{010} についてもそれら単独ではやはり z 軸周りの角運動量の期待値はゼロである。

しかし、 x 方向に振動しつつ同時に y 方向にも振動する場合、 それらの位相によっては z 軸周りの各運動量が生じることになる。

ここでは \pm i=e^{\pm \pi/2} をかけて足しており、 これは物理的には x 方向の振動に対して y 方向の振動の位相が \pm \pi/2 だけずれており、なおかつ両方向の振幅が等しいことに対応する。 すなわち、 x \sin\omega t 的な振動をするとき y \pm\cos\omega t 的に振動することになり、 これはすなわち z 軸の周りの左回り/右回りの円運動に他ならない。

$N=2$ および $N=3$ の解

上では、

 &math( \begin{array}{llll} r (Y_1{}^{1}-Y_1{}^{-1})&\propto x&\to&\varphi_{px}=\frac{1}{\sqrt{2}}(Y_1{}^{1}-Y_1{}^{-1})\\ r i(Y_1{}^{1}+Y_1{}^{-1})&\propto y&\to&\varphi_{py}=\frac{-i}{\sqrt{2}}(Y_1{}^{1}+Y_1{}^{-1})\\ r Y_1{}^0&\propto z&\to&\varphi_{pz}=Y_1{}^0\\ \end{array} );

を用いて式変形を行ったが、これと同様に、

 &math( \begin{array}{lllll} r^2\, i(Y_2{}^{2}-Y_2{}^{-2}) &\propto xy&\to&\varphi_{dxy}&=\frac{-i}{\sqrt 2}(Y_2{}^{2}-Y_2{}^{-2})\\ r^2\, i(Y_2{}^{1}+Y_2{}^{-1}) &\propto yz&\to&\varphi_{dyz}&=\frac{-i}{\sqrt 2}(Y_2{}^{1}+Y_2{}^{-1})\\ r^2\, (Y_2{}^{1}-Y_2{}^{-1}) &\propto zx &\to&\varphi_{dzx}&=\frac{1}{\sqrt 2}(Y_2{}^{1}-Y_2{}^{-1})\\ r^2\, (Y_2{}^{2}+Y_2{}^{-2})&\propto x^2-y^2&\to&\varphi_{d(x^2-y^2)}&=\frac{1}{\sqrt 2}(Y_2{}^{2}+Y_2{}^{-2})\\ r^2\, Y_2{}^{0} &\propto 3z^2-r^2&\to&\varphi_{d(3z^2-r^2)}&=Y_2{}^{0} \end{array} );

などの関係を用いることにより、

  • 6重に縮退した N=2 は s 状態と d 状態が1つずつ縮退した状態
  • 10重に縮退した N=3 は p 状態と f 状態の縮退した状態

になっていることを確かめられる。具体的には、

N=2 の解は、

  \left(-1+\frac{2}{3}\frac{r^2}{r_0^2}\right)e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}\,Y_{0}^{0}  と、   \frac{r^2}{r_0^2}e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}\,Y_{2}^{m}

の線形結合で、

N=3 の解は、

  \left(1-\frac{2}{5}\frac{r^2}{r_0^2}\right)\frac{r}{r_0}e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}\,Y_1^m  と、   \frac{r^3}{r_0^3}e^{-\frac{r^2}{2r_0^2}}\,Y_3^m

の線形結合で、それぞれ表せる。詳しい計算はこちら


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