電磁ポテンシャルの導入 のバックアップソース(No.5)

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[[電磁気学]]

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* 電荷密度と電流密度を与えて Maxwell 方程式を解く問題を考える [#c9b93e5b]

Maxwell 方程式

&math(\left\{\begin{array}{c@{\ }l@{\ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ }l}\displaystyle {\rm rot}\bm E+\frac{\partial \bm B}{\partial t}&=\bm 0&\MARU{1}\vspace{2mm}\\{\rm div} \bm B &= 0&\MARU{2}\vspace{2mm}\\\displaystyle\frac{1}{\mu_0}{\rm rot} \bm B-\varepsilon_0 \frac{\partial \bm E}{\partial t} &= \bm i&\MARU{3}\vspace{2mm}\\\varepsilon_0{\rm div} \bm E &= \rho&\MARU{4}\\\end{array}\right .);

に、

- 電荷密度 &math(\rho(\bm x,t));
- 電流密度 &math(\bm i(\bm x,t));

を与えて解き、

- 電場 &math(\bm E(\bm x,t));
- 磁束密度 &math(\bm B(\bm x,t));

を求める問題を考える。

電磁気学の典型的な問題の1つである

* 方程式が多すぎる? [#rcf08c0d]

ベクトルの &math(x,\, y,\,z); 成分を1つ1つ独立変数と考えれば

- 求める変数は6個 … &math(E_x,E_y,E_z,B_x,B_y,B_z);
- 与えられた式は8個 … &math(3+1+3+1=8);

条件が多すぎて解がないのでは?

→ 実は &math(\MARU{2}); と &math(\MARU{4}); は独立の条件になっていないため大丈夫

* ② は ① に含まれている [#tbdb1b7e]

&math(\MARU{1}); の div を取る

&math({\rm div}\,{\rm rot}\bm E+{\rm div}\frac{\partial}{\partial t}\bm B={\rm div} \bm \,0);

ベクトル解析の公式より、任意の &math(\bm E); に対して &math({\rm div}\,{\rm rot}\bm E=0); が成り立つから、

&math(\frac{\partial}{\partial t}\big({\rm div}\bm B\big)=0);

すなわち、&math({\rm div}\bm B); の値は時間によって変化しない。

したがって、ある時刻、例えば &math(t=0); において &math({\rm div}\bm B(\bm x,0)=0); が成り立っていれば、&math(\MARU{2}); は無くても &math(\MARU{1}); のみから任意の時刻 &math(t); において &math({\rm div}\bm B(\bm x,t)=0); が保証される。

すなわち、&math({\rm div}\bm B(\bm x,0)=0); となる「境界条件」を与える限り、&math(\MARU{2}); は &math(\MARU{1}); に含まれており、独立な条件にはならない。

* ④ は ③ に含まれている [#tbdb1b7e]

同様に &math(\MARU{3}); の div を取る

&math(\frac{1}{\mu_0}{\rm div}\,{\rm rot} \bm B-\varepsilon_0{\rm div}\frac{\partial \bm E}{\partial t} = {\rm div}\bm i);

&math(-\frac{\partial}{\partial t}\varepsilon_0{\rm div}\bm E = {\rm div}\bm i);

ここで、条件として与える &math(\rho,\,\bm i); は電荷保存則を満たしていなければならないため、

&math({\rm div}\bm i=-\frac{\partial}{\partial t}\rho);

したがって、

&math(\frac{\partial}{\partial t}\varepsilon_0{\rm div}\bm E=\frac{\partial}{\partial t}\rho);

&math(\frac{\partial}{\partial t}\big(\varepsilon_0{\rm div}\bm E-\rho\big)=0);

すなわち、&math(\varepsilon_0{\rm div}\bm E-\rho); は時間によって変化しない。

したがって、ある時刻、例えば &math(t=0); において &math(\varepsilon_0{\rm div}\bm E(\bm x,0)=\rho(\bm x,0)); が成り立っていれば、&math(\MARU{4}); は無くても &math(\MARU{3}); のみから任意の時刻 &math(t); において &math(\varepsilon_0{\rm div}\bm E(\bm x,t)=\rho(\bm x,t)); が保証される。

すなわち、&math(\varepsilon_0{\rm div}\bm E(\bm x,0)=\rho(\bm x,0)); となる「境界条件」を与える限り、&math(\MARU{4}); は &math(\MARU{3}); に含まれており、独立な条件にはならない。

* 独立な条件の数 [#y6577d4e]

&math(\MARU{1}\sim\MARU{4}); のうち、&math(\MARU{2}, \MARU{4}); を除くと、独立な条件は &math(\MARU{1}, \MARU{3}); のみとなり、成分で考えれば

- 求める変数は6個 … &math(E_x,E_y,E_z,B_x,B_y,B_z);
- 与えられた式は6個 … &math(3+3=6);

で、ちょうど解ける計算になる。

* 電磁ポテンシャルとは [#b08b2f1b]

&math(\MARU{1}, \MARU{3}); の式は

&math(\left\{\begin{array}{c@{\ }l@{\ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ }l}\displaystyle {\rm rot}\bm E+\frac{\partial \bm B}{\partial t}&=\bm 0&\MARU{1}\vspace{2mm}\\\displaystyle\frac{1}{\mu_0}{\rm rot} \bm B-\varepsilon_0 \frac{\partial \bm E}{\partial t} &= \bm i&\MARU{3}\vspace{2mm}\end{array}\right .);

のように &math(\bm E, \bm B); の各成分が複雑に入り組んでいるため、解くのが難しい。

「電磁ポテンシャル」を導入することで問題を見通しの良い形に直せる。

ここで、「電磁ポテンシャル」と「静電ポテンシャル」の2つの用語を使い分けていることに注意せよ。

- 電磁ポテンシャル … 電磁場が時間に依存して変化する時に使用する
-- ベクトルポテンシャル
-- スカラーポテンシャル
- 静電ポテンシャル … 電磁場が時間に依存しない時に使用する~
(電磁ポテンシャルのスカラーポテンシャルから時間に依存する項を除いた形)

* 静電ポテンシャルの復習 [#y4833a49]

時間に依存しない電場を考えるとき、静電ポテンシャルを使うことで問題を簡単に解くことができた。

静電ポテンシャル:&math(\phi(\bm x));

2点 &math(A, B); が与えられたとき、電場を &math(AB); 間で線積分した値は点 &math(A, B); における &math(\phi(\bm x)); の値のみを使って、

&math(\int_{\bm x_A}^{\bm x_B}\bm E\cdot d\bm r=\phi(\bm x_B)-\phi(\bm x_A));

と書ける。あるいは同じ意味であるが、

&math(\bm E(\bm x)=-{\rm grad} \phi(\bm x));

と書ける。

すなわち電場 &math(\bm E); は静電ポテンシャル &math(\phi); の傾きである。

ポテンシャルの存在は上記 Maxwell 方程式の &math(\MARU{1}); から時間に依存する項を除いた

&math({\rm rot}\bm E(\bm x)=0);

から得られる。

2点 &math(A, B); 間に2つの経路 &math(R_1, R_2); を考える。これらを繋いだ閉曲線を &math(C=R_1-R_2);、&math(C); に囲まれる面積を &math(S); とすると、

&math(\int_{R_1}\bm E\cdot d\bm r-\int_{R_2}\bm E\cdot d\bm r=\int_{C}\bm E\cdot d\bm r=\oint_S{\rm rot}\bm E\cdot\bm n dS=0);

となり、任意の経路に沿った線積分が同じ値を取ることが分かり、これがポテンシャルの存在を導いた。

** 静電ポテンシャルを用いて Maxwell 方程式を書き直す [#n140b745]

&math(\bm E(\bm x)=-{\rm grad} \phi(\bm x)); を &math(\MARU 4); へ代入すれば、

&math(-{\rm div}\,{\rm grad}\phi(\bm x)=-\bigtriangleup\phi(\bm x)=\rho(\bm x)/\varepsilon_0);

の形のラプラス方程式を得る。

以上、静電ポテンシャル &math(\rho); を導入することにより、

&math({\rm rot}\bm E(\bm x)=0);~
&math({\rm div}\bm E(\bm x)=\rho(\bm x)/\varepsilon_0);

の複雑な連立方程式から &math(\bm E(\bm x)); を決める難しい問題が、

&math(-\bigtriangleup\phi(\bm x)=\rho(\bm x)/\varepsilon_0);

を解いて

&math(\bm E(\bm x)=-{\rm grad} \phi(\bm x));

へ代入する、易しい問題に書き換えられたことに注目せよ。

* 電磁ポテンシャルの導入 [#q3201fd3]

時間に依存する電磁場を考えるときは、静電ポテンシャルのかわりに電磁ポテンシャルを使うことで問題を単純化できる。

** ベクトルポテンシャル [#m5bb4434]

まず、&math(\MARU{2}); よりベクトルポテンシャル &math(\bm A(\bm x,t)); を導入し、これを用いて磁束密度を

&math(\bm B(\bm x,t)={\rm rot} \bm A(\bm x,t));

と書き表す。これにより &math(\MARU{2}); は自動的に満たされる。

&math({\rm div}\,{\rm rot} \bm A=0);

** ベクトルポテンシャルの意味 [#r35960b0]

静電ポテンシャルが2点間の電場の線積分から得られたのと比較しながら理解しよう。

閉曲線 &math(C); を考える。&math(C); を縁とする2つの曲面 &math(S_1, S_2); を取り、それらを合わせてできる閉曲面を &math(S=S_1-S_2);、&math(S); に囲まれる体積を &math(V); とする。

&math(S_1, S_2); を貫く磁束を比較すると、

&math(\int_{S_1}\bm B\cdot\bm ndS-\int_{S_2}\bm B\cdot\bm ndS=\int_{S}\bm B\cdot\bm ndS=\int_{V}{\rm div}\bm Bd^3x=0);

となり、閉曲線 &math(C); を貫く磁束 &math(N_C); は面の取り方によらず一意に定義される。

&math(N_C=\int_{S_\mathrm{any}}\bm B\cdot\bm ndS);

ここに &math(\bm B(\bm x,t)={\rm rot} \bm A(\bm x,t)); を代入すると、

&math(N_C=\int_{S}{\rm rot}\bm A\cdot\bm ndS=\oint_{C}\bm A\cdot d\bm r);

となり、&math(N_C); を &math(C); 上の &math(\bm A); の値のみを含む式で表せることになる。

2点 &math(A,B); 間の電位差 &math(\phi_\mathrm{AB}); が、2点 &math(A,B); の上での静電ポテンシャル &math(\phi); の値のみを使って &math(\phi_\mathrm{AB}=\phi(\bm x_B)-\phi(\bm x_A)); と表せたのと合わせて理解したい。

** スカラーポテンシャル [#da84e85b]

&math(\MARU{1}); に &math(\bm B(\bm x,t)={\rm rot} \bm A(\bm x,t)); を代入すると、

&math({\rm rot}\bm E+\frac{\partial}{\partial t}{\rm rot}\bm A=\bm 0);

&math(\ROT\left(\bm E+\frac{\partial}{\partial t}\bm A\right)=\bm 0);

したがって、静電ポテンシャルの時の議論と同様に、

&math(\bm E+\frac{\partial}{\partial t}\bm A=-\GRAD\phi);

と置けて、

&math(\bm E=-\GRAD\phi-\frac{\partial}{\partial t}\bm A);

である。

第2項がなければ静電ポテンシャルの式と同じであるが、動的な場では電磁誘導の項である第2項が現れる事に注意せよ。

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